西川和久の不定期コラム

Core i7搭載ノートPC! デル「Studio 1557」



Studio 1557

 いつものように編集部から記事ネタのノートPCが届いた。今回は事前にスペックなどを全く聞いていなかったこともあり「15型液晶の激安モデルかな!?」と思いながら電源をONにしたところ何か様子が違う。やけにスピードも速いのだ。CPUを確認すると何と「Core i7-720QM」ではないか! 筆者はデスクトップPC用のCore i7すら触ったことがない。初のCore i7体験、しかもノート用だ。その実力はどうなのか、興味津々でレポートしたい。


●Core i7搭載ノートPCの中身とは

 モバイル向けのCore i7は、Core i7-920XM(2GHz/L2キャッシュ8MB/TDP 55W)、Core i7-820QM(1.733GHz/L2キャッシュ8MB/TDP 45W)、Core i7-720QM(1.6GHz/L2キャッシュ6MB/TDP 45W)と、現在この3種類が存在する。いずれも45nmプロセスでHyper-Threadingにも対応し、4コア/8スレッドをサポートする。

 同クラスのCore 2 Duoシリーズと比較すると、動作クロック数は低くなっているものの、Turbo Boost Technologyで最大75%クロックアップする仕掛けが入っている。チップセットはIntel PM55 Expressだ。マネジメント・エンジン・イグニッション・ファームウェア、マトリクス・ストレージ・テクノロジー 8.9、SATA×6、PCI Express 2.0×1、USB 2.0×14などに対応している。

 一方、デルのStudio 15シリーズの特徴は、ハイビジョン高輝度LEDディスプレイ、6種類のカラーと11種のスタイリッシュなデザインからのカスタマイズ、Mobility Radeon HD 4570、マルチメディアキーボード、Blu-rayコンボドライブ(オプション)、サブ・ウーファー搭載など、どちらかと言えばマルチメディア系に力を入れているモデルだ。これまではモバイル用Core 2 Duoを搭載していたが、モバイル用Core i7の発表により、対応モデルが追加されたわけだ。手元に届いたのは「Studio 1557」。主な仕様は、以下の通りとなる。

CPUCore i7-720QM(1.6GHz/L2キャッシュ6MB/TDP 45W)
メモリDDR3-2GB(2スロット/1スロット空き)
HDD250GB
OSWindows Vista Ultimate 64bit版
ディスプレイ15.6型1,920×1,080ドット、Mobility Radeon HD 4570
ネットワークGigabit Ethernet、Intel WiFi Link 5300AGN、Bluetooth
その他IEEE 1394、スーパーマルチドライブ、USB 2.0×3、
eSATA×1、Webカメラ、8-in-1カードリーダ、
ExpressCard/34スロット
サイズ/重量371.6×25.3-38.9×252.9mm(幅×奥行き×高さ)/2.52kg

 価格を調べようと同社のホームページを眺めたところ、どうもこのStudio 1557と言うモデルが存在しない。近いスペックはあるのだが、同一のものはBTOしても選べないコンフィグレーションとなっているのだ。一番の違いは「メモリ2GB」と「HDD 250GB」この2つ。BTOではこの2つの選択は無く、メモリは最低4GB、HDDは500GBか128GBもしくは256GBのSSDとなっている。

 そこでメモリを4GB、HDDを500GBなどにして、できるだけ仕様を近づけたBTOにしてみると「構成例価格 176,205円」-「割引額 56,276円」=「特別価格 119,929円」となった。最近ネットブックなどノートPCの価格は5万円前後と思いがちであるが、それを差し引いても、Core i7で15.6型1,920×1,080ドット(フルHD)、Mobility Radeon HD 4570のノートPCが10万円ちょっととはかなり安い。もし2GB/HDD250GBのBTOがあれば更に1万円程度は安くなっているだろう。なかなか魅力的な価格設定だ。

上面。光沢の天板。写真からはわかりづらいが、薄く渦状の模様が入っている正面。フルHD解像度の15.6インチの液晶パネル。ボディ正面には特に何も無い底面。ネジ3本でパネルが外れる。メモリは2スロット中1スロットが空き
左側面。HDMI、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、USB 2.0/eSATAコンボポート、USB 2.0、IEE1394、マイク、ヘッドホン×2ゆったりとしたキーボード。上のメッシュの部分にステレオスピーカーがある右側面。ExpressCard/34スロット、8-in-1カードリーダー、スーパーマルチドライブ、USB 2.0、電源入力
キーピッチ。主要部分は約19mmバッテリとACアダプタ。6セルで最大駆動時間3時間17分。オプションで9セル(+6,825円)がある光る電源スイッチとACアダプタのプラグ。プラグはストレートだ。横に伸びるケーブルが邪魔になるのでL字型が欲しいところ

 15.6型のパネルを搭載していることもあり、サイズは371.6×252.9×25.3~38.9mm(幅×奥行き×高さ)、重さ2.52kgと結構大きく重い。カバンなどへ入れて持ち運ぶのは辛いが、室内での移動であれば苦にならないだろう。デザインはかなりスッキリ、そしてシャープな雰囲気だ。質感も悪くない。

 キーボードは一般的なレイアウトであるが、[Delete]、[Home]、[PgUp]、[PgDn]などが右端に一列に並ぶタイプ。また、ファンクションキーの中央から右側には再生・停止、光メディアイジェクトなど、マルチメディア系のコントロールボタンがある。全体的に少したわむのが惜しい。パームレストは十分広く、タッチパッド及び左右のボタンも扱い易い。パームレストとタッチパッドは同じ素材で1枚ものなのだが、タッチパッド部分だけ表面加工してあり、少しザラザラした感じになっている。

 ただちょうどこの位置に熱がこもるのか、長時間使用していると手を置く部分が結構暖かくなってくる。ノイズに関しては、このクラスの割には静かだ。Core i7なので、もっとファンが回るのかと思っていたが、そのような状況にはならなかった。

 「TFT TrueLife」と呼ばれるLEDパネルは明るくハイコントラスト。ただ彩度は鮮やかと言う程でもなく標準的だ。光沢タイプなのでそれなりに映り込む。事務処理などでは明る過ぎて輝度を落とす必要があると思うが、映像や写真を楽しむにはなかなか良い感じだ。ちなみにBTOで、同じサイズで解像度が1,366×768ドットからの差額は、WXGA+(1,600×900ドット)で2,625円、そしてフルHDへは5,250円となっている。たった5千円ほどの差であれば、このフルHDを選ばない理由は無いだろう。

 特筆すべきはスピーカーだ。少なくともこれまでレビューしてきたノートPCの中では音量も音質も一番良い。サブ・ウーファーを搭載していることもあり、低音もノートPCとは思えない量感がある。ただし、大きい音で音楽などを再生していると、パームレストなどボディがビンビン響いてくる。

 少し不思議なのが「ヘッドフォン出力が2つある」こと。「2人で聞いてね!」と言う意味なのだろうか。スペースが余っているなら光デジタル出力などがあった方が便利だと思うのだが……。

●デスクトップPCに近い使用感

 プリインストールされているアプリケーションは、「Dell Data Safe」、「Dell Webcam」「Power DVD DX」、「FastAccess顔面認識」、「Roxio Burn」、「McAfee SecurityCenter」など、非常にあっさりしている。タッチパッドドライバは「Dell Touchpadドライバ」が使われている。UIなどが違うものの機能的にはSynaptics TouchPadドライバとあまり差は無い。

 とにかくこれまで多くのノートPCを触ってきたが、操作した瞬間「これは速い!」と思うマシンは非常に稀だが、このStudio 1557は、数少ないその1台となる。更に解像度は1,920×1,080ドットのフルHDだ。筆者が日頃操作している環境は21型の1,600×1,200ドット(UXGA)なので、横方向はかなり広く感じる。ウィンドウを2つ並べるにも十分の解像度だ。15.6型のこの解像度は一見文字が小さく見えそうだが、使った感じでは特に見辛くはなく、結構快適だった。いろいろな意味で、デスクトップPCの環境に非常に近い感覚で操作できる。

 またボディの左側にIEEE 1394やeSATA端子などがあり、ビデオ編集やeSATAのHDDなどを外付けにし、簡易デスクトップ代わりにもなりそうだ。

 ただメモリ不足の関係か、動作にちょっと引っかかる感じがあるのが惜しいところ。4GBに増やしWindows 7で使ってみたいものだ。ちなみにStudio 15シリーズはWindows 7無料アップグレード対象なので、今すぐ購入しても安心だ。

起動時のデスクトップ。フルHD解像度は広い。タスクマネージャ/パフォーマンスでCPUモニタが8つあるのを見るのも初めてだデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはSamsungのHM250HI(250GB、5400rpm、キャッシュ8MB)が使われていた。無線LANはIntelのWiFi Link 5300 AGNと定番だ250GBのHDDは3つのパーティションになっていた。Cドライブは約218GBとなっている

 Windows エクスペリエンス インデックスは5.0。以前ご紹介した「Alienware M17x」よりは劣るものの、それでも速い。コストパフォーマンスを考慮すると抜群にハイパフォーマンスだ。残念ながらGPUは変更できないが、BTOを活用し、後からSSDに変更するなど手を入れれば、かなりの部分が良くなりそうだ。ともかく、今回64bit Windows Vistaを搭載しているにもかかわらず、メモリは2GBというのがマイナス要因だった。

Windows エクスペリエンス インデックス。CPUとメモリが5.8と5.9、グラフィックスが全体の中で一番遅いとは言え5.0と5.3。ノートPCとしてはかなり速いStudio 1557のCrystalMark結果自作PCのCrystalMark結果(Core 2 Quad/Q8200+4GB+GeForce GTX 260)

 さて、ノートPCとしてはかなり速いことがわかったので、筆者のメインマシン(デスクトップPC)でもCrystalMarkを動かし、その差を見ることにした。OSはどちらも64bit版のWindows Vistaだ。

 まずCPUのCore i7-720QMとCore 2 Quad/Q8200の比較では、ALU、FPU共にQ8200が圧勝した。メモリに関してはDDR3とDDR2の差だろうか、Studio 1557の勝ち。HDDは筆者のマシンがSSDなので、これは比較にならない。グラフィックスのMobility Radeon HD 4570とGeForce GTX 260は、解像度が異なるので厳密ではないにせよ、2Dに関しては後者が圧勝、3Dに関してはほぼ互角だ。

 以上の結果からすると単純にCPUクロック数が1.6GHzか2.33GHzかという違いが一番大きく、GPUに関してはさすがにGTX 260と比較するのは酷と言ったところだ。

 ベンチマークテスト中にCore i7のTurbo Boost Technologyが効いているのかどうかは今回調べられなかった。この自動オーバークロックとも呼べる技術は、いろいろな条件で段階的に各コアのクロックが上がるため、このテストだけでは何とも言えない部分となる。

 正直、デスクトップPCでもCore i7の必要性を感じていなかっただけに、ノートPCでCore i7と言うのはこれまでピンと来なかったのだが、実際Studio 1557を使ってみて、この価格なら十分ありだと思った。サイズや重量的に常に持ち歩くのは無理としても、室内でデスクトップPCの替わりに使うなら十分なパフォーマンス。解像度もフルHD対応で文句無し。10万円程度でスタイリッシュかつハイパワーのノートPCを求めている人にピッタリの逸品と言えよう。