西川和久の不定期コラム

ドキュメントスキャナエプソン「ES-D200」を試す



 最近、企業は管理やセキュリティの関係から、机の上に資料を山積みに出来なくなっている。と言っても仕事をすれば資料は増える一方。片付けようにもそのスペースが無い……。こんな時に便利なのがドキュメントスキャナだ。サクッとスキャンして電子化、物理的な紙は廃棄できる。

 今回、製品版のエプソン「ES-D200」が届いたのでその使用レポートをお届けする。なお、この製品は7月22日に発売予定だったが、一度延期になっており、8月26日に発売が始まったばかりだ。


●A4高速コストパフォーマンスモデル

 最近このクラスのドキュメントスキャナが注目されている。理由は冒頭に書いた企業用途に加え、iPadやiPhoneなどの端末の普及に伴い、雑誌や書籍をPDF化し持ち歩く的な使い方が増えたためだ。書籍を裁断しスキャン、電子化するのを「自炊」と言うらしいが、まさにこの用途にピッタリとなる。

 同社のADF付きA4ドキュメントスキャナのラインナップは、「ES-D400」、「ES-D200」、「ES-H300」、「GT-D1000」の4種類。エプソンダイレクトでの価格はそれぞれ、99,980円、44,980円、128,000円、4万円前後(ネット調べ)となる。後者2機種については、フラットベッドスキャナ+ADFのタイプで、一度に大量のスキャンには向いていない。また設置スペースもそれなりに必要だ。

 対してES-D400とES-D200は、写真からもわかるようにフットプリントは小さく、ADFの構造上、一気に大量にスキャンできる。価格的にはES-D200はパーソナル/業務用、ES-D400は業務用となるだろうか。今回届いたES-D200の仕様は以下の通り。

【表】主な仕様
形式シートフィード型両面同時読み取りカラースキャナー
走査方式読み取りヘッド固定型原稿移動読み取り
センサーカラーCCDラインセンサーR/G/B(3ライン)
最大原稿サイズA4/USレターサイズ/リーガル
最大有効領域216×914mm(8.5×36インチ)
最大有効画素5,100×21,600(主×副、600dpi)
光学解像度主走査:600dpi 副走査:600dpi
読み取り解像度75、100、150、200、240、300、400、600dpi
読取スピードモノクロ:約0.501msec/line(200dpi)、カラー:約0.501msec/line(200dpi)
インターフェースUSB 2.0
サイズ/重量303×202×213mm(幅×奥行き×高さ)/約5kg
価格44,980円(エプソンダイレクト調べ)

 上位モデルのES-D400との主な違いはスキャン速度(200dpi時カラー、モノクロとも40枚/分:25枚/分)と、超音波による重送防止センサーの有無となる。その分、価格が約半分になっているのが最大の特徴だろう。600dpiの解像度や紙送りなどの基本構造は同じ、両面同時スキャンにも対応している。

 用紙のスタック部が広く最大A4用紙を75枚までセット可能。キャリアシートを使い2つ折りでA3サイズ対応し、名刺や運転免許証などのプラスチックカードなどもスキャンできる。

 筆者は使ったことが無いのでコメントは控えるが、直接のライバル機は、富士通「ScanSnap! S1500」となるようだ。少し調べたところ確かに価格帯、機能共に良く似ている。

フロントはスッキリしたデザインだ。家庭でもオフィスでも違和感は無い背面。電源スイッチ、電源入力、USB 2.0×1、セキュリティロットが並ぶサイド(左)。右サイドも同様に、操作系は何もなく、フラットになっている
パネルを開けたところ。右側にパネルを開けるレバーがある(扉の写真参照)閉じたところ。給紙トレイと排紙トレイを閉じたところ付属品などはACアダプタ、電源ケーブル、USBケーブル、キャリアシート、マニュアル、CD-ROMなど

 本体は、幅がちょうど30cmほど。奥行きも約20cm。それなりにコンパクトで邪魔になることは無い。ただし重量は約5kgなので、見た目の印象より本体を持ち上げた時は重く感じる。

 フロントパネルにある液晶パネル、上下ボタン、スキャンボタン、キャンセルボタンは、後述する「Epson Event Manager」と連動する。スイッチ類も少なく簡単に操作できそうな印象を受ける。

 給紙トレイ、排紙トレイ共に閉じることができるので、未使用時はホコリなどの影響も少ないだろう。電源は内蔵せず、ACアダプタを利用する。

 作動時のノイズに関しては後半に動画を掲載したので参考にして欲しいが、インクジェットプリンタなどの作動音よりはるかに音量は小さい。

 付属しているキャリアシートは、説明書によると、A4より大きな原稿、折り目・反り・しわ・破れのある用紙、形状が不規則な用紙、貼り合せ、ラベル紙、薄すぎる用紙(45g/平方mより薄い用紙)、シールなどが貼ってある原稿、劣化した原稿、ルーズリーフの多穴原稿、光沢紙、印刷直後の用紙、写真などとなっている。

●セットアップ

 対応しているOSは、Windows 2000/XP/Vista/7、およびMac OS X 10.3.9~10.6.x。PowerPCにも対応している。現行環境全て網羅していると言っても過言ではないだろう。今回はいつも物撮りしている机の上にたまたまPowerPC版のMac miniが設置してあったので、これを使ってセットアップを行なった。OSはMac OS X 10.5.8。

 「簡単インストール」を行なうと、ドライバと必要なソフトウェアが自動的にインストールされる。もちろんドライバだけなど、選んでインストールも可能だ。

 手順自体は非常に簡単で、ウィザードに従い操作すると、いろいろなファイルがコピーされる途中、ES-D200のACアダプタをセット、USBケーブルを接続し電源ONのイラストが表示される。説明通りにES-D200側の接続などを行ない、その後残りのコピーを行ないセットアップ終了となる。またOSを再起動する必要は無い。

 後からWindows 7でもセットアップしたところ、ほぼ同じ操作で作業は終了した。これなら初心者でも問題無くセットアップできるだろう。

Epson Install Navi簡易インストールセットアップ中
ドライバ設定/本体にACアダプタ接続ドライバ設定/USBケーブルセットセットアップ完了

●基本操作

 実際スキャンするには2パターンある。1つは「EPSON Scan」を使う方法。これはドキュメントスキャナに限らず同社のスキャナでお馴染みのコントロールパネルだ。PC側でこのソフトウェアを操作しスキャンする。画面キャプチャからわかるように、取込装置、サイズ、原稿向き、イメージタイプ、イメージオプション、解像度、明るさ、コントラスト、アンシャープマスク、モアレ除去、文字くっきり、パンチ穴除去などの設定が直接行なえる。

 もう1つは「Epson Event Manager」とES-D200のフロントパネルによる操作だ。このソフトウェアは、ES-D200のフロントパネルにある液晶パネルの表示そして上下ボタンに関連付けられ、パネル操作で選択、[スキャン]ボタンでスキャン開始となる。つまりスキャン時、PCを操作する必要がない。

 プリセットできる項目は10パターン。解像度や保存先、ファイルフォーマット、連携アプリケーションなどの設定ができる。例えば「200dpiカラー両面で読み込み、“資料”フォルダーにPDFで保存」や「150dpiカラー両面で読み込み、メールソフトを起動してJPEGで添付」などの設定を行なえば、自動的にPC側の処理が行なわれる。

Epson Event Manager/ボタン設定Epson Event Manager/フロントのこのボタンと連携するEpson Event Manager/フォルダ設定
EPSON Scan/設定パネルモノクロ両面スキャンの結果(PDF)PCでのスキャンガイド(HTMLベース)

 読み取り解像度に関しては、75/100/150/200/240/300/400/600dpi、もちろん両面同時スキャンにも対応している。低い解像度は用途的にチェックしてもあまり意味が無いので、標準設定になっている200dpi、その上の300dpi、最大解像度の600dpiの結果を掲載した。文字系の原稿が多いだろうから、モアレ除去ON、文字くっきりONとしている。結果は言うまでもなく、600dpiはさすが。ただ200dpiと300dpiは思っていたほどの差は出ていない。

 スキャン時間は、開始ボタンを押してから実際給紙動作がはじまるまで4秒。これは3つ共同じ。そして機械的にスキャンが終るのは11.5秒/18.8秒/19.0秒。300dpiと600dpiはあまり差がない。ただしPC側の処理は解像度が上がるほど重くなる。今回、PowerPC版のMac miniやデュアルコアAtom搭載機など、非力なマシンを使ったので、後処理の方の方がより時間がかかっている。大量なドキュメントを一気に処理する時には、今時の少し速いマシンが欲しいところだ。

各解像度による違い。モアレ除去ON、文字くっきりON(左から200/300/600dpi)

 加えてWindowsに関しては、名刺管理の「Presto! BizCard 5 SE」、「Adobe Acrobat 9 Standard」を同梱、そしてMyEPSONからダウンロードする「読んde!!ココVer.13」が用意されている。「Presto! BizCard 5 SE」と「読んde!!ココVer.13」に関しては、文字認識機能を持ち、テキストとして管理できるため、更に便利に使える。ただMac OS Xに関しては基本ソフトウェアしか対応していないのが残念なところだ。

Presto! BizCard 5 SEPresto! BizCard 5 SE/スキャナの設定Adobe Acrobat 9 Standard(Windows版)

 普通紙でいろいろ試したところ、紙の状態によっては紙詰まりしたり、重送してスキャンデータのページが欠けいたことがあった。前者に関してはフロントパネルの「Error」が光り、スキャン自体も停止するので気が付くのだが、重送に関しては感知しせず、正常にスキャンが終了。後でデータを見てページ抜けに気が付くということになる。冒頭で書いたように、上位機種では重送防止センサーが備わっているが、ES-D200もADF搭載である程度の枚数が一気にスキャンできるだけに、同等の機能が欲しいところだ。

 また、紙詰まりに関してもErrorが出るまでのデータも含め現状では全て破棄される。ソフトウェアで対応可能だと思われるので、Error以前のデータは保存するオプションは必要だ。何十枚もスキャンして、最後の最後にエラーで全て破棄では作業効率が落ちる。

【動画】10枚200dpiモノクロ片面スキャン。機械的な給紙/排紙の時間は約23秒

 余談になるが、以前筆者がご紹介したアイ・オー・データ機器のUSBデバイスサーバー「ETG-DS/US」や、同社のサイトに紹介されている「SEH社製USBデバイスサーバー」などを使えば、ネットワーク上で共有可能になる(ただし排他式)。オフィスなどで使う場合は、これらの機器と併用すればより便利になるだろう。

 以上のように「ES-D200」は、ADF搭載、コンパクトでスキャンも速く対応OSの幅も広い。ドキュメントスキャナ、そして名刺スキャナなどとして使うには便利だ。ただ重送を感知せず、スルーしてしまうのは用途によっては問題となる。この点が気になる場合は、上位機種を検討して欲しい。