西川和久の不定期コラム
日本ヒューレット・パッカード「HP Pavilion11 TouchSmart」
~AMDの新型APU A6-1450を搭載したタッチ対応11.6型ノートPC
(2013/9/5 00:00)
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は8月29日、タッチ対応の11.6型ノートPC「HP Pavilion11 TouchSmart」を発表、9月6日より発売する。最大の特徴は、TDP 8Wで4コアのSoC、AMDの「A6-1450」を搭載していること。Clover Trailと比較して、そのパフォーマンスが気になるところ。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。
4コアのSoCはx86プロセッサとして初
x86プロセッサでSoCと言えば、IntelのClover Trailのイメージが強い。多くのWindows 8搭載タブレットなどで使われ、パワーはそこそこだが、バッテリ駆動時間がx86アーキテクチャとは思えないほど長いのが特徴的だ。ただし、2コア4スレッドであり、純粋な4コアではない。
今回のHP Pavilion11 TouchSmartに搭載しているAMDの新型APU A6-1450は、グラフィックス、PCI Express 2.0インターフェイス、High Definitionオーディオ、SD/USB 3.0/SATA 3.0コントローラなどを内蔵しているネイティブなSoCであり、加えて4コア。x86プロセッサのSoCとして4コアは初となる。
日本HP「HP Pavilion11 TouchSmart」の仕様 | |
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プロセッサ | AMD A6-1450(4コア、1.0GHz/最大1.4GHz、キャッシュ2MB、TDP 8W) |
メモリ | 8GB(最大8GB) |
ストレージ | HDD 500GB(5,400rpm) |
OS | Windows 8(64bit) |
ディスプレイ | 11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット、10点タッチ対応、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力 |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Radeon HD 8250 |
ネットワーク | Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 3.0×2、USB 2.0×1、約92万画素Webカメラ、SDカードスロット、音声入出力 |
サイズ/重量 | 290×217×23~25mm(幅×奥行き×高さ)/約1.53kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約7時間45分 |
店頭予想価格 | 70,000円前後 |
プロセッサは先に書いた通りAMD A6-1450。4コアでクロックは最大1.4GHz。キャッシュは2MBでTDPは8Wだ。従来サウスブリッジと呼ばれていた外付けのチップセットは必要無く、Clover Trail同様、同種の機能を内蔵している。
現在Temashと呼ばれるAPUのSKUは、A6-1450、A4-1250、A4-1200と3つあり、6型番はIntelのPentium対抗、4型番はCeleron対抗となるようだ。詳細は文末の関連記事を参考にして欲しい。ストレージは500GBのHDDを搭載。
メモリは8GBでOSは64bit版のWindows 8。Clover Trailは最大2GBしかメモリを搭載できないため、Windows 8は32bit版だ。また一般的に2GBで動作するWindowsと8GBで動作するWindowsとでは、システム的な余裕が全く違い、プロセッサの実力だけでなく、トータル的なパフォーマンスアップも期待できる。
ディスプレイは、11.6型10点タッチ対応で1,366×768ドットの液晶パネルを採用し、外部出力としてミニD-Sub15ピンとHDMI出力を装備している。グラフィックスは、プロセッサ内蔵のRadeon HD 8250。DirectX 11やOpenCLに対応し、SP数128、300~400MHzで動作する。Clover Trailのグラフィック性能は高くないため、どの程度の差になるのか興味津々だ。
ネットワークは、有線LANがEthernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth 4.0にも対応。Gigabit非対応なのは残念なところか。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×1、約92万画素Webカメラ、SDカードスロット、音声入出力。多くのClover Trail機ではUSB 3.0が無く、本機がUSB 3.0対応なのはポイントが高い。
サイズは290×217×23~25mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.53kg。バッテリ駆動時間は最大約7時間45分。パフォーマンスも含め、後半のベンチマークテストで検証したい。店頭予想価格は70,000円前後となる。
筐体はいかもに同社らしい質感とデザイン。シルバーとブラックをベースにしてクールに仕上がっている。左側面にはミニD-Sub15ピン、USB 2.0、SDカードスロット、HDDアクセスLED、電源LED。右側面には電源入力、Ethernet、HDMI出力、USB 3.0×2、音声入出力を配置。11.6型で最薄部23mmと言うこともあり、触った感じはスリムだが、約1.5kgあるので持ち上げるとそれなりに重い。
ACアダプタのサイズは約105×45×30mm(同)で重量は233g。バッテリが着脱式で、それほど大きくないため(幅約215mm、重量181g)、予備を1本カバンへ入れておくのも難しくないだろう。
11.6型の液晶パネルは、IPS式ではないので視野角はそれなりだが、実用上は問題ないレベルだ。輝度はある程度あるものの、コントラストは若干浅めか。タッチは感度も良くスムーズに操作できる。
キーボードはアイソレーションタイプ。さすがに幅に余裕が無いので、主要キーのキーピッチは約18mm確保しているものの、[BS]キーや[漢字]キーなどはかなり狭くなっている。ファンクションキーは、そのまま押すと機能キー、[Fn]と併用で従来の動作となる。キーボード自体はたわむことなく、ピッチは狭いが、気にせず入力可能だ。
パームレストは筐体の大きさを考えると十分に確保されている方だろう。タッチパッドも結構広く、手前に物理的なボタンが2つあるタイプとなる。
ノイズや振動、発熱は、試した範囲では感じられなかった。特に発熱に関しては、もともとTDPの低いSoCを搭載している上に、HP CoolSence(温度を動的に管理する機能)もあり、かなりのレベルで抑えられているのだろう。
サウンドは11.6型の割には最大出力も大きく、また「dts Sound+」を採用していることもあり、同クラスとしては楽しめる音質だ。
明らかにClover Trailを上回るパフォーマンス
OSは64bit版のWindows 8。メモリを8GB搭載しシステム的に余裕がある。先に書いたように、Clover Trailはメモリ2GBが最大。この差は小さくない。起動時のスタート画面は2画面。後半のHPアプリ以降がプリインストールとなる。デスクトップは、壁紙の変更とデスクトップとタスクバーに若干のショートカットが追加されている。
HDDは500GB/5,400rpm/キャッシュ8MBの「HGST HTS545050A7E380」が使われ、C:ドライブとD:ドライブの2パーティションになっている。ただしD:ドライブはリカバリ用で、実質はC:ドライブのみ。約449GBが割り当てられ空きは413GBだ。EthernetはRealtek製。BluetoothとWi-FiモジュールはRalinkが使われている。
プリインストール済みのWindowsストアアプリは、「Fresh Paint」、「HP Connected Photo」、「HPに登録」、「HP+」、「Norton Studio」、「Skype」、「Windows 8入門」、「YouCam」など。同社製のアプリが数本ある以外は標準的な構成だ。
デスクトップアプリは、「AMD Start Now Technology」、「AMD VISION Engine Control Center」、「HP AC Power Control」、「HP Utility Center」、「HP Recovery Manager」、「Norton Internet Security」、「CyberLink PhotoDirector」、「CyberLink PowerDirector」、「CyberLink YouCam」、「DTS Audio Control Panel」など。
同社やAMDのユーティリティ系とマルチメディア系で主に構成されている。また、製品情報には「KINGSOFT Office 2012標準添付」とあるが、手元に届いたマシンには含まれていなかった。
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。またカッコ内は以前ご紹介したIntel Atom Z2760搭載機、レノボ・ジャパン「IdeaPad Miix 10」の値だ。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.9(3.3)。プロセッサ 4.8(3.5)、メモリ 5.6(4.6)、グラフィックス 3.9(3.3)、ゲーム用グラフィックス 5.8(3.3)、プライマリハードディスク 5.9(6.1)。PCMark 7は1283(1440) PCMarks。CrystalMarkは、ALU 22583(11037)、FPU 19377(9415)、MEM 13574(8998)、HDD 10535(11141)、GDI 4595(1886)、D2D 1812(601)、OGL 12766(7669)。
ストレージはHDD対SSDなので仕方ないとして(PCMarksのスコアが低いのはこれが影響している)、他の項目ではグラフィックスに限らず、全てにわたって勝っているのが分かる。パフォーマンス的にはClover Trailではなく、もっと上のクラスに相当する。
BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残9%で19,968秒/5.5時間。スペック上の最大約7時間45分には届かなかったものの、残5%で6時間程度だろうか。
構成が異なるため単純な比較はできないが、「IdeaPad Miix 10」は、残5%でほぼ12時間だった。
以上のように、日本HP「HP Pavilion11 TouchSmart」は、AMDの新型APU A6-1450を搭載したタッチ対応11.6型ノートPCだ。SoCとしてはIntel Clover Trail対抗だが、パフォーマンスは明らかに更に上のクラス。加えてメモリを8GB搭載でき、USB 3.0に対応、グラフィックスの性能も高く、トータル的にはうまくまとまっている。
バッテリ駆動時間こそ劣るものの、Clover Trail搭載機では色々不満だったユーザーに試して欲しい1台と言えよう。