■西川和久の不定期コラム■
日本HP「Pavilion Notebook PC dv7」
Windows 7の出荷に伴い、同OSを搭載したモデルが次々と発表されパソコン関連が盛り上がってきた。今回はその中で、17.3型の大型液晶パネル、Core i7そしてSSD+HDD搭載のハイエンドノートPCをご紹介する。
●全部入りCore i7搭載ノートPC少し前にデル「Studio 1557」の記事を掲載したが、今回のHP「Pavilion Notebook PC dv7」は、さらにその上を行く超ヘビー級ノートPCだ。BTOで変更が可能だが、今回届いたモデルは、CPUがCore i7-820QM。CPUクロックは1.73GHzで、ターボ・ブースト時は最大3.2GHzまで上昇する。物理4コア、Hyper-Threadingを加えると8CPU相当だ。L3キャッシュは8MB。そしてストレージは128GBのSSDと500GBのHDDのハイブリッド。SSDにはSAMSUNG MMCRE28G5MXP-0VB(リード速度最大220MB/sec、ライト速度 最大200MB/sec)が使われている。さらに光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ機能を持つBD-ROMドライブを搭載する。液晶パネルは17.3型1,600×900ドットのワイドHD+液晶パネルだ。
メモリはスロットが2つあり、容量は2GB×2=4GB、OSはWindows 7 Home Premium(32bit)。4GBなので個人的には64bit版をインストールしたいところだが、BTOメニューには32bit版しかないのが残念なところか。
GPUにはNVIDIA GeForce GT 230Mが使われている。SP48、158GFLOPS、SPクロック1,100MHzのパフォーマンスセグメントに属すタイプとなる。ビデオメモリは1GB標準搭載。このGPU部分もBTOでは固定となっている。
以下、特徴的なスペックをまとめると以下のようになる。
CPU | Core i7-820QM(1.73GHz/cache 8MB/TDP 45W) |
チップセット | Intel PM55 Express |
メモリ | 4GB/DDR3-2GB×2(2スロット/空き無し) |
SSD | 128GB |
HDD | 500GBGB |
OS | Windows 7 Home Premium(32bit) |
ディスプレイ | 17.3型ワイドHD+ 1,600×900ドット、NVIDIA GeForce GT 230M、アナログRGB/HDMI出力 |
ネットワーク | GbE、IEEE802.11a/b/g/n、Bluetooth(V2.0+EDR) |
その他 | IEEE 1394、BD-ROMドライブ(DVDスーパーマルチドライブ機能搭載)、サブ・ウーファ搭載、USB 2.0×4(内1つはeSATAと併用)、eSATA×1、Webカメラ、5-in-1カードリーダ、指紋認証機能、ExpressCardスロット、ヘッドフォン・ラインアウト×2、マイク入力×1、リモコン |
サイズ/重量 | 414×278×33~46mm(幅×奥行き×高さ)/3.38kg |
バッテリ/駆動時間 | リチウムイオンバッテリ (8セル、14.4V、2.55Ah) 約431g、272×51×21.7mm(同)/約3.5時間 |
BTOで最小構成を選んだ場合の組み合わせは、「Core i7-720QM」、「メモリ 2GB×1」「HDD 320GB」これで142,800円となる。また今回届いたスペックだと、「Core i7-820QM」、「メモリ 2GB×2」、「128GB SSD+HDD 500GB」で229,950円。さすがにそれなりの価格だ。他の部分は共通なので固定のスペック。従ってBD-ROM/DVDコンボドライブは標準装備となる。
この中で興味深いのは、先に挙げたスペックに加えサブウーファがあることだろう。サブウーファは、低音は指向性が無い(少ない)特性を利用し、ステレオではなく、低域のみ受け持つ1つのスピーカーの事。確かに組み込む場所が限られるノートPCに適している。このサブウーファを加えたトータル的な音質がどうなっているのか興味深々だ。
トップカバーとパームレストは、おなじみ「ZEN-design」が「HP Imprintテクノロジー」によって描かれ、さらにVMフィニッシュでメタリックな雰囲気を醸し出している。また、トップカバーにある「HPのロゴマーク」や電源ボタンなどはLEDによる発光でなかなかおしゃれだ。
キーボードは、本体のサイズが大きいのでほぼフルサイズ。キーピッチ19mm、キーストローク2.5mm確保し、右側にはテンキーも付いている。またいつも気にしているタワミなどは全く無くガッチリしており気持ち良く操作出来る。筆者的には合格点だ。タッチパッドとボタンも広く滑りも良く扱い易い。ボタンも硬過ぎず、柔らか過ぎず、ストロークも調度いい。
キーボードの上には、ボリューム、再生などをコントロールできるタッチセンサーがあり、とてもスムーズな操作感だ。ボディが大きい分、スペースを有効活用している格好となっている。従来、プラスαのファンクションキー的なものはそれなりにあったが、このタッチセンサー式のものは一味違う。さらにリモコンが付属。このリモコンの面白いところは、形状をExpressCardスロットに合わせてあり、普段使わない時は、ExpressCardスロットに収納できることだ。
17.3型の液晶パネルは光沢(グレア)タイプなので映り込みはあるものの、明るくコントラストも高い。ただ映像系に合わせているのか色温度は高めで青っぽいので、調整した方が望ましい。また、このサイズで1,600×900ドットは、16:9の映像を上下の帯無く表示できるものの、文字のサイズは相対的に少し大きめとなる。BD-ROM/DVDコンボドライブやサブウーファを搭載しているところから、どちらかと言えばメディアコンテンツ中心の使い方を想定しているのだろう。
期待のサブウーファであるが、カットオフ周波数がかなり高く、スピーカーが埋め込まれている右側に音が片寄って聞こえる。逆にキーボードの上にあるステレオスピーカーの再生領域が高域よりで「シャリシャリ」と言った感じの部分しか聞こえない。もっとこちらのスピーカーを積極的に鳴らし、サブウーファは味付け程度にする方が効果的だと思われる。最大音量もサイズの割には控えめだ。できれば2倍程度の音量が欲しい。
●プレーヤーとして十分な機能そして驚きのパワー!1,600×900ドットの画面は何をするにも十分の広さだ。さらにWindows 7、そしてCore i7とNVIDIA GeForce GT 230Mのパワーが加わり、ノートPCを使っていることを忘れてしまいそうになるほど快適な環境となる。プライマリディスクが結構速いSSDなのでOSやアプリケーションの起動がサクサクしていて気持ちいい。
熱やノイズに関しても、ボディの容積がある関係で十分対策が施させているようで、全く気にならないレベルだ。
プリインストールされているアプリケーションは、動画編集ソフトウェアの「Corel VideoStudio 12 Plus」、画像編集ソフトウェア「Corel Paint Shop Pro Photo X2 Ultimate」、DVDライターの「CyberLink DVD Suite Deluxe」、そして同社オリジナルの「HP MediaSmart」と、マルチメディア系を中心に構成されている。
「Corel VideoStudio 12 Plus」と「Corel Paint Shop Pro Photo X2 Ultimate」は、画面キャプチャをご覧頂ければ分かるように、かなり本格的な編集ツールだ。ただ残念ながらCUDAには対応していない。せっかくGeForce GT 230Mが乗っているので、活用して欲しい気もするが、もしかするとCore i7のパワーの方が勝っている可能性もある。
「HP MediaSmart」は、「DVDモード」、「音楽モード」、「写真モード」、「動画モード」、「ビデオチャット用のエフェクトツール」と、同社オリジナルの総合的なメディアプレーヤーだ。Windows Media Centerのようなものと言えば分かりやすいだろうか。また、起動時のデスクトップは標準で「PC Dock」が画面上に常駐し、「HP Advisor」や「HP MediaSmart」がワンクリックで起動できるようになっている。ソフトウェア的には普通のランチャーなので、不要であれば終了すればよい。
Windows エクスペリエンス インデックスの値は6.4。内訳はCPU 6.5、メモリ 7.4、グラフィックス 6.4、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 6.9となっている。特に今回プライマリハードディスクはSSDなので結構高いスコアとなっており、CrystalMarkの値もランダムリード72MB/sec、ランダムライト54MB/secとなかなか良い。NVIDIA GeForce GT 230Mは、パフォーマンスセグメントに属するので、驚くほどの値ではないものの、それでもノートPCとして考えた場合は、十分ハイパフォーマンスだ。CPUパワーに加えCUDAも使えるので、対応しているソフトウェアであれば、動画編集してもストレスを感じないだろう。ただし、3DMarksの値はあまり芳しくない。ゲーム用としてはGPUが弱いようだ。
Core i7-820QMの動画のエンコード能力はどの程度なのか非常に興味があり、日頃使っている「TMPGEnc 4.0 XPress」で筆者のメインマシン(Core 2 Quad Q8200 + GeForce GTX 260、64bit Windows 7、4GBメモリ)と動画エンコード対決を行なった。
素材である約5分のaviファイルをフィルター処理をしつつwmvフォーマットへエンコードしたところ……何とデスクトップが“33秒”も負けてしまった。ただし、書き込みやテンポラリファイルがSSDかHDDかの違いも含まれる。またエンコード中、CPUモニタを見ていると、Core 2 Quadでは全てのCPUがほぼずっと100%近い負荷がかかっているのに対し、Core i7-820QMは75%前後を割りと上下幅が大きくフラフラしながら推移。余力のあることが分かる。
さすがにGPUに関してはGTX 260の方が強力らしく、CUDAの使用率が約3倍高くなっている。いずれにしても再生時間5分の動画のエンコードに対して30秒近くの差はかなり大きく、以前からCore i7はエンコード向きと言う話を聞いていたが、目の当たりにすると驚いてしまう。「ノートPCに負けるとは見なければ良かった……。」と思っても後の祭りだ。
以上のように、HP「Pavilion Notebook PC dv7」は、サイズが414×278×33~46mm、重量3.38kgとヘビー級なので、外へ持ち運ぶ用途としては向かないものの、室内での移動であれば十分許容範囲だ。通常ACアダプタ以外に必要なケーブルも無く、取り回しも楽な上に付属のリモコンでメディアプレーヤーとしても便利に、そして動画編集などクリエイティブな処理に関してもパワフルに使える。デスクトップPCは邪魔だがハイパワーなノートPCが欲しいと言う要望にピッタリの1台と言えよう。