西川和久の不定期コラム
日本HP「ZBook 14 G2 Mobile Workstation」
~AMD FirePro M4150を搭載した14型フルHDモバイルワークステーション!
(2015/7/13 06:00)
日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は4月15日、AMD FirePro M4150を搭載した14型軽量モバイルワークステーション「ZBook 14 G2 Mobile Workstation」を発表した。前モデルに相当する「ZBook 14 Mobile Workstation」の国内販売が、2013年12月中旬だったので、約1年半ぶりの新モデルとなる。編集部から実機が送られてきたので、前モデルと比較しつつ、試用レポートをお届けしたい。
BroadwellなCore i7とAMD FirePro M4150を搭載
ちょうど前モデルに相当する「ZBook 14 Mobile Workstation」も筆者が試用していたため、当時の原稿から仕様やベンチマークテストの結果を新型「ZBook 14 G2 Mobile Workstation」と比較するのが容易だ。
CPUブランドは同じCore i7だが、アーキテクチャはHaswellからBroadwellへ世代交代。ストレージが500GB HDDからSSD 256GB(M.2)へと大幅な性能向上、そしてグラフィックスがAMD FirePro M4100からAMD FirePro M4150へ……と言うのが主な違いとなる。ストレージの差が大きいため体感速度は全く別物になるのは容易に想像できる。主な仕様は以下の通り。
HP「ZBook 14 G2 Mobile Workstation」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i7-5600U(2コア/4スレッド、クロック 2.6GHz/3.2GHz、キャッシュ4MB、TDP 15W) |
メモリ | 16GB DDR3L-1600(8GB×2)/2スロット(空き0)/最大16GB |
ストレージ | SSD 256GB(M.2) |
OS | Windows 7 Professional Service Pack 1(64bit) |
ディスプレイ | 14型1,920×1,080ドット(非光沢)液晶、タッチ非対応 |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5500、AMD FirePro M4150(1GB GDDR5)、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、Intel Dual Band Wireless-AC 7265 802.11a/b/g/n/ac + Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB 3.0×4(内1つPowered USB)、スマートカードリーダ、SDカードスロット、720p HD Webカメラ、音声入出力、指紋認証センサー |
バッテリ駆動時間 | 最大約10時間(3セルリチウムイオン) |
サイズ/重量 | 339×237×21mm(幅×奥行き×高さ)/約1.7kg |
HP Directplus価格 | 238,000円から(税別/送料別)。※現在キャンペーンで2万円引きの218,000円から。メモリ16GB仕様は+12,000円 |
プロセッサはBroadwellなCore i7-5600U。2コア4スレッドでクロックは2.6GHzから最大3.2GHz。キャッシュは4MB、TDPは15W。メモリは標準で8GB/DDR3L-1600×1。2スロットあるため最大16GB。+8GBのカスタマイズが可能で+1.2万円(税別)だ(手元に届いたマシンは16GB仕様だった)。ストレージは、M.2接続の256GB SSD、「HP Z Turbo Drive 256GB」を搭載している。また2.5インチHDD 500GB/7,200rpmを+4千円(税別)で追加可能だ。
OSは64bit版のWindows 7 Professional(SP1)。これはワークステーション系アプリの作動確認が同OSになっているためだ。個人的にはWindows 8.1 Updateの方がフットプリントが小さくなり、ネットワークなども速くなっているので、古いOSを使い続ける理由は無いのだが、業務でこれらのアプリを考慮すると納得の部分でもある。もうすぐWindows 10が出るのだが、この点はどうなるのだろうか。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5500と、AMD FirePro M4150(1GB GDDR5)。アプリや作動状態によってシームレスに切替わる。以前のモデルがAMD FirePro M4100/コアクロック670MHzだったのに対して、715MHzに上がっている。外部出力として、ミニD-Sub15ピン、DisplayPortを装備。液晶ディスプレイは、非光沢14型1,920×1,080ドット。タッチは非対応だ。
インターフェイスは、Gigabit Ethernet、Intel Dual Band Wireless-AC 7265 802.11a/b/g/n/ac + Bluetooth 4.0、USB 3.0×4、スマートカードリーダ、SDカードスロット、720p HD Webカメラ、音声入出力、指紋認証センサー。4ポートあるUSB 3.0の内1つは給電対応となっている。IEEE 802.11acに対応したのが新モデルで増えた部分だ。
サイズは339×237×21mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.7kg。米軍調達基準「MIL-STD-810G」に対応した堅牢設計で、製造の最終工程は東京都昭島市の昭島工場で行なわれている。
HP Directplus価格で238,000円から(税別)。今はキャンペーン中で2万円引きの218,000円からとなる。ノートPCとしては非常に高価となるものの、内容を考えると妥当なところではないだろうか。
筐体は前モデルと同様、マグネシウム合金やアルミニウムが使われ質感もよく高級感がある。また持った時に軽く感じたのが印象的だ(パッケージが宅配便で届いた時はほかのPCだと思ったほど)。
前面は、液晶パネル中央上に720p HD Webカメラ。正面側面はかなり薄く、LEDやスロット類は無い。左サイドにロックポート、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×2(左側が給電対応)、スマートカードリーダ。右サイドに電源入力、SDカードスロット、DisplayPort、USB 3.0×2、Gigabit Ethernet、音声入出力を配置。付属のACアダプタは106×47×28mm(幅×奥行き×高さ、突起部/コード含まず)、280g。
裏はロックスイッチを解除するとパネルを簡単に外すことができ、メモリやストレージにアクセスするのは容易だ。バッテリも内蔵しており着脱可能。この辺りの構造は前モデルと同じになっている。
14型の液晶パネルは非光沢で映り込みが少なく眼に優しい。明るさや発色、コントラストは良好で、視野角はIPS式とは明記されてないものの結構広く、高品質のパネルが使われている。
キーボードは、アイソレーションタイプで3段階(オフ/中/大)のバックライト付き。非常にカッチリしており、MacBook Proのそれに似ている。キーピッチも余裕があり、いびつな並びになっている部分も無い。ただ個人的には[Enter]キーの外側に[Home]、[PgUp]、[PgDn]、[End]キーがある並びは苦手てあるが、この辺りは好みの問題もあるだろう。
ポインティングデバイスは、スティックとタッチパッド2種類を搭載し、ボタンもそれぞれのポジションで使いやすいよう2つセットされている。またタッチパッドの左上をタップするとロックが掛かり橙色のLEDが点灯する。これによりスティックの方をメインで使うなら、誤作動を防ぐことが可能だ。
発熱や振動、ノイズも試用した範囲では気にならなかった。後半のベンチマークテストでプロセッサの温度が44~76℃となっているものの、うまく処理できているのだと思われる。サウンドは出力も十分にあり、ノートPCとしては比較的低音も出ている。ワークステーション扱いにするにはもったいないほど。
総じて作りは非常に良く魅力的な1台に仕上がっている。できればこのまま、AMD FirePro M4150無し、Core i5とし、コストダウンを図った一般向けモデルも欲しいところか。
ストレージがM.2接続SSDとなり快適な作動
OSは64bit版Windows 7 Professional(SP1)。メモリ16GB、M.2接続のSSDと、文句無しに快適に使用できる。初期起動時のデスクトップはほぼ素のWindows 7。
ストレージはM.2接続の256GB SSD「SanDisk SD6PP4M-256G-1006」が使われていた。C:ドライブのみの1パーティションで約238GBが割り当てられ空き149GB。
Wi-FiとBluetoothは仕様表にあるように「Intel Dual Band Wireless-AC 7265 802.11a/b/g/n/ac + Bluetooth 4.0」。Gigabit EthernetもIntel製だ。デバイスマネージャーにはほかにValidity SensorやTPM 1.2も見える。
プリインストールのソフトウェアは、アプリケーション系は特に無く、「AMD Catalyst Control Center」、「HP 3D Drive Guard」、「Synaptics LuxPad」など、Intelも含め各デバイスのツール系のみとなっている。
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 8 バージョン2と3DMarkの結果を見たい。バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMark(今回は2コア4スレッドと条件的には問題ない)とCrystalDiskMarkも掲載した。カッコ内の値は前モデルの「ZBook 14 Mobile Workstation」。
Windows エクスペリエンス インデックスの結果は、総合 6.8(5.9)。プロセッサ 7.2(7.2)、メモリ 7.6(7.2)、グラフィックス 6.8(6.7)、ゲーム用グラフィックス 6.8(6.7)、プライマリハードディスク 7.9(5.9)。PCMark 8 バージョン2/Homeは3017。3DMarkはIce Storm 41837、Cloud Gate 6771、Fire Strike 1325。CrystalMarkは、ALU 51177、FPU 46035、MEM 51258、HDD 45156、GDI 20269、D2D 7102、OGL 139798。
ノートPCとしては総じて高めのスコアだ。前モデルと比較してWindows エクスペリエンス インデックスの値が少し良くなっているのが分かる。ストレージに関してはSSD(M.2) vs HDDなので比べるまでもないだろう。CrystalMarkはあえて前モデルを並記しなかったが、同じく少しずつ向上している。
BBenchは、バランス、バックライト最小(キーボードバックライトオフ)、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で34,533秒/約9.6時間(29,970秒/8.3時間)。ほぼ仕様通りとなり、前モデルと比較して1時間以上伸びてる。これはSSDとBroadwellになったのが利いていると思われる。
以上のようにHP「ZBook 14 G2 Mobile Workstation」は、BroadwellのCore i7、AMD FirePro M4150、そしてM.2接続のSSDを搭載した14型フルHDモバイルワークステーションだ。重量もサイズの割に約1.7kgと軽量で楽々移動できる。
価格は20万円超えと高価だが、それに見合う納得の内容になっており、試用した限り欠点も見当たらない。持ち運び可能なワークステーションを探している企業にお勧めしたい逸品と言えよう。