■西川和久の不定期コラム■
前々回に、8月18日に発表されたEee PC 1018Pをご紹介したが、今回は同時に発表され同じく9月21日から発売開始となった下位モデルの「Eee PC 1016P」をご紹介する。CPUやHDD容量など若干スペックは劣るものの、Bluetooth 3.0+HSに対応した意欲的なネットブックだ。
●オーソドックスなネットブックにプラスアルファ
プレミアモデル1018Pの下位モデルに相当するこの「1016P」は、OSがWindows 7 Starter、メモリ1GB、有線LANは100BASE-TX対応など、ジャンル的にはネットブックとなる。CPUはクロック数の少し落ちたAtom N455プロセッサが使われ、1コア/2スレッド、クロック1.66GHz、キャッシュ512KB。とは言え、違いはクロック数だけで、Intel 64そしてDDR3に対応など、ほかの部分は同じだ。DDR3に対応しているので、一世代古いAtomプロセッサより、パフォーマンスの向上が期待できる。
【表】ASUSTeK Eee PC 1016P仕様CPU | Intel Atom N455(1コア/1.66GHz/キャッシュ512MB) |
チップセット | Intel NM10 Express |
メモリ | 1GB/DDR3-667(PC3-5300)、1スロット空き0、最大2GB |
HDD | 250GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Starter |
ディスプレイ | 10.1型ワイド液晶ディスプレイ、1,024×600ドット |
GPU | 内蔵Intel GMA 3150、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Ethernet(10BASE-T/100BASE-TX)、IEEE802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+HS |
その他 | USB 2.0×3、SDカードスロット、Webカメラ、音声入出力 |
サイズ/重量 | 262×178×23~36mm(幅×奥行き×高さ)/約1.27kg |
バッテリ駆動時間 | 最長約8.5時間 |
価格 | 44,800円(税込) |
チップセットはIntel NM10 Express、そしてグラフィックスは内蔵GMA 3150。ハードウェア的な仕様上は最大2GBのメモリを搭載可能であるが、出荷時は先に書いた通り1GB。メモリは簡単に交換できるので、Windows 7 Starterでも2GBにした方がベターだ。ただしこの場合、メーカー保証対象外となる。液晶パネルの解像度は1,024×600ドット、ビデオ出力はミニD-Sub15ピンのみ。
無線LANはIEEE 11b/g/n対応、そしてBluetooth 3.0+HSも搭載している。筆者はBluetooth 3.0+HS対応デバイスを持っていないので試せなかったのが少し残念。いずれにしても今後対応周辺機が増えればいち早く使えるのは嬉しい。
そのほかのインターフェイスは、USB 2.0×3、SDカードスロット、Webカメラ、音声入出力と、ネットブックとしては標準的な構成と言えよう。ただ1018PではUSBポートの1つが、電源OFF時でもiPhoneなどを充電できる「USB Charge+」を搭載していたものの、この1016Pでは非対応だ。USB経由で充電する機器は意外と多く、できれば対応して欲しかった。
カラーバリエーションは、ブラックとシルバーの2種類。価格は44,800円となっている。
1018Pを見た後、1016Pの第一印象は「1018Pよりソリッド」だった。天板はアルミヘアライン仕上げのシルバーで、後ろ側の一部がヘアライン仕上げ無しのシルバー、キーボードと液晶パネルのフチはアルミヘアライン仕上げのブラック、そしてパームレストはヘアライン仕上げ無しのシルバーと、2色とヘアライン仕上げの有無をうまく使い分け、更に6セルのバッテリの高さによって少しボディが手前に傾いているため、全体的にソリッドでシャープなイメージを受けるのだろう。デザイン的には1016Pの方が筆者的には好みかも知れない。またこのボディの傾きはキーボード入力をよりしやすくしている。
サイズは262×178×23~36mm(幅×奥行き×高さ)。1018Pより若干高さが増している。重量は約1.27kg。こちらも気持ち重めだ。ただしこれは1018Pと比較してという話であり、サイズ重量共、カバンに入れて持ち運ぶには問題無いだろう。
キーボードはアイソレーション・タイプだ。触った限り1018Pと全く同じユニットだと思う。キーピッチは約18mmだが、プラスチッキーなチープな感じやたわみも無く、キータッチもなかなか良い。
パームレストは広くはないが、ボディサイズを考えると十分面積を確保、タッチパッドとの段差もほぼ無い。タッチパッドは板1枚でボタンの替わりもしているので、少し隙間が空いている。1018Pでも書いたが、このパネル1枚でボタンも兼ねるタッチパッドは、クリックする時少し重く、この点だけは残念だ。
液晶パネルも多分1018Pと共通で、十分明るく、コントラストも高く、青っぽい発色もせず良好だ。ノイズや振動もほぼ無いに等しく、快適に操作できる。
スピーカーは、ネットブックや多くのミニノートPCと同様、前面斜め下に付いている。この場合、机などで反射した音を聞くことになり、若干クリアさは欠けるものの、低音のボリューム感は少し有利になる。最大音量に関しては、ニアフィールドで聞く限り問題無いレベルだ。
以上のように、1016Pはボディの質感、良質なキーボードや液晶パネルなど、ルックスや基本にこだわったネットブックだ。加えてBluetooth 3.0+HSに対応しているのもポイントが高い。洗練されたなかなか魅力的なマシンに仕上がっている。
●6時間を越えるバッテリ駆動OSがWindows 7 Starterなので壁紙の変更ができずAeroもOFF。このため、デスクトップに並んでいるショートカットなどは1018Pと同じなのだが随分違う印象を受ける。
HDDはWD2500BEVT(250GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)が使われている。システム用にC:ドライブが約100GB、データ用にD:ドライブが約117GBの2パーティション構成だ。
動作が軽めと言われているWindows 7 Starterだが、GMA 3150のビデオメモリがメインメモリと共用なので、実際OSが使えるメモリ空間は少し減り、2GBだった1018Pと比較すると全体的にモッサリ感がある。アプリケーションを一度に複数起動しないなど、運用面でちょっとした工夫が必要だろう。
プリインストールアプリケーションは1018Pとほぼ同じ。同社のツール系、ASUS VIBE、ASUS WebStorage、ASUS Update for Eee PC、Eee Docking、Eee Splendidなど。他社製は、CyberLink YouCam、ウィルスバスター2010、iフィルター5.0、Kingsoft Office 2010 30日お試し版、そして一点違うのが「CyberLink PowerRecover」となる。これはバックアップツールなのだが、1016Pの方がよりビギナー向けなので入っているのだろう。
タッチパッドドライバは、Elanスマートパッドが使われている。予期しない接触で誤作動しないような工夫がされたドライバだ。
CyberLink PowerRecover | Kingsoft Office 2010 30日お試し版 | カーソルの誤動作を防ぐ「パームプルーフ・テクノロジー」 |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は2.3(2.5)。内訳は、プロセッサ2.3(2.5)、メモリ4.5(4.8)、グラフィックス3.0(3.0)、ゲーム用グラフィックス3.0(3.0)、プライマリハードディスク5.7(5.6)。カッコ内は、先にレビューしたEee PC 1018Pの値を参考までに掲載している。
CrystalMarkは、総合 29,142(28,674)、ALU 6,170(5,743)、FPU 3,697(4,548)、MEM 5,591(5,640)、HDD 10,189(9,038)、GDI 1,936(2,035)、D2D 1,094(1,176)、OGL 465(494)。これもカッコ内は先のミニノートPCの値だ。なぜかALUとHDDのスコアが若干高めに出ているものの、ほかは全て下回っている。Windows エクスペリエンス インデックス同様、CPUのクロック数差がそのまま出た形だ。
BBenchは、Power Savingモード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残りは6%で24,538秒(6.8時間)だった。仕様上の最長約8.5時間には及ばないものの、なかなか長時間駆動できる。6セルバッテリの効果だろう。
YouTubeへアクセスしたところ、360pならコマ落ち無し、480pならコマ落ちしながらも鑑賞としてはギリギリ、それ以上は紙芝居となってしまった。従って1018Pと同じであり、これはCPU性能よりGMA 3150側の問題と言えよう。またWindows 7 Starterは、MPEG-2コーデックを搭載していない。USB接続でDVDドライブを接続しても、DVDビデオは再生できないので注意が必要だ。
以上のようにEee PC 1016Pは、ネットブックとして基本はしっかり抑えた上で、アルミヘアライン仕上げのクールなボディ、しっかりしたキーボード、6時間を越える長時間のバッテリ駆動、Bluetooth 3.0+HS対応など、プラスアルファが魅力的だ。
ただ個人的には先にレビューした1018Pとの価格差1.5万円。CPUクロック差、+1GBのメモリ、+70GBのHDD、Windows 7 Home Premium、GbEやUSB3.0、USB Charge+、指紋センサー対応など、この価格差ならあえて1016Pを選ぶ理由が見当たらない。
単独であれば特に欠点らしい欠点も無く、文句無しのネットブックであるが、上位モデルがある関係で微妙な位置付けのモデルと言えよう。