格安のSIMロックフリーWi-Fiルーター「b-mobile WiFi」



 先週、WANへのWi-Fi経由でのアクセス機能を持つポータブルルーターが複数発表され、その後も続くという話を書いた。何年も前からBluetooth経由でWANアクセスが可能なデータ通信モジュールが欲しいという話はあったのだが、結局、通信モジュールを通り越してルーターという形でユーザーの希望が叶った形だ。

 中でも「b-mobile WiFi」は価格の安さとSIMロックフリーという特長の両方で注目の製品だ。加えてNTTドコモの800MHz帯への対応、HSDPAに加えてHDUPAへの対応などもしっかりと行なわれている。

 24日から出荷開始になっているb-mobile WiFiだが、21日夜から試用版をお借りしていたので、この3日ほど使ったレポートを今回はお届けしたい。

●b-mobile WiFiの値頃感

 3Gネットワークへ接続するためのWi-Fiルーターは複数出ているが、本当の意味でSIMロックがフリーになっている製品はb-mobileだけのため、価格比較が少々難しい。SIMロックがかからず、回線契約なしでも購入できるb-mobile WiFiの19,800円という価格は、安いのか? それとも普通の値段なのか。

 結論から言えばかなり安い。

 海外でのみ自由に他社SIMが使え、日本国内ではイー・モバイルのSIMのみを受け付ける「Pocket WiFi」の場合、縛りのない端末買い上げの価格設定は39,580円と約2倍。それどころか、実は物価が安いはずの中国で購入する3G Wi-Fiルーターと同等以下の価格設定なのだ。

 余談だが先日、たまたま中国で同種の製品を探した経験があるので、その体験談を軽くお話ししておきたい。

 4月のIntel Developers Forumが終了した翌日、北京・中関村(日本の秋葉原のような場所)に、Huawei(華為:ファーウェイ)のE5という3G Wi-Fiルーターを探しに出かけた。800元(約10,600円)で購入できると聞いたからだ。E5は日本で販売されているPocket WiFiの別バージョンで表示ディスプレイ周りと1.7GHzサポート以外はほぼ同仕様のものだ(800MHz帯のサポートはない)。インジケータはLEDのみなので、b-mobile WiFiと仕様的には近い。

 E5の購入を考えたのは、海外でiPhoneやPCでの通信を行なうために、SIMロックフリーの3G Wi-Fiルーターが“安ければ”買ってもいいかな? と思ったのだ。日本ではあまり通信環境で困ることはないが、海外出張時は場所によって困る事も少なくない。

 ところが実際に電気街を巡ってみると1,500〜1,800元。最も安い店で1,250元(約16,500円)で、しかも置いている店は数えるぐらいしかない。地元の人に値切ってもらってこのぐらいだから、おそらく限界なのだろう。

 もともと北京で流通していたE5は、香港のディーラーから大量に流れてきたもので、この時は仕入れが異常に安く800元ぐらいであっと言う間に売り切れたそうだ。その後、在庫がなくなると安定した流通経路はなく、一部の入荷ルートを持つ店だけが1,500元程度に限界価格を設定して、持っている店同士で価格を下げないよう連絡を取り合いながら販売しているという。

 事の真偽はともかく、生産地に近い香港周辺では安価なE5もあるかもしれないが、中国でさえE5の値段は2万円ぐらい。それでもかなりの数が売れているという。日本で800MHz帯をサポートした上で、当然ながら日本での技適申請が通過し、日本での利用に法的問題が無いb-mobile WiFiが2万円を切るというのは、中国・北京での事例と比べても値頃感がある。

●その使い心地は?

 手元に届いたb-mobile WiFiは思いの外小さく、なにより薄い。薄さは実測で約12mmほどで、重さはスペック値の80gに対して74g(SIMカード分込み)だった。その重さも31gが電池、5gが電池蓋。要は本体そのものは実に軽量。ワイシャツや上着の胸ポケットに入れていても気にならない。

 ややPocket WiFiよりも薄く軽量だが、使った感覚は重さに関してはほとんど変わらず、若干ながら薄いと感じる程度。携帯性に関しては文句なしだ。

iPhone(左)よりも小さいb-mobile WiFi 本体、バッテリ、電池蓋。重量は実測で74g

 気になるバッテリ持続時間だが、スペック値の4時間はきちんとクリアしてくれそうだ。iPhoneをb-mobile WiFi経由での通信に設定し、通勤時間帯に品川から我が家近くまで約1時間10分程度をかけて移動しながらTwitterクライアントやWebブラウザ、メールクライアントなどを使用したが、帰宅時のバッテリ残量は84%。断続的な通信であることを考えれば妥当な結果だろう。

 別途、ファイルダウンロードを2時間連続して行なうテストもやってみたが、この時の残量は48%。こちらも期待通りの数値ではないだろうか。実際にWebブラウジングやメール受信で使うことを考えれば、これほど長時間に連続したデータ通信を行なうことはない。

 一方、データ通信を行なわず、待ち受け状態でのバッテリ消費も気になるところだろう。こちらはやや分が悪く、待ち受けのまま4時間持ち歩いてみたところ残り残量は85%。ザックリと言うと“12時間持ち歩くと電池が半分になる”という感じだろうか。

 継続して通信しながら4時間使えそうなのに、12時間待ち受けで電池が半分……それは待ち受け時の消費電力が少々大きいのでは? と感じるかも知れない。まったくその通りだが、理由はこの間、ずっと3Gネットワークとのパケット通信を行ない続けていたからだと推察される。

 b-mobile WiFiは3Gへの接続ポリシーとして、手動と自動を選択できるが、自動にした場合、3Gネットワークのエリア内にある限り、ずっと繋ぎっぱなしにして切断しない仕様なのだ。パケット通信の特性を考えれば、これでも基本的には問題ないのだが、日本通信のb-mobileに用意されているメニューを考えると少しばかり疑問も残る。

●自動接続設定と時間課金プランの組み合わせにご注意を

 なぜなら日本通信が提供しているNTTドコモのFOMAネットワークを使った個人ユーザー向けのメニューは、大半が接続時間ごとの課金になっているからだ。b-mobile WiFiで、それら(b-mobile 3Gやb-mobileドッチーカのSIMカード)を利用する事ももちろん可能だが、その場合、自動接続にしていると電源オンにしている間、ずっと継続して利用時間のカウントが続いてしまうことになる。

 パケット通信の場合、接続している時間とコストには直接関係がなく、コストに影響するのは通信量(パケット数)だ。したがって時間課金という考え方が、本来はパケット通信向きではないのだが、これまで日本通信はPCユーザー向けにUSB通信モジュール付きでビジネスを展開していたので、よりユーザーにとって解りやすく課金カウントもシンプルな時間課金を選んだのかも知れない。

 問題を回避する方法は2つ。

 まず、接続設定を自動から手動にすれば、自分で接続と切断を制御できる。しかし、実際にはルーターにつないだコンピュータからWebブラウザでb-mobile WiFiの設定画面(http://192.168.0.1/)を開いて、アドバンス設定を開き、そこで3G接続タブを出さないと接続を切り替えられない。要はメニューの奥にありすぎて、接続と切断を手軽に行なえない。

Webブラウザでアクセスするb-mobile WiFiの設定ツール 3G接続設定の画面

 もう1つは、もっとシンプルに電源をオン/オフする方法。こちらは電力消費の無駄を省くことができるが、従来の同種の携帯型ルーターでは電源オンのプロセス開始から、実際に通信が行なえるまでの時間がかなり長かった。手元には現在b-mobile WiFiしかないため、他製品との比較はできないが、中には2分近くかかるものもあったと記憶している。

 この点、b-mobile WiFiは電源オンのプロセスが始まるとWi-Fiルーターとして機能し始めるまで54〜55秒しかかからなかった。実際には電源オンするために、電源ボタンを長押し(5秒間)する必要があるが、これを合わせても1分後には通信を開始できる。

 あとは皆さん自身の判断だが、個人的にはストレスを感じないギリギリの線には収まっているというのが3日間使った正直な感想だ。

設定が終わると使い道のないWPSボタン

 とはいえ、ここは日本通信側にファームウェアのアップデートで、何らかの対策を施して欲しいというのが個人的な希望である。たとえば簡単なWi-Fi設定をサポートするためにWPSに対応しているが、WPSのプロセスをサポートするためにボタンが1個割り当てられている。しかし、一度使い始めてしまえば、このボタンを使うことはほとんどない。

 ならば、待ち受け状態からの接続と切断を、このボタンに割り当てなおす機能があってもいいのでは? と感じた。日本通信としては、上限300kbpsで月あたり2,500円以下を実現したb-mobile SIM U300での利用を想定しているのだろう。それならば、b-mobile WiFiの仕様に問題は無い。しかし中には他のプランを望む人もいるはずだ。

●APN設定さえわかれば、ほとんどのSIMがそのまま使える

 本機はSIMロックのかかっていない3G対応製品だが、利用に際しては当然ながらAPNの設定を自分で行なう必要がある。日本通信のサービスにはもちろん対応しており、SIMを挿し込むだけでプリセットの設定が自動的にセットされる。しかし他社製のSIMカードを使う場合はAPN設定が必要になる。

 試しに「もしもしドッチーカ」のSIMカードを使い、iPhoneのSpeedtestをb-mobile WiFi経由で計測してみたが自宅周辺では900kbps程度の速度が出た。b-mobile SIM U300の場合は同じ条件で309kbpsと、こちらは当然ながらスペック通りの速度だ。

 ちなみに同じ速度テストアプリを自宅周辺のソフトバンク3G環境で動かすと、2.3Mbps程度のダウンロード速度が出る。またNTTドコモ契約のFOMAカードをb-mobile WiFiに入れると、やはり2〜2.4Mbpsぐらいの速度(一度だけ3Mbpsを超えた)が出る。

 それぞれ契約条件が異なるので、好きなSIMを使えばいいだろう。ただ、上記の値はあくまでも住宅地で計測しており、都内の集合住宅とはいえ、かなり帯域には余裕がある状況であることは忘れてはならない。

 実際に帰宅ラッシュの始まる6時ぐらいに品川を出て山手線を周りながら……という状況で、U300を入れたb-mobile WiFiとiPhone自身の3G接続を切り替えながら使ってみたが、人が多く携帯電話のユーザーが集中している状況ではU300の方が快適に利用できた。

 死角がほとんどなく途中で切れないというのもあるが、Twitterクライアントを動かしたり、さほど重くないWebページを見る程度であれば、滞りなくコンスタントに300kbpsが出るU300の方が、一時的には高速な転送が行なわれるものの滞ることも少なくないソフトバンク3Gより速く感じるということなのだろうか。あるいは混雑状況の違いなのだろうか?

 おそらくその両方だ。というのも同様の条件下で駅にストップしている時間に計測すると、ソフトバンク3GのSIMが入ったiPhoneの通信速度は状況に応じて100k〜350kbps(多くの場合は150kbps)だった。一方のU300も移動中は速度が落ちるが、駅に止まっている間はだいたい200kbps以上。300kbpsフルに出ているケースは多い。このあたりが体感速度に効いていそうだ。

 ただし、いくら速く感じるといっても、最大通信速度が300kbpsに抑えられていることは変わりはない。3Gネットワーク経由でiPhoneのアプリケーションをまとめてアップデートしたり、YouTubeで動画を見るといった状況下では、U300の遅さを感じる。一気に大量の通信を行なう使い方には向いていないが、メールやWebブラウズ、Twitterなどが目的ならば、価格の安いU300はやはりお買い得と再認識した。

 さて、iPhoneのSIMカードをb-mobile WiFiに入れるとどうなるのだろうか? もちろん、正しいAPN設定を行なえば通信はできたが、ここではあえて設定内容は書かない。Webを検索すれば、その手の情報はたくさん落ちている。その際の速度はiPhone自身で通信した場合と大きな差はない、とだけここでは報告しておきたい。

●データ通信用SIMカードの充実に期待

 NTTドコモの回線はMVNOへの解放が義務付けられており、日本通信だけでなく、多くのMVNO(モバイル仮想ネットワーク事業者)がFOMAの帯域を購入してサービスを行なっている。b-mobile WiFiはSIMロックフリー端末なので、どのSIMカードでも利用できる(ただし周波数が異なるのでイー・モバイルのSIMカードは使えない)。

 日本通信にはU300だけでなく、U600あるいはU1200といったラインナップを、適当な価格で提供すれば、さらにユーザーの選択肢は拡がるだろう。日本通信だけでなく、他の事業者にも期待したい。

 個人的には、この手のデバイスは充電管理が面倒という印象があったのだが、PC本体とつながったUSB mini-B端子を常に机の上に出しておき、帰宅したらiPhoneのケーブル接続と一緒につないでおけば、意外に煩わしさは感じなかった。

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(2010年 5月 26日)

[Text by 本田 雅一]