■西川和久の不定期コラム■
東芝は5月16日、デザインを一新した15.6型ノートPC夏モデルを一斉に発表した。今回はその中から、Sandy Bridgeベースの新型Pentiumプロセッサを採用し、地上デジタルTVチューナ搭載のエントリー機をご紹介する。なお、製品版と異なるスペックの試作機のため、ベンチマークテストは禁止となっているので、テストデータは掲載していない。予めご了承頂きたい。
16日に発表があったモデルは全て15.6型の液晶パネルを搭載したノートPCなのだが、各モデル仕様が結構異なる。大きく分けると「dynabook Qosmio T751/T551」と「dynabook T551/T351」の4タイプだ。
“Qosmio”は地上デジタルTVチューナ内蔵。「T751」はCore i5-2410M搭載の1種類。「T551」は上位/中位/下位と3種類で、「T551/T6C」はCore i3-2310M+Office Home and Business 2010、「T551/T5C」はPentium B940+Office Personal 2010、「T551/T4C」はPentium B940+Office Personal 2010(Bluetooth無し)となる。全てBlu-ray Discドライブ搭載だ。
TVチューナ無しのスタンダードタイプは、「T551」がCore i7-2630QMそしてBDドライブ搭載。「T351」は3種類で、「T351/57C」はCore i5-2410M+Office Home and Business 2010、「T351/46C」はCore i5-2410M(Office無し)、「T351/34C」はPentium B940。DVDスーパーマルチドライブ搭載となる。
今回届いたのは「dynabook Qosmio T551/T4C」。主な仕様は以下の通り。
東芝「dynabook Qosmio T551/T4C」の仕様 | |
CPU | Intel Pentium B940(2コア、2GHz、キャッシュ2MB) |
チップセット | Intel HM65 Express |
メモリ | 4GB(2GB×2) PC3-10600(DDR3-1333) SDRAM (最大8GB)/2スロット空0 |
HDD | 750GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit) Service Pack 1 適用済み |
ディスプレイ | 15.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | 内蔵Intel HD Graphics 3000、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n |
光学ドライブ | Blu-ray Discドライブ(スーパーマルチドライブ機能対応) |
その他 | USB 3.0×1、USB 2.0×3、メディアスロット、地上デジタルTVチューナ、マイク/オーディオ入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ、アンテナ入力(同軸)、harman/kardonステレオスピーカー、モノラルマイク |
サイズ/重量 | 380.5×254×28~35.6mm(幅×奥行き×高さ)/約3kg |
バッテリ駆動時間 | 約1.7時間 |
店頭予想価格 | 14万円台半ば |
プロセッサはSandy Bridge仕様の新型PentiumプロセッサB940。2コア、クロック2GHz、キャッシュ2MBとなっている。TurboBoostやHyper-Threadingには対応していなが、64bitそしてIntel VTには対応している。従って必要であればXP Modeも動かすことができる。コスト的にもCore iプロセッサより安くなるため、今後エントリー機に多く使われることが予想される。
HDDは5,400rpmの750GB、そしてBDドライブを搭載する。ただし今回は量産試作機の関係で7,200rpmで500GBとなっていた。
チップセットはIntel HM65 Express。メモリスロットは2つあり、2GB×2の4GB搭載。最大8GBとなる。グラフィックスはCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000。この辺りの仕様はPentium型番とは言え、他のCore iプロセッサと同じだ。OSは64bit版Windows 7 Home Premium Service Pack 1、そしてInternet Explorer 9も導入済みだ。
ディスプレイは15.6型HD解像度(1,366×768ドット)。出力はHDMI出力とミニD-Sub15ピンを備えている。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。上位モデル「T551/T5C」にあるBluetooth 3.0+HSは非搭載となる。少し不思議なのは最上位モデル「T751」もBluetoothは搭載していない。何か理由があるのだろうか。
その他のインターフェイスは、USB 3.0×1、USB 2.0×3、メディアスロット、地上デジタルTVチューナ、マイク/オーディオ入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ、アンテナ入力(同軸)、harman/kardonステレオスピーカー、モノラルマイク。1つとは言え、USB 3.0があるのは嬉しいポイントだ。またこのUSB 3.0ポートはPowered対応となっている。
サイズは380.5×254.0×28.0~35.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約3kg。バッテリ駆動時間が2時間を切っていることもあり、主に室内での移動を仮定しているので、特にサイズや重量は問題にならないだろう。
価格は14万円台半ば。最近素の15.6型ノートPCなら5~6万円程度で買えるものもあるため、地上デジタルTVチューナとBDドライブ、そして同社のプラスαの機能やクオリティをどう見るかによって、価値観は変わってくると思われる。
今回届いた実機のカラーは「ベルベッティホワイト」。トップカバーやパームレスト、キートップ、液晶パネルのフチまで含め真っ白。本体部分のみがブラックとなる。なかなか綺麗なボディだ。トップカバーは写真からも分かるように、横に凹凸のある細かいラインが何本も入っていて、指紋などが付かず快適に使用できる。
光沢タイプの15.6型液晶パネルは、発色やコントラストも良く、なかなか見栄えする映りだ。明らかに5~6万円台の同じパネルサイズ搭載機より、クオリティは上。視野角もそれなりに広い。
キーボードはアイソレーション・タイプのテンキー付きだ。キーピッチは約19mm確保され、たわむ事も無く気持ち良くタイピングできる。またメインキーとテンキーの間には隙間があり、ミスタッチは少ない。
パームレストは本体のサイズが大きい分、余裕がある。タッチパッドは周囲に切り込みがあるだけでほぼフラット。少しザラザラするものの、違和感は無い。タッチパッドの上部中央にタッチパッドON/OFFボタンが付いているため、付属の無線マウスを使うときOFFにすれば誤作動も発生しない。ボタンは左右独立タイプだが、少し硬いのが気になった。
今回、少し戸惑ったのはB-CASカードスロットが外側からはどこにも見当たらなかったことだ。裏はネジ1本でパネルが外れ簡単にメモリやHDDにアクセスできるが、該当スロットは無く、結局バッテリを外した内側にスロットがあった。量産試作機と言うこともあり、紙のマニュアルが無く気付くのが遅れてしまった。
発熱やノイズ、振動に関してはボディが大きい分、十分に処理されている。全く気になることはなかった。
最後に音に関して。harman/kardonはJBLやマークレビンソンなど世界有数のオーディオブランドを有するオーディオ専業メーカーだ。そのメーカーのスピーカーだけに期待が持てる。加えてMAXX AUDIO WAVES、DOLBY ADVANCED AUDIOにも対応。ノートPCとしてはなかなか気合が入った仕様と言えよう。
実際のサウンドは、中高域に透明感があり抜けも良く、ロックでもJazzでもクラシックでもうまくこなす。低音はサブウーファが無いため、迫力には欠けるものの、MAXX Audio WAVESを使って自然なブーストが可能だ。試した範囲ではMaxxBassを100にするとボン付くため、50~60程度が調度いい。音楽を聴く時でもプリセットの「Movie」が個人的には好みだった。最大出力は十分あり、また歪まないので、ついつい上げてしまうほど。この音であれば音楽も動画も十分に楽しめる。
MAXX Audio WAVES/MAIN | DOLBY ADVANCED AUDIO | 東芝スリープユーティリティ |
さらに「東芝スリープユーティリティ」で「スリープアンドミュージックを有効」にチェックすると、本体の電源がOFFの時でも、ライン入力経由でiPhoneやiPodなどからアクティブスピーカーとして使える機能も搭載している。入力がアナログなので、PC本体からの再生と比較するとクオリティは落ちるものの、この二度美味しい仕掛けはアイディアとして面白い。もちろんアクティブ式なので、本体の電源はOFFでもACアダプタ、もしくはバッテリの電力は消費する。
●AV機能を中心に多機能のノートPCOSは64bit版のWindows 7 Home Premium。Service Pack 1適用済みだ。メモリを4GB搭載しているので、Intel HD Graphics 3000とメモリを共有しても、アプリケーションなど余裕で動く。
量産試作機の関係からHDDは、「ST9500423AS」を搭載。7,200rpmの500GBとなっている。C:ドライブ約400GB、D:ドライブ約50GBの2パーテーション。C:ドライブは367GB空きだ。製品版では5,400rpmの750GBのHDDが使われるので、パーテーションの切り方などは異なるだろう。BDドライブは「HL-DT-ST BD-RE BT11F」だった。
その他はIntel HM65 Expressチップセットとして標準的な構成だが、地上デジタルTVチューナとして「TOSHIBA USB ISDB-TV Tuner(x64)」のデバイス名が見える。
プリインストールソフトウェアは大小かなりの数となる。まず初心者向けとして、「ぱらちゃん」、「PC引越ナビ Ver.4」、「パソコンで見るマニュアル」、「おたすけナビ」、「動画で学ぶシリーズ」など。ぱらちゃんは、アザラシをモチーフとした東芝製PCのキャラクターだ。
ぱらちゃん | PC引越ナビ Ver.4 | パソコンで見るマニュアル |
AV関係としては、時系列順に過去に扱ったデータにアクセスできる「TOSHIBA ReelTime」、Webカメラを使った手のジェスチャによるコントロール「ジェスチャコントローラ」、「TOSHIBA VIDEO PLAYER 3D」、「Corel Digital Studio for TOSHIBA」など。特に「TOSHIBA VIDEO PLAYER 3D」は、超解像度技術による動画のアップサンプリングやリアルタイム3D変換表示(ハーフサイズ幅のサイドバイサイド)にも対応(Windows Media Playerでもプラグインによりアップサンプリング可能)。「レグザリンク(HDMI連動)」も含め、この辺りは同社ならではと言える。
特に動画のアップサンプリングは、DVDビデオなどをHD解像度(以上)の液晶ディスプレイで観る時、ジャギーなどが無くなりスムーズな表示となるので効果的。活用したい機能と言えよう。
地上デジタルTVチューナ関連は、「Qosmio AV Center」によって一括管理され、「TV」、「番組ナビ」、「録るナビ」、「見るナビ」などから構成されている。マウスからリモコン(オプション)へ持ち替えるだけでUIが変わったり、番組のシーンごとに自動抽出し表示されるキーワードから情報を検索できる「気になるリンク」ボタン、SDメモリカードへの書き出しなど、UIを含め、さすがに液晶TV「REGZA」を作っているメーカーだけにかなりこだわった内容で、全ての機能を紹介するとそれだけで本1冊になりそうな雰囲気だ。
電子ブック関連としては、「ブックプレイスリーダー」、「ebi.BookReader3J」、「FlipViewer」などが入っている。
TOSHIBA ReelTime | TOSHIBA VIDEO PLAYER 3D | Corel Digital Studio for TOSHIBA |
Qosmio AV Center/ホーム画面 | Qosmio AV Center/番組ナビ | ブックプレイスリーダー |
そのほか、急な衝撃からHDDを守る「東芝HDDプロテクション」、Windowsログイン画面時に無線LANのアクセスポイント状況を表示する「東芝無線LANインジケーター」、「TOSHIBA Bulletin Board」など、細かいツール類。「Office Personal 2010」、「ウィルスバスター2011クラウド」、「ATOK無償試用版」も含まれる。
なお「Qosmio AV Center」と「ブックプレイスリーダー」の画面キャプチャに関しては、著作権保護の関係だろうか、[PrintScreen]キーやツールを使った画面キャプチャを一切受け付けなかったため、写真を撮影し掲載した。
省エネ関連としては「TOSHIBA ecoユーティリティ」が挙げられる。画面キャプチャは中央から左側がACアダプタ駆動、右側がバッテリ駆動でのグラフだ。ecoモード+バッテリ駆動時では消費電力が11Wに抑えられているのが分かる。ACアダプタ駆動でも15W程度だ。ピークシフトに関しては、もともとバッテリ駆動時間が短いため対応していない。
TOSHIBA ecoユーティリティ。中央から左側がACアダプタ駆動、右側がバッテリ駆動 | ecoモードで作動中は、ecoスイッチがグリーンに点燈する |
全体的に至れり尽くせりの構成となっているが、個人的には、初心者向けや電子ブックなどのソフトウェアを減らし、もっとAV関連に特化した方が、このマシンの特性が引き立つように思う。
以上のように東芝「dynabook Qosmio T551/T4C」は、エントリー機と言っても、超解像度技術による動画のアップサンプリング、REGZA並みの機能を持つ地上デジタルTVチューナ、harman/kardonステレオスピーカーとMAXX AUDIOのコンビネーションによるノートPCとしてはハイクオリティな音質など、印象的な仕上がりとなっている。プリインストールのソフトウェアを詰め込み過ぎの感じはするが、AV機能を重視したノートPCを求めているユーザーにお勧めできる製品だ。特に音についてはクラスを超えた水準なので、ノートを持ち歩かずAV視聴中心の人は、ぜひ実機を見て欲しい。