西川和久の不定期コラム

Core i7-920プロセッサ搭載
「HP Pavilion Desktop PC HPE 190jp」



HP Pavilion Desktop PC HPE 190jp

 2010年1月は、CPUにメモリコントローラ、そしてGPUを内蔵した新型Core iプロセッサと、それに対応するチップセットを搭載するPCが一斉に発表されたが、今回ご紹介するのは、その元祖、そして現在なお最強のCore i7プロセッサ搭載機、「HP Pavilion Desktop PC HPE 190jp」だ。CPUとチップセットの出荷が始まってから約1年なので、ちょうど今はこなれて来た時期。再度その実力を確認したい。
●HP Pavilion Desktop PC HPE 190jpの仕様

 冒頭で触れたように、今年はCore i5とi3元年。いろいろなPCが発表されているものの、現時点でもスペック的に最高峰なのは、4コア/8スレッドのCore i7プロセッサであることは間違いない。そしてこのCPUを使った同社の新型デスクトップPCのラインナップが、「Pavilion Desktop PC HPE 190jp」だ。BTOのカスタムモデルでは、CPUやグラフィックスなど選択の幅が非常に広く、ユーザーの希望に応じたシステムを組めるのも魅力の1つだ。

 例えばCPUは、Core i7-920(2.66GHz/Turbo Boost(以下TB)時最大2.93GHz、L2キャッシュ 1MB/L3 8MB)、Core i7-960(3.2GHz/TB時最大3.46GHz)、Core i7-975 Extreme Edition(3.33GHz/TB時最大3.6GHz)の3種類。これらのCPUに対応するチップセットは、LGA 1366用のIntel X58 Expressチップセットだ。メモリアクセスはトリプルチャネルで、DDR3-1066をサポート、PCI Expressの上限は36レーン、SLI対応など、最上位クラスとなる。

 新型のCore i5及びi3プロセッサとは違いグラフィックスを内蔵しておらず、別途GPUが必要となる。コスト的にはCPUにグラフィックスを内蔵している方がいいのだが、考えて見れば、今あえてCore i7プロセッサを選ぶと言うのは、かなりハイエンド志向のユーザーだ。従って、内蔵グラフィックスのパフォーマンスではもの足らず、外部に強力なGPUを搭載するだろう。従って、このシステム構成の方が理にかなっている。

 外部GPUとして、GeForce GT 220、GeForce GT 230、GeForce GTS 250、Radeon HD 4850、GeForce GTX 260(パフォーマンス順)の5パターンが選択可能。どれも今更説明の必要も無いほど強力なものだ。OSは、メモリを最大24GBも搭載できるので当然64bit。Windows 7 Home Premium、Professional、Ultimateからのチョイスとなる。

 もちろん、メモリ容量、RAIDも含めたHDD、そして地デジチューナなどもBTOで組合せることができる。今回手元に届いたマシンのスペックは以下の通り。

・Windows Home Premium 64bit
・Core i7-920(2.66 GHz/TB時最大 2.93GHz、1MB L2 キャッシュ+8MB L3 キャッシュ)
・Intel X58 Expressチップセット
・メモリ標準6GB(2GB×3使用/6スロット最大24GB)
・500GB HDD
・GeForce GTX 260ビデオカード、(ビデオメモリ1.8GB/DVI-I×2)
・Blu-ray/DVDスーパーマルチドライブ
・PCIe x16 ×2(空1)、PCIe x1 ×1(空0)、PCI x4 ×1(空1)
・IEEE 1394
・USB 2.0 ×3(フロント)/×4(リア)
・eSATA ×2
・2ジャック(フロント)/6ジャック(リア)音声入出力、S/PDIF出力(Optical)
・15-in-1カードリーダー
・Gigabit Ethernet
・地デジ/BS/110度CSダブルチューナ
・最大460Wの電源ユニット
・新デザインのmicroATXマザー対応ミニタワーPCケース、マウス/キーボード(USB)

 CPUは、Core i7-920。通常2.66GHz、Turbo Boost時2.93GHzとなる。4コア/8スレッド、L2キャッシュ1MB、L3キャッシュ8MB。今回BTOで選べる中では最下位のプロセッサとは言え、十分なパフォーマンスだ。メモリはトリプルチャンネルを生かすために、2GB×3の計6GBになっている。まだ3つ空きスロットがあるので、後々不足になってもこの6GBは無駄にならずに増設可能だ。計12GBもあれば、何をするにしてもメモリ不足になることはない。

 GPUは、このHPE 190jpとして最上位のGeForce GTX 260/1.8GB。DirectX 10、OpenGL 2.1、SP216基のGeForceとしては中級タイプと言える。たまたま筆者が日頃使っているメインマシンにもGTX 260/896MBを搭載している。Core i7と組み合わせた時のパワーも気になるところだ。この辺りは最後に検証したい。

 また、Windows Media Center用のリモコンそして、IR受信ユニットが付属。本体にはIR IN×1、OUT×2もある。加えてPIXELAの地デジ/BS/110度CSダブルチューナも内蔵。Blu-ray/DVDスーパーマルチドライブも含めて、コンテンツプレイヤーとして十分使いやすそうだ。

 今年モデルに合わせて新型のケースも開発された。外部デザインはもちろん、メンテナンス性やエアフローの向上など、内部的な改良も施されている。

 なお、今回の組み合わせで価格は150,360円(税込/ダイレクトショップ調べ/送料+3,150円)となる。

外観。フロントは光沢ありのブラック、淵がレッドと、なかなか存在感のあるデザインだ。ただ指紋あとは結構ペタペタ付いてしまうフロント。左下の、USB 2.0×1、音声入出力は、前面パネルを開いたところ。HPのロゴの直ぐ上にある楕円のパネルは「HPポケット・メディア・ドライブ」フロント/上部。右上に電源スイッチ。正面上部にUSB 2.0×2、15-in-1カードリーダが見える
背面。電源ユニットの下にあるのが、地デジ/BS/110度CSダブルチューナ。B-CASカードを入れるスリットと、アンテナ端子が2本ある背面(アップ)。2スロットを占有するGeForce GTX 260、DVI-I出力が2つ。音声入出力6系統、Gigabit Ethernet、IEEE 1394、USB 2.0×4、eSATA×2、S/PDIF出力(Optical)、左下はIR IN×1/OUT×2付属のキーボードとマウス。標準で付属するものとしてはなかなかしっかりしている。BTOでワイヤレスも選べる
内部(全体)。左下に新しくなったドライブベイ、右下にCore i7用の巨大なヒートシンクが見える6レーンあるトリプルチャンネルのメモリスロット。2GB×3が実装済み電源ユニット。最大460Wの電源ユニット。もう少し余裕のあるものもBTOで選べると嬉しいところ
GeForce GTX 260付近。GTX 260は2スロットを占有している。その上に小さく見えるのが地デジチューナ地デジ/BS/110度CSダブルチューナ。基板自体は小型なのだが、ご覧のように、B-CASカードが半分以上、ケースから飛び出る形となる。改善して欲しいポイントだリモコン、IR受信ユニット、B-CASカード、変換コネクタなど。出力がDVI-I×2なので、ミニD-Sub15ピンとHDMIに変換するコネクタも付属。IR受信ユニットは、本体リア左下にあるIR INへ接続する

 ケースのフロントは光沢の黒。そして赤い淵がある「エモーションID」と呼ばれるものだ。同社のサイトでは「高品位な色合いのピアノブラックを基調としたフロントパネルと、周囲に施されたメルロートリムが印象的な新シャーシ」と記されている。真ん中のHPのロゴは起動時に点灯する。なかなかお洒落で高級感があるケースだ。ただフロントは指紋あとやホコリが目立つので、気になりだすと非常に気になる。向かって右側のパネルはネジ1本を外せば、内部に簡単にアクセスができる。拡張カードを固定するのもネジ1本だ。ガタつくこともなく、立て付けも良い。

 また以前のケースでは、上側にUSBや音声入出力を収納しているサブパネルがあったが、今回は左下に場所が変更されている。加えてオプティカルドライブなどが入る「Expansion Bay」と、「HPポケット・メディア・ドライブ」用のベイが1つずつ。ドライブベイはケースのサイズの割りに結構豊富だ。

 ファンは、電源ユニット、リア、そしてCPU、ビデオカードと、4つ。試した範囲では、全体的に熱もあまりなく、ファンがガンガン回ることはなかった。「ブォーン」と言う低い音はするものの、ある程度の静音性は保たれている。自宅で使ってファンの音がうるさく気になることはあまりないだろう。

 内部は綺麗にまとめられスッキリしている。HDDはシャドーベイに納められ、少なくとももう1台は増設可能だ。更にリアパネルの下には、IR入出力の小さい基板が付いている。ただ、巨大なCPUのヒートシンク、そしてGeForce GTX 260がある関係で、窮屈とは言わないまでも、かなりのスペースが埋まっている。筆者も経験があるのだが、この手のケースに、2スロットを占有するビデオカードを入れると、見た目は一気に狭くなる。

 キーボードとマウスは、USBタイプだ。キータッチはストロークがあるものの割りと軽め。マウスは少し大き目であるが、どちらも標準添付品としては悪くないクオリティだ。なお、BTOでは無線タイプも選ぶことができる。

 気になる点としては、2スロットを占有するGeForce GTX 260と、地デジチューナを搭載している関係で事実上、スロットによる拡張がほとんど行なえないことだ。これはマザーボードのサイズがmicroATXと言うのも影響しているだろう。またケース内部も結構込み合っている。HDDやフロントベイを使う拡張以外は難しそうだ。ただ一般的にこれ以上何か拡張するものがあるかと言うと、ストレージ系以外はあまり考え難い。あまり心配する必要は無いかも知れない。

 もう1点は、電源ユニットが最大460Wというところだ。以前筆者はGeForce GTX 260へGPUを乗せ換えた時に、PC全体の動作が不安定となり、500Wから1,000Wの電源ユニットへ交換した経緯がある。もちろんCore 2 Quad+Intel P35 Expressと構成も異なるので、同社の仕様内で使うのには問題無いが、例えばもっとハイパワーのGPUにした時、電源容量不足になることも考えられる。できればBTOでワット数の大きい電源ユニットを選べると嬉しいところだ。

●Core i7-920とGeForce GTX 260で爆速!

 Windows 7起動時の印象であるが、Core i7とGeForce GTX 260の組み合わせなので、ここのところレビューが続いている、AtomプロセッサやCULVノートPCでの感覚とはまるで別世界だ。これぞデスクトップPCと言う迫力がある。

 逆にこれだけのパフォーマンスが必要なのはゲーム程度ではないだろうか。インターネットをするにしても、Office系のアプリケーションを使うにしても、CPUの使用率は数パーセント程度だ。ThinkPad X100eやEdgeの記事で「ノーマルの状態でYouTubeのHD動画を見るとCPU使用率は100%でコマ落ちする」と書いたが、このシステムでは同じ条件でもCPUは数パーセントしか使われず、ほとんど遊んでいる状態だ。

 この件については、GeForce GTX 260も同様で、Windows 7のAeroを描画する程度ではほとんどの能力を使っていない。これも3DゲームかCUDA(GPGPU)を使うソフトを使わない限り意味をなさない。実際、同社のHPには「タワー オブ アイオン」推奨認定モデル、ファイナルファンタジーXI動作推奨認定モデルの表記がある。筆者の用途で重い処理といえば、RAW現像と動画のエンコードが該当する。いずれにしても、ゲーマーかクリエーターご用達のPCとなるだろうか。

デスクトップは独特な壁紙だ。OSはWindows 7 Home Premium 64bit、メモリ6GB、4コア/8スレッドなで、タスクマネージャでは8CPU相当となるデバイスマネージャー。HDDはST3500418AS(7,200rpm/キャッシュ16MB)が使われていた。光学ドライブはHL-DT-ST BDDVDRW CH10Lドライブ構成。容量500GBのHDDをWindowsシステムとしてはワンパーティションで使っている

 Windows エクスペリエンス インデックスの総合は5.9だ。ただしこれはHDDのみ他と比較して遅いだけで、他のスコアは、プロセッサ7.4(7.3)、メモリ7.5(7.3)、グラフィックス7.1(7.2)、ゲーム用グラフィックス7.1(7.2)と全て7を超えている。バランスを取るならプライマリハードディスクに関してはSSDを使いたいところだ。

 参考までにカッコ内は筆者が日頃使っているCore 2 Quad Q9550(2.83GHz、6MB×2)/P35 Express+GTX 260の値だ。かなり肉薄した値になっているものの、メモリに関してはトリプルチャンネルの効果だろうか。スコアに差が出ている。

 逆にCrystalMark 2004R3のALU、FPU、MEMに関しては面白い結果が出た。46,846(52,429)、42,842(48,389)、42,627(21,422)。カッコ内が同じく筆者のマシンだ。ALUとFPUに関しては、Q9550の方が上回っている。しかし、メモリに関しては約半分の値になってしまった。逆にALUとFPUがこの程度の差なら、メモリアクセスが倍違うと、OSでもアプリケーションでも、メモリへアクセスしないプログラムは事実上ありえない。従ってトータル的にはCore i7の方が上となりそうだ。3DMarkもテストしてみたので、参考程度に見て欲しい。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合は5.9。プロセッサ7.4、メモリ7.5、グラフィックス7.1、ゲーム用グラフィックス7.1、プライマリハードディスク5.9CrystalMark 2004R3。HDDへのアクセスは一般的だが、ALU、FPU、MEM、GDI、D2D、OGLのスコアはさすがと言ったところか
14,684 3DMarks(SM 2.0/6,130、SM v3.0/6,287、CPU/4,498)

 初期設定時、タスクバー上のWindows Media Palyerの右側にあるアイコンをキックすると同社のオリジナル「HP MediaSmart」のランチャーが起動する。このHP MediaSmartは、ミュージック、ビデオ、写真、DVDの鑑賞モードがあり、通常は全画面モードになっている。黒主体でデザインも良く、操作性も統一しているのでスムーズに扱える。「CyberLink DVD Suite Deluxe」は、写真、DVDも含む動画、音楽などをメディアに書き込む統合ソフトウェアだ。

 今回「地デジ/BS/110度CSダブルチューナ」も内蔵している関係から、「PIXELA/Station TV」と「PIXELA/Station TV Marking Extension」がインストールされている。前者がTVソフト、後者が録画したデータを編集/管理するソフトになっている。また、Windows Media Centerには、このStation TVが追加され、Media Center経由でも地デジを見ることができる。

 ただし、これらのソフトを動かした時はAeroはOFFになってしまう。Windows 7でAeroがOFFでは生産性が低下する。改善を望みたい。また過去の記事で何回か触れているが、残念なことに筆者の事務所は電波の全く入らない陸の孤島なので、この地デジチューナで実際に地デジを観ることはできなかった。今回掲載した画面キャプチャ程度でお許し頂きたい。

 後半3つはそれぞれ、「Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー」、「NVIDIAコントロールパネル」、「HPリカバリーマネージャ」のパネルだ。HPリカバリーマネージャは、リカバリーディスクの作成だけでなく、ソフトウェア/ドライバの再インストールやシステムのチェックなどにも対応している総合的なものとなっている。

HP MediaSmartHP MediaSmart/ミュージック、ビデオ、DVDCyberLink DVD Suite Deluxe
PIXELA/Station TVPIXELA/Station TV Marking ExtensionWindows Media Center
Intelラピッド・ストレージ・テクノロジーNVIDIAコントロールパネルHPリカバリーマネージャ

 さて、ゲームを全くしない筆者として気になるのは、やはりCore 2 Quad Q9550とのパフォーマンスの違いだ。まず純粋にCPUパワーの差が出るRAW現像を行なって見た。素材はNikon D3XのRAW画像(6,048×4,032ピクセル)、現像ソフトは「Nikon ViewNX」だ。30枚の画像を同じ条件で現像したところ、5分19秒対6分2秒と43秒の違いが出た。たった30枚でこれだけ差が出るのだから数百枚単位のまとめた現像になると結構な違いとなる。

 次にエンコード速度比較だ。RAW現像ソフトは今のところGPGPUに対応していない関係上、CPUとGPUのトータルな性能比較という意味では、この方法しかない。早速手持ちの素材と「TMPGEnc 4.0 XPress」を使った比較を行なった。ただし、TMPGEnc 4.0 XPressは、エンコード処理にCPU、フィルター処理にGPUを割当てるため、その差が出やすいよう、日頃使わないフィルターも同じ条件でかけている。

Core 2 Quad Q9950+GTX 260Core i7-920+GTX 260。CPUとCUDAの使用率は同じだが、かかった時間は、4分16秒対3分1秒と、約4分の素材に対して、1分15秒も差を付けられてしまった

 結果は、ご覧のように、4分16秒対3分1秒で、Core 2 Quad Q9950+GTX 260の惨敗。CPUとGPUの使用率はほぼ同じなのだが、約4分の素材に対して、1分以上の差を付けられてしまった。これは決して小さい値ではなく、例えば60分の素材をエンコードすると約19分の違いが出る。やはり動画のエンコードにはCore i7プロセッサと言う定説は正しいようだ。今年は去年以上に動画編集の仕事が増えそうなのでCore i7搭載機がますます欲しくなってしまった。

 以上のように、「HP Pavilion Desktop PC HPE 190jp」は、Core i7プロセッサをベースとして、グラフィックスのランクも含めBTOでさまざまなカスタマイズが可能。ハイパワーなシステムを構築できる。ケースもなかなかお洒落だ。一見拡張性に乏しいと思われる、新型microATXマザー対応ミニタワーPCケースも、一般的にストレージ程度しか増設する必要も無く、あまり問題にはならないだろう。「MADE IN TOKYO」という安心感も含め、自作ではなく、メーカー製の強くて安定したPCが欲しい人にはピッタリな一台だ。