西川和久の不定期コラム

NECパーソナルコンピュータ「VALUESTAR W VW770/HS」
~Intel HM77を採用し「ぱっと観テレビ」を搭載した一体型PC



 NECパーソナルコンピュータは5月8日、Intel HM77 Expressを採用した、液晶一体型PC「VALUESTAR W VW770/HS」などを発表した。ラインナップ上、2012年春モデル「VW770/GS」の後継機に相当する。事前に量産試作機が編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

●正に全部入りのAll-in-One

 前モデルに相当する「PC-VW770GSシリーズ」は、第2世代Intel Core i7-2670QMを搭載し、Intel HM65 Expressチップセット、メモリ8GB、HDD約2TB、グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 3000、23型ワイドIPS液晶パネル、BDドライブ(BDXL対応)、YAMAHA製2.1chステレオスピーカー、地上デジタル・BSデジタル・110度CSデジタル放送対応ダブルチューナなどを搭載した同社の液晶一体型PCだ。

 そして今回、これらの機能を継承しつつ、Intelの新型チップセットHM77 Expressを搭載した「VALUESTAR W」が発表された。主な仕様は以下の通り。

NEC「VALUESTAR W VW770/HS」の仕様
CPUIntel Core i7-2670QM(4コア/8スレッド、2.2GHz/TB 3.10GHz、キャッシュ 6MB)
チップセットIntel HM77 Express
メモリ8GB(DDR3 SDRAM/SO-DIMM 4GB×2、PC3-10600対応)、最大8GB
HDD3TB(7,200rpm)
光学ドライブBDドライブ(BDXL対応)
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ23型ワイド スーパーシャインビューLED IPS 液晶(高色純度)、フルHD/1,920×1,080ドット
グラフィックスIntel HD Graphics 3000、HDMI出力
ネットワークGbE、IEEE 802.11a/b/g/n
その他USB 2.0×4(左右側面それぞれ×1/左サイドはPowered、下側面×2)、USB 3.0×4、メモリカードスロット、音声入出力、HD解像度Webカメラ、HDMI入力×2、D4映像入力×1、地上/BS/110度CSデジタル放送(ダブルチューナ搭載)アンテナ入力端子×1、B-CASカードスロット×1、YAMAHA製 2.1chステレオスピーカー内蔵、ぱっと観テレビ
付属品ワイヤレスキーボード、マウス、AVリモコン
その他ぱっと観テレビ、Microsoft Office Home and Business 2010
サイズ560×237×447mm(ディスプレイ最小傾斜/直立時・高さ最低時)
重量約15.8kg
価格23万円前後

 プロセッサは第2世代のIntel Core i7-2670QM。4コア8スレッドでクロックは2.2GHz。Turbo Boost時3.10GHzまで上昇する。キャッシュは6MB。

 チップセットは発表されて間もないIntel HM77 Express。これまでとは違い、USB 3.0のコントローラをチップセット側に持っているのが特徴だ。メモリは4GB×2の計8GB。OSは64bit版のWindows 7 Home Premiumを採用している。ストレージは7,200rpmの3TB。そして光学ドライブとしてBDXLに対応したBDドライブを搭載している。

 ディスプレイは23型ワイド スーパーシャインビューLED IPS 液晶(高色純度)。解像度はフルHDで1,920×1,080ドットとなる。出力はHDMI×1。グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 3000。ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n。Bluetoothは非搭載だ。

 ここまでで前モデルと違うところは、チップセット(HM65 Express/HM77 Express)とHDD(2TB/3TB)の容量となる。

 その他のインターフェイスは、USB 2.0×4、USB 3.0×4、メモリカードスロット、音声入出力、HD解像度Webカメラ、HDMI入力×2、D4映像入力×1、地上/BS/110度CSデジタルTV(ダブルチューナ搭載)、アンテナ入力端子×1、B-CASカードスロット×1、YAMAHA製 2.1chステレオスピーカー内蔵、ぱっと観テレビ。

 この部分の違いは、USB 2.0×6/USB 3.0×2からUSB 2.0×4/USB 3.0×4へ、HD解像度Webカメラを新搭載、HDMI入力が1つから2つへ、YAMAHA製2.1chステレオスピーカーの出力が3W+3W+ウーファ6Wから4W+4W+ウーファ8Wへ、そして6年ぶりに復活した2秒でTVが起動する「ぱっと観テレビ」(再生専用)となる。

 1つ1つは細かい差異であるが、USB 3.0のポートとHDMI入力の数が増え、サウンドのパワーアップ、そしてダブルチューナに加え“ぱっと観テレビ”があるのは使い勝手が大きく違う。HDMI入力が2つと増え、このPCを中核にしてPCやAVシステムを組むのもさらに容易になった。

 サイズは560×237×447mm(幅×奥行き×高さ/ディスプレイ最小傾斜/直立時・高さ最低時)、重量約15.8kg。カラーバリエーションは、クランベリーレッド/ファインホワイト/ファインブラックの3種類。価格は23万円前後となっている。

正面。TVっぽいデザインだ。普通にリビングなどにあるとPCと気付かないかも知れない左側面。CONNECT、入力切替、チャンネル、音量、輝度、USB 2.0×1(Powered)、マイク入力、音声出力。この高さが最小右側面。光学ドライブ、USB 2.0×1。この高さ(+5cm)と角度(20度)が最大
背面。この位置がスタンドの回転最大(30度)。左側に外部入力系、右側に外部出力系のインターフェイス。スタンド下側にある凸は、スタンドのロックコネクタ部周辺/外部入力。HDMI1、HDMI2、D4映像、音声R/L、アンテナ入力。アンテナ入力の下にB-CASカードスロットがあるコネクタ部周辺/外部出力。HDMI、Ethernet、USB 3.0×4
フロントコネクタ部。フロント中央少し左下にUSB 2.0×2とメモリカードスロット本体上部。電源スイッチと2秒で起動する「ぱっと観テレビ」スイッチ付属品。ワイヤレスマウスとキーボード。AVリモコン。キーボード側からも本体の電源ON/OFFが可能

 筐体のデザインであるが、PCと言うより良い意味で家電のTVっぽい。何も知らずにリビングに置いてあるとTVと思うだろう。今回届いたのはファインホワイト。額縁は狭く、下の部分にYAMAHAのスピーカーシステムを配置。また、その左下にUSB 2.0×2とメモリカードスロットを備える。この位置にあれば、デジカメをUSB経由で接続するのも、メディアを挿しこむのも非常に楽だ。

 スタンドはキーボード収納も兼ねており、フットプリントも大きくぐらつくことは無い。スイベルは従来左右20度だったのに対して30度へ、チルトは後ろへ20度。そして高さは5cmの調整が可能となっている。これだけ動けば、どのような設置環境にも対応できるだろう。またスタンドの裏側にはYAMAHAのサブウーファを装備している。

 ディスプレイはIPS式の23型。流石にこのクラスになると映りは抜群だ。扉の写真は結構な角度が付いているが、IPS式のため映りは全く変わらず、視野角は広い。加えて従来の映像補正「彩りプラス」から、IP変換の「2:3プルダウン」、「動き適応型IP変換」、「動き適応型ノイズ低減」、「斜め千補正」の機能を加えた「彩りプラスex」を搭載し、ワンランク上の映像再生能力を誇る。

 USBポートの配置もなかなか考えられており、先に書いたようにフロント下部にUSB 2.0×2、左側面にパワーOFF時でも電源を供給できるUSB 2.0×1、右側面にUSB 2.0×1、そしてリア側にUSB 3.0×4がまとまってある。通常充電したり、画像などをPCへ出し入れする場合は直ぐ手が届く範囲にあるUSB 2.0ポート。大容量で高速なストレージを常時接続する場合は、リア側のUSB 3.0とうまく使い分けが可能だ。

 付属のキーボードは「クリスタライズキー」と呼ばれる、同社の「LaVie」で採用された、キートップのクリア層が印字を保護して長く快適に使用できタイプをこのVALUESTAR Wにも採用した。アイソレーションタイプで質感やキータッチも良く、マウスと共にワイヤレス接続となる。

 2秒で起動する「ぱっと観テレビ」も便利だ。試したところ、2秒と言うより瞬時にTVが起動する。地上/BS/110度CSデジタル放送/ダブルチューナを搭載しているので、一見必要無さそうだが、後者は録画などに対応する代わりにWindowsが起動しないと動作しない。対して前者はWindowsとは無関係に、単独のTVとして使え、見たい時に直ぐ観れるのが特徴だ。また裏で2番組を同時録画しながら、「ぱっと観テレビ」を使って違う番組を観る事や、「PCテレビ連動」により裏でPCを起動することも可能だ。

 サウンドはYAMAHAの2.1chサウンドシステムだけあって文句無し。出力は4W+4W+サブウーファ8Wと十分以上のパワーがある。ワイドレンジで迫力のあるサウンドだ。

 ノイズや発熱、振動なども特に感じられず、そう言った意味からもTVにしか見えないAll-in-One PC。いろいろな意味で同社の拘りを感じられ、気合の入ったモデルに仕上がっている。

●Core i7と3TBのHDDを搭載し余裕のパワー&容量

 OSは64bit版のWindows Home Premium SP1。標準で8GB搭載しているのでIntel HD Graphics 3000と併用してもメモリ的には余裕がある。解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。多くのショートカットをデスクトップに配置しているのも同社らしい。

 HDDは大容量のST3000DM00/3TBドライブを搭載。実質C:ドライブのみの1パーティションで約2.7TBが割当てられ、初期起動時2.59TBの空きがある。これだけの容量があれば、少々録画がたまっても全く問題無い。BDドライブは「BD-RE_BT20N」。

 USB 3.0のホストコントローラは、HM77 Expressチップセットの特徴であるIntel製「USB 3.0 eXtensibleホスト・コントローラー」となっている。

起動時のデスクトップ。フルHDの1,920×1,080ドット。同社らしく、デスクトップにいろいろな種類のショートカットを配置デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは3TBの「ST3000DM00」、BDドライブは「BD-RE_BT20N」。そしてHM77 Expressチップセットの特徴である「Intel USB 3.0 eXtensibleホスト・コントローラー」HDDのパーティション。実質C:ドライブのみの1パーティションで約2.7TBが割当てられている

 プリインストールのアプリケーションは、「Microsoft Office Home and Business 2010」、「CyberLink PowerDVD」、「CyberLink YouCam 5」、「BookLive!Reader」、「DigiBookBrowser」、「Roxio Creator LJ」、「SmartVision」、「筆ぐるめ」、「ウィルスバスター2012クラウド」をはじめ、「ワイヤレスLANの設定」、「ソフトインストーラ」、「パソらく設定」、「ECOモードの設定」、「Homeリンクマネージャ」、「パワーオフUSB充電の設定」など、ツール類も含め満載だ。

 PC暦何十年の筆者には少しまどろっこしいものの、ビギナーには非常に優しく、同社らしいチョイスそして設定と言えよう。

ムービーフォトメニュー(USBなどへメディアを入れるこれが表示される)ワイヤレスLANの設定(2.4GHzと5GHzの切替え)ソフト&サポートナビゲーター
Network Duetソフトインストーラパソらく設定
ECOモードの設定(省電力設定)Homeリンクマネージャ/設定パワーオフUSB充電の設定

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.5、メモリ 7.6、グラフィックス 6.2、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 5.9。バランスを考えると2ドライブ構成にして、プライマリドライブにSSD、セカンダリドライブに3TBが欲しいところか。直販モデルではSSD+HDDの構成も選択可能だ。

 CrystalMarkは、ALU 54649、FPU 49650、MEM 45060、HDD 19956、GDI 15565、D2D 3119、OGL 4762。Windows エクスペリエンス インデックスの傾向と同じだが、重い3Dゲームでもしない限り、十分以上のパフォーマンス。第2世代のCore i7とは言え、まだまだ現役だ。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 5.9。プロセッサ 7.5、メモリ 7.6、グラフィックス 6.2、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 5.9CrystalMarkは、ALU 54649、FPU 49650、MEM 45060、HDD 19956、GDI 15565、D2D 3119、OGL 4762


 以上のようにNECパーソナルコンピュータ「VALUESTAR W VW770」は、プロセッサは第2世代のままであるが、2秒でTVが観れる「ぱっと観テレビ」を6年ぶりに搭載、IntelのHM77 Express新型チップセット、余裕のHDD 3TB、HDMI入力2系統、フロントアクセスなど、前モデルから続くIPSパネルやダブルチューナと言ったバリューの部分はそのまま継承し、さらに使い易くした新型だ。

 PC、TV、オーディオなど、全てを1台のマシンへ集中させ、かつ、高品位なPCを求めているユーザーにベストマッチの製品と言えよう。