西川和久の不定期コラム

EPSON「Endeavor MR4300E」
~第3世代Core i7搭載のスリムデスクトップPC



 エプソンは4月24日、第3世代Coreプロセッサ搭載スリムデスクトップPCを発表した。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けする。筆者としても第3世代Coreプロセッサ搭載機は初めて触るので楽しみながらのレポートとなった。

●同社初のIvy Bridge搭載機

 4月24日にインテルから第3世代Coreプロセッサが発表され、それを受けてこの「Endeavor MR4300E」も発表された。対第2世代比で、CPU性能が最大20%、メディア/3D処理性能が約2倍にアップ。従来の内蔵Intel HD Graphics 2000/3000の性能は、プロセッサの性能を考えると、今となっては低めと言うこともあり、新製品で特に期待したい部分だ。これに関しては後半のベンチマークテストで検証したい。

 新型チップセット「Intel 7」シリーズは、待望のUSB 3.0とPCI Express 3.0に対応した。これによってPC性能のボトムアップが可能となる。今回届いた機体の仕様は以下の通り。

【EPSON「Endeavor MR4300E」の仕様】
CPUIntel Core i7-3770K(4コア/8スレッド、クロック3.50GHz/Turbo Boost 3.9GHz、キャッシュ 8MB、TDP 77W)
チップセットIntel H77 Express
メモリ8GB/PC3-12800(4スロット/空き2)
SSD40GB(ISRT用)
HDD500GB(7,200rpm SATA 6Gbps)
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 7 Home Premium SP1(64bit)
グラフィックス内蔵Intel HD Graphics 4000、DVI-D、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGigabit Ethernet
その他USB 2.0 前面×1/背面×4、USB 3.0 前面×2/背面×2、IEEE 1394、SDカード/メモリースティック対応カードリーダ、PS/2×2、音声入出力
拡張スロットPCI Express x16/x4が各1、x1が2
電源300W(国際エナジースタープログラムVer.5.0適合)
サイズ・重量98×405×368mm(幅×奥行き×高さ)/約7.5kg(基本構成時)
直販価格124,740円

 プロセッサは第3世代Intel Core i7-3770K。4コア8スレッドでクロックは3.50GHz、Turbo Boost時3.9GHzまで上昇する。またK型番からも分かるようにオーバークロック対応モデルだ。BTOではPentiumからCore i7まで色々なプロセッサを選べるが、第3世代は、Core i5-3450(3.1GHz)、i5-3570(3.4GHz)、i7-3770(3.4GHz)、i7-3770Kの4つとなる。

 チップセットはIntel Intel H77 Express。メモリはPC3-12800対応で4GB×2の計8GB。4スロットあり空きが2つ。最大32GBまで搭載できる。グラフィックスはDirectX 11に対応したプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000。出力はDVI-DとミニD-Sub15ピン。なおBTOで「Radeon HD 6570/1GB」、「GeForce GT 430/1GB」、「Quadro 600/1GB」の選択も可能だ。

 ストレージは、500GB HDDと40GB SSDでISRT(Interl Smart Response Technology)の構成になっていた。光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ。BTOでは500GB/1TB/2TB HDD、128/256GB SSD、RAID 1キットなどの組合せもできる。

 インターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 2.0前面×1/背面×4、USB 3.0前面×2/背面×2、IEEE 1394、SDカード/メモリースティック対応カードリーダ、PS/2×2、音声入出力。USB 3.0が前面と背面にそれぞれ2つあるのがポイントだ。

 拡張スロットは、PCI Express x16/x4が各1、x1が各2。電源は国際エナジースタープログラムVer.5.0適合した300W。強力な外部GPUを搭載すると少し不足になりそうな感じだが、高さ的にロープロファイルとなるため、あまり強力なものは入らず、気にすることは無いだろう。

 OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。BTOでHome Premium/Professonal/Ultimate(各32/64bit)に対応する。

 サイズは98×405×368mm(幅×奥行き×高さ)。重量約7.5kg(基本構成時)。今回の構成での価格は、124,740円となる。

前面。USB 3.0×2、音声入出力、USB 2.0×1左側面。ちょうどCPUクーラーの上に相当する部分にメッシュがある。右側は同社のロゴのみ背面。電源ユニットが下側。拡張バス用のパネルが4つ、上部に各種ポートなど
背面(アップ)。PS/2×2、USB 2.0×4、IEEE 1394、DVI-D、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×2、Ethernet、音声入出力パネルを開いたところ。パネルの下にSDカード/メモリースティック対応カードリーダ内部(引き)。右下にISRT用SSD 40GBが見える。HDDはこの裏。拡張バスは、PCI Express x16/x4が各1、x1が各2
内部(CPU周辺)。CPUの右側に4本のメモリスロット。内2つが実装済み電源ユニット。国際エナジースタープログラムVer.5.0適合した300W付属品。縦置き用のスタンド、横置き用のゴム足、PS/2ポートのマウスとキーボードなど

 ややクリーム色の白を基調としたシンプルなスリムデスクトップPCで、自宅でも仕事場でも場所を選ばない。縦置き用のスタンドと横置き用のゴム足が付属し、スペースに合わせて設置可能だ。

 フロント上部にはパネルがあり、開けるとカードリーダが現れる。下にはUSB 3.0が2つと音声入力、そしてUSB 2.0も1つ。用途に応じて使い分けが可能となっている。背面上部には多くのポートを搭載。IEEE 1394とPS/2ポートまであるのが特徴的だ。

 パネルはネジ2本を外せば、スッと引っ張れるタイプだ。内部は比較的シンプルで、HDD用のマウンタは縦方向になっている。手前に40GBのSSD、その奥に500GBのHDDを配置。両方で1つのドライブを構成しISRTで作動する。3.5インチHDDベイが2基あり、最大SSD×2+HDD×1を搭載できる。メモリスロットはプロセッサの右側に4つまとまってありアクセスは容易だ。

 振動やノイズは、起動時若干あるものの直ぐに落ち着き静かになる。自宅で使うにしても十分許容範囲。発熱は3DMark 11のテストをしている最中もあまり感じられなかった。

 全体的にうまくまとめられたスリムタイプのデスクトップPCであり、特にこれと言って不満やウィークポイントなどは見当たらない。

●グラフィックスのパフォーマンスが向上

 OSは64bit版Windows Home Premium SP1。メモリを8GB搭載していることもあり、プロセッサ内蔵グラフィックスとメモリを共有しても余裕がある。デスクトップ左側には、同社お馴染みの、「PCお役立ちナビ」や「初期設定ツール」などのショートカットが並んでいる。

 HDDはSATA 6Gbps対応7,200rpm 500GBの「ST500DM002」で、SSDはIntelの「SSDSA2BT04 」。前述の通り、SSDをキャッシュとして使うISRTの構成となっている。この関係もあり、デバイスマネージャでのドライブ表示は「2W9AA5b0」と、実際には存在しない型番が表示される。パーティションはC:ドライブのみで約465GB割当てられ、初期起動時空きは約433GB。光学ドライブは「Optiarc DVD RW AD-7290H」が使われていた。

 今回は初Ivy Bridgeと言うこともあり、デバイスマネージャーの主要な部分を全て掲載した。特徴的なのはディスプレイアダプタが「Intel HD Graphics 4000」、システムデバイスに「Intel 7 Series/C216 Chipset Family」と「Intel H77 Express」、そして「Intel USB 3.0 eXtensibleホストコントローラ」の文字が見える事だろう。

起動時のデスクトップ。デスクトップ左側には、同社お馴染みの、「PCお役立ちナビ」や「初期設定ツール」などのショートカットが並ぶHDDのパーティション。500GBのHDDと40GBのSSDを使いISRTの構成
デバイスドライバ/主要なデバイス1。光学ドライブは「Optiarc DVD RW AD-7290H」、IEEE 1394はVIA製、Intel HD Graphics 4000の文字が見えるデバイスドライバ/主要なデバイス2。システムデバイスに「Intel 7 Series/C216 Chipset Family」と「Intel H77 Express」デバイスドライバ/主要なデバイス3。USB 3.0コントローラーに「Intel USB 3.0 eXtensibleホストコントローラ」

 プリインストールのアプリケーションは、先に触れた同社のユーティリティ系やIntelなどデバイスのツール系、「Nero Kwik Media」、「Nero 10」、「Corel WinDVD」、「マカフィー セキュリティーセンター」となる。

 ISRTの設定はBIOSやRapid Storge Technologyで行なう。ステータスや管理パネルを見ると「高速モード:拡張」、「ライトバックキャッシュ:無効」となっているのが分かる。後述するCrystalMark/HDDもこの設定のまま行なった。

BIOS/Rapid Storge TechnologyRapid Storge Technology/ステータスRapid Storge Technology/管理
Rapid Storge Technology/高速インテル グラフィックス/メディアコントロール・パネル/システム情報nero Kwik Media

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。参考までに3DMark 11の結果も掲載した。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.7(7.4)、メモリ 7.8(5.9)、グラフィックス 6.5(5.2)、ゲーム用グラフィックス 6.5(4.7)、プライマリハードディスク 5.9(5.9)。カッコ内はIntel Core i5-2310(2コア/4スレッド、2.9GHz/TB 3.2GHz/Intel HD Graphics 2000)の値だ。プロセッサやメモリはもちろん、グラフィックス系はどちらも6.5と、内蔵タイプとしては頑張っている。実際、Windowsを操作した時も表示や動きのキレが良い。

 CrystalMarkは、ALU 83198(64127)、FPU 68912(56338)、MEM 65933(46803)、HDD 15692(14452)、GDI 21050(17173)、D2D 2989(2124)、OGL 9113(2947)。ここで注目すべきはOGLの値が大幅に向上していることだ。とは言え、試しに3DMark 11を動かしたところ、映像は3~5fpsとカクカク表示。残念ながら重い3Dゲームに耐えられるほどの性能は無い。

 また、HDDに関しては、ISRT/ライトバックキャッシュ:無効の状態だと、READ時のみSSD側が使われることになる。OSのシステムファイルやよく使うDLLなどがキャッシュにあれば、ブートやアプリケーションの起動が高速になる。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 6.5。プロセッサ 7.7、メモリ 7.8、グラフィックス 6.5、ゲーム用グラフィックス 6.5、プライマリハードディスク 5.9
CrystalMark。ALU 41068、FPU 30287、MEM 34591、HDD 44441、GDI 13807、D2D 1420、OGL 1863
3DMark 11。P765 3DMarks


 以上のようにEPSON「Endeavor MR4300E」は、第3世代Coreプロセッサを搭載したスリムデスクトップPCだ。ストレージはISRTの構成も可能。BTOにも対応しているので、予算や必要なファンクションに応じてカスタマイズ可能なのも嬉しいポイントだ。メーカー製のPCで第3世代Coreを使ってみたいユーザーにお勧めの1台と言えよう。