西川和久の不定期コラム

Apple「iPhone 5s」

〜薄! 軽! 速! の三拍子揃った64bitスマートフォン

 Appleの新しいスマートフォン、「iPhone 5s」と「iPhone 5c」が9月20日、販売開始となった。当日の朝からショップに並び、無事16GB/スペースグレイを入手したので、新機能を交えての使用レポートをお届けしたい。

久々に並んでゲット

 もともとiPhoneに関しては3Gから4Sまでソフトバンクの渋谷店に並んで購入していた。銀座のApple Storeやソフトバンク表参道店ほどではないものの、渋谷のApple Storeと同じく結構な激戦区。さすがに前日の夜から並ぶのも疲れるため、今回は作戦を変更し、地元のソフトバンクショップで購入することにした。

 選んだショップは恵比寿店。実はiPhone 5の発売当日も「まだ在庫ありま〜す!」と、店員が呼子をしていたのをたまたま見掛け、自宅から徒歩10分程度と近いこともあり、ここなら発売1時間ほど前に並べば大丈夫かもと思った次第だ。

 7時少し前に到着。この段階でまだ10人ほどしか並んでいなかった。7時45分頃に整理券を配り始めたが、それでも20人ちょっと。恵比寿駅の直ぐそばにあるにも関わらず明らかに穴場だ。

 また事前に、シルバーとゴールドは少ないが、スペースグレイの16/32GBの在庫はそれなりにあるらしいとネットに情報が流れていた。今回は、ゴールド以外の16GBならどちらでも良かったので、3機種共に在庫があるショップを選ぶ必要もなかった。

 現場で配られた整理券、実は2種類あって、渡される前に「希望の機種はありますか?」と聞かれ、「特に無い」と答えた人は写真を掲載した方、希望モデルがある人は別の券が渡されたいた。

 先に書いた通り、ゴールド以外なら何でもよかったので、「特に無い」と答えたところ、前に10人いるはずが、順番は4。つまり前の6人は何か希望があったことになる。

 8時になってショップがオープンし、即受付カウンターに座ることができた。見渡すと恵比寿店2階のカウンターは計4つ。何と第一陣だったのだ。iPhone 4Sからの機種変更、そして昔ながらのユーザーと言うこともあり、手続きはほんの30分程度(店員がバタバタしていて待っている時間の方が長かった)で終了。9時には自宅に持ち帰っていた。

整理券@7時54分
iPhone 5s 16GB/スペースグレイ@店内8時42分
また余計なオプションを強要される

 ただ契約時、以前4Sの時もあったが、必須以外のオプションを「翌日から解約できます」との理由だけで、有無も言わさず付けられた(抵抗したが駄目だった)。中でも音楽や動画を扱うUULAは1週間しか無料お試し期間が無く、それを過ぎると自動的に会員となってしまうので要注意。こういった無駄なことはぜひやめて頂きたい。

 通信プランは、一般的な7GBまでいくら使っても金額が一定の「パケットし放題フラット for 4G」(5,985円/最大7GB)ではなく、「パケットし放題 for 4G LTE」(2,100円/15.5MB以降6,510円/最大7GB)にした。

 これは月々の運用費を安くするためで、一応2段階式だが、その段階の切り替わりがたった15.5MBで、これを超えると逆に6,510円/月と525円割高になってしまう。従ってデータ通信をオフにすることになるが3,885円安上がりとなっている。ただしこの場合、MMSやテザリング(オプション)が使えず、iPhone 4Sからの「かいかえ割り」も適応できなくなる。Wi-Fiでの接続が基本だ。

 3G/4Gのデータ通信を使わないとなるとiPhoneを持っている意味はあまり無いものの、主な用途は、アプリの開発/評価、原稿用と言うこともあり、普段は家でお留守番。メイン回線のNTTドコモ「Xperia A SO-04E」があるので、こちらを持ち歩き、iPhoneは必要であれば公衆LANサービスやテザリングでネットに接続している。

 個人差もあるだろうが筆者の場合、ドコモの回線でさえ、月1GBも使っておらず、Wi-Fiも合わせた全通信量が7GB少し切る程度。最大7GBではなく、3GBや1GBの安価な料金プランも欲しいところだ。

前面。中央上にフロントカメラ、下にホームボタン兼指紋認証センサー、右側面にnano SIMスロット。ホームボタンは少しクリック感が強くなった
背面。右上にリアカメラと2つのLEDフラッシュ、左側面に消音、音量±兼シャッターボタン
上側面。電源スイッチ。早くもエッジが少し欠けている
下側面。ヘッドフォン出力、マイク、Lightningコネクタ、スピーカー
iPhone 4S、Xpera A SO-04Eとの3ショット。iPhone 4Sとはほぼ高さが違うだけ。コントラストは5sのほうが高めだ。Xpera A SO-04Eは全体的にボッテリしているし視野角も狭い
パッケージと付属品。5から変更になったイヤフォン「EarPods」、USB式ACアダプタ、Lightningコネクタ/USBケーブル
起動直後のホーム画面1/2。メッセージ、カレンダー、写真、カメラ、天気、時計、マップ、ビデオ、メモリ、リマインダー、株価、Game Center、Newsstand、iTunes Store、App Store、Passbook、コンパス、設定
起動直後のホーム画面2/2。便利ツール(フォルダ)、ボイスメモ、FaceTime。ドックには電話、メール、Safari、ミュージック
フォルダの中は、連絡先と計算機。前者は電話から、後者はコントロールセンターから呼び出せるので特にホーム画面に置く必要は無いかも知れない
iOS 7を一通り操作。動きがスムーズでSafariのレンダリングもPCのように速い

 持ち帰ったiPhone 5s、パッケージから取り出し、起動した第一印象は「薄! 軽! 速!」。OSが違うので比較するのもあれだが、この春に機種変したXpera A SO-04Eとは比べ物にならない圧倒的な差だ。Xperia A SO-04Eも良くできたスマートフォンで何の不満も無かったが、これには正直驚いた。NTTドコモのケータイを9月20日まで機種変更するのを待って、iPhoneにすればよかったと思っても、春のタイミングではNTTドコモから出るかどうかすら分からず後の祭りだ(泣)。

 ただ外観(特に裏と周囲)に関しては、iPhone 4/4Sや5の方が仕上りはいいように思う。iPhone 5sでは割と普通のスマートフォンになってしまった感じがする。軽量化やコストダウン、より大量に生産する必要があるため、こうなってしまったのだろう。そう言った意味からはプレミアム感が無くなり残念なところ。今もなおiPhone 4Sの筐体は美しいと思える。

 一通り設定が終わって、「新規のiOS 7機ではiPhoto、iMovie、iWork(Pages、Keynote、Numbers)が無料/計3,450円」を思い出し、早速試すことにした。

 App Storeを開くと、「Pages」、「Numbers」、「Keynote」、「iPhoto」、「iMovie」、「iBooks」、「iTunes U」、「Podcast」、「友達を探す」、「iPhoneを探す」を一気にダウンロードできるページが表示され、インストールできる。

 ここで興味深いのは(Apple IDとApple Storeの関係を考えれば当然なのだが)、一旦、iPhone 5sでダウンロードすると、同じApple IDを設定している、4SやiPad 3でも、全て無料でダウンロードが可能になる。一気にユーザーが増えそうな感じだ。

5sでは確かにiPhoto、iMovie、iWorkなどまとめて無料でダウンロードできる
同じApple IDを設定している4Sも無料で使える
同じくiPad 3でPagesを起動。ただフラットUIではないので違和感あり

 自宅でWi-FiとLTEの速度を計ったところ、Wi-Fiはダウンロード:14.15Mbps/アップロード:14.58Mbps/PING:3ms、LTEはダウンロード:12.62Mbps/アップロード:11.26Mbps/PING:26msだった。PINGが1桁違うものの似通った値だ。

 充電に関しては30分でプラス20%ほどとなる。バッテリの持ちは筆者の使い方だと2日程度だろうか。バッテリ駆動時間に関しては、設定/一般/Appのバックグラウンド更新の各アプリ、設定/プライバシー/位置情報サービスのGPSが動くアプリなどを調整すれば結構な違いが出るはずだ。

自宅でのWi-Fi速度。ダウンロード:14.15Mbps/アップロード:14.58Mbps/PING:3ms
自宅でのLTE速度。ダウンロード:12.62Mbps/アップロード:11.26Mbps/PING:26ms

 さて、こうして発売日に無事ゲットできたiPhone 5s、5からのパワーアップした部分は「A7プロセッサはARM初の64bit、そしてiOS 7も64bitにネイティブ対応」、「通常はA7プロセッサが処理すべき、加速度センサー、ジャイロスコープ、コンパスから送られるモーションデータを処理する“M7コプロセッサ”搭載」、「カメラの性能・機能アップ」、「指紋認証/Touch ID搭載」となる。

 64bit化やM7コプロセッサに関しては動作速度やバッテリ駆動時間などに影響すると思われるが、画面キャプチャを掲載するような具体的に見える部分はなく、後半は、カメラと指紋認証に関してピックアップしたい。

 なお、iOS 7自体の機能は、少し前に“Apple「iOS 7」〜マルチタスキングに対応し、フラットデザイン採用の新OSが遂にリリース!”を掲載したのでそちらを参考にして欲しい。この時の画面キャプチャは4Sで行なっているが、5sでは縦に176ドット長くなるだけの違い(幅は同じ640ドット)となる。

 iPhone 5sと5cのみ、発売直後にiOS 7.0.1がリリースされている。内容はバグフィックスや改善のみと言うことだ。さらに日本時間9月27日未明、iOS 7.0.2がリリースされた。ロック画面のパスコード入力を回避できる問題を修正、パスコード入力にギリシャ文字キーボードオプションを再導入したバージョンとなる。

気になるカメラ性能は…。

 まず気になるのが最も使うリアカメラ性能だろう。同社の発表によると、センサーは従来より15%大きくなり、1ピクセルは1.5μm、そしてF2.2と、解像度は800万画素と同じだが、iPhone 5のF2.4と比較してレンズが明るくなっている上に、センサーのサイズもアップしているので画質に期待できる。レンズはEXIFの情報によると、焦点距離は4mmで35mm判換算30mmとなり、iPhone 5の4.1mm/33mmより若干ワイドだ。

 機能的には、1秒間に10回撮影可能な「バーストモード」、白色LEDとアンバー色のLEDがの組合せで被写体に最も合うフラッシュ強度と色温度を選ぶ「True Toneフラッシュ」、自動手ぶれ補正、毎秒120フレームで撮影するスローモーションビデオ(720p)、ライブビデオズーム、スクエアモード、パノラマ写真、写真フィルタが追加されている。

 ただ相変わらず、フラッシュのオート/オン/オフやHDRのオン/オフはあるものの、ホワイトバランスや露出補正はマニュアルで設定きず、完全にカメラお任せオートになっている。この点だけは非常に不満な部分であり、画質が向上しても意図しない色や明るさになるのを防ぐことができない。もちろん一般的にはオートでいいのだろうが、極度な逆光やミックス光など、明らかにこの場所、この構図ではおかしくなるのが分かっていても、何も手出しできないのはストレスとなる。

サンプル1。ISO40 、F2.2、1/2,415秒
サンプル2。ISO50 、F2.2、1/30秒
サンプル3。ISO320、F2.2、1/15秒

 掲載したサンプルのEXIF情報を見ると、屋外日陰と夜の怪しげな照明については、結構シャッタースピードが遅い(1/30と1/15秒)。手ぶれ補正機能があるとは言え、ちょっと気を抜き雑に撮ると手ぶれするシャッタースピードだ。プログラムシフトをもう少しシャッタースピードを上げるように変えた方が無難だと思われる。

 スローモーションビデオは、撮影モードを変更するだけで簡単に撮る事ができる。何に使うかはアイディア次第だろう。

 バーストモードに関しては、とにかくマシンガンのように連写する。上手く使えば効果的だが、スローモーションビデオ同様、用途は限定的かもしれない。

 カメラとして少し使いにくい点は、例えばカメラを横位置で机の上に固定して撮りたい時、音量±ボタンがシャッターの替わりをするため、レンズ(右側面)が下の位置になるように置かなければならないことだ。逆だと、何かの拍子で筐体を押してしまい、音量ボタンが動作し、バーストモードが始まってしまうことが多い。更にレンズが下だとアングルが低過ぎると言う問題もある。

 また、普通に持って撮る時も(筆者の持ち方が悪いのかも知れないが)、横位置でレンズを下側にして構えると、直ぐに指がかかってしまう。慣れるまで少し時間がかかりそうだ。位置関係は4sと変わっていないのに何故こうなるのか不思議なものだ。

バーストモードのサンプル。17枚撮った内のはじめの6枚。3,264×2,448ピクセル、合計8.39MB

 そしてもう1点気になることは、新機能の写真フィルタが、写真自体にエフェクトを施すのではなく、フィルタの内容をメタ情報か何かで持っていることだ。従って、iPhone上では、フィルタがかかって見える写真をUSB経由やiCloudのフォトストリームでPCへコピーすると、変化の無いオリジナルの写真のままとなってしまう。

 エフェクトがかかった状態のデータが欲しい時には、写真アプリでメールに添付やiCloudの共有を選び送信しなければならず、少し面倒だ。

写真フィルタ+スクエアモードで撮影(PCで表示した写真を撮影)
iPhoneの写真アプリでは白黒(ノアール)に見えるが……
PCへデータをUSB経由でコピーするとオリジナルのまま変化無し
iCloudの共有経由で写真データをPCへコピーすると……
エフェクトがかかった状態になった

 画質自体は、iPhone 5のカメラを全く使っていないので、対4S比較もしくはXpera A SO-04E比較となるが、4Sとの比較は、同じ800万画素でもかなり良くなった印象を受ける。レンズの違いやセンサーの違い、そして処理能力に余裕があるので、画質にも余裕がある感じがする。建物の質感(ただしモアレが出ている)や色鮮やかな風車の発色が凄く自然なのが印象的だ。エッジ強調気味で硬調のXpera A SO-04Eとは対照的な絵作りだが、ソフトな中にも解像感があると言ったところ。この辺りは好みの問題もあるだろう。

 800万画素(3,264×2,448ピクセル)の画素数は、今時のスマートフォン搭載のカメラとしては低いが、用途はネットに投稿したり、プリントしてもL判程度なら十分な画素数であり、それより自然な写りになる方が重要だ。コンパクトカメラもそうだが、必要以上の画素数競争など全く意味は無く(実用的なデジタルズームや、サンプリングしつつ色補間するなどのケースを除く)、5sのカメラ機能はそれを実証した形となるだろうか。

 True Toneフラッシュは、少し試したものの、スローシンクロするわけでもなく、色を調整しているとは言え、普通のベタ光のフラッシュなので個人的には好みではなかった。

便利なTouch IDだが……。

 5sの新機能で話題なのはやはり指紋認証/Touch IDだろう。これを使えば、ロック画面の解除を従来のパスコードを使う必要もなく指先一発でOK。更にiTunes & App Storeで購入する時のパスワード入力もこれで代用できる。

 登録方法は簡単で、一旦、設定/一般/パスコードでパスコードをセットすると、指紋認証の項目が有効になる。後は指示に従い、指でセンサーを何度か押したり離したりすれば準備完了だ。

 パネルから分かるように“指紋1”、“指紋2”……と、複数の登録できる。この名称を編集で“親指”や“人差し指”と言った感じに変更することもできる。

【11時15分訂正】記事初出時、名称を変更できないとしておりましたが、編集によって変更することが可能です。お詫びして訂正します。

設定/一般/パスコードと指紋認証
指紋の登録完了
パスコードロックに加え、iTunes & App Storeでも使用可能
【動画】指紋認証を使ってロック画面を解除

 ただ既にネットで色々と情報が流れていて、ほかからコピーし復元した指紋でも認証されるらしく完全ではない。もちろんそれを行なうにはそれなりの技術が必要。一般的ではないと言う意見もある。

 最大の問題は、寝ている間に彼女など第三者に指を使われロック解除できてしまうことだろう。こればかりはどうにもならず、自己防衛する手段は無い。まだパスコードの方が安全かも知れない。


 以上のようにApple iPhone 5sは、薄! 軽! 速! の三拍子揃ったスマートフォンだ。今回からNTTドコモも扱い始めたので、キャリアの問題で二の足を踏んでた人もこれで機種変更ができる。

 iOS 7のスムーズさはもちろん、画質が更に良くなったカメラや、ワンタッチ指紋認証のTouch IDで使い勝手も向上した。M7コプロセッサーや64bitアーキテクチャなどこれから期待できる新技術も詰込まれている。ただほかのスマートフォンでは対応の多い、おサイフケータイ/NFC、防水仕様が無く、液晶パネルも4型の1,136×640ドットと今となっては控えめなところは残念な部分とも言える。

 iPhone 5からの機種変更は、2年縛りの場合まだ1年ほどあるので微妙だが、iPhone 4Sで我慢していたユーザーには間違いなくお勧めだ。

(西川 和久 http://www.iwh12.jp/blog/