西川和久の不定期コラム

ASUS「M51AC-JP005S」

~UPS兼モバイルバッテリとQi充電台を搭載したデスクトップPC

 ASUSは6月25日、UPS兼モバイルバッテリとQi充電台を搭載したデスクトップPCなどを発表した。これまでにはないタイプのPCで、筆者的にも興味津々。編集部から上位モデルが送られて来たので、試用レポートをお届けする。

19,900mWhモバイルバッテリとQi充電台を搭載したPC

 発表されたのは、AMDプラットフォーム採用のスタンダードモデル「M11BB」、小型でスリムな「Eee Box PC EB1505」、そして今回ご紹介する「M51AC」2機種。デスクトップスタジオを謳うPCで、WHQL認定基準と比較して43%低ノイズという独自のオーディオ技術「SonicMaster」を採用するなどの特徴を持つ。

 GPUや構成の違いで、上位モデルと下位モデルが用意され、今回届いたのは上位モデルの「M51AC-JP005S」だ。主な仕様は以下の通り。

ASUS「M51AC-JP005S」の仕様
CPUIntel Core i7-4770(4コア/8スレッド、クロック3.4GHz/TB 3.9GHz、キャッシュ8MB、TDP 84W)
チップセットIntel H87 Express
メモリ8GB×2(16GB)
HDD1TB
光学ドライブBDドライブ
OSWindows 8(64bit)
グラフィックスGeForce GTX 650(1GB)/ミニD-Sub15ピン×1、DVI-D×2、DisplayPort×1
ネットワークGigabit Ethernet
その他USB 3.0×6(フロント×2、リア×4)、USB 2.0×4(フロント×2、リア×2)、PS/2×1、音声入出力、CF/SDカード/メモリースティックスロット、Qi対応無線充電器、19,900mWhモバイルバッテリ
拡張スロットPCI Express x16×2、同x1×2
ストレージベイ内蔵3.5インチベイ×1(空)
サイズ/重量175×400×420mm(幅×奥行き×高さ)/約9kg
価格139,800円

 プロセッサは第4世代Core i7-4770で4コア8スレッド、クロックは3.4GHz。Turbo Boost時3.9GHzまで上昇する。キャッシュは8MB、TDPは84Wだ。チップセットはIntel H87 Express。メモリは4スロットあり、8GB×2の計16GB。空きは2つ。OSは、64bit版Windows 8を搭載する。ストレージは1TBで7,200rpmのHDDと、光学ドライブとしてBDドライブを内蔵している。

 グラフィックスは、本来プロセッサ側にIntel HD Graphics 4600を内蔵しているものの、外部GPUとしてGeForce GTX 650(1GB)を搭載。Keplerアーキテクチャのミドルレンジモデルに相当する。出力は、ミニD-Sub15ピン×1、DVI-D×2、DisplayPort×1。

 そのほかのインターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 3.0×6(フロント×2、リア×4)、USB 2.0×4(フロント×2、リア×2)、PS/2×1、音声入出力、CF/SDカード/メモリースティックスロット、そして、Qi(チー)対応無線充電器と、着脱可能な19,900mWhモバイルバッテリを搭載する。バッテリは内蔵時はUPSとして機能し、取外し時には5V/2.1Aのモバイルバッテリとしてスマートフォンなどで使用可能だ。

 拡張スロットはPCI Express x16×2、同x1×2。ただしGeForce GTX 650が2スロット占有するため、空きは各1つとなる。ドライブベイの空きは内蔵3.5インチベイ×1。

 サイズは175×400×420mm(幅×奥行き×高さ)、重量約9kg。価格はこの構成で、139,800円となる。

 なお、下位モデル「M51AC-JP007S」は、プロセッサはそのまま、HDD 500GB、DVDスーパーマルチドライブ、メモリ8GB、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4600、Qi対応無線充電器およびモバイルバッテリ無しで、99,800円だ。

左側面。こちら側にはメッシュがある。右側面は扉の写真からも分かる様に同社のロゴのみ
フロント。上部にUSBなど各ポート、パネルの中には上からCF/SDカード/メモリースティックスロット、BDドライブ、UPS兼モバイルバッテリが入っている
フロント上部。USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。CF/SDカード/メモリースティックスロット。シルバーの部分の右端がパワーボタン
背面。USB 2.0×2、PS/2×1、光デジタル出力、USB 3.0×4、Gigabit Ethernet、音声入出力。パネル側のDisplayPort×1、HDMI×1、DVI-D×1、ミニD-Sub15ピンは未使用のため塞がれている
内部は意外とあっさりしている。内蔵3.5インチベイ×1のみ空きだ
CPU周辺。プロセッサの右側に4本のメモリスロット。ファンは電源、プロセッサ、GPUの計3つ
GeForce GTX 650。DVI-D×2、DisplayPort×1、ミニD-Sub15ピンの出力。2スロットを占有する
電源ユニット。容量500W
付属品。USBキーボードとマウス、電源ケーブル、モバイルバッテリ用のUSBケーブル
UPS兼モバイルバッテリ(内蔵時)。奥にコネクタがあり、カチッと入る。取出す時は右のボタンを押す
UPS兼モバイルバッテリ(取り出し時)。サイズ132×85×20mm、重量262gの14.6V/19,900mWhモバイルバッテリ
上部にQi対応無線充電器がある。パナソニック「QE-PL202」を置いたところ充電が始まった

 筐体は全体的にツヤ無しブラックでまとめられ、どこに設置してもマッチする。フロントは、USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。シルバーの部分の右端がパワーボタン。その下のパネル内に、上からCF/SDカード/メモリースティックスロット、BDドライブ、UPS兼モバイルバッテリが入っている。

 UPS兼モバイルバッテリは、サイズ132×85×20mm(同)、重量262g。14.6V/19,900mWhの容量で、取り出してモバイル機器などに接続すると、5V/2.1Aの出力となる。電源をOFFにして出掛けるときに予備バッテリとしてカバンなどへ入れ、戻ったらまた充電しつつUPSにと、うまく運用すれば結構役に立ちそうだ。

 Qi対応無線充電器は、パナソニック「QE-PL202」など手持ちのデバイスを数種類試したが、全て正常に充電できた。もともとQi充電器自体、さほど高価なものではないが、Qi対応スマートフォンなどもPCの上に置くだけで充電できるのは利便性が高い。

 リアは、USB 2.0×2、PS/2×1、光デジタル出力、USB 3.0×4、Gigabit Ethernet、音声入出力。ただしパネル側のDisplayPort×1、HDMI×1、DVI-D×1、ミニD-Sub15ピンは未使用のため塞がっている。実際はGeForce GTX 650側にDVI-D×2、DisplayPort×1、ミニD-Sub15ピンがあるのでこちらにディスプレイを接続する。

 電源は500Wのユニットを搭載。この構成での拡張は、メモリ2スロット、内蔵3.5インチベイ×1、PCI Express x16×1、同x1×1空きと、あまり幅が無いので特に問題にならないだろう。

 ファンは、プロセッサ、GPU、電源の3つ。騒音は、起動時一瞬するものの、安定すると、耳を筐体に当てないと聞こえないほど静かだ。これなら深夜自宅でも問題無く使用できる。各ポートも十分あり、全体的にうまくまとめられたデスクトップPCと言えよう。

HDDが遅いもののパフォーマンスは抜群

 OSは64bit版のWindows 8。メモリを16GB搭載しているので、メモリ不足になることもない。初期起動時のスタート画面は、10本のアプリがプリインストールされたのみと、それなりにシンプルだ。デスクトップは、同社のツール系やKINGSOFT Officeのショートカットが並んでいる。

 HDDは1TB/SATA 6Gbps/7,200rpm/32MBの東芝「DT01ACA100」が使われ、C:ドライブとD:ドライブの2パーティション構成となっている。それぞれ約150GBと約765GBが割当てられ、C:ドライブの空きは約111GB。

 光学ドライブは「BD B DH12B2SH」、Gigabit EthernetはRealtek製。グラフィックスは、GeForce GTX 650だけが見え、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 4600は使われていない。

スタート画面1。Windows 8標準
スタート画面2。ASUSアプリ以降がプリインストール
起動時のデスクトップ。同社のツールやKINGSOFT Officeのショートカットが左側に並ぶ
デバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは1TB/SATA 6Gbps/7,200rpm/32MBの東芝「DT01ACA100」、光学ドライブは「BD B DH12B2SH」、Gigabit EthernetはRealtek製
HDDのパーティション。C:ドライブとD:ドライブの2パーティション。それぞれ約150GBと約765GBが割当てられている

 プリインストール済みのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「asus webstorage」、「Fresh Paint」、「McAfee セキュリティアドバイザー」、「Skype」、「Microsoft Solitaire Collection」などゲーム系だ。

アプリ画面1
アプリ画面2
アプリ画面3
asus webstorage
McAfee セキュリティアドバイザー

 デスクトップアプリケーションは、「ASUS Suite II」、「Vibe Fun Center」、「Easy Update」、「Waves MAXXAudio」、「ASUSDVD」など同社のツール系、Intelのツール系、そして「KINGSOFT Office」、「McAfeeインターネットセキュリティ」となる。ASUS Power Packはバッテリ残量を表示するのみでプロパティなど、設定画面は特に見当たらなかった。

NVIDIAコントロールパネル
ASUS Easy Update
ASUS Power Pack
ASUS Suite II
ASUS Realtekオーディオマネージャ
Waves MAXXAUDIO

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7の結果を見たい。CrystalMarkの結果も掲載した(今回は4コア8スレッドと条件的に問題があるので参考まで)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 8.1、メモリ 8.1、グラフィックス 7.3、ゲーム用グラフィックス 7.3、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は3841 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 89250、FPU 80048、MEM 88313、HDD 15791、GDI 27733、D2D 20004、OGL 42739。

 ストレージがHDDなのでスコアは低いのは仕方ないとして、プロセッサ、メモリ、グラフィックスと結構な高スコアをマークしている。ドライブベイに余裕があるので、できればC:ドライブをSSDにすると、全体のバランスは良くなりそうだ。

 UPSに関しては、関連記事では30分ほど駆動可能とあったが、実際は、AC電源を消失した場合、速やかに休止状態へ移行、システムやデータが壊れることを防ぐために使われ、仮に余裕があっても他の操作に十分な時間動くわけではない。当然、休止状態になっているため、その後バッテリが放電し切ってもシステムに影響は出ない。仮に少し動いても別途UPSなどに接続しない限り、ディスプレイやネットワーク系がダウンしているので、この仕様がもっとも実用的と言えるだろう。

Windows エクスペリエンス インデックス(Windows 8から最大9.9へ変更)。総合 5.9。プロセッサ 8.1、メモリ 8.1、グラフィックス 7.3、ゲーム用グラフィックス 7.3、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 7。3841 PCMarks
CrystalMark。ALU 89250、FPU 80048、MEM 88313、HDD 15791、GDI 27733、D2D 20004、OGL 42739

 以上のようにASUS「M51AC-JP005S」は、第4世代Core i7-4770プロセッサとGeForce GTX 650を搭載したハイパワーPCだ。

 着脱式の14.6V/19,900mWhモバイルバッテリを装備しており、内蔵時にはUPSとして、取り外した時には5V/2.1Aのモバイルバッテリとしても使用できる。停電時などに心強い装備と言えるだろう。加えてトップにはQi充電台も装備し、対応したデバイスを充電可能と、モバイルデバイスを考慮した構成も魅力的だ。

 単にハイパワーなPCだけでなく、UPS内蔵で安心、加えて日頃持ち歩いている機器との親和性の高いマシンを探しているユーザーにお勧めしたい1台だ。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/