西川和久の不定期コラム

エプソンダイレクト「Endeavor Pro5700」

~Skylake対応でカスタマイズ豊富な高性能デスクトップPC

「Endeavor Pro5700」

 エプソンダイレクト株式会社は9月29日、Endeavor Pro5600の後継機となる「Endeavor Pro5700」を発表し、同日より受注を開始した。Skylakeの搭載に加え、Windows 10にも対応したモデルだ。試用する機会を得られたので、レビューをお届けしたい。

Skylakeを搭載しフルBTO可能

 2014年8月19日発表の前モデル「Endeavor Pro5600」は、Haswell Refreshに対応し、Core i3-4150や、i5-4460、i7-4790Kなどを搭載可能なカスタマイズ性の高いデスクトップPCだった。ケースの形状が特徴的なので、覚えている方もいるだろう。

 そして今回、約1年ぶりに新モデル「Endeavor Pro5700」が発表された。キーワードは、Skylake、Z170チップセット、PCI Express x4接続のM.2 SSD、Windows 10対応。ケースはそのまま、中身を一新したモデルとなる。

 BTOに対応しているので、いろいろな構成に変更可能だが、今回試用した実機の主な仕様は以下の通り。

【訂正】価格を正しいものに修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。

「Endeavor Pro5700」の仕様
CPUIntel Core i7-6700K(4コア8スレッド、4GHz~4.2GHz、TDP 91W)
チップセットIntel Z170
メモリ32GB/DDR4-2133 SDRAM(8GB×4)
ストレージPCI Express x4 M.2 SSD 256GB
光学ドライブBDドライブ
OSWindows 10 Home(64bit)
グラフィックスGeForce GTX 970(GDDR5 4GB)
ネットワークGigabit Ethernet
インターフェイスPS/2×2、USB 2.0×3(前面1、背面2)、USB 3.0(前面×2/背面×4)、マルチカードリーダ、DisplayPort×1、HDMI×1、DVI×2、音声入出力、
拡張スロットPCI Express x16×2(空き1)、PCI Express x4×1、PCI×1
オプション拡張スロットPCI Express x1×2またはPCI×2
ストレージベイ5インチオープンベイ×3(空き2)、3.5インチシャドウ×1(空き0)、3.5インチ前面アクセスベイ×4
電源650W
サイズ/重量217×500×471mm(幅×奥行き×高さ、キャリングハンドル込み)/約16.7kg
価格(本体のみ)約329,000円

 プロセッサはSkylakeキテクチャのIntel Core i7-6700K。4コア8スレッドでクロックは4GHzから最大4.2GHz。キャッシュは8MB、TDPは91W。末尾にKがあるので、オーバークロック対応SKUだ。チップセットIntel Z170 Expressなので、ハードウェア自体はオーバークロック可能だがメーカー保証対象外となっている。

 メモリはDDR4-2133 SDRAMの8GBを4枚搭載し計32GB。メモリスロットが4つなので空きはゼロ。ストレージのPCI Express x4 M.2 SSDは、マザーボード上にコネクタがあるわけではなく、PCI Express x4へのアドオンカードの形で装着しており、容量は256GB。光学ドライブはBDドライブ。OSは64bit版のWindows 10 Home。

 グラフィックス機能は、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 530ではなく、GeForce GTX 970(4GB/GDDR5)を搭載。ハイエンドタイプのビデオカードで、Maxwellアーキテクチャを採用する。CUDAコア数は1,664基、DirectX 12、OpenGL 4.4などに対応している。出力はDisplayPort×1、HDMI×1、DVI×2を装備。

 インターフェイスは、PS/2×2、USB 2.0(前面×1/背面×2)、USB 3.0(前面×2/背面×4)、Gigabit Ethernet、マルチカードリーダ、音声入出力などと割とシンプルだ。USB 3.1(Type-C)には非対応。

 拡張スロットは、PCI Express x16×2(空き1)、同x4×1(空き0)、PCI×1に加えて、PCI×2またはPCI Express x1×2のどちらかを選択可能。これは、マザーボード上にドングルのように実装する仕組みで実現しているのだが、なかなか面白い仕掛けだ。

 PCI Express x16に挟まれているPCIは、2レーンを占有するGeForce GTX 970が上を塞ぐので実際は使用できない。

 ストレージベイは5インチオープンベイ×3(空き2)、3.5インチシャドウ×1(空き0)、3.5インチ前面アクセスベイ×4。本機では5インチオープンベイ1つをBDドライブ、3.5インチシャドウにマルチカードリーダを装着している。電源は650Wだ。

 寸法はキャリングハンドル込みで217×500×471mm(幅×奥行き×高さ)、重量約16.7kg。価格は基本構成(Windows 10 Home、Core i5-6500、4GB、HDD 500GB、650W電源時)で税別164,000円。今回の構成だと約200,000円となる。

内部
扉の写真の状態から補助ゲージとGTX 970を外したところ。PCI Express x16の間にPCIがあるのが分かる。一番下のPCI Express x1×2は拡張コネクタから延長された別基板だ。オプションでPCI×2も選択できる
前面部
上からBDドライブ、空きパネル、各種ポート、パネルの下にマルチカードリーダ、HDD前面アクセス
前面インターフェイス
電源ボタン、音声入出力、USB 2.0、USB 3.0×2、マルチカードリーダ
HDD前面アクセス
4つの3.5ドライブを装着可能。上下のレバーをつまめば簡単に外すことができる
内部(CPU周辺)
メモリスロットは4つ。8GB×4の計32GBが装着されている。CPUクーラーは思ったほど大きくない
背面
電源ユニットのみネジ止めだが、そのほか主要な部分にネジがないことが分かる
背面(アップ)
バックパネルはPS/2×2、マザーボード側の映像出力は未使用。USB 3.0×4、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、音声入出力などがある。GeForce GTX 970はDisplayPort×1、HDMI×1、DVI×2を備える。
PCI Express x4 M.2 SSDとアダプタ
マザーボードにM.2コネクタがなく、PCI Express x4のカードの上にM.2 SSDが載っている
GeForce GTX 970
ファンは1つ。外部供給の電源は2つ。2スロットを占有する
付属品
PS/2接続のマウスとキーボード。DVI→ミニD-Sub15ピンとDisplayPort→DVIの変換アダプタ
BIOS/Mainメニュー
SATAは計6ポート。NVMeの設定が用意されているのが分かる
BIOS/Advancedメニュー
Z170搭載のゲーミングマザーほどは細かく調整できなそうだ

 下記のように、本製品のBTOによるカスタマイズ性はかなり高い。OSは、Windows 10 Home/Pro 64bit、Windows 7 Professional 32/64bitから選ぶことができる。

 プロセッサは、Intel Core i7-6700K(4GHz)/6700(3.4GHz)、Core i5-6600(3.3GHz)/6500(3.2GHz)。倍率がアンロックされたKタイプのCPUも選べるが、先に書いた通りオーバークロック動作(設定は可能)は保証外となる。

 グラフィックス機能は、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 530、Radeon R7 240、GeForce GTX 750、GeForce GTX 970、CAD/CG用としてQuadro K620、Quadro K2200、Quadro K4200も選択可能だ。

 メモリは、4/8/16/32/64GBのいずれかで、全てDDR4-2133となる。ただし32bit OS選択時は4GBのみの選択となる。

 ストレージは、HDD 500GB/1TB/2TB、SATA SSD 128GB/256GB/512GB/1TB、PCI Express x4 M.2 SSD 128GB/256GB/512GB、RAID 1キット(HDD 500GB×2/1TB×2/2TB×2)、RAID 10キット(HDD 2TB×4)。システムドライブをSSDにして、データドライブをHDDによるRAID構成にすることも可能。

 光学ドライブはDVD-ROM(再生ソフト付き)、DVD-ROM(再生ソフトなし)、DVDスーパーマルチドライブ、BDドライブ。そして電源も650Wと1,000Wを選べる。ここまで選択可能だと、まるで自作PCをメーカーに作ってもらっているようだ。

 筐体は以前のモデルでも使用されたキャリングハンドルや3.5インチドライブ用の前面アクセスベイ、ツールレス設計などが特徴的なケースを流用している。非常に扱いやすい反面、217×500×471mm(幅×奥行き×高さ、キャリングハンドル込み)、重量約16.7kgと、大きく重い。

 前面にはUSB 2.0×1、USB 3.0×2、音声入出力、マルチカードリーダ、BDドライブを装備。マルチカードリーダはパネルの下に隠れているので、見た目はスッキリしている。

 3.5インチドライブ用の前面アクセスベイはEndeavorのロゴが書かれている部分の裏にレバーがあり、それを押さえて手前に引っ張ると簡単にアクセスできる。

 背面には、PS/2×2、USB 2.0×2、USB 3.0×4、Gigabit Ethernet、音声入出力。バックパネルの映像出力系は今回未使用で、GTX 970側にDisplayPort×1、HDMI×1、DVI×2がある。

 振動や発熱は気にならないレベル。CPU温度もPCMark 8 バージョン2の結果によると最大で62℃ほど。ノイズは、さすがにこの構成なので少しうるさいかと思ったが、ベンチマークテスト時でも低い音でブーンと鳴る程度で、机の下に設置するのであれば問題ない範囲に収まっている。

 製品資料によると、通常消費電力が前モデルと比較して650W電源搭載時で40.3W→26.8W、1,000W電源搭載時で58.3W→33.3Wと、かなり下がっているのも要因の1つだと思われる。

 拡張性はドライブに関してはこれだけあれば問題なく、電源にも余裕があるのでさらに強力なディスクリートGPUも搭載可能。拡張スロットの空きは、PCI Express x16が1つと、PCI Express x1が2つ。この範囲に収まるカードであれば追加可能だ。

NVMe M.2 SSDとGTX 970でwinsat formal 総合8.5の高性能

 OSは64bit版のWindows 10 Home。Core i7-6700K、メモリ32GB、PCI Express x4 M.2接続のSSD、そしてGeForce GTX 970搭載と、性能的に文句なしの構成。何をしても爆速だ。

 初期起動時のスタートメニューやデスクトップはほぼ素の状態。壁紙が変更され、ショートカットが若干並んでいる程度となる。

 PCI Express x4 M.2 SSDは256GB「NVMe SAMSUNG MZVPV256」。これはPCI Express 3.0 x4接続、NVMe(Non-Volatile Memory Express)プロトコルを採用した超高速SSDだ。後述するベンチマークテストをご覧いただきたいが、シーケンシャルリードは2,000MB/sec、同ライトは1,000MB/sec越えと、とんでもない速度が出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約237GBが割り当てられ、空きは204GB。

 BDドライブは「PIONEER BD-RW BDR-209M」、Gigabit Ethernetは「Intel Ethernet Connection I219-V」が使われている。

スタート画面(タブレットモード)
Windows 10標準
起動時のデスクトップ
壁紙の変更といくつかのショートカットを配置
デバイスマネージャ/主要なデバイス
PCI Express x4 M.2 SSDは256GB「NVMe SAMSUNG MZVPV256」。BDドライブは「PIONEER BD-RW BDR-209M」、Gigabit Ethernetは「Intel Ethernet Connection I219-V」
ストレージのパーティション
C:ドライブのみの1パーティションで約237GBが割り当てられている

 インストール済みのソフトウェアは、Windowsストアアプリはなく、デスクトップアプリは、Nero Express Essential、CyberLlink PowerDVD 12と、IntelやNVIDIAのツール系とシンプル。個人的には無駄にソフトが入っているよりはこの方が望ましい。

Nero Express Essential
CyberLlink PowerDVD 12
NVIDIAコントロールパネル

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、ディスクリートGPU搭載機なので3DMarkの結果を見たい。もちろんCrystalDiskMarkの値も掲載した。

 winsat formalの結果は、総合 8.5。プロセッサ 8.5、メモリ 8.5、グラフィックス 8.8、ゲーム用グラフィックス 9.9、プライマリハードディスク 9.2。メモリのバンド幅は27623.76716MB/secと、一般的なDDR3の倍以上出ている。

「winsat formal」コマンド結果
総合 8.5。プロセッサ 8.5、メモリ 8.5、グラフィックス 8.8、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 9.2

 PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは4936。3DMarkはIce Storm 175448、Cloud Gate 28528、Fire Strike 9765。

PCMark 8 バージョン2/Home accelerated
「4936」
PCMark 8 バージョン2/Home accelerated(詳細)
プロセッサのクロックは約800MHz~4GHz、温度は約24~62℃

 winsat formalのプライマリハードディスク9.2は初めて目にするスコア。PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは5千手前。3DMarkのFire Strike、最後の戦闘シーンは、普通ならコマ送りになるが、20fps前後で収まり、それなりに楽しめる。

3DMark
Ice Storm 175448、Cloud Gate 28528、Fire Strike 9765

 CrystalDiskMarkは、シーケンシャル(Q32T1)リードが2,215MB/sec、同ライト1,243MB/sec。ランダム(4K Q32T1)リード747.8MB/sec、同ライト382.6MB/sec。シーケンシャルリード1,578MB/sec、同ライト1,237MB/s。ランダム(4K)リード51.71MB/s、同ライト195.6MB/sec。これまで見たことのない値となった。

CrystalDiskMark
シーケンシャル(Q32T1)リードが2,215MB/sec、同ライト1,243MB/secと、SATAのSSDと比べると何倍も高速

 参考までに筆者が所有するCore i5-6600K+SSD 120GBマシンのwinsat formalは、総合 6.8。プロセッサ 8.2、メモリ 8.2、グラフィックス 6.8、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.15。グラフィックスは内蔵Intel HD Graphics 530なのでかなり劣るのは仕方なく、プロセッサとメモリは-0.3ポイント。

 CrystalDiskMarkは、シーケンシャル(Q32T1)のリードが550.5MB/sec、同ライトは519.4MB/sec。ランダム(4K Q32T1)のリードが366.2MB/sec、同ライトは341.1MB/sec。シーケンシャルリード497MB/sec、同ライト472.9MB/sec。ランダム(4K)リード38.17MB/sec、同ライト134.5MB/sec。本機と比較すると、シーケンシャル(Q32T1)のリードで約4倍、同ライトで約2倍の差がある。同じSSDでもこれだけ違うと別世界だ。全体的にかなりの高性能機であり、何をするにも快適に操作できる。


 以上のようにエプソンダイレクト「Endeavor Pro5700」は、Skylakeを搭載したBTO対応デスクトップPCだ。特に今回試用した構成は、Core i7-6700K、GeForce GTX 970、PCI Express x4 M.2 SSDと、組合せ可能な範囲としては最速となっており、そのパワーが十分体感できた。にも関わらず、前のモデルと比較して通常消費電力がかなり下がっているのも魅力的だ。

 唯一USB 3.1非対応なのは残念な部分だが、大手メーカー製で豊富なBTO構成を実現可能なデスクトップPCを探しているユーザーにお勧めのモデルと言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/