スタイリッシュになったLOOX Uの素晴らしさをさらに磨くためには



LOOX U

 先月発売されたLOOX U。本誌を含め、すでにいくつかのレビュー記事が掲載されているので試用インプレッションをここで展開する必要はないだろう。そのハードウェアは確かによく出来ている。Atom Zシリーズを使ったPCはいくつかあったが、多くはキーボード操作を重視したもので、ここまで可搬性を突き詰めた日本の製品はウィルコムD4(シャープ製)以来かもしれない。

 それだけに、キーボードのサイズや画面サイズにはある程度目をつむり、その代わりに可搬性を重視したPCを求めていた人にとって、LOOX Uは久々の心地よさを感じる仕様ではないだろうか。もちろん、従来のLOOX Uも小ささにかけてはかなり頑張っていたのだが、縦横厚のバランスから言うと、ちょっとポッテリ気味でポケットにも入りづらかった。

片手で持てる手帳サイズ

 ところが、新型ときたら、まるでポケットサイズ手帳のようなコンパクトさ。この手の超小型PCが好きなユーザーにとっては、たまらない製品に違いない。

 個人的にも、自由度の高いコンピュータを、ポケットにいっぱいに詰め込んで持ち歩き、活用したいという気持ちはある。しかし、そういう使い方をもっと多くの人に楽しんでもらうには、ポケットに汎用コンピュータを詰め込んで持ち歩く事の愉快さを、もっともっと幅広い人たちに知ってもらうために、あとひと工夫が必要だとも感じた。

●3Gを捨てモバイルWiMAXを標準

 新型LOOX Uにおいて、個人的にもっとも高く評価したい点は、3Gネットワークインターフェイスの内蔵モデルを用意せず、モバイルWiMAXインターフェイスを標準にするという英断を下したことだ。

 都市部を中心に、過去例がないほど急速にカバーエリアを拡げているUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXネットワークだが、さすがに2001年に試験サービスが始まったW-CDMAネットワークに比べればずっと狭い。だから“現時点”では、両方を上手に使い分けるのがもっとも現実的。筆者もVAIO Xで日本通信b-mobile 3G ドッチーカとWiMAXを併用している。

 どちらか片方しか内蔵できないのなら、モバイルWiMAXを選ぶ。理由は筆者が都内に住んでいてWiMAXのエリア内にいる頻度が高く、今後は室内へのリピータ増設で携帯電話並のカバーエリアになるのも、さほど遠くないと感じているからという、個人的な理由ももちろんある。

 だが、もし地方都市に住んでいたとしても、やはりモバイルWiMAXを選ぶだろう。3Gのカバーエリアは今以上に大きく拡がることはないが、モバイルWiMAXは今後拡大を続けるからだ。そして繋がってしまえば、とてもではないが3Gネットワークでインターネットにアクセスしようなどとは思わなくなる。

 だから前述のようなプリペイド従量課金のドッチーカのような製品を使って、モバイルWiMAXでは通信できない“穴”を塞ぎつつ、なるべくモバイルWiMAXで使ってしまおうという魂胆だ。

 話がLOOX Uから逸れてしまった。

 おそらく、なぜ3G内蔵モデルが用意されないのか? という不満を持っている読者もいるだろう。その気持ちも理解できなくはないが、今のタイミングで発売されるのであれば、WiMAX搭載モデルのみにすることで、それを活かした製品とする方が良いと思うのだ。

 その点は拍手ものなのだが、せっかくモバイルWiMAX内蔵で統一するという英断を下しながら、それを活かせていないという不満も同時に感じている。

●せっかくのモバイルWiMAX標準だからこそ

 契約の仕組み、端末の販売者などが異なるため、一概に比較することは難しいのだが、スマートフォンとLOOX UのようなWAN内蔵では、後者の方が購入後に作業する項目数がはるかに多い。携帯電話は購入して回線が開通すれば、即、その場でほとんどの機能を使う事ができる。

VHSテープとほぼ同じ大きさの筐体

 ところがLOOX Uを買ってWindows 7の初期設定を終わらせ、さらに富士通製ソフトの質問に答えて……と作業を一通り終えても、すぐにはインターネットに繋がるわけではない。Wi-Fiで自宅ネットワークや公衆無線LANに接続するか、あるいはWiMAXの契約プロセスを一通りこなす必要がある。

 今時のコンピュータは、皆インターネットに接続するのが当たり前になっているのに、通信端末として使えるようになるまで、PCに慣れたユーザーなら実に簡単な(しかし長ったらしい)作業でネットにながるとも言えるが、やっぱりそこは面倒くさい。ネット接続が当たり前(前提といってもいい)の製品なのに、そこにたどり着くまでの手間が多いというのはあまりスマートとは言えない。

 せっかくモバイルWiMAX標準で統一することに決めたのだから、CTOモデルに関してはあらかじめ契約先インターネットサービスプロバイダを選び、毎月の通信費用支払い登録も済ませた上で注文。到着して電源を入れた時から、すぐにインターネットに繋がるようなスマートなやり方はできないものだろうか。

 同じことはUQコミュニケーションズの方々にもリクエストしたのだが、富士通の場合は関連企業として@niftyという、非常に優秀なインターネットサービスプロバイダがあるのだから、これをうまく活用しない手はないと思うのだけど。

 もっとも、そうした仕掛けを実現するには、それなりに大きなハードルもあるらしい。詳細はここでは避けるが、簡単にはいかない。しかし技術的に不可能というものでもないはずだから、なんとかうまく“通信装置内蔵”から“通信サービス内蔵”への脱皮をして欲しいものだ。

●アプリケーションも“レディ状態”で出荷を
LOOX Uの初期状態のデスクトップ

 LOOX UはWindowsを搭載した汎用PCなのだから、ネットに繋がってしまえば、あとは使用者の自由。勝手にメールをセットアップして、勝手にインスタントメッセージングツールをインストールし、勝手にWebサービスを使ってくれる。本誌の読者なら、必要なアプリケーションはすべて把握しているだろうから、ちょいちょいと必須アイテムをダウンロードしてセットアップを手早く終えられるはずだ。

 しかし、そうではない人もいる。もっとアプライアンス的に、購入したらすぐにネット上のアプリケーションが使えるようにセットアップして引き渡せないものか。

 例えば(あくまで“例えば”だが)CTOメニューで、ネットワークアプリケーションのプリセットアップを注文すると、Google IDの取得・あるいは入力を求められ、購入後に電源を入れると自動的にネットに繋がり、さらにGoogle IDが自動的に設定されていてメールもカレンダーも、すべてのGoogle IDにヒモ付いたサービスが利用可能になる、といった仕掛けがあってもいいじゃないかと思う。Googleで問題があるなら、モバイルWiMAXのプロバイダ選択で選んだインターネットサービスプロバイダの提供する各種サービスがセットアップなしで利用可能になっている、というのでも構わない。

 そうしたお節介が不要ならば、購入時にそれを意思表示できればいいし、たとえセットアップが勝手にされたとしても、それが勝手なお世話だと思うユーザーなら、あっと言う間に自分好みの設定に変えてしまう。

 メール、カレンダー、アドレス帳、インスタントメッセージング、Webストレージ、ブログなど、あらゆる要素が“あなたの仕様”でやってくる仕掛けできれば、LOOX Uは“次のステージ”へと進める。不可能ということはないはずだ。例えばKindleはユーザーの手元に届くと自動的に3Gネットワークに繋がり、書籍購入ボタンを押せば何の登録も必要なく本を買える。端末とクレジットカードが最初から関連づけられた状態で出荷されているからだ。

●最後の仕上げに“ちょうどいいサイズ”のUIを

 “次のステージに進める”というのは、やや大げさかもしれないが、WANによるデータ通信を前提にしたアプリケーションサービスの設定も終えた状態で出荷するならば、そのサービスを用いるのに適した、そしてLOOX Uのスクリーンサイズ、キーボードサイズ、そしてタッチスクリーンに適したアプリケーションをセットにすることもできるはずだ。

 Windowsは基本的に、机の上で大きく高解像度の画面と楽に打てるキーボード、容易に操れるポインティングデバイスを前提にユーザーインターフェイスが組み立てられている。小型PC専用ユーザーインターフェイスのプロジェクトも、Vista発売後は全く話を聞かなくなってしまったから、今後、新たに登場することもないだろう。

初代のLibretto('96念撮影)

 LOOX Uでフル機能のWindowsが動作することは素晴らしい事だが、小さいコンピュータでWindowsが動きさえすれば、それですべてが解決したのは初代Librettoの時代。今はもうあれから十数年が経過している。

 幸いにして富士通という会社は、ハードウェア、通信、ソフトウェアなど、あらゆる技術要素をすべて社内で持っている。“どこでもPCを使いたい”という人だけでなく、メールと言えば携帯電話のメールしか思い浮かばないような人たちにも“これ、携帯電話より便利だね”と思ってもらえるような超小型モバイルPCを、きっと何時か作ってくれるに違いない。

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(2010年 2月 12日)

[Text by 本田 雅一]