西川和久の不定期コラム

ASUS「MeMo Pad FHD10」

〜Atom Z2560を搭載した10.1型Androidタブレット

 ASUSは8月16日、Atom Z2560を搭載した10.1型Androidタブレットを発表、発売した。これまで多くのAndroid機をテストしたが、個人的にIntelプロセッサで動くものは初めてだ。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。

Atom Z2560とIPS式10.1型/1,920×1,200ドットが特徴的なタブレット

 「MeMo Pad」としては、7型の「MeMO Pad HD7」が7月19日から発売されている。プロセッサMediaTek MTK8125(クアッドコア1.2GHz)、メモリ1GB、ストレージ16GB、10点マルチタッチ対応IPS式800×1,280ドット液晶ディスプレイなど、一般的な7型Androidタブレットだ。

 対して今回評価する「MeMo Pad FHD10」は、プロセッサがARMではなくIntelのClover Tail。Intel CPU搭載機としては、Fonepad HD7など何機種かが市場に出ているものの、個人的に試用するのは初めてで、Tegra 3などと比較してパフォーマンスやバッテリ駆動時間が気になるところだ。主な仕様は以下の通り。

ASUS「MeMo Pad FHD10」の仕様
プロセッサ Atom Z2560(最大1.6GHz、2コア/4スレッド、キャッシュ1MB)
グラフィックス プロセッサ内蔵PowerVR SGX 544MP2(最大400MHz駆動)
メモリ 2GB
ストレージ 16GB(eMMC)
OS Android 4.2.2
ディスプレイ 10点マルチタッチ対応10.1型1,920×1,200ドットIPSディスプレイ、Miracast対応
インターフェイス IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 3.0、Micro USB×1、microSDカードスロット×1、前面カメラ120万画素/背面カメラ500万画素、ステレオスピーカー
センサー GPS、電子コンパス、光センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ
バッテリ駆動時間 最大約10時間
サイズ 264.6×182.4×9.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約580g
店頭予想価格 44,800円

 プロセッサはAtom Z2560。クロック最大1.6GHz、2コア4スレッドで、キャッシュは1MB。Windows 8タブレットでもお馴染みのClover Tailと呼ばれているものだ。ただ、よく使われているAtom Z2760は最大1.8GHzに対して、Atom Z2560は最大1.6GHz。若干パフォーマンスが低いタイプとなる。

 メモリは2GB。ストレージ(eMMC)は16GB搭載している。OSはマルチユーザー対応のAndroid 4.2.2。現在4.3が最新だが利用できる機種が限られており、特に短所ではないだろう。

 ディスプレイは10点タッチ対応IPS式10.1型1,920×1,200ドットの液晶パネルを採用している。グラフィックスはプロセッサ内蔵PowerVR SGX 544MP2。最大400MHzで駆動する。外部出力は残念ながら非対応。ただしMiracastに対応しているので、専用アダプタ経由で外部の液晶ディスプレイに表示は可能だ。一部のWi-Fi Direct対応機は、Wi-Fi Direct利用中に、アクセスポイントへの接続ができなくなるものがあるが、本製品は両者に同時に接続できる。

【お詫びと訂正】初出時に、本製品がWi-Fi Direct利用中にアクセスポイントに接続できないとしておりましたが、実際には可能です。お詫びして訂正させて頂きます。

 インターフェイスはIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 3.0、Micro USB×1、microSDカードスロット×1、前面カメラ120万画素/背面カメラ500万画素。このほか、ステレオスピーカー搭載に加え、独自のオーディオ技術「ASUS SonicMaster」と、5つのモードを持つ「Audio Wizard」により、臨場感あるサウンドが再生可能だ。

 センサーは、GPS、電子コンパス、光センサー、加速度センサー、ジャイロスコープと、一通り揃っている。

 サイズは264.6×182.4×9.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約580g。バッテリ駆動時間は、最大約10時間。店頭予想価格は44,800円と、iPad Retinaディスプレイモデルの同クラスと比較すると、画面解像度は低いものの、5,000円ほど安い。

 カラーバリエーションはブルーとホワイトの2色。別売でBluetoothキーボード付き専用カバー「Folioキーボード」も発売中だ。

正面。中央上に120万画素の前面カメラ
裏面。中央上に500万画素の背面カメラ。左右のスリットはスピーカー
左側面。microSDカードスロットとMicro USB
右側面。音量±ボタン、ヘッドフォン出力
上面。電源ボタン。下には何もない
重量は実測で568g
付属品など。USB電源アダプタ(2A出力)とUSBケーブル。アダプタのサイズは40×40×30mm(プラグ含まず)、重量51g
iPadとの比較。画面のサイズや縦横比が違う分、幅は少し狭いもののMeMo Pad FHD10の方が大きい

 筐体はiPadと比較すると長細く、幅は若干狭い。厚みはほぼ同じだが、約90g軽いので、その分、スッと持ち上がる感じだ。ただし、背面はプラスティック素材なので、アルミ素材が使われているiPadほど高級感はない。とは言え、チープな感じでもなく、さほど気にならない。

 周囲のボタン類は、上に電源ボタン、左にmicroSDカードスロットとMicro USB、右に音量±ボタン、ヘッドフォン出力。下には何もなく、シンプルに仕上がっている。付属のUSB電源アダプタは2A出力で、サイズは40×40×39mm(同、プラグ含まず)、重量は51g。時間はかかるがPCのUSBポートからでも充電できる。

 10.1型の液晶パネルは、IPS式で視野角は広く、明るさコントラスト共に十分。クオリティは高い。また、後述する「ASUS Splendid」で色温度などを変更可能だ。10点タッチもスムーズに機能する。画素密度は224ppiと、iPad Retinaディスプレイモデルの264ppiには劣るものの、エッジやドットを荒く感じることはない。

 サウンドはスピーカーを背面側に配置しているため、普通に両手で持つと後ろに音が抜けてしまう。出来れば机など何かに反射させて使いたいところだ。ほぼ両サイドの位置にスピーカーが埋め込まれているのでステレオ感は結構ある。最大音量や音質に関しては、タブレットとしては特に気になる部分もなく、音楽も動画も楽しめる。

 500万画素の背面カメラは、写真撮影時、標準/パノラマ、撮影モード:ポートレート/風景/夜景/スノー/夕焼け/パーティー/逆光、効果:なし/ビンテージ/LOMO/グレイスケール/ネガ/セピア、サイズ変更、露出補正が可能。動画撮影時では、同種の撮影モードや露出補正、1080p/720p/480pの切り替えと機能は一通り揃っている。画質も合格レベルと言える。

カメラアプリ/撮影モード
写真サンプル

 ベンチマークテストの結果は後述するとして、実際操作している動画を掲載した。ご覧の通りスムーズに動き、Webのレンダリングも速い。Clover TailとAndroidのシステムとしての相性は良さそうだ。これまで触ったAndroidタブレットの中では速い方だろう。

【動画】スムーズに動きWebのレンダリングも速い

豊富なアプリとNexus 4(Snapdragon S4 Pro)に匹敵するパフォーマンス

 セットアップはカスタマイズされ、素のAndroidとは随分違う雰囲気になっている。言語の選択→Wi-Fiの選択→データ同期→アカウントのセットアップ→Google位置情報の使用→日時の設定→セットアップ完了と、画面キャプチャからも分かるように、7ステップで完了する。

言語の選択
Wi-Fiの選択
データ同期
アカウントのセットアップ
Google位置情報の使用
日時の設定
セットアップ完了

 5画面あるホーム画面は、1画面目と5画面目は未設定、2画面目は主にASUS製のアプリ、センターに相当する3画面目は、曜日/時間/場所/天気/気温を表示するASUS Weather & Timeウィジェット、ASUS E-mailウィジェット、Google検索、4画面目はKindleなど他社製アプリが並んでいる。結構いろいろあるものの、画面が広いこともあり、スッキリしている。

ホーム画面2/5
ホーム画面3/5
ホーム画面4/5

 プリインストール済のソフトウェアは、「アプリのバックアップ」、「インスタント辞書」、「カメラ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「コミック・本」、「セットアップウィザード」、「ダウンロード」、「トーク」、「ナビ」、「ファイルマネージャー」、「ブラウザ」、「ペアレンタルロック」、「マップ」、「メール」、「メッセンジャー」、「ローカル」、「音声レコーダー」、「音声検索」、「時計」、「辞書」、「省電力設定」、「設定」、「電卓」、「連絡帳」、「Amazon Kindle」、「AOLink」、「App Locker」、「ASUS Artist」、「ASUS Splendid」、「ASUS Story」、「ASUS To-Do」、「ASUSスタジオ」、「AudioWizard」、「BookLive!Reader for ASUS」、「BuddyBuzz」、「Chrome」、「Gmail」、「Google」、「Google+」、「i-フィルター」、「LLHDAndroid」、「Movie Studio」、「MyBitCast」、「MyLibrary」、「Playストア」、「Playミュージック」、「Playムービー」、「Press Reader」、「SuperNote Lite」、「WebStorage」、「YouTube」、「Zinio」……と、かなり豊富。

 同社オリジナルのアプリもそれなりの数含まれているのが印象的だ。もちろんPlayストアに対応しているので、好みのアプリをダウンロードし使用することができる。

 画面左下にある矢印をタップすると、スモールアプリ一覧を表示する。初期設定だと、「AudioWizard」、「BuddyBuzz」、「Compass」、「カウントダウン」、「カレンダー」、「ストップウォッチ」、「ビデオプレイヤー」、「ブラウザ」、「メール」、「単位換算」、「辞書」、「電卓」が登録されている。画面にオーバーラップする形でウィンドウが開くので、電卓などちょっとした時便利に扱える。

工場出荷時のアプリ1/2
工場出荷時のアプリ2/2
スモールアプリ

 ウィジェットは、「アナログ時計」、「おすすめのコンテンツを楽しむ」、「カレンダー×2」、「デジタルクロック」、「フォトギャラリー」、「ブックマーク×4」、「ミュージックプレイリスト」、「メール」、「通路とナビ」、「交通状況」、「再生・マイライブラリ」、「設定をショートカットとする」、「電源管理」、「連絡先×2」、「連絡帳」、「ASUS E-mail」、「ASUS To-Do」、「ASUS Weather & Time」、「ASUSタスクマネージャー」、「ASUSバッテリー」、「BuddyBuzz」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Playミュージック」、「Google+投稿」、「Google検索」、「Media Frame」、「PhotoFrame」、「Playストア」、「PressReader」、「SuperNote Lite」、「WebStorage」、「YouTube」、「Zinio」……と、5画面分ある。

ウィジェット1/5
ウィジェット2/5
ウィジェット3/5
ウィジェット4/5
ウィジェット5/5

 設定/ストレージを見ると初期起動状態では11.68GB中、(若干の画面キャプチャの占有分が含まれているが)11.41GBが空き領域となっている。microSDカードも使えるため、うまく運用すれば容量不足にはならないだろう。

 設定/ASUSカスタマイズ設定は、スクリーンショット/インターフェイスの設定/MEDIA FRAME/電源管理が行なえる。例えば、ここに掲載している画面キャプチャは、通常のAndroid機だとPNGで、後からPCでJPEGへ変換しているが、ファイルフォーマットをJPEGに指定でき、ファイル名をリネームだけして扱える。

設定/ストレージ
設定/ASUSカスタマイズ設定1/2
設定/ASUSカスタマイズ設定1/2

 Androidは仕様通り4.2.2。マルチユーザーやロック画面のカスタマイズに対応したバージョンとなる。

 設定/省電力設定は、省電力モード、ASUS最適化モードに加え、個別の省電力設定が行なえる。項目は、電子メールを読む、書籍を読む、ビデオを見る、音楽を聞く、Webサイトの参照、電話・連絡先、IM(Skype)、プッシュ通知を使用するIMとアプリと別れており、それぞれ通常/省電力、画面の明るさを30〜100%(10%刻み)で設定可能だ。ここまで細かく制御できるのは珍しく、本機固有の特徴とも言えよう。

 ホーム画面の「ASUSアプリ」フォルダには、カレンダー、ASUS To-Do、ASUS Story、ASUS Artist、ファイルマネージャー、アプリのバックアップ、App Locker、Media Frameが含まれている。

 アプリ名だけでは分かり難いものを少し補足説明すると、ASUS Storyは、複数の写真を1枚のページにレイアウトしテキストなどを加え、ページめくりするように表示できるアプリ。地図の追加も可能だ。ASUS Artistは写真にフレームを追加し、吹き出し付きのメッセージを書けるアプリ。App Lockerはアプリにパスワードを付加する。Media Frameは、スリープ時に動画などを再生する機能だ(バッテリを消費するのでUSB充電しつつの使用が推奨)。

設定/タブレット情報
設定/省電力設定
ASUSアプリ

 通知領域は、Wi-Fiのオン/オフ、省電力設定、インスタント辞書のオン/オフ、Bluetoothのオン/オフ、GPSのオン/オフ、音声のオン/オフ、自動回転のオン/オフ、明るさ調整(自動調整のオン/オフ)、Wi-Fi SSIDの選択、AudioWizard起動、Wi-Fi Directの設定などが行なえる。カスタマイズできないのが残念なところか。

 AudioWizardは、省電力/音楽/動画/記録中/ゲーム/スピーチと、6つのプリセットがあり、用途に応じて切替える。ただし、イコライザなど詳細を調整する機能はない。

 ASUS Splendidは、同社のノートPCなどにもかなり前からインストールされているユーティリティだ。温度タブは、ビビッドモードのオン/オフ、色温度の設定。エンハンスメントタブでは、Hue、再度の彩度ができる。アプリとは無関係に、画面の色調を触れるので、好みの発色にすることが可能となる。

通知領域
AudioWizard
ASUS Splendid

 ペアレンタルロックは、Android 4.3になると標準機能だが、4.2なので独自の手法で対応している。この時、GoogleアカウントかASUSアカウントが必要だ。PINコードと合わせてアプリケーションを管理する。

 AOLinkは、DLNAクライアントと、ASUS Personal Cloud(Webストレージ)を使ったデータ共有を行なえるアプリだ。試したところnasne内にある動画や音楽を認識、表示/再生可能だった。ただし、録画した地デジやライブチューナーなどDTCP-IP関連の動画には対応していない。

ペアレンタルロック1/2
ペアレンタルロック2/2
AOLink 1/3
AOLink 2/3
AOLink 3/3

 参考までに「AnTuTu 安兎兎ベンチマークv3.4」の結果を掲載した。総合 17866(11933)(以降カッコ内はNexus 7(2012))。Nexus 7(2012)に勝っている結果となった。

 各項目では、RAM 3633(1840), CPU Int 3465(3114), CPU Flot 3159(2704), 2D 1389(709), 3D 5330(2692), DB I/O 550(868), SD Card Write 144(138), SD Card Read 196(191)。

 全項目でスコアは上だ。チャートではNexus 7(Tegra 3/クアッドコア/1.3GHz)より、Nexus 4(Snapdragon S4 Pro/クアッドコア/1.5GHz)に近い。Atom Z2560プロセッサをAndroidで使った時のパフォーマンスは、なかなかのものと言えよう。

 なお「MOBILE GPUMARK」は、項目の初めから落ちたり、途中で落ちたりと、全ての項目において完走できなかった。プロセッサがx86系なのが問題なのか、グラフィックス系の問題なのかは不明だ。

AnTuTu 安兎兎ベンチマーク1/3。17866(11933) ※カッコ内はNexus 7(2012)。ただしAndroid 4.3上で測定
AnTuTu 安兎兎ベンチマーク2/3。RAM 3633(1840)、CPU Int 3465(3114)、CPU Flot 3159(2704)、2D 1389(709)、3D 5330(2692)、DB I/O 550(868)、SD Card Write 144(138)、SD Card Read 196(191)
AnTuTu 安兎兎ベンチマーク3/3。チャートではNexus 7よりNexus 4に近い結果となっている

 バッテリ駆動時間テストは、輝度/音量共に50%、AOLinkでnasne上にある動画をループ再生したところ、約8.5時間でシャットダウン。スペック上は最大約10時間なので、妥当なところだろう。

 以上のようにMeMo Pad FHD10は、Androidとしては珍しいIntel Atom Z2560を搭載したタブレットだ。気になるパフォーマンスはTegra 3よりSnapdragon S4 Proに近くサクサク動く。

 10.1型IPS式の液晶パネルは、視野角が広く発色も良好、ASUS Splendidで好みの色調に調整もできる。解像度も1,920×1,200ドットと、iPad Retinaディスプレイモデルには及ばないものの十分高解像度だ。サウンドも独自の機能で楽しめる。

 マルチユーザー対応なので、リビングに置いて家族で共有するようなタブレットが欲しいユーザーにお勧めしたい1台だ。

(西川 和久 http://www.iwh12.jp/blog/