西川和久の不定期コラム

日本HP「Officejet Pro 8500A Plus」
〜受信したFAXをメールへ転送できる複合機



 2010年末、3年ほど使っていたインクジェット複合機が壊れてしまい、新しいのを買うことになった。新調するなら自動両面印刷/両面ADF、そしてFAX付をと探したところ、今回紹介する日本ヒューレット・パッカード「Officejet Pro 8500A Plus」をチョイス。セットアップしながらのレポートをお届けする。

●Officejet Pro 8500A Plusの仕様

 同社のインクジェット複合機は、どちらかと言えば家庭用のPhotosmartシリーズとENVYシリーズ、そしてどちらかと言えばオフィス用のOfficejetシリーズの大きく2種類に分かれている。「どちらかと言えば」を入れたのは、主に違いはインクが染料系か顔料系かの違いだけで、価格帯そして大きさ的に大差無く、例えばOffcejetを家庭で使っても何の問題も無いからだ。

 今回紹介するOfficejet Pro 8500A Plusは、自動両面印刷、両面ADF、タッチスクリーンなどを備えたOfficejetシリーズの最上位モデルとなる。主な仕様は以下の通り。

・オンデマンド型サーマル・インクジェット/4色独立(C/M/Y/K)、CMYK全色顔料系 2,112ノズル
・A4印刷速度:モノクロ35ppm(毎/分)、カラー34ppm、解像度最高4,800×1,200dpi
・CISセンサー光学解像度4,800x4,800dpi、最大リーガル
・前面1段式給紙カセット A4普通紙:最大250枚、フォト:最大55枚
・自動両面印刷機能搭載
・両面スキャン対応(2パス)ADF/普通紙最大50枚
・4.3型カラーLCDタッチスクリーン
・カラーFAX対応(デジタルSEND時モノクロのみ)/スーパーG3
・有線LAN 100Base-TX/10Base-T、無線LAN IEEE 802.11b/g/n(WPS対応)/USB 2.0×1、PictBridge
・メモリースティック Duo/SDメディアカード/MMCリーダー×1
・502×472×308mm(幅×奥行き×高さ)/約12.7kg
・価格 39,900円(HP Directplus)

 操作パネルはタッチ式の4.3型と大きめで、以前ご紹介した「Photosmart Premium C310c」と同じだ。位置が中央ではなく、右側にある程度の違いとなる。

 インクカートリッジはCMYK4色独立、全色水などに強く、シャープな印字の顔料系インクが使われている。対して家庭用のシリーズは、インクカートリッジが写真などを鮮やかに印刷できる染料系になっている(黒だけ顔料系のモデルもあり)。ただ、全色顔料系でもフォト用紙に写真を印刷した印象は十分綺麗でフォトクオリティ。もはや普段使いには顔料系でも十分という印象を受ける。

 トレイは前面1段給紙カセット式だ。A4普通紙なら最大250枚セットできる。後ろトレイは無い。自動両面印刷は標準で対応。Officejetの性格上、主は業務用途なのでこの仕様でも特に問題無いが、以前筆者が使っていた複合機は、前面2段給紙カセット式で普通紙とフォト用紙を同時にセットでき、この点だけは不便になる。特に多くのA4普通紙が入るだけに、1枚だけフォト用紙に写真を印刷したい時でも、何十枚のA4用紙を一旦取り出し、フォト用紙を1枚セット、印刷後、また何十枚ものA4用紙をセットし直さなければならず使い勝手は悪い。解像度は最高4,800×1,200dpiとあまり高くなく、印刷速度はモノクロ35ppm/カラー34ppmと、家庭用と比較して数枚速いだけとなる。

 逆にスキャナは、CISセンサー光学解像度4,800x4,800dpi。家庭用と倍以上の高解像度だ。主にコピー機として使う時にも、よりオリジナルを忠実に再現できる。2パス式だが両面ADFを搭載しているのもポイントが高い。

 インターフェイスは、WPSに対応したIEEE 802.11b/g/n無線LAN、100BASE-TX/10BASE-Tの有線LAN、FAX、USB 2.0、USBメモリやデジカメのPictBridge用のUSBポート。メディアリーダはメモリースティック(PRO)デュオ/SDカードに対応と、一通りある。

 インクは、インクカートリッジ/黒(C4902AA)、インクカートリッジ/黒増量(C4906AA)、インクカートリッジ/シアン(C4907AA)、インクカートリッジ/マゼンタ(C4908AA)、インクカートリッジ/イエロー(C4909AA)の5種類。黒だけ増量インクが用意されている。

 サイズは502×472×308mm(幅×奥行き×高さ)。ADFがある分、丈があるものの、フットプリント自体はあまり大きくない。重量は約12.7kgとこのクラスの複合機としては、10kgを超え重量級だ。

 価格は39,900円(HP Directplus)。筆者はAmazonから購入したが、数千円安かった。複合機としては高価な方だが、自動両面印刷、両面ADF、FAX、その他これからご紹介するネットワークを使ったいろいろな機能などを考えると、コストパフォーマンスは高いと言えよう。

ADFがある分、高さがある。パネルやメディアスロットなど操作系は右側にまとまっている 背面に電源コネクタ、有線LAN、USB、LINE-IN、LINE-OUT 前面給紙カセットは普通紙だと最大250枚入るものの、一段でフォト用紙などを一緒に入れることはできない
操作パネル周辺。4.3型と大きめなタッチパネル。角度は変更可能だ スキャナー部。右手前が原点。ただADFがある分、持ち上げ難い ADFは2パス式の両面スキャンに対応。普通紙で最大50枚
インクは結構大きなカートリッジ。全て顔料系となっている カードリーダなど。メモリースティック系とSDカード系の2つ、上にUSBポートがある 付属品一式。ヘッド×2、電話ケーブル、ACケーブル、ACアダプタ、インクカートリッジ×4、ネットワークケーブル、USBケーブル、簡易マニュアル、ドライバCD-ROM

 本体の作りは同社のENVY以外の、他の複合機と比較しても差がなく、ADFがある分大柄に見える程度となっている。

 デザインはオールブラック。部分的につや消し黒も使われているが、ほとんど光沢の黒。従って指紋あとは強烈に残るし、ホコリも目立つ。複合機のレビューを書いていて何時も思うのだが、他社そして家庭用も含め、本当に光沢黒が複合機に必要なのだろうか。また大部分がプラスチッキーで厚みも無くペラペラ。コストダウンの影響が外装に現れている。

 後ろに自動両面印刷ユニットがあるため、壁などにピタリと付けることはできないが、十分許容範囲。ACアダプタはコンパクトではないものの、巨大でもない。またボタンらしいボタンは、操作パネルを除けば、電源スイッチのみと、非常にシンプルな構成になっている。

 ソフトウェアも含め、全体的な使用感は、特に可も無く不可も無く、無難に複合機として機能している。ただ以前から指摘している、横揺れやノイズは相変わらず。冒頭で家庭でも使えると書いたものの、深夜使うのは躊躇しそうだ。

●単独使用/プリント

 単独使用でのプリントは写真のみとなる。機能はある程度充実しており、「表示と印刷」レイアウト/用紙の種類/日付スタンプ/編集:回転/トリミング/写真の修整/赤目除去/明度/カラー効果、「作成」アルバムページ/定期券サイズ/パスポートサイズ、「再印刷」(スキャンして印刷)を、操作パネルから設定できる。

 ただ、先に書いたように、Officejetは主に業務用途なので、通常セットされている用紙はA4普通紙。この単独プリントで写真データしか扱えないのは少々疑問だ。例えばメディア内にあるPDFをそのまま印刷出来るような機能が欲しいところ。

 フォト専用紙に印刷した時のクオリティは、写真からは分かり辛いかも知れないが、普段使いなら十分。何時も同じ写真を印刷してレビューしているので、他社も含め比較しても、発色の傾向こそそれぞれ若干違うが、大枠問題無いプリントに仕上がっている。

サムネイルの表示 目的の写真を選ぶ L判で約80秒

●単独使用/スキャナ

 スキャナは、メモリデバイス、コンピュータ、ネットワークフォルダ、電子メールと、スキャンしたデータの保存先をいろいろ選べる。フォーマットは、カラーPDF(圧縮)/カラーPDF/モノクロPDF/JPEGカラー/JPEGグレースケール/TIFFモノクロ、解像度600dpi/300dpi/200dpi/75dpi、設定で片面原稿/両面原稿/濃さ/用紙サイズの指定もできる。プレビュー後は、トリミングや回転にも対応。

 単独使用でPDFに対応しているのはもちろん、用途や環境に応じて保存先を豊富に選べるのはなかなか魅力的だ。

スキャンメニュー プレビュー PDFでメディアへ保存。カラー300dpiで約22秒

●単独使用/コピー

 単独コピーは、自動両面印刷、両面ADFに対応している分、多彩なコピーが可能だ。片面原稿→片面コピー、片面原稿→両面コピー、両面原稿→片面コピー、両面原稿→両面コピーと、全てのパターンに対応している。ただし4in1などレイアウトして一枚にまとめるような機能は無い。コピー設定では、HP修正コピー/サイズ変更/品質/濃く薄く/用紙サイズ/用紙の種類/トレイ設定/部単位で印刷/余白の変更/トリミング/強調などの設定が可能だ。

 試しに同社が公開している複合機カタログ(PDF)をダウンロードし、両面印刷したものを原稿とし、両面原稿→両面コピーして見たが(動画参照)、どちらがオリジナルかコピーか分からないほどのコピーとなった。2パス式の両面ADFなので、原稿が行ったり来たりする分、時間はかかるものの、これなら十分だろう。

コピーメニュー 両面スキャン/両面印刷/カラー 約60秒で両面カラーコピー完了

【動画】両面スキャン両面カラーコピー

●単独使用/「メールdeプリント」、「アプリdeプリント」、AirPrint

 このOfficejet Pro 8500A Plusは、「Photosmart Premium C310c」でご紹介した、プリンタ独自が持っているメールアドレスへ写真や文書データを添付し、スマートフォンなどからメール送信すれば印刷される「メールdeプリント」、Web上のサイトをプリンタ用にカスタマイズした形で操作パネルからアクセス/内容を印刷できる「アプリdeプリント」、そして、iOS 4.2.1で動いているiPhoneやiPadからWi-Fiを使いダイレクトに印刷できるAirPrintにも対応している。

 ただし、出荷ロットにもよるだろうが、筆者の購入したのは、これらに対応するのに、ファームウェアのアップデートが必要だった。ただファームウェアのアップデートと言っても難しいことはなく、セットアップが終わりネットにつながった段階で、メッセージを表示した後、自動的にアップデートが始まり、再起動すれば完了と簡単なもの。途中で電源ラインを外すなど、目茶なことをしない限り大丈夫だ。

 各機能の詳細は文末のリンクからご覧頂きたいが、特にAirPrintが便利で、例えばメールに添付されたPDFなどを、部数/印刷ページ範囲/両面印刷の有無まで含め設定でき、即プリントできる。反応も早い。これなら目の前にパソコンがあっても、何か作業している時などは、机の上にあるiPhoneからそのままプリントした方が面倒がない。

 気になった点は、11月の中旬に「アプリdeプリント」に対応している「Photosmart Premium C310c」の記事を掲載してから、現段階でアプリの数がほとんど増えていないこと。使えだせば便利な機能だけに、頑張って増やして欲しいものだ。

Webサービスの設定 アプリdeプリント iPhoneからAirPrint

●単独使用/FAX

 単独使用のFAXは、スーパーG3などFAX対応の他社の複合機と大差ない。両面ADFが使えるのがメリット程度だろう。機能としては、電話番号入力、短縮ダイヤル(99件)、モノクロ/カラー送信、設定では解像度/薄く濃く/片面・両面といったところ。

 その他、メモリ保存FAX再印刷、外部留守番電話機能付電話機接続、自動リダイヤル、受信原稿自動縮小、FAX自動転送(モノクロのみ)、FAX通信テスト、確認レポート、短縮ダイヤル一覧レポート、FAXログ、電源OFF時にメモリ内の保存FAXデータ保持などにも対応している。

FAX 設定 その他設定

●PCへのセットアップ

 対応しているOSは、Windows 7(32/64bit)、Windows Vista(32/64bit)、Windows XP。Mac OS X v10.5.8以降、v10.6。PowerPCにも対応している。

 セットアップ自体は非常に簡単で、基本的にウィザードに従い[次へ]をクリックするのみ。接続オプションでUSB経由かネットワーク経由かの選択をした程度だ。FAX機能を搭載しているため、最後に場所/名前/FAX番号/回線の種類などを入力する必要はあるものの、特に難しい部分は無い。

 またPCをセットアップした後、Macへもインストールしたが、UIが違う程度で、内容的には差は無かった。

ソフトウェアを選択 インストール中 ネットワーク経由で接続
ネットワークのチェック ネットワークプリンタのインストール インストール終了
FAXの設定/1 FAXの設定/2 FAXの設定/3

●PCからの使い勝手

 家庭用のシリーズと大きく違うところは、いろいろな機能をひとまとめにしている「HPソリューションセンター」が無いことだろう。デスクトップに作られるショーカットは「HP Officejet Pro 8500 A910」、「HP Officejet Pro 8500 A910 Scan」、「HP ePrintCenter」、「サプライ品の購入」の4つとシンプルだ。

 「HP Officejet Pro 8500 A910」は、単にWindows 7のデバイスとプリンターの該当箇所を開くだけ。ここにプリンタアクション/スキャナアクション/FAXアクション/推定インクレベルなどがまとまっている。Scanに関しては特に説明の必要は無いだろう。

 加えて、本体の「組み込みWebサーバー」へWebブラウザを使ってアクセスすると、各種設定やステータスの表示などをWebベースで行なえる。タッチパネルを使って設定するより楽だし、一部、単独使用でのレポート機能もあるが、こちらの方がより詳細で種類も豊富。使わない手はない。またこのスキャン機能は、Webブラウザ内でスキャンから保存と完結しているので、特にPC側にドライバを組み込む必要も無く、ライトな用途によっては十分役に立つ。

 「HP ePrintCenter」は、ネットから複数のプリンタを管理できる機能だ。ただし、利用できるのは「メールdeプリント」対応機種に限られる。

デバイスとプリンター/HP Officejet Pro 8500 HP Scan 組み込みWebサーバー/ホーム
組み込みWebサーバー/スキャン 組み込みWebサーバー/FAX 組み込みWebサーバー/ツール

●便利なデジタルSEND機能

 実は、自動両面印刷、両面ADF、そしてFAX機能だけであれば、他社の同クラスでも対応している機種はあるのだが、今回、このOfficejet Pro 8500A Plusにしたのは、先にあげたAirPrint機能に加え、「デジタルSEND機能」があったのがポイントだった。

 このデジタルSEND機能は、”指定したPC上のフォルダ”か、”指定したメールアドレス”へ(ただし排他式)、”スキャンしたデータ”もしくは”受信したFAXデータ”を送信する機能だ。特に受信したFAXデータをメール転送できるのが魅力的だった。

 と言うのも、ここ数年、迷惑DMFAXが非常に多く、ほとんど用紙の無駄使い。これを何とかしたかったのと、いったん印刷してしまうと、「あの請求書どこだっけ?」と、他の書類にまぎれてしまうこともしばしば。これをメール転送することによって、不要なものは即削除、必要なものはメールボックスで保存、場合によっては印刷。更に出先でiPhoneからでも確認できる。もちろん受信したFAXを同時に印刷しない設定もできる。つまり可能な限りペーパーレス化が可能になる。

 ただ1点惜しいのはPDFではなく、モノクロTIFFで添付されること。PDFになればもっと見やすくなるのだが。

デジタルSENDの設定 受信したメール 添付されたTIFFファイル

 以上のようにHP「Officejet Pro 8500A Plus」は、大容量の全色顔料系独立インクに加え、自動両面印刷/両面ADF対応など、基本機能が充実している上に、「メールdeプリント」、「アプリdeプリント」、AirPrint、受信したFAXをそのままデータ転送できるデジタルSENDと言った、ネットワークをうまく使った機能満載のインクジェット複合機だ。トレイが一段なのは残念だが、非常に魅力的な逸品と言えよう。