西川和久の不定期コラム

HP「ZBook 14 Mobile Workstation」

~AMD FirePro M4100を搭載したワークステーションUltrabook

HP「ZBook 14 Mobile Workstation」

 HPは2013年9月11日に世界初のワークステーションUltrabookを発表した。国内での発売は2013年12月中旬だったこともあり、先日編集部から実機が送られて来た。ワークステーションのパワーを持つUltrabook、興味津々での試用レポートをお届けする。

Ultabookの筐体にAMD FirePro M4100を搭載

 この「ZBook 14 Mobile Workstation」は、用途や予算に応じて部分的に構成を変更可能になっており、プロセッサはCore i7-4600U/i5-4300U/i5-4200U、ディスプレイは1,366×768ドット、1,600×900ドット(タッチ対応あり)、1,920×1,080ドット。ストレージは320GB~1TBのHDD、または120~512GBのSSD。無線LANはIEEE 802.11acも用意されている。今回届いた実機の仕様は以下の通り。

HP「ZBook 14 Mobile Workstation」の仕様
プロセッサCore i7-4600U(2コア/4スレッド、
クロック 2.1GHz/Turbo Boost 3.3GHz、
キャッシュ4MB、TDP 15W)
チップセットIntel QM87 Express
メモリ8GB(DDR3L SDRAM/1,600 MHz、
SO-DIMM×2)/最大16GB
ストレージHDD 500GB
OSWindows 7 Professional SP1(64bit)
ディスプレイ14型液晶(非光沢)、1,920×1,080ドット
グラフィックスIntel HD Graphics 4400、
AMD FirePro M4100(1GB)、
ミニD-Sub15ピン、DisplayPort
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
その他USB 3.0×4、720p対応Webカメラ、音声入出力、
SDカードリーダ、スマートカードリーダ、指紋センサー
サイズ/重量339×237×21mm(幅×奥行き×高さ/最薄部)/約1.7kg
バッテリ駆動時間未公表
直販価格20万円前後

 プロセッサはCore i7-4600U。2コア4スレッドでクロックは2.1GHz。Turbo Boost時3.3GHzまで上昇する。型番から分かるようにHaswellだ。チップセットは、Intel QM87 Express。メモリは2スロットあり8GB×1で最大16GBまでの対応する。ストレージは500GBのHDD。

 今回OSは、64bit版のWindows 7 Professional SP1を搭載しているが、64bit版のWindows 8/8 Pro、32bit版のWindows 7 Professional、SUSE Linux Enterprise Desktop 11、FreeDOSにも対応している。

 グラフィックスは、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 4400に加え、AMD FirePro M4100(1GB)を搭載。「AMD Dynamic Switchable Graphics」を採用し、Intel HD Graphics 4400とシームレスに切替えることが可能だ。出力は、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort。

 AMD FirePro M4100は、モバイルワークステーション用GPUの位置付けであり、M6100/M5100/M4100のSKUが用意されている。エンジンクロックは順に1,075MHz/725MHz/1,075MHz、メモリはGDDR5で最大2GB、メモリクロック(帯域幅)は1.375GHz(88GB/sec)/1.125GHz(72GB/sec)/670MHz(64GB/sec)。DirectX 11.1や「AMD Eyefinity Multidisplay Technology」、「AMD App Acceleration」、「AMD Power Management Technologies」、「AMD HD3D Technology」などに対応している。

 なお詳細なスペックはここを参考にして欲しい(現在日本語のページは用意されていない)。

 液晶ディスプレイは、非光沢の14型液晶パネルを搭載し、解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。ただしタッチには非対応だ。

 ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n。Bluetooth 4.0も搭載している。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×4(内1つはPowered)、720p対応Webカメラ、音声入出力、SDカードリーダ、スマートカードリーダ、指紋センサー。14型のUltrabookなので厚みに少し余裕があり、全てフルサイズで装備しているのは嬉しいポイントと言えよう。

 サイズは339×237×21mm(幅×奥行き×高さ/最薄部)、重量約1.7kg。加えて米国防省のMIL-STD-810Gにも準拠している。直販価格は20万円前後となる。

 以上からも分かるように、プロセッサやメモリ、そしてインターフェイス関連は、一般的なUltrabookと変わりなく、特徴はAMD FirePro M4100を搭載していること、強固なセキュリティ、非光沢パネルが挙げられるだろう。

前面。正面側面左側にステータスLED、液晶パネル上中央に720p対応Webカメラ
斜め後ろから。バッテリを内蔵しているため、後ろはスッキリしている
下面。レバーをスライドするだけで、簡単にパネルを外せる。メモリやHDDの追加・交換も容易だ。左上の広い凹みがバッテリスペース。右端中央部分にSDカードリーダ
左側面。ロックポート、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×2(左側はPowered)、Smart Cardリーダ
キーボード。アイソレーションタイプで、ポイントスティックもあり、左右のボタンがタッチパッドの上と下、2カ所に配置してある。Intelシールの右側に指紋センサー
右側面。電源入力、ドッキングコネクタ、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2、DisplayPort、音声入出力
後ろ側面の刻印がカッコいい。これまで同社のノートPCは、数多く試用したものの、この位置に“HEWLETT-PACKARD”の刻印があるのは見たことがない
キーピッチ。実測で約19mm。しっかりしたキーボードで好印象
バッテリとACアダプタ。120×55×20mm(幅×奥行き×高さ、突起物含まず)、重量155g。ACアダプタと本体をつなぐケーブルがセパレートになっている

 筐体はマグネシウム合金やアルミニウムが使われ高級感がある。米国防省のMIL-STD-810Gに準拠している関係もあり、非常にしっかり(ガッチリ)した印象だ。重量は実測で1,825gとスペックより若干重く、持ち歩くには(個人差もあるだろうが)ギリギリと言ったところか。

 正面の左寄りにステータスLED、液晶パネル上中央に720p Webカメラ。左サイドにはロックポート、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×2、Smart Cardリーダ。USB 3.0の奥側はPoweredだ。右側面には電源入力、ドッキングコネクタ、Ehternet、USB 3.0×2、DisplayPort、音声入出力を配置。またDisplayPortの裏側辺りにSDカードリーダがある。

 付属のACアダプタは、サイズ約120×55×20mm(幅×奥行き×高さ、突起物含まず)、重量155g。本体へ接続するケーブルがセパレートになっている。

 底面は1枚の大きなパネルで覆われ、奥中央にあるレバーをスライドすると簡単に外すことが可能だ。HDDやメモリの変更・追加は容易に行なえる上、内蔵しているバッテリも着脱可能で、交換もできる。

 14型の液晶パネルは非光沢で映り込みも少なく非常に見やすい。明るさコントラスト、そして発色も良好。またIPS式かどうかは明記されていないので不明であるが、視野角も結構広く快適だ。

 キーボードはアイソレーションタイプでしっかりした作りでたわみも無く好印象。パームレストも広く、右側に指紋センサーを配置している。面白いのはポイントスティックとタッチパッド、2種類のポインティングデバイスを搭載していることだろう。左右のボタンも前者用と後者用でパッドの上下に1組ずつ付いている。

 サウンドは、用途が用途なので、それなりと思っていたが、これは間違いだった。最大出力も十分あり、中域中心でマイルドな聴きやすい音質だ。全体的に妥協した部分は無く、同社のこだわりが感じられる。

1桁違うグラフィックスパワー

 OSは64bit版Windows 7 Professional SP1。Windows 8/8 Proも選択可能だ。デスクトップは壁紙の変更、左に若干のショートカットと、右上にウィジェットとスッキリまとまっている。この辺りは、ワークステーションと言うこともあり、意図的に調整していると思われる。

 ただタスクトレイに常駐しているシステム系のツールは、「HP Client Security Manager」、「インテル スマート・コネクト・テクノロジー」、「DTS Audio」、「HP 3D DriveGuard」、「HP Connection Manager」、「HP Support Assistant」、「Microsoft Security Essentials」など計13本と多め。

 HDDは500GB/7,200rpm/16MBの東芝「MK5061GSYN」。実質C:ドライブのみの1パーティションで約452GBが割り当てられ、空きは418GB。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはIntel製だ。そのほか、TPM 1.2も搭載しているのが分かる。

起動時のデスクトップ。ワークステーションを意識してか、左に若干のショートカットと、右上にウィジェットとスッキリまとまっている
デバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは500GB/7200rpm/16MBの東芝「MK5061GSYN」。GbE、Wi-Fi、BluetoothはIntel製。TPM 1.2も搭載している
HDDのパーティション。実質C:ドライブのみの1パーティションで約452GBが割り当てられている

 プリインストール済のソフトウェアは、「CyberLink PowerDVD 12」、「CyberLink YouCam」、「HP 3D DriveGuard」、「HP Client Security Manager」、「HP Connection Manager」、「HP Device Access Manager」、「HP Performance Advisor」、「HP Software Setup」、「HP Support Assistant」、「HP Support Information」、「HP File Sanitizer」、「HP Trust Circles」など。

 アプリケーション的なのはCyberLink系だけで、ほとんど同社のツール系で構成されている。UIはWindowsストアアプリを意識してか、フラットデザインになっているものが多い。また(当然の話だが)HP Client Security Managerを始めとする多くのツールは、Windowsのパスワードを設定しないと動かない仕掛けになっている。

HP Connection Manager
HP Support Assistant
HP Client Security Manager
HP Trust Circles
HP File Sanitizer
AMD Catalyst Control Center

 ベンチマークテストはWindows 7なので「Windows エクスペリエンス インデックス」と、PCMark 7、そしてBBenchの結果を見たい。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア4スレッドと条件的には問題ない)。

 Windows エクスペリエンス インデックスの結果は、総合 5.9。プロセッサ 7.2、メモリ 7.2、グラフィックス 6.7、ゲーム用グラフィックス 6.7、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7 4917。CrystalMarkは、ALU 45909、FPU 46855、MEM 31661、HDD 27196、GDI 14540、D2D 6001、OGL 128458。

 ストレージがHDDなので、全体の足を引っ張っているものの、OGLは桁違いに速く、またPCMark 7もHDDだとスコアが上がりにくいにも関わらず、このスコアが出ているのは、AMD FirePro M4100のパワーが効いている証拠だろう。

 BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で29,970秒/8.3時間。BBenchの場合、Intel HD Graphics 4400で作動しているため、一般的なHaswell搭載ノートPCと同クラスの駆動時間となった。バッテリが着脱可能なので、予備を1つ持てば(267gと比較的軽い)、丸1日作業できそうだ。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 5.9。プロセッサ 7.2、メモリ 7.2、グラフィックス 6.7、ゲーム用グラフィックス 6.7、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 7のスコアは4917
BBench。省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。残5%で29,970秒/8.3時間
CrystalMark。ALU 45909、FPU 46855、MEM 31661、HDD 27196、GDI 14540、D2D 6001、OGL 128458

 以上のようにHP「ZBook 14 Mobile Workstation」は、14型のUltrabookにAMD FirePro M4100のパワーを詰め込んだモバイルワークステーションだ。加えて、筐体の作り、キーボード、ポインティングデバイスからサウンドまで十分に吟味され、非常に魅力のあるUltrabookに仕上がっている。

 用途が用途なだけに価格が20万円前後と高価なのは残念だが、プロ向けディスクリートGPUを搭載したUltrabookは数少ない。グラフィックス制作環境を持ち歩きたいユーザーにはもってこいの1台になるだろう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/