西川和久の不定期コラム

ASUSTeK「K53E」
~Core i7搭載のスタンダードノート



 ASUSTeK Computerの第2世代Core i5プロセッサを搭載する「K53E」のレビュー記事を4月中旬にお送りした。今回はCore i7プロセッサとカラーバリエーションが新しくK53Eのラインナップに加わり、その両方が送られて来たので試用レポートをお届けする。同じモデルながらCore i5とi7とでどの程度の違いがあるか興味のあるところだ。

●Core i7-2630QM搭載でパワーアップ

 同社のスタンダードノートPCとしては、「K50」、「K52」、「K53」の3つのシリーズがあり、全て2スピンドル、15.6型HD解像度の液晶パネルを搭載している。ただし、K50はCore 2 Duoプロセッサ、K52は第1世代Core iプロセッサと言うこともあり、実質はK53シリーズが主力モデルとなるだろう。

 もともとこの「K53E」は、4月の中旬から発表/出荷されていたが、今回、ベースユニットはそのまま、第2世代Core i7プロセッサ搭載機とカラーバリエーションが追加された。主な仕様は以下の通り。

【表】ASUS「K53E」の仕様
CPUIntel Core i7-2630QM
(4コア/8スレッド、2.0GHz/Turbo Boost 2.9GHz、キャッシュ6MB)
チップセットIntel HM65 Express
メモリ4GB(4GB×1) PC3-10600 DDR3-SDRAM (最大8GB)/2スロット空1
HDD640GB(5,400rpm)
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ15.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット
グラフィックスIntel HD Graphics 3000、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
その他USB 2.0×3、5in1メディアスロット、マイク/ライン入力、
ヘッドフォン出力、Webカメラ、Altec Lansing社製スピーカー
サイズ/重量378×253×33~35mm(幅×奥行き×高さ)/約2.6kg
バッテリ駆動時間約6.0時間
価格79,800円(ASUS Shop)

 プロセッサはIntel Core i7-2630QM。4コア8スレッド、クロック2.0GHzでTurbo Boost時2.9GHzまで上昇する。4月に発表されたモデルがCore i5-2410M(2コア/4スレッド、2.3GHz/TB 2.9GHz、キャッシュ3MB)だったので、この部分だけパワーアップした格好だ。いずれもプロセッサの型番からもわかるように、Sandy Bridgeアーキテクチャ。パフォーマンスの差などは後半検証したい。

 チップセットはIntel HM65 Express。メモリは4GB×1の計4GB。2スロットあり、空きが1つ。最大8GBまで対応する。裏のパネルが簡単に外れるので増設は容易だ。OSは64bit版Windows 7 Home Premium。ただしSP1ではない。HDDは5,400rpmの640GB、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ搭載している。

 ディスプレイは15.6型HD解像度/1,366×768ドットの液晶パネルでグレア(光沢)タイプだ。出力はミニD-Sub15ピンとHDMI。グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 3000となる。

 ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは非搭載。その他のインターフェイスは、USB 2.0×3、5in1メディアスロット、マイク/ライン入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ、そしてAltec Lansing社製スピーカー。USB 3.0に対応していないのが惜しいところか。

 サイズは378×253×33~35mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.6kg。バッテリ駆動時間は最大約6時間。大きさや重量的にあまり外に持ち出して使うタイプでないものの、意外とバッテリ駆動時間が長めだ。

 価格は79,800円(ASUS Shop)と、第2世代Core i7プロセッサを搭載し、2スピンドルにも関わらず8万円を切っている。なかなかお買い得なモデルと言えよう。なお同じK53シリーズでも「K53U」は、プロセッサにAMD E-350を搭載したモデルとなる。

トップカバーの色はブラウン。このカラーだけ凹凸のラインがある側面左側に5in1メディアスロット、中央にHDDアクセスランプなどステータスLEDが並ぶ本体底面ネジ2本外すと、本体の約3分の1ほどある大きなパネルが簡単に開き、メモリとHDDにアクセスできる
左側面。電源コネクタ、Gigabit Ethernet、ミニD-Subピン、HDMI出力、USB 2.0×1などが並ぶキーボードはテンキー付のアイソレーションタイプ。キーの一部はキーピッチが狭い右側面。ロックポート、DVDスーパーマルチドライブ、USB 2.0×2、マイク入力/ヘッドフォン出力
キーピッチは実測で約19mmACアダプタのコネクタはメガネタイプ。バッテリは結構大きいトップカバーがブラウンと言うこともあり、落ち着いた感じのデザインだ

 カラーバリエーションは、「パッションレッド」、「チルブルー」、「セダクションピンク」、「アーバングリーン」、「パーティーゴールド」、そして従来の「ブラウン」と6色。レッド系やブルー系は他社でも見かけるが、ピンク系やグリーン系は珍しい。

 また今回試用しているブラウンと他の色での大きな違いは、トップカバーに凹凸のあるラインが無いこと。その分、指紋が付きやすくなるものの、パッと見た感じの雰囲気は綺麗だ。「チルブルー」も一緒に送られて来たので、写真だけを掲載する。トップカバーだけでなくパームレストなども同じ色になっていることがわかる。なかなか個性的で「ブラウン」とは明らかに印象が異なる。同じボディなのに色とちょっとした凹凸の有無だけで、これだけ変わるのだから面白いものだ。

 ただし、カラーバリエーションモデルでブラウン以外はCore i5-2410M(2コア/4スレッド、2.3GHz/Turbo Boost 2.9GHz、キャッシュ3MB)搭載機となる(価格69,800円)。

チルブルー。ブラウンと違い凹凸のラインは無いパームレストやタッチパッドなども同じ色になっている

 トップカバーに関しては先に書いた通り。パームレストはヘアライン仕上げで同色の配色となる。タッチパッドは少し段差があり、ツルツルしたタイプだ。ボタンは左右2つ。若干ストロークが深く、硬い感じだ。4月に発表されたCore i5搭載機同様、「ICE Cool Design」と「パームプルーフ・テクノロジー」が採用され、パームレストは熱くならず、タッチパッドはタイピング中に当たってしまっても誤作動しない。

 15.6型の液晶パネルはグレア(光沢)タイプだ。バックライトをOFFにしてもそれなりに見えるが、視野角は上下左右とも狭い。発色は原色系が少し派手気味であるものの、その分写真や動画は見栄えする映りとなる。

 Altec Lansing社製スピーカーは、ちょっと箱の中で鳴っている(音がこもる)感じがしないでもないが、サイズや価格を考えると音質/音量共に十分な範囲で、音楽も動画も楽しめる。更に「ASUS Sonic Focus」を使うことによって、いろいろ音色を変えられるので、好みに応じて設定すればいいだろう。

 気になる点は以前指摘したとおり、若干たわむアイソレーションタイプのテンキー付キーボードと、電源コネクタが左側中央にある点。ボディがCore i5搭載機と同じなので仕方ない部分だ。

●Core i5-2410Mとパフォーマンスの差は?

 OSは64bit版Windows 7 Home Premiumだが、Service Pack 1は適用されていない。ラインに乗るタイミングもあると思われるが、この時期に出荷するのであれば、SP1は導入済みであって欲しかった。Internet Explorerも9ではなく8が入っている。メモリはIntel HD Graphics 3000と共有のため、実際は3.79GBとなる。

 タスクトレイに常駐しているソフトウェアは、「Realtek HDオーディオマネージャ」、「インテルHDグラフィックス」、「ASUS Sonic Focus」、「ELAN Pointing Device」、「Wireless Console 3」、「ASUS Webstorage」、「ASUS Live Update」。ASUS Sonic Focusはサウンド拡張用だ。画面右側のガジェットは「インテル ターボ・ブースト・テクノロジー・モニター」、電源管理の「Power4Gear」が並ぶ。

 HDDは640GB/5,400rpm/キャッシュ8MBのWD6400BPVTが使われている。パーテーションは、C:ドライブ約238GB、D:ドライブ約322GBの2パーテーション。C:ドライブは初期起動時217GB空き。D:ドライブは未使用だ。オプティカルドライブはHL-DT-ST DVDRAM GT34N。その他、デバイスマネージャを見る限り特殊なデバイスは無い。

起動時のデスクトップ。OSは64bit版Windows 7 Home Premium。SP1ではなく、IEも8のままだHDDはWD6400BPVT(640GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)、光学ドライブはHL-DT-ST DVDRAM GT34NC:ドライブが約238GB、D:ドライブが約332GBの2パーテーション

 プリインストール済みのアプリケーションは自社製のものとして「AI Recovery Burner」、「ASUS Virtual Camera」、「eManual」、高速起動を可能にする「FastBoot」、Webカメラツール「LifeFrame」、「Power4Gear Hybrid」、BIOS更新ツール「WinFlash」、「Wireless Console 3」、「ASUS Live Update」、カラーコントロール「ASUS Splendid Utility」、サウンドコントローラ「ASUS Sonic Focus」、顔認識によるログイン「SmartLogin」など。

 他社製としては、「CyberLink Blu-ray Disc Suite」、「Trend Micro Titanium Internet Security(試用版)」、「i-フィルター5.0」など。デスクトップに配置されるショートカットやガジェットも含めCore i5搭載機と全く同じ構成となる。

 画面キャプチャは前回と被らないよう、「SmartLogin」、「eManual」、「AI Recovery Burner」を掲載した。eManualはPDF化された電子マニュアルだが英文だ。またPDFリーダーとして「Nuance PDF Reader 6.0」が使われている。「AI Recovery Burner」はバックアップツールだが、初期起動状態ではDVD-ROMが6枚必要とされるなど、あまり実用的で無いような気がする。

SmartLogineManualAI Recovery Burner

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。カッコ内は以前レビューしたCore i5-2410M(2コア/4スレッド、2.3GHz/TB 2.9GHz、キャッシュ3MB)搭載のK53Eの値を参考までに掲載している。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.8(4.7)。プロセッサ 7.4(6.9)、メモリ 5.9(5.9)、グラフィックス 4.8(4.7)、ゲーム用グラフィックス 6.1(6.1)、プライマリハードディスク 5.9(5.7)。このスコアを見る限り、大きく違うのはプロセッサのみで+0.5。チップセットは同じなので、メモリやグラフィックス系はほぼ同じ値になっている。この差は動画のエンコードなどでは効き目があるかも知れないが、ネットやコンテンツ再生など、プレーヤー的、そして文字中心の業務的な使い方をする限り、体感的には差を感じないだろう。

 CrystalMarkは、ALU 54897(38914)、FPU 47982(40111)、MEM 29297(24181)、HDD 11406(9234)、GDI 13556(13503)、D2D 1761(1347)、OGL 2581(2573)。Windows エクスペリエンス インデックスと同様、大きく差が出るのはALUとFPUのみとなっている。Core i5-2410Mモデルが69,800円なので、+1万円がこのプロセッサの差額と言うことになるだろうか。

 バッテリ計測のBBenchは、「Power4Gear Hybrid」の設定を「Battery Saving」、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で16,646秒(4.6時間)。Core i5-2410Mではバッテリの残5%で19,826秒(5.5時間)だった。対Core i5比で約1時間短くなっている。この辺りは高性能なCore i7とのトレードオフといったところだろう。

Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.8。プロセッサ 7.4、メモリ 5.9、グラフィックス 4.8、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 5.9CrystalMark。ALU 54897、FPU 47982、MEM 29297、HDD 11406、GDI 13556、D2D 1761、OGL 2581BBench。「Power4Gear Hybrid」の設定を「Battery Saving」、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で16,646秒(4.6時間)

 以上のようにK53EのCore i7モデルは、15.6型の液晶パネル、そしてCore i7-2630QM搭載の2スピンドルノートPCとしては、8万円を切る価格でコストパフォーマンスは非常に高い。またCore i5-2410Mプロセッサとなるものの、新しく加わったカラーバリエーションも魅力的だ。

 USB 3.0非搭載やキーボードのクオリティなど、若干気になる部分もあるが、低予算でこのクラスのスタンダードノートPCを欲しいユーザーは検討に値する1台と言えよう。