西川和久の不定期コラム

sRGBカバー率100%、AdobeRGBカバー率99%の30型ワイド液晶「デル U3011」



 9月22日、デルの液晶ディスプレイ、「デジタルハイエンド」シリーズの最上位モデル「U3011」が発売となった。IPSパネルやsRGBカバー率100%、AdobeRGBカバー率99%で30型と、その名の通りのハイエンドディスプレイだ。実機が届いたので使用レポートをお届けする。
●sRGBカバー率100%、AdobeRGBカバー率99%

 同社液晶ディスプレイは、エントリーモデルの「INシリーズ」、マルチメディア向けの「STシリーズ」、ゲーム用途の「エンタテイメントシリーズ」、そして最高クラスの「デジタルハイエンドシリーズ」と、用途などに応じて4つのカテゴリに分かれている。

 最上位のデジタルハイエンドシリーズの共通の特徴としては、IPSパネル、sRGBカバー率100%、視野角上下/左右ともに178度、DisplayPort対応などが挙げられる。ラインナップは、「U2211H 21.5インチワイドディスプレイ」(19,800円)、「U2311H 23インチワイドディスプレイ」(27,800円)、 「U2410 24インチワイドディスプレイ」(42,800円)、「U2711 27インチワイドディスプレイ」(58,000円)、そして今回ご紹介する「U3011 30インチワイドディスプレイ」の5機種。仕様は以下の通り。

【表】デル U3011の仕様
タイプIPS/アンチグレアパネル
推奨最大解像度2,560×1,600ドット(16:10)
スクリーンサイズ30型
ピクセルピッチ0.2505mm
表示色10bitカラー表示(対応ビデオカードとDisplayPortによる接続が必要)
AdobeRGBカバー率99%、sRGBカバー率100%
応答速度7ms(中間色)
視野角上下/左右ともに178度
輝度370cd/平方m
コントラスト比1,000:1(標準)、ダイナミックコントラスト比: 100,000:1(最大)
入力信号/端子ミニD-Sub15ピン×1、DVI-D(HDCP対応)×2、HDMI×2、
DisplayPort×1、コンポーネントコネクタ×1、
USB 2.0:アップストリーム×1、USB 2.0ダウンストリーム×4、
7in1メディアカードリーダ、オーディオ出力(5.1ch対応)、
デル製サウンドバー用DC電源コネクタ端子
サイズ/重量694.5×211.3×481.3~571.3mm
(幅×奥行き×高さ)/9.3kg(スタンド含)
価格159,170円

 サイズは30型。アンチグレア(非光沢)タイプのIPSパネルだ。視野角は上下/左右ともに178度とかなり広い。推奨最大解像度は2,560×1,600ドット(16:10、WQXGA)と、フルHDを超える表示が可能だ。

 入力は、ミニD-Sub15ピン×1、DVI-D(HDCP対応)×2、HDMI×2、DisplayPort×1、コンポーネントコネクタ×1の7系統ある。これだけあればどんな用途もOKだろう。更にDisplayPortは10bitカラー表示に対応し、10億7,000万色を表現できる。ただしこの場合、10bitカラーに対応しているビデオカードが必要となる。

 インターフェイスは、USB 2.0アップストリーム×1、USB 2.0ダウンストリーム×4、7in1メディアカードリーダ。USB 2.0×2と、カードリーダが本体左サイドにあるため、デジカメで撮った写真などを簡単に読み込めるので便利だ。音声出力は5.1chに対応。これはDisplayPortとHDMIからのオーディオ信号を出力する。またオプションの「AX510 TFTディスプレイ用スピーカ」(4,620円)、「AY511 サウンドバースピーカ」(6,300円)に電源を供給する、デル製サウンドバー用DC電源コネクタ端子も備えている。

 そして、117%(CIE 1976)の色域、sRGBカバー率100%、AdobeRGBカバー率99%と、ほぼパーフェクトなカバー率の上に、工場出荷時に調整済みの状態で送られるので、届いてすぐに作業が行なえる。「色補正完了証明書」が付属するといった念の入れようだ。更に「輝点ドット抜けゼロ保証」によって3年の保証期間中、1ドットでもドット抜けがあった場合、無償交換にも対応しているので、安心して運用できる。

 価格は159,170円。1つ下の27型「U2711」が58,000円なので、3型の違いで3倍近い価格差があるのはちょっと残念ではあるが、性能を考えると決して高いわけではない。

正面/最高位置。仕様上は、高さ571.3mm正面/最低位置。仕様上は、高さ481.3mm。9cmの違いがある裏。所狭しとコネクタ類が並んでいるのが分かる
前面のスイッチはタッチスイッチになっており、後述するOSDと連動するコネクタ部その1。オプションスピーカー用電源、音声出力(5.1ch対応)、DisplayPort、DVI-D×2、VGA、HDMI×2コネクタ部その2。コンポーネントビデオ入力、USB 2.0アップストリーム、USB 2.0ダウンストリーム×2
左側面で最大のチルト角。7in1メディアカードリーダとUSB 2.0×2が見える。最大19度のチルト右側面で最低のチルト角。マイナス側にも若干傾く(下3度)。回転はこの位置が最大(左右各30度のスイベル)付属品。電源ケーブル、DisplayPortケーブル、VGAケーブル、USBケーブル、DVIケーブル、ユーティリティCD

 さすがに30型ということもあり、サイズは694.5×211.3×481.3~571.3mm(幅×奥行き×高さ)と、結構大きい。ただ重量が9.3kgなので、梱包から取り出すときに(大きさの割には)軽々持ち上がった。机の上に設置するのも「気合を入れて……」と、するほどでもない。

 全体的にマットブラック、スタンド部とフチの外側がシルバーの配色なので、デザイン的に何処でもマッチする。裏側もなかなか綺麗だ。

 スタンドはチルトもスイベルも軽々調整でき、バシッと止まる。スイベルは台座の中央部分だけが回るため、周りのケーブルなどを引き込むこともない。

 画面の迫力、そして発色は圧巻だ。テストを兼ねてYouTubeの1080p動画や、地デジチューナーを接続しTVを観ていたのだが、自宅の27型ディスプレイより大きいこともあって大迫力。たった3型の違いなのに、もっと差があるように思える。またアンチグレア(非光沢)タイプなので映り込みも無く非常に見やすい。IPSパネルの特徴である広い視野角によって、センターから外れて見ても色変化することもなく、複数人で観るAV用途と併用としても良さそうだ。応答速度が7msなので「動画はどうかな?」と思ったものの、筆者的には気にならなかった。

 発色はカラーセンサーなどを持ち合わせていないので目視になるが、デジカメで撮影したRAWデータをsRGBとAdobeRGBの2パターンで保存した写真でスライドショーしながらチェックした。ただチェックのつもりが綺麗なのでついつい眺めていたという感じになってしまったが……。sRGBは当然として、AdobeRGBもなかなか。カバー率99%の実力だけはある。

 解像度はWQXGA。筆者がデジカメWatchで連載しているフォトジェニック・ウィークエンドの画像サイズが2,544×1,696ドット。横位置の写真がほぼドットバイドットで表示することが可能だ。撮った本人が驚くほどの大迫力となる。

●使いやすいOSD

 OSDは一度調整してしまうと普段触るのは「明るさ」と「入力切替」程度なのだが、キャパシティブタッチスイッチが使われており、軽く触れる感じで操作できる。またスイッチのすぐ横に、その状態に応じた記号が出るため、直感的に扱える。

 更にOSDの表示自体も、まるでPCが表示しているような、メニュー体系でかなり分かりやすいレイアウトだ。トップメニューの標準設定は、よく使う「PresetMode」、「Brightness/Contrast」、「Input Source」のショートカットが配置されている。

 一番下の「Menu」で、このU3011の全機能を操作できるメニューに切り替わる。「Brightness/Contrast」、「Auto Adjust」、「Input Source」、「Color Settings」、「Display Settings」、「Audio Settings」、「PBP Settings」(ピクチャーバイピクチャー)、「Other Settings」、「Personalize」の順に並ぶ。「Personalize」は先のトップメニュー上から3つめまでのボタンに好きな機能を割当てられる機能だ。

 プリセットカラーは、「Standard」、「Multimedia」、「Game」、「Movie」、「Warm」、「Cool」、「AdobeRGB」、「sRGB」、「xv Mode」の9パターン。先に書いたように、AdobeRGBとsRGBに関しては工場出荷時に調整済みになっている。ガンマはPC(2.2)、MAC(1.8)の2パターンのみとなる。

 画面キャプチャは英語表記になっているが、「Other Settings」でもちろん日本語に切り替える事もできる。ただ書体が明朝体なので筆者的には好みではない。

 OSDメニューの詳細は、同社のサポートページにあるので、興味のある人は参考にして欲しい。

OSD/トップメニュー。一番下のボタンにタッチするとこのメニューが表示される。上から3つ目までは好きな機能をアサインできるOSD/Input Source。上2つのボタンで移動、下2つのボタンで確定/キャンセル総合メニュー。下から2番目が[→]に変わり、更に下の階層に移動する
【動画】直感的で使いやすいOSDだ

 パネルの重さもあるので、仕方ないと思うが、OSD操作中は動画からもわかるように、軽く触れてもフレーム全体がゆらゆら揺れる。もう少し座りが良いと更に印象は良くなるだろう。

 このクラスでは、プリセットのカラー設定に加え、カスタムカラーがどこまで調整できるかが気になるところ。「Color Settings」→「Custom Color」を選ぶと、RGBゲインに加え、オフセット/色相(RGBCMY)/彩度(RGBCMY)の6色調整機能を搭載しているので、厳密な調整も可能となっている。

 ただ色温度やガンマを数値で直接指定できない点、輝度を最低まで下げてもほとんど変わらない点などが筆者的には気になった。


 以上のように「U3011」は、30型のIPSパネル、2,560×1,600ドットの解像度、sRGBカバー率100%、AdobeRGBカバー率99%、10bitカラー表示に対応したDisplayPortを含めた7系統の入力、使いやすいOSD……といった基本性能の高さに加え、工場出荷状態でAdobeRGBとsRGBは調整済み、輝点ドット抜けゼロ保証など、安心して運用できるディスプレイとなっている。

 ハイエンドでかつコストパフォーマンスの高い30型ディスプレイとしてお勧めの1台だ。