西川和久の不定期コラム

キヤノンのインクジェット複合機「PIXUS MG6130」を試す



 もうすぐ8月も終るというのにまだまだ暑い日が続く中、今年も恒例、インクジェット複合機の新モデルが発表される時期となった。第1弾はキヤノン「PIXUS MG6130」。量産試作機が届いたので、昨年(2009年)モデルとの違いなども含めつつレポートをお届けする。
●MG6130の仕様

 2010年秋のPIXUSラインナップは「MG8130」、「MG6130」、「MG5230」、「MG5130」、「MP280」、「iP4830」の計6種類。各モデルの詳細は発表資料をご覧頂くとして、今回は主力モデルとして、「Intelligent Touch System」を搭載した6色インク採用ハイパフォーマンスオールインワンフォトプリンタの「MG6130」をご紹介する。なお最上位モデル「MG8130」との違いは「フィルムスキャン対応の有無」となる。デジタルカメラの普及が進み、フィルムスキャンを必要とする人は限られるという判断なのだろう。主な仕様は以下の通り。

・グレーインク搭載、6色インクシステム/最小1pl、9,600dpi
・4,800dpi CISスキャナ搭載
・L判フチなしプリント約17秒、A4カラーコピー約15秒
・3.0型液晶ディスプレイ(MP990は3.8型)
・自動両面プリント&コピー対応
・無線(IEEE 802.11b/g/n)/有線LAN(10/100Base-TX)、Bluetooth(オプション)
・470×368×173mm(幅×奥行き×高さ)/約9.2kg

 まず大きく変わったのがデザインだ。これは「MG6130」だけでなく、今回発表された全モデル共通で「黒鏡面」を採用している。また同じ黒でも他社と比較してもさらに「濃い黒」とのこと。旧モデルの「MP990」のサイズは470×385×199mm(幅×奥行き×高さ)。高さ奥行きとも若干「MG6130」の方が短くなっているが、実サイズ以上にコンパクトに感じるのは、このカラーリングの関係だと思われる。ただ全面光沢黒なのでホコリや指紋あと、そして映り込みが結構目立つ。この辺りは気になる人は気になるだろう。

フロント。カバーで見えないが、右側にメモリカードリーダ、その下にUSBポート、そして赤外線ポートがあるリア。右側に電源コネクタ(メガネ型)、左側にEthernet、USBポート前面普通紙専用給紙カセット。普通紙専用で最大150枚入る
Intelligent Touch System。液晶ディスプレイと光る操作パネル。この画面がホームとなるスキャナ部。フィルムスキャンには未対応だ後トレイ。写真専用紙など硬い紙はこちらを使う。ハガキなら最大40枚、光沢紙などは最大20枚

 次に操作パネルは、光るキーがナビゲートする「Intelligent Touch System」へ進化した。原稿台カバーと一体化しており、操作するのに必要な場所だけキーが光る。非常に直感的で分かりやすいシステムだ。また一般的な圧電センサーではなく、静電センサーを採用しているので軽いタッチで操作できる。液晶パネルの表示自体は、結構シンプルそしてクールな感じとなり、MP990と比較してグレードアップした雰囲気がある。但し液晶パネルはMP990の3.5型から3.0型へと逆に小さくなってしまった。

 1pl、9,600dpi、6色独立/W黒のインクは、顔料インクと染料インクのハイブリッド。写真用紙には染料インクで色鮮やかな発色、普通紙には顔料インクでシャープでにじみのないテキストを印刷できる。またグレーインクの採用により、本格的なモノクロ印刷に加え、カラー写真の低彩度領域の色再現に重要なニュートラルなグレー色調を安定して表現可能だ。インクタンクは新しくなり、「BCI-326/M/BK/GY/C/Y」+「BCI-325/PGBK」となる。

 有線LANはGigabit Ethernetではなく従来と同じであるが、無線LANは11nが追加されIEEE 802.11b/g/nとなった。セキュリティはWEP/WPA-PSK/WPA2-PSK、セットアップはAOSS/WPS/WCN/らくらく無線スタート/手動設定の対応だ。

 新しく加わった機能として「フルHD動画プリント」があげられる。これはHD動画データから写真にしたい部分を切り出し印刷する機能だ。ノイズ低減処理や解像度向上処理などを行ない、自然なプリントになる様な仕掛けも入っている。

 そのほか、前面普通紙給紙カセット、両面印刷、CDレーベル印刷、カードダイレクトなどは前モデルと同じ。スマートフォンに関してはiPhoneだけでなく、Androidも追加された。

 以上のように、インクジェットプリンタ、そしてスキャナといった基本部分はMP990と同じであるが、デザインが大幅に変わり、操作パネルが進化、11n対応やフルHD動画プリントなど細かい部分が2010年風となったのが特徴的だ。

●セットアップ

 対応しているOSは、Windows XP/Vista(32bit/64bit)/7(32/64bit)、Mac OS X 10.6/10.5(Intel/PPC)/10.4(Intel/PPC)と幅広い。インストールは、「MPドライバー」、「マイ プリンタ」、「Easy-PhotoPrint EX」、「Solution Menu EX」、「電子マニュアル」、「MP Navigator EX」、「らくちんCDダイレクトプリント」、「Easy-PhotoPrint Pro」、「読取革命Lite」など、ドライバだけでなく関連アプリケーションも全てまとめてインストールする「おまかせインストール」と、必要なものだけ選んでインストールする「選んでインストール」が選択できる。

インストーラインストールするソフトウェア一覧接続方法の選択/USB接続
インストール中プリンタへ接続セットアップの終了

 「おまかせインストール」のインストールがはじまると「USB接続」か「ネットワーク接続」かを選択するパネルが表示される。ネットワーク接続の場合は、事前にプリンタ側でネットワーク関連の設定を済ませておく必要がある。いずれにしても選ぶのはこの程度で後は全自動。初心者でも容易にインストールできるだろう。また、「Easy-WebPrint EX」はインターネットからダウンロードする形式だ。この辺りはMP990と同じで、セットアップで大きく変わった部分は無い。

接続方法の選択/ネットワーク接続先にプリンタ側の無線LAN設定を済ませておく検出したプリンタ一覧
Canon IJ Netowrk ToolCanon IJ Netowrk Tool/詳細設定Canon IJ Netowrk Tool/通信状態の測定

●単独使用/プリント

 プリント機能は書き切れないほど豊富だ。まず写真の入ったメモリカード、USBフラッシュメモリー、もしくはデジカメをUSB経由でセット、写真を選択、+/-ボタンで印刷部数指定、そして[印刷設定]ボタンで、「用紙サイズ」、「用紙種類」、「印刷品質」、「フチ指定」、「写真補正」、「赤目補正」、「日付印刷」、「画像番号印刷」などを選択、印刷開始は[Start]ボタンを押す。印刷音は比較的静かだ。

 中央のボタンを押すと「標準表示モード」、「一覧表示モード」、「スキップモード」、「トリミング」と、表示方法が変更できる。一覧モードは9枚ずつ、スキップモードは10枚/100枚/撮影日などでスキップ表示する。

 写真補正に関しては「自動写真補正」もしくは「手動補正」で「VIVIDフォト」、「オートフォトモード」、「ノイズ除去」、「顔明るく補正」、「携帯画像補正」、「明るさ」、「コントラスト」を調整で可能だ。

 「楽しい写真印刷」は「レイアウト印刷」、「DPOF印刷」、「撮影情報印刷」、「インデックス印刷」、「カレンダー印刷」、「シール紙印刷」、「証明写真サイズ印刷」、「ディスクレーベル印刷」、「手書きナビ印刷」、「ディスクレーベル手書き」など、さまざまな印刷方式を選択できる。

 加えてメディアに入っているPDFをダイレクトプリントしたり、方眼紙などの定型フォームを印刷する機能を持っているのも嬉しいポイントと言えよう。

プリントした写真を選び、+/-ボタンで部数設定を行なう[印刷設定]の内容。用紙サイズ、用紙種類など基本設定から、写真補正など細かい設定もできる2L判の印刷。[Start]ボタンを押してから印刷が終るまで37秒(給紙が始まるまで11秒)だった

●単独使用/スキャナ

 スキャナはスキャンしたデータを「パソコンに転送」、「パソコンで設定したメールに添付」、「メディアカードに保存」、「USBフラッシュメモリーに保存」ができる。PCに転送する場合は、USB接続はもちろん、有線/無線LANでもOKだ。

 データ形式は基本的に「原稿種類」で写真を選んだ場合はJPEG、文章を選んだ場合はPDFとなるが、設定で違うデータ形式に変更できる。また写真ではマルチクロップが可能。原稿台に複数並べた写真を1枚1枚の写真として読み取れる。文章は裏写り低減やモアレ低減にも対応している。

 設定では「読取サイズ」、「データ形式」、「解像度」、「プレビュー」、「輪郭強調」などを変更できる(ただし保存先や原稿種類によって項目が変化する)。

「メモリーカードに保存」を選ぶスキャン条件などを設定。原稿の種類によってデフォルトのデータ形式が適切に変わるプレビュー画面。確認後、[OK]ボタンを押すと本スキャンが開始する

●単独使用/コピー

 コピーは、+/-ボタンで部数、上下ボタンで倍率、左右ボタンで濃度などを選び、[Color]ボタンでカラーコピー、[Black]ボタンでモノクロコピーとなる。設定では「倍率」、「濃度」、「用紙サイズ」、「用紙種類」、「印刷品質」、「両面設定」、「レイアウト」、「原稿向き」の内容を変更できる。

 「いろいろコピー」は、両面コピー(長辺とじ/短辺とじ)、「2in1/4in1コピー」、「フチなしコピー」、「枠消しコピー」、「ディスクレーベルコピー」などに対応。

コピーモード「標準コピー」を選択右の[印刷設定]ボタンを押せば更に詳しい設定ができる普通紙でのA4カラーコピーはスキャン開始から29秒

 先のプリント/スキャンも含め、必要なキーだけが光る「Intelligent Touch System」は、ご覧のように非常に分かりやすく「どれを押せば……」と悩むこともなく、待たされるような部分も見当たらない。なかなか良く出来た操作系だ。MP990と比較するとその違いは歴然と言えよう。

光るキーがナビゲートする「Intelligent Touch System」

●PCからの使い勝手

 PCからの使い勝手は、まず「Solution Menu」が「Solution Menu EX」となり随分雰囲気が変わった。前者はどちらかと言うと業務用という感じだったが、新しくなったSolution Menu EXは今風で業務でもホビーでも違和感がない。さらにデスクトップ、画面右下にショートカットが追加され、すぐに使いたい機能を呼び出すことが可能となった。

 標準では「おまかせスキャン」、「レイアウト印刷」、「写真印刷」のショートカットがあるが、メイン画面上のアイコンをドラッグ&ドロップすれば、他の機能もショートカットとしてデスクトップに配置できる。もちろん、このショートカットの場所は自由に移動可能だ。

 「Easy-PhotoPrint EX」は、写真共有サイトの「Flickr」からダイレクトに写真を取り込む機能を搭載した。写真自動補正機能の「自動写真補正II」は、顔検出/シーン分類/補正化など、光源を推定し、その情報を元に色かぶりを補正するなど高度な処理を行なっている。なお、この機能はPCを使用した時のみで、「MP Navigator EX」、「ScanGear」も対応。

Solution Menu EX電子マニュアルEasy-PhotoPrint EX/Flickrのコンテンツをダイレクトに取り込み
MP Navigator EXらくちんCDダイレクトプリントEasy-WebPrint EX/プレビュー

 IEで表示しているWebページをきれいに印刷できる「Easy-WebPrint EX」は、小冊子印刷機能やPCに保存された画像取り込みなどにも対応し、よりパワーアップ。またMac OS XのSafariにも対応予定となっている。Macユーザーには朗報だ。

 RAWデータを現像することなくプラグインで印刷できる「Easy-PhotoPrint Pro」は、Digital Photo Professonal、Photoshop CS/CS2/CS3/CS4、Photoshop Elements 6/7/8と、対応を広げた。一般的にデジタルデータは触れば触るほど劣化するので、RAWデータからダイレクトに印刷できるこのプラグインはなかなか優秀と言える。

 いずれにしても「Solution Menu EX」以外は、もともと完成度が高いアプリケーション群だっただけに、大きく変わっていないものの、細かい機能を追加もしくは精度を上げるなど、資産を生かしつつ更に使い勝手を良くしている点は非常に評価できる。単体でもかなり高機能な上に、PCでこれだけの処理ができると通常困ることはないだろう。


 以上のように「MG6130」は、基本部分を旧モデルから継承しつつ、デザインを一新、直感的に分かりやすくなった「Intelligent Touch System」を搭載。PCではメインメニューとなる「Solution Menu」を「Solution Menu EX」へ改良など、大技小技といろいろな部分が進化したインクジェット複合機だ。「そろそろ今年は買い替えかな」と、思っている人の候補となりえる1台と言えよう。