西川和久の不定期コラム

PATA対応SSDでThinkPad T43を高速化
~Windows 7も快適動作



バッファロー『SHD-NPUM128G』

 ある日編集部から「西川さんPATAのノートPCお持ちですか?」とメールがあり、「主要なノートPCは未だ全てPATAです(笑)」と返事をしたところ、バッファローのPATAインターフェイスでMLCタイプのSSD、「SHD-NPUM128G」が届いた。今回はその乗せ替え記と、合わせてWindows 7 RC版もインストールしたので旧式のノートPCでどこまで動くかもレポートしたい。

Text by Kazuhisa Nishikawa



●まだまだ現役「ThinkPad T43」
手持ちのThinkPad軍団。左からT42、X31、T43。T42とT43は14.1型1,400×1,050ドット(SXGA+)。画面が広く使える上、最近見かけない解像度なので気に入っている。更にロッカーの中にはThinkPad 600や230など往年の名機が眠っている

 筆者が現在持っているノートPCは、この連載で何度も登場している「Eee PC 901-X」と、「ThinkPad X31」、「ThinkPad T42」そして「ThinkPad T43」の4台。Eee PC 901-Xに関しては前回紹介したようにWindows 7チェック用、ThinkPad X31は撮影現場のデータ確認&保存用、そしてThinkPad T43は自宅の寝室用と、用途的にはこんな感じだ。ThinkPad T42は4年前新品で購入したものの、諸事情でT43をヤフオクでネットブック程度の価格で落札し、今は休憩中になっている。

 「いつまでもそんな古いマシン使わずに買い換えたら!?」と言う意見もあるだろうが、デスクトップPCも含め、壊れるなど余程の理由が無い限り、割と古いものを使い続けている。これは単にPCの使い方がWebやメール、オフィス系などテキスト中心の処理が多く、この頃のマシンで何も不自由しないからだ。もちろん全てOSはWindows XP。代わりに事務所のメインマシンだけは今年になってCore 2 Quadシステムへ入れ替えた。これは重くなる一方のRAW現像と動画編集を見越してのこと。今特に何も困っていないのにノートPCを買い換えるため10万円以上のお金を使うなら、もっと別の楽しい事に使いたい。昔はいち早く新型を購入していたが、価値観が変わったのだろう。もしくはPCでやりたい事に対して処理速度が伴っていなかったのかもしれない。

 さて話を戻すと、この手持ちのThinkPad軍団、全てHDDのインターフェイスはPATAだ。どれで試すか一瞬悩んだものの、やはり中でもまだ一番新しいThinkPad T43(Pentium M 770/2.13GHz/2MB L2キャッシュ/533MHz FSB、915GM Expressチップセット、PC2-4200 DDR2 SDRAM×2/2GB)に載せる事にした。

ThinkPad T43のデバイスマネージャ/主要デバイス。HDD:富士通MHV2100AH(100GB, UATA/100, 5,400rpm)、グラフィック:ATI MOBILTY RADEON X300HDBenchの結果。値を見れば分かるように、HDD以外は少なくともネットブックより高速。普通の用途なら特に遅いと思ったことは無いCrystalDiskMarkの結果。こうして数値で見てしまうと、さすがにPATA+世代の古いHDDだけに遅い。この部分がSSDでどの程度改善させるのか楽しみだ!

●バッファロー「SHD-NPUM128G」

 同社の2.5インチSSDのラインナップは大きく分けて3つある。1つは「SATA」のSHD-NSMR80G、2つ目は「SATA+USB」のSHD-NSUM32/64/128/256G、そして今回扱う「PATA+USB」のSHD-NPUM32/64/128/224G。全てNANDフラッシュはMLCタイプだ。今回テストする「SHD-NPUM128G」はHDDのインターフェイスがPATAなので、一昔前のノートPCをSSD化できる。容量は128GB。

 付属のソフトウェアはWindows上で作動するバックアップの「Acronis True Image LE」、パーティーション操作の「Acronis Disk Director LE」、データを消去する「Acronis Drive Cleanser」。これらに加えて目玉となる付属のメディアからブートし、HDDの内容をUSB経由で完全にコピーできる「Acronis Migrate Easy」が入っている。OSをSSDへクリーンインストールするなら特に問題無いが、既存の環境を丸ごと移行するには、OSが動いているとコピーできないファイルがあるため、OS上で起動しないツールが必要となる。

SHD-NPUM128G本体。表側にジャンパーピンの設定が書いてある。マスター、スレーブ、ケーブルセレクト、USB、USB使用時と、この4パターンコネクタ側は一般的なPATAインターフェイスだ。「USB使用時」に右から3番目をショートするのが少し変わっているところ
USBポート側はミニBコネクタになっている付属品一式。アプリケーションが入ったメディア、マニュアル、USBケーブル。このメディアはブータブルになっている

 まずHDDのデータを移行する前に、メインマシンへUSBで接続してベンチマークテストを行なった。この時、「SHD-NPUM128G」のジャンパーPINを「USB使用時」に設定しないと、USBドライブとして認識しないので要注意だ。結果は下記の通りであるが、インターフェイスがUSBなのでSSDとしては一般的な数字だろう。

ディスクの初期化Kドライブとして認識CrystalDiskMarkの結果。USBがネックとなり、SSDでもこの程度の転送速度となる

 USB経由でのチェックも終わったので、早速付属の「Acronis Migrate Easy」を使いHDDを丸ごとSSDへコピーした。方法は非常に簡単で、USBに「SHD-NPUM128G」を接続、DVDドライブへメディアをセットし起動すると「Acronis Migrate Easy」が立ち上がる。ウィザードに従い操作すればコピーを開始する。今回のケースでは約50分でコピーが終了。結構な容量があるのでもう少しかかると思ったが割と早かった。後はHDDを外しSSDと入れ替えれば作業完了となる。

USBで接続、メディアをセットしてブートAcronis Migrate Easyを選択クローン作成前と後の比較
コピー中。少なくとも転送先の容量が転送元と同じかそれ以上の必要がある。今回は100GBから128GBへのコピーだ。差の28GBはCドライブのサイズを自動的に拡大するHDDを取り出しSSDをセット。ThinkPadは昔からHDD交換が容易になっている

 無事コピーも終了、SSDを取り付け電源をONにしたところ……起動時にBIOSエラー。内容は以下の通り。

ERROR
2010:
The hard disk drive you have installed has not been qualified for use in this computer or dose not have the latest firmware.
Using a drive that is not qualified may casuse compatibility issuse and potential data loss.

To automatically continue after this message is displayed without having to press <Esc>, restart the computer, press<F1>during Power-on and look under "Startup" in the BIOS Setup Utility.

 地雷を踏んでしまったようだ。ネットで調べると同じトラブルに関する話題でいっぱいだ。どうやら「認定されているドライブを使うように!」というワーニングらしく、認定されていないHDDやSSDを使う限りこのメッセージを消す方法は無い。BIOSの「Startup」に「Boot after message for HDD compatibility without having to press」があり、「Continue」を選択すると、このメッセージは出るものの、そのまま起動する。従って目障りではあるがこのままにするしかなさそうだ。このチェック、ThinkPad T43の頃から入ったようで、以降どうなったかは不明。いずれにしてもテストしたマシンで発生してしまい運が悪かった。気持ち悪いが特に問題も無いので、そのままWindows XPを起動する。

 が、ここでまた違う問題が発生! Windows XPが起動しない。「Acronis Migrate Easy」の自動モードではうまくコピーできなかったようだ。1つ考えられる理由としてドライブが100GBから128GBになった分、Cドライブの容量を自動的に拡大しているのだが、それとHDD内にあるリカバリーエリアのパーティーションとの整合性がうまく合わなかったのかも知れない。自動を止め手動設定に切り替え、1:1のコピーとして余る部分は未使用になるように再設定し、試したもののこれもやはりNGだった。USB接続で中身を見るとファイルはあるので、ブートレコードの辺りの問題だろうか!?

 チェックしたところ運よく「IBM Rescue and Recovery」は動くため、丸ごとコピーは諦め、「IBM Product Recovery」で工場出荷状態へ戻すことにした。

 リカバリー終了後、今度は無事Windows XPが動き出し、その第一印象はやはり「速くなった!」だ。起動時間は、先の認定されていないと言うワーニングが出るため厳密には比較できないが、ワーニング以降の動きは確実に速くなっている。感覚的には倍速以上だ。アプリケーションなどもサクサク動く。今日までHDDで使っていても特に遅いとは思わなかったが、一度SSDの速度を知ってしまうともう後戻りはできない。「このSSD返却したくないなぁ」と思ってしまう(笑)。ただし、理論上、PATAはSATAと比較して、そのインターフェイスの転送速度がボトルネックとなり、SSDの割にあまり速度は上がらない。ベンチマークテストを行なった結果は以下の通りだ。

HDBenchとCrystalDiskMarkの結果。シーケンシャルリードで80MB/sec、シーケンシャルライトで70MB/secを超えている。他のスコアも全てにおいてSSDが勝っている。PATAがボトルネックになると言ってもこれだけ差が出れば大満足!

●Windows 7 RC版をインストール

 最後はオマケでThinkPad T43へWindows 7 RC版をインストールしてみたい。と言うのも、「Windows 7 Upgrade Advisor Beta」を使い、Windows 7で動くかチェックしたところ特に問題無さそうなのだ。AeroもOKとなっている。前から試そうと思っていたが、余っている2.5インチHDDが無かった関係で今日まで何もしなかった。そこにタイミング良くこの「SHD-NPUM128G」が届いたのでこれはやってみるしかない! と、せっかくコピーしたWindows XPの環境はそこそこしか使わず、早速実行した。

Windows 7 Upgrade Advisor Beta。インストールしているOSがWindows XPなのでクリーンインストールが必要となるものの、他は全てOKだWindows 7 RC版。あまり期待していなかったが、少なくともネットブックよりは良い環境になった
Windows エクスペリエンス インデックス。グラフィックスが遅い。他はT43の出荷時期を考えれば妥当な線だ。またグラフィックが遅いと言っても不要なアニメーション系の効果をOFFにすれば特にストレス無く操作できるCrystalDiskMarkの結果。Windows XP同様、リードで80MB/sec、ライトで70MB/sec超えているデバイスマネージャ/主要デバイス。「SHD-NPUM128G」はSSDと認識されず、普通のHDD扱いだ。このためインデックスサービスなどをOFFにする必要がある

 ドライバに関しては、セットアップ直後、「無線LAN」、「グラフィックス」、「サウンド」、「指紋認識ユニット」を認識していなかったが、Ethernet経由でインターネットへ接続するとWindows Updateでこれらのドライバは自動的にインストールされた。ただし、「不明なデバイス」が1つと「TrackPoint/ウルトラナビ」のドライバが無く、普通のマウス/タッチパッド相当になっている。この辺りはWindows Vista用のドライバを持ってくれば良さそうだ。ファンクションキーなども含め、まるでもともとWindows 7を搭載したノートPCのように動いている。

 操作した感じは、少なくともネットブック(Eee PC 901-X)よりは動きも良く、更に画面が広いので快適。Windows エクスペリエンス インデックスの値を見れば分かるように、前回Windows 7をインストールしたEee PC 901-XとCPU以外はほぼ同じ。CPUが早い分、体感的には思っていた以上にWindows 7が動く。メモリも2GBあるので、筆者が日頃ThinkPad T43で作業している内容であれば、メモリ不足になることも無いだろう。益々新型のノートPCが不要になりそうだ(笑)。特にThinkPad T43は、新型と言われても、このキータッチとこの解像度に該当する機種が無いだけに尚更そう思ってしまう。


 PATAのSSDは、そのインターフェイスがボトルネックとなり、SATAのSSD程はパフォーマンスが上がらないと言われていたが、実際使ってみるとシーケンシャル・リードで80MB/sec、シーケンシャル・ライトで70MB/secを超えている。SATAのSSDとまでは行かないものの、もともと内蔵している旧式PATAのHDDと比較してこれなら十分交換する価値はある。ThinkPad T43では、そのシステム固有の問題なのか「Acronis Migrate Easy」での丸ごとコピーはうまく行かなかったが、同社の「SHD-NPUM」シリーズは、まだまだ現役で頑張っているPATA HDD搭載ノートPCにお勧めのアイテムだ。