西川和久の不定期コラム

Apple「iPad 2」
~【アクセサリ編】これまでに無かったアクセサリで更に快適に



 前回は本体編として本体を中心に数日使った感想などを書いた。今回は、同時に購入した「iPad Smart Cover」と「Digital AVアダプタ」を中心にその使い勝手など、そして更に使い込んで気が付いた点をレポートする。

●iPad Smart Cover

 iPad 2発表時、本体に次いで話題になったのがこの「iPad Smart Cover」だ。その独特の形状から特に国内では「風呂の蓋」の愛称で呼ばれ一気に注目を集めた。色はポリウレタン製(3,980円)がピンク、オレンジ、グリーン、ブルー、グレイ。アニリン染めのイタリア製レザー(6,980円)がライトグレイ、ブラウン、ブラック、ダークグレイ、レッドで、全10色。裏側は共通で液晶パネルの汚れや指紋をふき取るマイクロファイバーとなっている。

 これまでいろいろなiPad用のケースやカバーがあったが、iPad Smart Coverの完成度は非常に高く、まるでもともと付いているように思えるほど。純正なので当然と言えば当然だし、分かってしまえば簡単なカラクリだが、ここに至るまではかなり紆余曲折があったに違いない。

 まずピンポイントの位置へマグネットを使い確実に装着できる。動画を掲載したのでご覧頂きたいが、本体のホームボタンを左側にした時の上側にしか付かない。ジャストであの位置のみで、左右には絶対ズレない。

 次にカバーでiPad 2を覆うとスリープに移行し、外すとスリープから復帰する。この作動は、一番外側の4段目のラインがある部分が、覆い被った時のみで、スリープに入る直前に「カチッ」と小さい音がする。これは、内側から3段目までは何も仕込まれておらず、最も外側の4段目のみマグネットが入っているためで、このカバーを本体へ固定すると同時に、本端内部のセンサーがマグネットに反応し、スリープを制御している。

 この一連の設計は、純正ならではで、サードパーティが製品と同時に投入することは不可能と言えよう。ただ今後は、同様のケースやカバーが出てくることが予想される。

 3つ目だが、カバーに4本のラインが入っているのには理由があり、クルクルっと折りたたみ、三角柱に変形する構造になっている。これをスタンドにして、iPad 2を2段階の角度に固定できる。1つは浅めで机やテーブルに置くのに調度良い角度。もう1つは高い角度で、フォトフレーム用。つまりiPad Smart Coverは、カバーだけではなく、スタンドとしても使えるのだ。筆者がiPadを使うとき、机の上ではタバコの箱を下に置いて角度を付けスタンド代わりにしていたが、これで代用ができる。

色は全10色。内5色はポリウレタン製、残り5色は革製。このブルーはポリウレタン製裏は共通でマイクロファイバーの裏地になっているiPad 2に張り付いたところ。本体設計時からの作り込みは、まるでもともと付いているように思えるほどの完成度
フタを閉めたところ、寸分も違わずフィットする。薄く軽いため邪魔にならず、かつ全体のデザインを崩さない机やテーブルの上に置いて使うのに調度良い角度になる。ただこの角度は天井に蛍光灯などがあると、映り込んでしまうので場所を選ぶかも知れないフォトフレームモードで、写真を見たりするにはバッチリな角度だが、操作するにはあまり安定せず、タップなどするとフラつく

 実際に使ってみると、非常に便利でiPad 2にとって必需品と言えるほど。かさばらず、開け閉めもスムーズ、しかもスタンドにもなると良いことずくしだ。ただ裏面は全く保護できないので、気になる人は他社製のカバーと併用した方がいいだろう。

 気になる点は、テーブル置き用にスタンド化した場合、電源ボタン、消音/音量ボタンが全て右下になってしまい、操作しづらいことだ。電源ボタン以外はiOSでコントロール可能だが、とっさの時には物理的なボタンをつい押しに行ってしまう。またこれは個人的な問題だが、iPadを横位置で使う時、必ずホームボタンを右側にしていたので、位置が逆になり、慣れるまで少し時間がかかった。

 もう1つ気になるのは、液晶パネルの汚れや指紋をふき取るマイクロファイバーの裏地だ。確かにこの裏地によって液晶パネルはそれなりに綺麗な状態になるのだが、スタンドにした時は外側、つまり机やテーブルとの設置面となり、机やテーブルのホコリまで吸着して汚れやすい。しかも全ての面が汚れるのではなく、三角錐になった時の決まった1面(1段目か2段目)のみなので、余計に目立ってしまう。気が付いたらまめに軽く叩くなど、掃除するしかなさそうだ。

 このほか注意点としては、マグネットの磁力が、鉄製の机の側面や冷蔵庫のドアに簡単に張り付いてしまうほど強いこと。従ってカードなどが入った財布を近くに置くと、磁気テープの内容が壊れる可能性もある。運用面では注意したい。

【動画】 装着してスリープへ移行。少々乱暴に扱ってもピッタっとあの位置に吸い付くのは凄い

スタンド化。折りたたむ時の様子が「風呂の蓋」と呼ばれる所以

●Digital AVアダプタ

 「Digital AVアダプタ」は、Dockコネクタから「HDMI出力」と「Dockコネクタ」の2つのポートを得られるアダプタだ。これまでDockコネクタを使った映像出力は、「Apple VGAアダプタ」や「AppleコンポーネントAVケーブル」などアナログ系に限られ、AV機器でHDMI入力が一般的になった今、かなり見劣りするスペックだった。それがようやく1080pでのデジタル出力が可能となった。

 使用方法は簡単だ。Digital AVアダプタをDockコネクタに接続、HDMI出力にHDMIケーブルを接続すれば準備完了。この時、もう1つのDockコネクタは、長時間の作動など、バッテリが不安な時にACアダプタを接続したりするのに便利だが、必要が無ければそのままにしておけば良い。

 便利ではあるが、Android機などは(Micro/Miniを含む)HDMI出力を本体に搭載し、直接HDMIケーブルを接続できるので、この方法はタコ足配線のようで見栄えは良くない上に、別途コスト(3,980円)もかかることになるので不満を感じている。

右側をDockコネクタへ、500円玉からも分かるように、結構コンパクトだ左側がHDMI出力、右側は充電用などに使えるDockコネクタiPad 2に挿したところ。HDMIケーブルと、Dockケーブルを接続すると、タコ足配線のようで美しくない

 もう1つの機能として、これまで映像出力できるアプリは、ビデオ、YouTube、他社製対応アプリなどに限られ、その利用範囲も狭かったが、Digital AVアダプタでは「ミラーリング」により、iPad 2の液晶ディスプレイに映っているものが、そのまま音声と共にHDMI出力される。もちろん回転にも対応。実際の動きを動画を使ってまとめたのでご覧頂きたい。

 この時、出力解像度1,920×1,080ドットの16:9に対して、iPad 2は1,024×768の4:3であるため、出力映像の左右に余白ができる。特に縦にした時は表示している面積の方が少ない程だ。ただし、全画面での動画再生においては、表示が1,920×1,080ドットに広がる。いろいろな動画を再生して試したが、iPad 2の動画再生能力はかなり高く、一切コマ落ちすること無く、スムーズに再生された。

【動画】ミラーリング、動画再生の様子。1080p/16:9とiPad 2/4:3の縦横比の関係上、ミラーリングでは左右に余白ができる。全画面の動画再生時のみ、画面全体に広がる

「iPad Camera Connection Kit」のUSBアダプタを使えば、iPhone 4はカメラとして認識されるので簡単に撮影した写真や動画をiPad 2へ取り込める

 ちなみに、先に掲載した動画の後半は、iPhone 4で撮影した写真と動画を素材にし、写真に関しては「CameraKit」で、動画に関しては「CinemaFX for Video」で加工し(時間が間延びするバグがある)、「iPad Camera Connection Kit」のUSBアダプタを使い直接iPad 2へデータを取り込み、iMovieで適当に編集したものだ。

 iPad 2本体で撮影するのはサイズが大きいだけに持ちづらい上に、人から見られると恥ずかしいので、個人的にはiPhone 4で撮った素材を使い編集する方が現実的と思う。また現時点でこの2つのアプリはiPad 2も含むiPadには対応していない。

 iMovieは、iPad 2/iPhone 4/iPod touch(第4世代)のみの対応で、iPadは未対応だ。iPhone 4では時々使って遊んでいたものの、広い画面ではどのような使い勝手なのか興味があった。結論としては、画面が広い分、iPhone 4で編集するよりかなり楽だ。また、できることには大差無いものの、書き出しはiPhone 4の半分程度の時間で終る。

 個人的にはクリップのエフェクト/速度調整、手ぶれ補正などが欲しいところだが、この手の編集ソフトにそこまで要求するのは酷だろうか。今回のように先に各クリップを他のアプリで加工するか、撮影時に手ぶれしないよう、気をつけて撮る必要がある。

 編集後のクオリティは、iPhone 4で撮った割には十分なもの。編集中の画面キャプチャを掲載したので参考にして頂ければと思う。これは普段良く行くカフェへiPhone 4とiPad 2を持ち込み、その場で撮影/編集したもの。PCなしでここまでできれば満足だ。ただ最後は「黒へフェードアウト/ON」にしているのだが、BGMがそれに連動せず「ブッチ」っと切れてしまうのが惜しいところだ。

iMovie起動画面トランジションの設定静止画のKen Burnsエフェクト設定(静止画に動きを付ける)
クリップのトリミングタイトルの入力でき上がったムービーをいろいろなフォーマットで保存

【動画】最終的に1つクリップを入れ替え、1つクリップを追加したバージョン。PCなしでここまでできるのだから結構遊べる

 なお、このDigital AVアダプタは、iPad 2専用ではなく、iPhone 4やiPadでも使用できる。ただし、ミラーリングは機能せず、先に書いた従来アナログ出力に対応していたアプリで、720pのデジタル出力ができるようになる。

 Apple TV+AirPlayは無線で、Digital AVアダプタは有線でと、用途や環境に応じて使い分ければより便利だ。iPhone 4を使っていろいろ試したが、ケーブル1本で、YouTubeなどを大画面の液晶テレビで観れるようになり、思った以上に楽しめた。

●使い込んで気付いた点など

 前回は購入後、標準アプリのみで評価したが、その後、日頃使っているアプリをインストールし普段の環境を作り、これまでiPadでやっていたことをそのままiPad 2へ置き換え数日使ってみた。結果的には前回感じた印象と全く同じで、とにかく起動も作動も速くてスムーズ。この一言に尽きる。

 特に一番使うWebブラウザ(Mobile Safari)は、PCでの描画速度とほとんど変わらなくなりストレスが無い上に、iPadでは、多くのタブを開き、その間の行き来や、他のアプリを動かし、ブラウザに戻った時など、頻繁にページのリロードがかかり、待ち時間が発生していたが、iPad 2を購入してからこれまで、まだ1度もリロードしたことが無く、快適にアクセスできるようになった。これだけでもiPad 2への買い換え動機になるほどだ。

 1点だけ個人的にiPadの方が良かったかなと思うのは、周囲のRの変更によるDockコネクタや電源/ボリュームボタンの操作系だ。Dockコネクタは斜めになっているのでアダプタなどが接続し辛く、各ボタンも押し辛くなったように思う。これに関しては慣れの問題もあるだろうからのんびり付き合うつもりだ。

 全体的な動きが速くなったので、iPad Camera Connection Kitを使ったSDカードからの読み込み、USB経由でPCへの読み込みの転送速度も比較を行なってみた。SDカードへデジタル一眼レフで撮影したデータ(1.11GB/60枚、JPEG+RAW)をコピーしたところ、下表のような結果になった。

【表】iPad Camera Connection Kitを使ったデータ転送速度比較
 iPadiPad 2ThinkPad X201i内蔵
SDカードスロット(参考)
SDカードからの読み込み2:071:441:01
USB経由でのPCへの読み込み1:391:28N/A

 USB経由は変わらないものの、SDカードの読み込みは、ノートPCのメディアスロットからのアクセスと近いものとなり、フォトストレージとしてさらに使いやすくなったことが分かる。

 内蔵している写真アプリは、JPEGはもちろん多くのRAWファーマットにも対応しているので、旅行先などのバックアップ用としては、ネットブックなど性能が低いノートPCを使うよりいろいろな面で使いやすい。しかも安価(もしくは無料)で高性能な画像編集系アプリも豊富だ。このような用途でiPad 2を購入する場合は、32GBや64GBモデルを選ぶといいだろう。

 最後に余談になるが、初代iPadをどうするかだが、ここ1週間iPad 2を使ってみて思ったのは「iPad 2の快適さに慣れてしまうと、もはやiPadの出番は無い」と言うことだ。ただ、一般的には家族や友人に譲ったり、オークションにに出したるするだろうが、筆者の場合はアプリの開発をしている関係上、一定期間(多分2世代前になるまで)はチェック用に手元に無いとまずい。もちろん、使う頻度は非常に低くなり、アプリがある程度できた段階で、作動確認とパフォーマンスチェックをする程度となる。つまり普段はただ机の上に転がっている状態だ。これでは宝の持ち腐れなので、何か良い用途はないかといろいろ探したところ、「DisplayLink」というアプリを発見した。

 この名前、どこかで聞いたことのある方も多いと思うが、USB経由でディスプレイ表示に対応するデバイスやシステムを作っているDisplayLinkが販売しているアプリだ。Wi-Fi経由でiPadがWindowsのセカンダリディスプレイになるアプリ。以前から同種のアプリは何本か出ていたものの、気になったので購入し試すことにした。

 Windows側のドライバはサイトからダウンロードする(現時点ではMac OS Xには未対応)。Windows 7/Vistaは32/64bit、Windows XPは32bit対応。もちろん7とVistaに関してはAeroも対応。ドライバをインストールするとUSB版と同じアイコンがタスクトレイの中に現れ、iPadを縦でも横でも好きな位置でセカンドディスプレイとして設定できる。

 実際の使用感であるが、Wi-Fi経由ということもあって描画には若干遅延が発生し、加えて動画など書き換えの激しいものは満足な性能が得られない。文字や画像中心で参照用として使うのならアリと言ったところ。実際、iPadの液晶パネルはIPSで視野角が広く、発色も数万円程度の液晶ディスプレイよりも正確だ。その点で、写真系のコンテンツを観るのには向いている。ノートPCと組み合わせたり、Wi-Fi接続の特性を活かして、プライマリディスプレイから少し離して置くのもありだ。結構気に入ったので、しばらくこの状態でiPadを使うことにした。

DisplayLinkアプリの設定。Windowsマシンのマシン名を選ぶだけでセカンダリーディスプレイへ変身Windows側の設定は、USBタイプのドライバとほぼ同じ内容使用例。ThinkPad X201iのセカンダリディスプレイとしてiPadを使用中

 以上のように、iPad 2には、iPad Smart CoverやDigital AVアダプタなど、これまでには無かったアクセサリが純正として追加され、さらに使い易く、そして応用の幅が広がった。本体の完成度はもちろんだが、このようなアクセサリもiPad 2の大きな魅力の1つと言えよう。

 本体編、アクセサリ編と、2回に分けてお届けしたiPad 2レビュー。既にiPadを持っているのでiPad 2はパスする予定だった人も、触ってみればiPad 2が欲しくなるのは請け合いだ。