西川和久の不定期コラム
HP「ZBook 14 Mobile Workstation」
~AMD FirePro M4100を搭載したワークステーションUltrabook
(2014/1/27 06:00)
HPは2013年9月11日に世界初のワークステーションUltrabookを発表した。国内での発売は2013年12月中旬だったこともあり、先日編集部から実機が送られて来た。ワークステーションのパワーを持つUltrabook、興味津々での試用レポートをお届けする。
Ultabookの筐体にAMD FirePro M4100を搭載
この「ZBook 14 Mobile Workstation」は、用途や予算に応じて部分的に構成を変更可能になっており、プロセッサはCore i7-4600U/i5-4300U/i5-4200U、ディスプレイは1,366×768ドット、1,600×900ドット(タッチ対応あり)、1,920×1,080ドット。ストレージは320GB~1TBのHDD、または120~512GBのSSD。無線LANはIEEE 802.11acも用意されている。今回届いた実機の仕様は以下の通り。
HP「ZBook 14 Mobile Workstation」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i7-4600U(2コア/4スレッド、 クロック 2.1GHz/Turbo Boost 3.3GHz、 キャッシュ4MB、TDP 15W) |
チップセット | Intel QM87 Express |
メモリ | 8GB(DDR3L SDRAM/1,600 MHz、 SO-DIMM×2)/最大16GB |
ストレージ | HDD 500GB |
OS | Windows 7 Professional SP1(64bit) |
ディスプレイ | 14型液晶(非光沢)、1,920×1,080ドット |
グラフィックス | Intel HD Graphics 4400、 AMD FirePro M4100(1GB)、 ミニD-Sub15ピン、DisplayPort |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 3.0×4、720p対応Webカメラ、音声入出力、 SDカードリーダ、スマートカードリーダ、指紋センサー |
サイズ/重量 | 339×237×21mm(幅×奥行き×高さ/最薄部)/約1.7kg |
バッテリ | 駆動時間未公表 |
直販価格 | 20万円前後 |
プロセッサはCore i7-4600U。2コア4スレッドでクロックは2.1GHz。Turbo Boost時3.3GHzまで上昇する。型番から分かるようにHaswellだ。チップセットは、Intel QM87 Express。メモリは2スロットあり8GB×1で最大16GBまでの対応する。ストレージは500GBのHDD。
今回OSは、64bit版のWindows 7 Professional SP1を搭載しているが、64bit版のWindows 8/8 Pro、32bit版のWindows 7 Professional、SUSE Linux Enterprise Desktop 11、FreeDOSにも対応している。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 4400に加え、AMD FirePro M4100(1GB)を搭載。「AMD Dynamic Switchable Graphics」を採用し、Intel HD Graphics 4400とシームレスに切替えることが可能だ。出力は、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort。
AMD FirePro M4100は、モバイルワークステーション用GPUの位置付けであり、M6100/M5100/M4100のSKUが用意されている。エンジンクロックは順に1,075MHz/725MHz/1,075MHz、メモリはGDDR5で最大2GB、メモリクロック(帯域幅)は1.375GHz(88GB/sec)/1.125GHz(72GB/sec)/670MHz(64GB/sec)。DirectX 11.1や「AMD Eyefinity Multidisplay Technology」、「AMD App Acceleration」、「AMD Power Management Technologies」、「AMD HD3D Technology」などに対応している。
なお詳細なスペックはここを参考にして欲しい(現在日本語のページは用意されていない)。
液晶ディスプレイは、非光沢の14型液晶パネルを搭載し、解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。ただしタッチには非対応だ。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n。Bluetooth 4.0も搭載している。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×4(内1つはPowered)、720p対応Webカメラ、音声入出力、SDカードリーダ、スマートカードリーダ、指紋センサー。14型のUltrabookなので厚みに少し余裕があり、全てフルサイズで装備しているのは嬉しいポイントと言えよう。
サイズは339×237×21mm(幅×奥行き×高さ/最薄部)、重量約1.7kg。加えて米国防省のMIL-STD-810Gにも準拠している。直販価格は20万円前後となる。
以上からも分かるように、プロセッサやメモリ、そしてインターフェイス関連は、一般的なUltrabookと変わりなく、特徴はAMD FirePro M4100を搭載していること、強固なセキュリティ、非光沢パネルが挙げられるだろう。
筐体はマグネシウム合金やアルミニウムが使われ高級感がある。米国防省のMIL-STD-810Gに準拠している関係もあり、非常にしっかり(ガッチリ)した印象だ。重量は実測で1,825gとスペックより若干重く、持ち歩くには(個人差もあるだろうが)ギリギリと言ったところか。
正面の左寄りにステータスLED、液晶パネル上中央に720p Webカメラ。左サイドにはロックポート、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×2、Smart Cardリーダ。USB 3.0の奥側はPoweredだ。右側面には電源入力、ドッキングコネクタ、Ehternet、USB 3.0×2、DisplayPort、音声入出力を配置。またDisplayPortの裏側辺りにSDカードリーダがある。
付属のACアダプタは、サイズ約120×55×20mm(幅×奥行き×高さ、突起物含まず)、重量155g。本体へ接続するケーブルがセパレートになっている。
底面は1枚の大きなパネルで覆われ、奥中央にあるレバーをスライドすると簡単に外すことが可能だ。HDDやメモリの変更・追加は容易に行なえる上、内蔵しているバッテリも着脱可能で、交換もできる。
14型の液晶パネルは非光沢で映り込みも少なく非常に見やすい。明るさコントラスト、そして発色も良好。またIPS式かどうかは明記されていないので不明であるが、視野角も結構広く快適だ。
キーボードはアイソレーションタイプでしっかりした作りでたわみも無く好印象。パームレストも広く、右側に指紋センサーを配置している。面白いのはポイントスティックとタッチパッド、2種類のポインティングデバイスを搭載していることだろう。左右のボタンも前者用と後者用でパッドの上下に1組ずつ付いている。
サウンドは、用途が用途なので、それなりと思っていたが、これは間違いだった。最大出力も十分あり、中域中心でマイルドな聴きやすい音質だ。全体的に妥協した部分は無く、同社のこだわりが感じられる。
1桁違うグラフィックスパワー
OSは64bit版Windows 7 Professional SP1。Windows 8/8 Proも選択可能だ。デスクトップは壁紙の変更、左に若干のショートカットと、右上にウィジェットとスッキリまとまっている。この辺りは、ワークステーションと言うこともあり、意図的に調整していると思われる。
ただタスクトレイに常駐しているシステム系のツールは、「HP Client Security Manager」、「インテル スマート・コネクト・テクノロジー」、「DTS Audio」、「HP 3D DriveGuard」、「HP Connection Manager」、「HP Support Assistant」、「Microsoft Security Essentials」など計13本と多め。
HDDは500GB/7,200rpm/16MBの東芝「MK5061GSYN」。実質C:ドライブのみの1パーティションで約452GBが割り当てられ、空きは418GB。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはIntel製だ。そのほか、TPM 1.2も搭載しているのが分かる。
プリインストール済のソフトウェアは、「CyberLink PowerDVD 12」、「CyberLink YouCam」、「HP 3D DriveGuard」、「HP Client Security Manager」、「HP Connection Manager」、「HP Device Access Manager」、「HP Performance Advisor」、「HP Software Setup」、「HP Support Assistant」、「HP Support Information」、「HP File Sanitizer」、「HP Trust Circles」など。
アプリケーション的なのはCyberLink系だけで、ほとんど同社のツール系で構成されている。UIはWindowsストアアプリを意識してか、フラットデザインになっているものが多い。また(当然の話だが)HP Client Security Managerを始めとする多くのツールは、Windowsのパスワードを設定しないと動かない仕掛けになっている。
ベンチマークテストはWindows 7なので「Windows エクスペリエンス インデックス」と、PCMark 7、そしてBBenchの結果を見たい。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア4スレッドと条件的には問題ない)。
Windows エクスペリエンス インデックスの結果は、総合 5.9。プロセッサ 7.2、メモリ 7.2、グラフィックス 6.7、ゲーム用グラフィックス 6.7、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7 4917。CrystalMarkは、ALU 45909、FPU 46855、MEM 31661、HDD 27196、GDI 14540、D2D 6001、OGL 128458。
ストレージがHDDなので、全体の足を引っ張っているものの、OGLは桁違いに速く、またPCMark 7もHDDだとスコアが上がりにくいにも関わらず、このスコアが出ているのは、AMD FirePro M4100のパワーが効いている証拠だろう。
BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で29,970秒/8.3時間。BBenchの場合、Intel HD Graphics 4400で作動しているため、一般的なHaswell搭載ノートPCと同クラスの駆動時間となった。バッテリが着脱可能なので、予備を1つ持てば(267gと比較的軽い)、丸1日作業できそうだ。
以上のようにHP「ZBook 14 Mobile Workstation」は、14型のUltrabookにAMD FirePro M4100のパワーを詰め込んだモバイルワークステーションだ。加えて、筐体の作り、キーボード、ポインティングデバイスからサウンドまで十分に吟味され、非常に魅力のあるUltrabookに仕上がっている。
用途が用途なだけに価格が20万円前後と高価なのは残念だが、プロ向けディスクリートGPUを搭載したUltrabookは数少ない。グラフィックス制作環境を持ち歩きたいユーザーにはもってこいの1台になるだろう。