実録! 俺のバックアップ術
「TimeMachine」礼賛。クラウドが主、ローカルがバックアップのような感覚
~森山和道編
2017年1月17日 06:00
「TimeMachine」礼賛!
バックアップ方法は人それぞれだろうが、私は、ほかのライターさんたちのような「PCガチ勢」ではない。PCに特別な思い入れもないし、そこには極力お金をかけたくない。面倒くさいことは大嫌いである。
よって、かなりお気軽バックアップしかしていない。そのぶん、金銭的コストも手間も必要最低限に近い。ライトユーザーの人たちの参考になればと思う。
私は交通事故の示談金で購入した「PowerBook Duo 280c」以来、20年以上、Macを使い続けている。たまにWindowsマシンに浮気することもあったが、基本的にはずっとMacだった。Macユーザーの場合、バックアップ基本的に「n」だけで終了、という人が多いのではないかと思う。
別にずっと繋げっぱなしにしておいたり、専用機の「Time Capsule」を使うまでもない。何か適当な、内蔵されたストレージよりも容量の大きなHDDをバックアップ専用として購入し、時々USB端子に刺せばいい。それだけでオッケーだ。環境を丸ごと保存してくれる。
「TimeMachine」が何よりも素晴らしいのは、この、環境まるごとバックアップされるところだ。バックアップはデータだけですむわけではない。
確かに、もっとも貴重なのは自分が作成した、自分しか持っていないデータ類だし、そう強調する人は多い。
だが、現実問題、データだけのバックアップで充分だろうか? パソコンは毎日の仕事に使っている道具である。だが、その仕事環境丸ごとがバックアップされないと、「バックアップ」としては無意味ではないだろうか。その点、TimeMachineなら何の問題もない。理想的には、これだけで十分だ。
注意点は、バックアップを取りたいHDDよりも大きなストレージを用意することだけだ。たまにAmazonなどで安売りされる時があるので、そういう時に2TBくらいのHDDを買って利用している。
写真&動画ファイルのバックアップは外付けHDDに手動で
……と、言いたいのだが、残念ながらそういうわけにはいかない。毎日の取材で撮影する写真や動画類は雪だるま式に増えていく。特に動画は容量をめちゃくちゃ食う。当然、内蔵のストレージには収まらないので外部ストレージに出すことになる。もちろん、TimeMachineは外部ディスクごと保存してくれる機能がある。だが、そうなると、バックアップのために必要なディスクサイズが大きくなる。
そんなの関係ない、とにかくデカイHDDに保存してしまえばいいんだというパワフルな考え方の人も特に古参のPCユーザーには多いと思う。だが、残念ながらPC関連のためにそれほどの室内床面積、あるいは容積を割きたくないという感覚の方もいらっしゃるのではないか。少なくとも私はそういうタイプだ。
HDDやSSDの類の管理はできるだけシンプルにしたいし、そのために大容量HDDやNASを買い込んで、ブンブン動かすようなことはしたくない。私はファンの音が大嫌いなのだ。
なお私は、自分が全部で何TBのデータを持っているかも把握していないし、するつもりもない。そんなことは少なくとも私にとってはどうでもいいからだ。何度も言うが私は面倒くさがりなのだ。
それで実際にはどうしてるのかというと、結局、内蔵ストレージの外に出したデータを収めたHDDの中身を、定期的に手動で丸ごとコピーしている。
HDD類は基本的にポータブルサイズを選ぶ。それなら引き出しにも入るからだ。ここのところ、HDDの価格あたり容量が全く大きくならないのが大いに不満である。単純だが、今のところこれがベターだと思っている。
クラウドサービスも併用 ただし無料で
ただし、これだと単に一重のバックアップしか取っていないことになる。やや不安だ。そこで、写真や動画類は丸ごとGoogleフォトにも上げている。
仕事用写真を収めたフォルダをアプリで指定しておけば、そこに入れておいたファイルは丸ごとアップロードしてくれるので手間はゼロだ。ご存知のとおりリサイズはされるが容量は無限だし、Web上の仕事に使う程度なら問題ない。そして、動画類はどんどんYouTubeにアップロードする。そして記事ではそれを共有してもらう。
基本的に、いざという時のバックアップなので、特に整理はしていない。最大の懸念は、Googleはサービスをサクッとやめてしまうことがしばしばあるという点だが、そこをいま心配しても仕方ない。あくまで保険のためのバックアップだと割り切っている。
同様に、仕事関連のテキストファイルや録音ファイルなども、DropboxやBOXのようなサービスを使って、ネット上に全部アップロードしている。有料オプションを使えばプロっぽいのだろうが、私は無料分をチマチマと積み重ねて利用している。サービス開始当初はDropboxもなんだかんだで容量を増やしてくれたのだ。
ともあれ仮に手持ちのファイルがなくなっても、クラウド上にバックアップがあると思える心理的安心感は大きい。また、環境が変わってもネットにアクセスできればファイルを開くことができる。
もちろん、PCを新調して移行する時も簡単だ(なお筆者はPCの新調時には基本的に真っさらから環境を構築しなおすことにしている。知らず知らずの間に溜まってしまったり、状況が変わって使わなくなったアプリなどの断捨離を行なうためだ)。
もう1つは、こうすることで、物理的な問題を超えたバックアップができるからだ。バックアップは単にHDDを複数にすればいいというわけではない。それが物理的に失われてしまった場合の対策も必要だと考えるからだ。1カ所、例えば自宅だけに置いておいても、完全に安心できるわけではない。
出先でも同様で、筆者はメモの類も、全てGmailの「下書き」に書いている。自動的に保存されるし、どのデバイスからもアクセスできる。
バックアップといよりは、クラウド側が主で、ローカル側の方がバックアップのような感覚だ。スマートフォン普及以降は年々そういう傾向が加速しているのは世の流れである。
写真は紙焼きが案外いい
プライベートな写真については、おすすめしたいのは紙焼きすることである。プリントは実際にしてみると、案外、とても良いです。騙されたと思ってやってもらいたい。
プリント料も昔に比べると激安だ。私が愛用しているネットプリントサービスの「しまうまプリント」だと、1枚なんと6円である。仮に500枚焼いたとしても、3,000円だ。写真を入れるアルバムも100円ショップで売っている。フォトブックまで200円くらいから作れてしまう。昔とは大違いである。
ディスプレイ上でバーっと眺める写真もいいが、プリントした写真を壁に貼ったり、アルバムに入れてパラパラめくったり、アルバムごと人に渡したりできる紙焼きには、デジタルだけでは味わえない喜びがある。特に高齢の親戚にはとても喜ばれる。
写真、特にプライベートな写真というのは、いわば記憶の物理化・外部化であり、そして再び経験して記憶を再度上書きしてもらうことに価値がある。それのバックアップは、人に渡して共有してしまうことではないだろうか。
そのバックアップはなんのため?
個人的な考えだが、ライターのような職業の場合は、大事なファイルこそWeb上で広く公開してしまうことが最大のバックアップかもしれないなとも思っている。
ライターの仕事は、取材等で入力した情報を、適切な対象にアウトプットして知ってもらうことである。私としては取材してきたことをできるだけ多くの人に知ってもらいたい。そのためには外に出すしかない。
結局、大事なことは、自分が見聞したことや、自分が取材過程で考えたことを知ってもらうことだ。バックアップも突き詰めればそのために必要なものでしかない。だから別に自分の内側に抱えておいても良いことは何もない。
今こうして書いているテキスト自体も、私個人は、私の中の一部を外部に出すことでバックアップをとっているような感覚がある。
バックアップする必要は人それぞれだと思うが、自分がバックアップをする必要があるのはなぜなのか、そのデータなり環境なりを使って何をしたいのかと考えることがまず第一であり、それを踏まえてバックアップするのが現実的だと私は思う。
バックアップのためのバックアップは長続きしない。ナチュラルに自分の行動の中でしてしまうこと、バックアップすること自体が価値を持つようなやり方がベターなのではないだろうか。