西川和久の不定期コラム

日本HP「Photosmart Premium C310c」
~4.3型の大きなタッチパネルで快適操作可能



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は9月27日、2010年秋モデルの複合機、「HP Photosmart Plus B210a」、「HP Photosmart Premium C310c」、「HP ENVY 100」の3機種を発表した。今回はこの中から、4.3型の大型液晶タッチパネル、5色独立インクカートリッジなどに対応した、従来機のモデルチェンジ版としては最上位に相当する、HP Photosmart Premium C310cをご紹介したい。


●Photosmart Premium C310cの仕様

 今回ご紹介する「Photosmart Premium C310c」は、ちょうど「Photosmart Premium C309G」や「Photosmart Premium Fax All-In-One C309A」の同クラスとなるモデルだ。どちらも筆者がレビューしているので、興味のある人は別途記事をご覧頂きたいが、同社の家庭用インクジェット複合機としては最上位モデルに相当する。

 「Photosmart Premium C309G」では、オンラインフォトアルバム「Snapfish」へダイレクトにアクセスできる機能を追加したが、2010年秋モデルの最大のポイントは、更にネット機能を充実させ、後述する「メールdeプリント」、「アプリdeプリント」など、ネット経由でより便利に利用する機能を搭載したこと。主な仕様は以下の通り。

・オンデマンド型サーマル・インクジェット/5色独立(黒・カラー3色一体型)、黒:顔料系 720ノズル、各カラー+フォトブラック:染料系各672ノズル、最高9,600×2,400dpi
・A4印刷速度:モノクロ33ppm、カラー32ppm
・CISセンサー光学解像度1,200×2,400dpi、最大A4/レター
・前面2段式給紙カセット メインA4普通紙:最大125、フォト:最大20枚
・自動両面印刷機能搭載
・4.3型カラーLCDタッチスクリーン
・無線LAN IEEE 802.11b/g/n(WPS対応)/Hi-Speed USB×1
・メモリースティック(PRO)デュオ/SDカードスロット×1
・455×473×199mm(幅×奥行き×高さ)/約7.7kg
・価格 27,930円(直販価格)

 操作パネルのサイズは4.3型カラーLCDタッチスクリーンと大きめだ。iPhone 4のパネルが3.5型なので、それより少し大きいと書けばわかりやすいだろうか。

 インクカートリッジは、水などに強く、シャープな印刷ができる顔料系のモノクロ専用インクが1つ、写真印刷などに適した染料系のカラーインク、イエロー/マゼンタ/シアンに加え、フォトブラックの計5色が独立となっている。空になったインクカートリッジだけ交換できるのでランニングコストを抑えることができる。解像度は最高9,600×2,400dpiと結構高い。印刷速度はA4で最大モノクロ33ppm/カラー32ppm。自動両面印刷にも標準で対応だ。

 トレイは、前面2段給紙カセット式で、メイントレイはA4普通紙を最大125枚、フォトトレイは最大20枚セットできる。ENVY 100はメイントレイのみだったので、頻繁にA4とL判写真を印刷するのであれば、Photosmart Premium C310cの方が使いやいだろう。

 スキャナやコピーで使うセンサーはCIS式で光学解像度は1,200×2,400dpi、サイズは最大A4/レターまでとなる。

 インターフェイスは、WPSに対応したIEEE 802.11b/g/n無線LANとHi-Speed USBのみ。有線LANは非搭載になっている。メディアリーダはメモリースティック(PRO)デュオ/SDカードに対応。ただし、USBメモリやデジカメのPictBridge用のUSBポートは搭載していない。有線LAN非対応もそうだが、国産機と比較してかなり割り切った仕様だ。

 インクカートリッジは、普通容量カートリッジとして、「HP 178 インクカートリッジ 黒」(CB316HJ)、「HP 178 インクカートリッジ フォトブラック」(CB317HJ)、「HP 178 インクカートリッジ シアン」(CB318HJ)、「HP 178 インクカートリッジ マゼンタ」(CB319HJ)、「HP 178 インクカートリッジ イエロー(CB320HJ)」を使用する。

 また、増量カートリッジとして、「HP 178XL インクカートリッジ 黒 (増量)」(CB321HJ)、「HP 178XL インクカートリッジ フォトブラック (増量)」(CB322HJ)、「HP 178XL インクカートリッジ シアン (増量)」(CB323HJ)、「HP 178XL インクカートリッジ マゼンタ (増量)」(CB324HJ)、「HP 178XL インクカートリッジ イエロー (増量)」(CB325HJ)が用意されている。

 サイズは455×473×199mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約7.7kgと、この辺りは、前モデルからあまり変化は無い。

 直販価格は27,930円。ENVY 100と比較して、若干安めに設定されている。いずれにしても3万円を切っているので、インクジェット複合機としては安価な設定だ。

前面。メディアスロット、2段の前面給紙カセット、タッチ式液晶パネル、電源スイッチとシンプルなレイアウトだ背面。右側に電源コネクタと、少し影になっているがUSBポートのみ。Ethernetはない前面給紙カセット。左側が主にフォト用のトレイ、右側本体下は主にA4普通紙などをセットできるメイントレイ
操作パネル周辺。4.3型と大きく操作しやすそうだ。角度は固定で上下に動かないスキャナ部。右手前が原点インク部。左からフォトブラック、マゼンタ、シアン、イエロー。ここまでは染料系インク。右端は顔料系インクのブラック
カードリーダは、メモリースティック(PRO)デュオ/SDカードに対応。USBメモリやデジカメのPictBridge用のUSBポートは無い自動両面印刷ユニット。左右のレバーを押せば簡単に外れ、メンテナンス性は良い増量インクカートリッジやACアダプタなど。ACアダプタ、電源ケーブル、USBケーブルは右上のケースの中に入っている

 本体の作りは複合機としてはとてもオーソドックス。デザインも2色の黒系でまとめられシンプルだ。家庭でも事務所でもマッチする。数年前の同クラスと比較して変わった部分は明らかにボタンが減っていること。Photosmart Premium C310cに関しては、ボタンらしいボタンは電源スイッチしかなく、後は全てタッチ式の液晶パネルにまとめられている。ただ、操作パネルの角度が固定と言うのは、例えば目の位置より高い場所に置いた場合など、設置場所によっては操作しづらいかも知れない。

 また、後ろに出っ張った形で自動両面印刷機能が付いているので、壁にピッタリ本体を付けることができないのもライバル機と比較して劣る部分と言えよう。

 以前から指摘していたノイズや横揺れに関しては少し良くなっているものの、残念ながらまだそれなりにある。後半に掲載している動画をご覧て頂きたいが、印刷時に振動で机が左右に揺れるのが分かる。ENVY 100では問題無かっただけに、もう一工夫欲しいところだ。

 「Photosmart Premium C309G」と比較して、見た目の変化は液晶パネルのサイズと、ポートの有無程度と、インクカートリッジも同じなので、大きな変化は無い。

●単独使用/プリント

 単独使用でのプリントは写真のみとなる。ただしUSBポートが無いので、素材は本体のメディアリーダーもしくはSnapfish上の写真からとなる。設定で出来ることはENVY 100と同じで、レイアウト、紙の種類、赤目除去、自動位置合わせ、日付スタンプ。更に1枚写真を選ぶと、回転、トリミング、写真の修整、明度、カラー効果を調整できる。

 印刷クオリティは、顔料系黒+染料系4色の5色独立/最高9,600×2,400dpi/1.3pl、インクカートリッジは178系と、「HP Photosmart Premium FAX All-in-One C309a」から同じで変わっていない。「Photosmart Premium C309G」も同様だ。従って内部ユニットに変更があったかも知れないが、基本的に仕上がりは同じ印象を持つ。若干硬調だがトーンは明るめだ。

 ENVY 100と比較して、フォトブラックの有無、最高4,800×1,200dpi:最高9,600×2,400dpiと、解像度が高いこともあり、全体的により締まった感じになる。

サムネイルの表示目的の写真を選ぶL判で約41秒
【動画】メモリカードからダイレクトプリント

●単独使用/スキャナ

 スキャナは、データの保存先をPCまたは/メディアの選択が出来る。後者に関しては解像度は低/200dpi、中/300dpi、高/600dpiの3段階変更できるものの、JPEGのみの対応だ。PDFへの保存は対応していない。

 保存先をPCにした場合は、写真をファイルに保存/PDF文書/文書をTIFへの選択が出来る。ただしこれは初期設定であり、PC側でソリューションセンター/スキャンボタンの設定で、保存フォーマットをBMP/TIFF/TIFF(圧縮)/JPEG/GIF/PNG/PCX/FlashPix/PDF、そしてカラー/グレイスケール/モノクロの設定が可能だ。

スキャンメニュープレビューメディアへ保存。300dpiで約50秒

●単独使用/コピー

 コピーは、編集:サイズ、薄く/濃く、設定:品質、両面、用紙サイズ、紙の種類、強調を調整でき、最後にモノクロかカラーにタッチするすればコピー開始となる。仕様的にENVY 100と同じだ。ただし、ENVY 100の光学解像度1,200×1,200dpiに対して、1,200×2,400dpiなので、細部の精度は若干の違いがあるだろう。

 前回ENVY 100では両面カラーコピーの動画を掲載したので、今回は両面モノクロコピーの動画を掲載する。片面で約21秒となかなか速い。またモノクロコピーの場合は、顔料インクの黒が選ばれるので、文字の輪郭がシャープだ。

コピーメニュー片面印刷約21秒でモノクロコピー完了
【動画】両面モノクロコピー。途中で原稿を変更するよう、液晶パネルに案内が出る

●単独使用/「メールdeプリント」

 「メールdeプリント」は、プリンタに割り当てられたメールアドレス「xxxxxxxxxxxx@hpeprint.com」へデータを添付してメール送信すれば、サーバーサイドでレンダリングし、ダイレクトプリントできる機能だ。ただしこの機能を使うには、プリンタがWi-Fi経由でインターネットにアクセスができ、さらに設定画面のWebアクセスでePrintをONにする必要がある。

 対応しているフォーマットは、「PDF」(フォント埋め込み、画像)、「Microsoft Word/PowerPoint/Excel」、「テキストファイル」、「JPEG/BMP/GIF/PNG」、「メール本文」(テキスト/html/リッチテキスト)、1通のメールに最大10添付ファイル/合計5MBまでなど、少し制限事項はあるものの、特に印刷機能を持たないPDAやスマートフォンから使えば非常に便利だろう。

 試しにiPhoneから写真とPDFデータをメールに添付して送信したところ、PDFはA4普通紙に、写真はL判写真用紙に印刷された。データがドキュメント系か写真かを判断して自動的にトレイを切り替えている。

このプリンタのメールアドレスiPhoneからPDFをメールに添付して送ってみると……印刷OK

●単独使用/「アプリdeプリント」

 アプリdeプリントはWeb上のサイトをプリンタ用にカスタマイズした形で、液晶パネルから操作し、情報を印刷できる機能だ。「プレミアム アプリ」と「ライト アプリ」の2種類があり、前者はプログラムをプリンタへダウンロード、プリンタ側で処理する。後者はUIだけをプリンタで表示し、実際の処理はクラウド上で行なう仕掛けだ。

 前回ENVY 100では「Weathernews」を使って天気予報を印刷。今回は「ぐるなびレシピ」で「アスパラガスと鶏肉の炒め」のレシピを印刷した。PCレスでここまで出来るのは、なかなか面白く、アプリは後からいくらでも開発/追加できる。つまり購入後でもプリンタの機能が進化するのだ。もっと日本のコンテンツが増えれば更に便利になると思われる。

 ただ現在、例えば検索するキーワードに日本語を使うことができず、アルファベットでの入力となる。対応するには日本語IMEを搭載するか、クラウド側でかな漢字変換する必要があるので、少しハードルは高いかも知れない(技術的には可能だが、プリンタでそこまでするのかと言う意味で)。

ぐるなびレシピ起動中レシピを検索して選択印刷結果
【動画】アプリdeプリントの操作感

●セットアップ

 対応OSは、Windows XP/Vista/7の32/64bit版、Mac OS Xは10.5.xと10.6.x。Power PCにも対応している。

 ENVY 100ではインストールする機能やアプリケーションを選択する画面がはじめに表示されたが、C310cでは何の選択も無く、いきなりインストールを開始する。ステータスを見ると8アイテムをインストールする様だ。

 作業終了後、コントロールパネルの「プログラムと機能」を見ると、「HP Update」、「MNSツールバー」、「HP Photosmart Prem C3100 All-In-One Driver Software」、「Shop for HP Supplies」、「HP Customer Participation Program」、「HP Solution Center」、「HP Smart Web Printing」、「HP Imaging Device Functions」の8つがインストールされていた。

 またネットワークプリンタの設定は、事前にプリンタをネットワーク接続し(WPS対応)、直接プリンタのIPアドレスを指定する(たまたまプリンタがスリープしていて、プリンタの検索がうまく行かなかったのかも知れない)。

 オプションアプリケーションの選択は、一通りインストールが終った後で「Adobe Photoshop Elements(無料お試し版)」、「HP TouchSmart Web」が表示される。ENVY 100にあった「HP Photo Creations」はない。

 デスクトップのショートカットも「HP ePrintCenter」、「HP サプライ品の購入」、「HP ソリューションセンター」と非常にシンプルだ。なお、ENVY 100では対応していなかった、プリンタ側のカードリーダをPCのネットドライブにマウントする機能は、Photosmart Premium C310cでは対応しており、セットアップが終ると自動的にZ:ドライブへマウントされていた。

ソフトウェアを選択する画面は無くいきなりインストール開始インストールの確認オプション8アイテムをインストールする様だ
USBかWi-Fiか接続方法を選択プリンタのIPアドレスを設定プリンタがネットワーク経由で接続された
オプションインストールの選択プリンタ側のカードリーダをZ:ドライブへ接続済みインストールされたモジュール一覧

●PCからの使い勝手

 PCからの操作は、通常アプリケーションでの印刷はプリンタドライバを使うので、特に解説の必要は無いだろう。その他の機能としては、先に挙げたデスクトップのショートカットから全て操作できる。

 まず、「HP ePrintCenter」は、Webを使ってプリンタの接続状態やステータス、メールdeプリントの対象となるメールアドレスの管理、その印刷送信者、時間の確認、モノクロ/カラー出力設定などができる。アカウントを作る必要があるものの、OpenIDを採用しているので、Yahoo!やGoogleなど、OpenIDに対応したWebサービスのアカウントを持っていれば簡単に登録可能だ。

 「ソリューションセンター」は、複合機のトータル的な操作パネルとなる。「ホーム」では、画像のスキャン/ドキュメントスキャン/画像の転送、同社の関連アプリケーションなどの紹介、インクレベルのチェックなどができる。スキャンに関してはボタンを押すと「HPスキャニング」が起動し、希望するフォーマットでスキャンする。

 「ヘルプ」と「ショッピング」は、言葉通り、ローカル/オンラインヘルプとオンラインショッピングの機能。「設定」は、プリンタ側のコピーボタンを何のフォーマットに割当てるかなど設定が可能だ。

 いずれにしても多くのケースでソリューションセンターを起動するのは、PCからのスキャンでPDFがその主な用途となるだろう。他はプリンタ単独使用で十分活用できる。全体的に必要最小限と思われるが、プリント/コピー/スキャンの機能を持つ複合機なだけに、逆にシンプルな方が迷わず扱いやすい。

ソリューションセンター/ホームHPスキャニングソリューションセンター/ヘルプ
ソリューションセンター/ショッピングソリューションセンター/設定ソリューションセンター/ステータス

 以上のように「Photosmart Premium C310c」は、A4用紙とフォトトレイを独立して二段持ち、モノクロ印刷専用の顔料系ブラックインクと、写真などカラー用はフォトブラックも含め染料系インクが独立した5色インク形式で印刷クオリティはもちろん容量も十分。自動両面印刷にも対応。タッチパネル式の液晶パネルで操作する「アプリdeプリント」やメールでダイレクトに印刷する「メールdeプリント」もPCレスでなかなか楽しめる。是非店頭などで実機をご覧頂きたい。