■西川和久の不定期コラム■
Windows 7 |
先月22日に発売開始となったWindows 7を、ようやく25日にメインマシンへインストールした。約10日間の利用を踏まえ、Windows Vistaとの使い心地の違いなどをレポートする。なお、業務に使っているマシンの関係上、その内容や相手先が解るような文字列、画面にはモザイクを施している。予めご了承頂きたい。
今回Windows 7をインストールしたマシンは、以前記事にしたCore 2 Quad Q8200をGIGABYTE「GA-P35-DS3(rev.2)」へ乗せたものに、NVIDIA GeForce GTX 260を追加した。ストレージは初期型の64GB SSDと1TB HDD、4GBメモリ、Windows Vista Home Premium(64bit)をインストール。
毎日朝から晩まで、写真をレタッチしたり、動画を編集したり、原稿を書いたり、サイトを運営したりと、フルに活用している。他のマシンへはWindows 7のβ版やRC版をテストでインストールしたものの、仕事が止まるとまずいので、このマシンへは1度もWindows 7をインストールしてこなかった。冒頭でも触れたように、25日の日曜にやっと仕事が一段落したため、意を決してセットアップした。
注文したエディションは、Windows Vistaと同じHome Premiumだ。Professionalにするか悩んだが、大きな違いは「Windows XP Mode」、「リモート デスクトップサーバー」、「Windowsドメインへの参加機能 」、「オフラインファイル」の有無である。
まず、Windows XP ModeはCPUがIntel VTに対応している必要があり、このマシンのCPUはCore 2 Quad Q8200なので残念ながら未対応。Windows XPでなければ動かないアプリケーションは使っておらず、Webページ検証用の別のマシンにIE6も入っているため、とりあえずは問題無い。他の3つも不必要であり、結局Home Premiumに決めた。どうしてもWindows XP Mode狙いでProfessionalが必要な時は、Intel VT対応のCPUに乗せ換え、Windows Anytime Upgradeを利用する手があるので、初期投資を抑えることができたと考えている。
ただ、以前からWindows 7をインストールする時は、プチフリ気味の初期型SSDをリプレイスしたいと思っており、「Intel X25-M/80GB」を用意した。ただし、手元にあるのは50nmプロセス版のG1タイプで、先日のTrim対応のファームウェアは未対応だ。
と言った事情はさておき、ドライブの乗せ換えも含めインストール自体は問題無く完了した。ハードウェアに特殊なものは一切使っていないため、インストールメディアに含まれないドライバもWindows Updateで自動的に組み込まれ、今のところスムーズに動作する。
RC版の頃から解っていた話だが、昔から使っている「Canon Medio GP 255F+D1 LIPS4ボード」が、Windows 7からついに未サポートとなり、Windows Update経由のプリンタ一覧からも名前が消えてしまった。旧式とは言え、メンテナンス契約をしている、現役のFAX/プリンタ/コピー複合機だ。
ただこれには裏技があって、前もって他のWindows Vistaマシンで接続/共有し、ネットワーク経由でWindows 7から接続する。この時「プリンタドライバをダウンロードするか」を聞かれるので「OK」とすると、該当するドライバがダウンロードされWindows 7側に組み込まれる。このままネットワーク接続で使ってもいいのだが、切断し、再度Windows 7からダイレクトに接続すると、既にドライバがローカルにあるため自動的に認識される。基本的にWindows Vistaと7のプリンタ周りは同じなのでできる手法だ。
大幅にアーキテクチャが変わってしまったのなら仕方ないが、今回のように実質同じで、infファイルを用意する程度であれば、Windows Update経由で入手可能にして欲しいところだ。
Windows エクスペリエンス インデックスが気になるので、初めに測定したところ「7.1」となった。内訳は「プロセッサ:7.1」、「メモリ:7.1」、「グラフィックス:7.2」、「ゲーム用グラフィックス:7.2」、「プライマリ ハードディスク:7.5」。各ポイントにそれほど開きがなく、バランスが取れている印象だ。
このバランスを保ったまま更に数値を上げるには、CPUをCore i7へ、メモリをDDR3へ、GPUを強力に、とそれなりの出費となりそうだ。特に筆者の場合、マシンパワーを使うのは動画のエンコード程度なので、多くの時間はハードウェアが遊んでいる状態である。これだけあれば十分過ぎるのだ。
以前RC版をテストしたように、インストールメディアに入っていないドライバもWindows Update経由でダウンロードされることが多い。今回は「DisplayLink」のドライバがこれに相当した。また、プリンタドライバも標準のプリンタドライバに無い時はWindows Updateのボタンを押すとリスト一式がダウンロードされる。これだけネットが一般化している環境であれば、この方法もありだろう。
後半の使い勝手の部分に含まれるが、複数メディアに対応したUSBカードリーダのドライブが、実際にメディアの入っているものだけ表示するように変更された。Windows Vistaの時はメディアの有無に関係なく全てのドライブが並び、どこに入っているのかと悩むことが多かったが、これであれば一発でアクセスできて便利。
実はWindows 7の便利になったものの多くはWindows Vistaでも搭載していた機能を更にチューンしてユーザビリティを向上したものが多く含まれている。細かい修正の積み重ねが、Windows 7を快適に使える環境へと進化させているのだ。
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【西川】Core 2 Quadマシンを5万円で組む!
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0107/nishikawa.htm
【西川】GPGPU/CUDAで快適動画編集入門
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/20090518_168541.html
Windows 7になったからと言って、もともとそれなりに速いマシンなので、メモリの使用量やパフォーマンスについては劇的には改善されず、体感的に大差無かった。メモリ使用量は平均して500MBほど減った程度だ。
むしろSSDを交換した効果の方がはるかに大きいかもしれない。加えて、改善されたという起動/終了速度に関しては、普段使わないときはスリープにしているので、Windows Vistaとあまり変わらない。以前、「RC版で既にVistaより快適なWindows 7」で「気に入っている点」としてあげている部分が毎日実務で使うとより快適さを痛感する。
まず何より便利なのが「ライブラリ」と「表示形式や機能が増えたエクスプローラー」だ。言うまでもなく、ファイルをコピーしたり、表示編集したりする作業は日常的に行なうもの。ワンクリックでも手順が少なく済む方がありがたいし、同じようなデータは一覧性の高い方が解り易い。
この点、Windows 7では「ライブラリ」と言う概念が導入され、同じような種類のデータを仮想的に1つのフォルダーとして扱えるようになった。画面キャプチャではWorkと言うライブラリを新たに作成し、そこへ毎日の業務フォルダー、PC Watchの原稿フォルダー、そしてDOS/V Power Reportの原稿フォルダーなどをアサインした。それぞれフォルダーを分けて管理しているが、こうして同じWorkと言うフォルダーで一元管理ができる。まず、仕事をはじめる時にこのWorkライブラリを最初に開くことで、パソコンの前に座れる時間と優先順位でやるべき仕事を決められる。
同じようにドキュメント、ピクチャ、ビデオについても複数の関連するフォルダーをアサインしている。とにかくこれに慣れてしまうと、Windows VistaやWindows XPで操作するのがまどろっこしくなるほどだ。
Windows ヘルプとサポート。NASにあるフォルダーをライブラリに追加する方法を尋ねたが、Home PremiumとLinuxベースのNASでは解決方法が無い |
ただ残念なのは、一般的なLinuxベースのNAS(筆者の場合はバッファローTS-1.6TGL/R5)で共有しているネットワーク上のフォルダーは、このライブラリにアサインできない。正確には「このネットワークの場所はインデックスが作成されていないため、追加できません。」と言うエラーとなる。
では、このフォルダーにインデックスを作成する方法は、と「Windows ヘルプとサポート」に聞いてみると、「可能。ただし、ネットワークの場所をインデックス化するか、オフラインで使用できるようにする必要があります(下記の質問を参照してください)。」と指事された。
「ホームグループに含まれるコンピューターは追加できる」とあるが、NASは違う。そして「ネットワーク フォルダーがインデックス化されていない場合は、フォルダーをオフラインで使用できるようにすることで簡単にインデックス化できます。」とあるものの、該当フォルダー上で右クリックしても「常にオフラインで使用する」と言う項目は出ないし(Home Premiumでは未対応)、仮に出たとしても結局そのコピーをローカルで持つため意味が無い。
どうやらWindows系のサーバーであれば、コントロールパネルのインデックスオプションで該当フォルダーを追加できるようだ。しかし、市販のほとんどのNASが搭載しているOSはLinux。従ってライブラリには追加できない。技術的に可能であれば改善して欲しい部分だ。
エクスプローラーは配色も含めスッキリした表示形式となった。Windows XPやWindows Vistaのように派手でアイコンや文字がたくさん並んでいると野暮ったいが、これならほぼ必要最小限で、軽快に操作できる。タスクバー上にある、エクスプローラーのアイコンを右クリックで表示するジャンプリストも強力だ。よく使うフォルダーを一覧表示しているので即アクセスできる。また、恒久的に表示したい場合はピンを刺し、「いつも表示」へ入れればいい。
次はやはりMPEG-4の対応だろう。業務で3gppのファイルを毎日扱っているので、特に嬉しかった。Windows XPやWindows Vistaは、標準でMPEG-4には対応せず、別途QuickTimeなどをインストールする必要があった。
しかし、Windows 7では写真と同様、(この画面キャプチャは白からのフェードインになっていので全て白くなっているものの)標準で内容がサムネイル表示される。更にプレビューペインに切り替えると、右側で再生可能となる。このプレビュー自体はWindows Vistaからあったが、Windows 7では右上のアイコンをワンクリックするだけでビューが切り替わり、より便利になっている。
ただこのプレビューペインに関しては、標準ではテキストやHTML、動画を含む画像フォーマット程度にしか対応していない。Word、Excel、PowerPointなどのデータは、該当アプリケーションをインストールする必要があるし、PDFに関しては現段階で未対応など、中途半端である。Office関連に関しては無料のビューアがあるものの、Adobe Readerも含め、日頃よく使うデータ形式については迅速な対応を望みたい。
複数のフォルダーにまたがる同種のデータを一元管理できるライブラリ | 3gpもサムネイル表示 | ワンクリックでプレビューペインへ切り替え |
タスクバーもかなり使いやすくなった。まず「クイックランチ」と「起動中のアイコン」の区別が無くなり、半透明の枠がかかっているアイコンは起動中、何もないアイコンはショートカットと言う感じで並んでいる。また、これまでクイックランチにアプリケーションを登録するにはクイックランチ・エリアへショートカットをドラッグ&ドロップしたり、ファイルを指定する必要があったが、Windows 7では「起動中に右クリックでピンを刺せば」登録される。これは使う前にある程度環境を整理するか、使いながら整理するかの違いがあり、もちろん後者の方が利便性が高い。
Windows XPやWindows Vistaではオプションの「タスクバーを自動的に隠す」にして、普段は非表示にしていたのだが、Windows 7では余りにも使い易いので常に表示している。一点、不便になったのはクイックランチへフォルダーのショートカットが置けなくなったことだ。ただしこれは、先のライブラリで代用、もしくはエクスプローラーのジャンプリスト「いつも表示」へ追加すれば即アクセスできるので特に問題にならないだろう。
ライブサムネイルとAero Peekは複数のフォルダーを開いている時など、内容をそのまま横並びに表示し、加えて画面上の他のウィンドウが透明になり、目的のフォルダーを探すのが非常に楽になった。一度慣れてしまうと、Windows XPやWindows Vistaは操作し辛く思うほどだ。ただ、ネットブックに搭載される「Windows 7 Starter」はAeroが機能しないため、この機能は利用できない。画面が狭いネットブックだけに、意図的にこの機能を落としたのはいただけない。
複数のウィンドウが開いているデスクトップ | 該当するウィンドウのサムネイル上へマウスオーバーするとこのようになる |
以上のように、Windows 7はエクスプローラーとタスクバーが大幅に改善されている。この2つに関しては、操作する時、最も使う部分であるだけに、1番印象に残る。この改善により、実際必要なデータとして見えている文字や画像以外に、Windows自身が表示している文字と画像が極端に少なくなる。結果として画面全体が非常にシンプルになった。
これまでWindows 3.1、Windows 95、Windows 98、Windows 2000、Windows XP、Windows Vistaと、Windowsが表示する情報量――オプションで非表示にする方法はあったものの――は増える一方だったが、Windows 7になって見事に整理された。筆者が使いやすくなったと思う1番の理由がここにある。
□関連記事
【2009年5月21日】【西川】RC版で既にVistaより快適なWindows 7
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/20090521_169652.html
【2009年9月3日】【元麻布】Windows 7に見るMicrosoft事業部間の“壁”
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hot/20090903_312479.html
さて、タスクバーやエクスプローラーがブラッシュアップされ便利になったWindows 7。固有の、「プレビューペイン」や「ライブサムネイル」、「ジャンプリスト」などは、アプリケーション側の対応が必要だ。例えば、現時点でWebブラウザを見ると、対応具合は以下のようになる。
ライブサムネイル | ジャンプリスト | |
IE8 | ○ | ○ |
Safari 4.0.3 | ○ | × |
Firefox 3.5.3 | × | × |
Google Chrome 3.0.195.27 | × | ○ |
Safariのライブサムネイル | Google Chromeのジャンプリスト | Google Chromeはライブサムネイルに未対応(2つタブがあるが手前のみ表示) |
IE8は当然として、すでにSafariがライブサムネイル対応なのが意外だった。Google Chromeはジャンプリストのみの対応。ライブサムネイルもジャンプリストも、Windows 7のウリの1つであり、使い出すとかなり便利な機能だ。これまで筆者は主にFirefoxを使用していたものの、現時点では取り合えずライブサムネイルに対応しているSafariに切り替えた。Firefoxは3.6でライブサムネイルに対応予定(ジャンプリストについては不明)なので、正式版が公開されたら試したい。
Webブラウザに限らず、Windows 7の新機能にアプリケーションが対応しているか、していないかによって、乗り換えてしまう程のインパクトが発生する可能性がある。開発サイドとしても無視できない部分となっている。1ユーザーとしては、主要アプリケーションが早いタイミングで対応する事を望みたい。
□関連記事
【2009年11月2日】テーマ機能「Personas」を統合した「Firefox」次期バージョンv3.6のβ版が公開(窓の杜)
http://www.forest.impress.co.jp/docs/news/20091102_326071.html
過去に筆者が書いたWindowsに関する原稿を見直してみると、Windows 98/Windows 2000からWindows XPになる時は、「UIのデザイン(Luna)が気に入らない」、Windows XPからWindows Vistaになるときも「必要以上にリソースを食い過ぎ」など、あれこれ文句を言っていた。
しかし、Windows 7に関しては、「釈然としないSKUの多さ」や「パソコンを構成する主要パーツの値段に見合わない価格面」を除いて、機能的にこれといって文句を言う部分が無い。あえてあげるなら「プレビューペインで一般的なフォーマットに標準対応して欲しかった」程度だろう。それほどWindows 7は一発目から良く出来ている。更に各メーカーのプリインストール状況を見ると64bit化も加速しそうな雰囲気だ。そろそろ本気でWindows XPとはサヨナラする時が来たようだ。(その2へ続く)