山口真弘の電子辞書最前線

シャープ「PW-SB3」

〜タブレットスタイルでも使える大学・ビジネス向けの電子辞書

シャープ「PW-SB3」。本体色ホワイトとネイビーをラインナップ。クラムシェルスタイルで、重量は300gとやや重め

 シャープの電子辞書「PW-SB3」は、100コンテンツを搭載した電子辞書だ。カテゴリ的には大学・ビジネスモデルに位置付けられる製品で、液晶画面が360度回転し、キーボードを背面に回してタブレットのようなスタイルで利用できることが大きな特徴だ。

 360度回転機構を持った製品はこれが3世代目になるが、本製品では画面右側にある操作メニュー部が液晶画面に統合され、タブレットのように縦向きで利用する際にボタンのラベルが正しい方向を向くよう改善されたほか、ホーム画面が一新されるなど、筐体デザインは従来とほぼ同一ながら使い勝手が大きく改められている。

 今回は本製品について、1世代前の「PW-SB2」と比較しつつ、その特徴をチェックしていく。なおメーカーから借用したサンプル機材での評価となるため、市販される製品とは若干相違がある可能性があることを予めご了承いただきたい。

画面を360度回転させてタブレットに似たスタイルで利用可能

 まずは外観から見ていこう。

 筐体は従来モデルと同様、あまり丸みのない四角い形状。色合いはややマットで高級感がある。コンパクトタイプの電子辞書と比べると筐体サイズは大きく、重量も300gと重い部類に入るが(ちなみにカシオの春モデルは265gである)、カシオのモデルに比べると奥行きが約9mm短いせいか、重さはともかく本体はスリムな印象がある。

 画面を360度回転させ、クラムシェル型からタブレット型に変形するのは従来モデルと共通する機構で、さらにタブレット型にした時に裏側にキーボードが露出してしまうのも同様だ。キーボードを背面に回した際は電源キー以外が無効になっているので誤動作に繋がる心配は少ないが、個人的には握った裏側で指がキー触れるのはやはり違和感がある。好みが分かれる部分だろう。

液晶を360度回転させることでタブレットのように使える
上蓋を閉じたところ。直線的なデザインかつマットな質感はコンパクトモデル「PW-NA1」にも通ずるものがある
片手でもなんとか握れるが、さすがにワイシャツの胸ポケットに入れるには大きすぎる
前面。ラッチもなくすっきりとしている。左下にマイクロフォンの穴がある
左側面。microSDスロット、イヤフォンジャック、Micro USBポートを備える
右側面。タッチペンのスロットのほか、右端にストラップホールを備える
背面。特に端子類はない

 キーボードはアイソレーションタイプで、QWERTYキーは3列、上部には大きなファンクションキーが並び、下部には上下左右キーや戻る/決定キーなどが並ぶという、従来モデルと同じ配置だ。ヒンジ部にスピーカーを搭載する点や、かつてキーボード手前にあった手書きのサブ画面が存在しないのも、従来モデルと同様だ。ラベルの印字こそ若干違うが、金型は同一だと思われる。音声出力はスピーカーのほか、左側面のイヤフォンジャックを使用することもできる。

 キーの配置および役割に応じたボタンサイズの違いは違和感も少なく、よくまとまっている印象だが、間違えやすいのが電源キーだ。本製品では最上段のファンクションキーの左端に電源キーが、右端にはHOMEキーが並んでおり、使っているうちに「利用頻度の高いキーは左右どちらかにある」と認識できるようになるのだが、それゆえ電源キーとHOMEキーを取り違えることが意外に多い。電源キーのみ質感を変えるか、もしくは色を変えれば、直感的に分かりやすくなるのではと思う。

キーボード面。若干ラベルは異なるが、機能および形状は従来モデルと同じだ
上段ファンクションキーの右端にHOMEボタンを備える
反対側、上段ファンクションキーの左端に電源ボタンを備える
メーカーロゴの直下、ヒンジ部分にスピーカーを備える
タッチペンは本体右側に収納できる

 本製品のライバルとなるカシオ製品との大きな違いとして、ストレージ容量の違いが挙げられる。本製品は500MBの大容量ストレージを搭載しており、専用ストア「ブレーンライブラリー」で購入したコンテンツを追加できる。使い方およびコンテンツサイズが違うので一概に比較できないが、カシオ製品はストレージ容量が100MBなので、本製品の大容量ぶりは際立っている。microSDに対応するのは、どちらの製品も同じだ。

 もう1つ、電源方式の有無も大きな違いだ。カシオ製品が単3電池×2本で駆動するのに対して、本製品はUSBケーブルもしくはACアダプターで充電する方式を採用している。コンテンツにあまりこだわりがなく、利用スタイルで製品を選ぶ場合は、大きなポイントになるだろう。バッテリの駆動時間は70時間と、初代モデルの50時間からは大幅に伸びている。

2軸のヒンジを回転させてキーボードを背面側に回すことができる
スタンドスタイルで使用しているところ。キーボードは地面にうつ伏せになっているが、わずかに隙間があるのでキーが反応することはない
手で持った状態。電子辞書としてはやや大柄だが、奥行きがあまりないせいか、片手持ちでもそう違和感はない

画面右の操作メニューが液晶化、コンテンツに応じて内容が可変

 さて、従来モデルとの大きな違いは、画面サイズが従来の5.2型から5.5型へと一回り大きくなったことだ。とは言え、画面が大きくなったのなら筐体サイズが大きくなっていておかしくないところ、筐体サイズ自体は従来と同じだ。上下左右のベゼルが細くなったわけでもない。実測しても、上下に1mm、左右に2mm大きい程度だ。

 どういうことかというと、それは両製品を並べるとはっきりする。従来モデルでは画面右側の操作メニュー部は印刷されたボタンであり、液晶画面とは別だったのだが、本製品ではそれが液晶画面と一体化したため、それらを含めた領域全体を画面サイズと呼ぶようになり、それゆえ数値上は大きくなったというのが真相である(ちなみに従来は画面が5.2型、タッチ部が5.6型という表現だった)。コンテンツの表示部は従来と(ほぼ)同じなので、「画面が大きくなった」という表現はある意味で正しく、ある意味では無理がある。

従来モデルの「PW-SB2」と比較したところ。サイズ、キーボードの画面はそっくりだが、ホーム画面のデザイン、さらにその右側にあるパレットが液晶画面に統合されたことが分かる

 もっとも、操作メニュー部が液晶化されたことで、機能的には大幅に進化している。1つはコンテンツの内容に合わせて最適なメニューに書き換わるようになったことだ。従来はコンテンツの内容とメニューが連動していなかったため、ボタンのラベルが明らかに表示内容と合っていなかったり、コンテンツによっては押しても反応しない場合があったが、これが改められたというわけだ。カシオの電子辞書では以前から同じ仕組みが採用されているが、本製品はコンテンツによっては2列分のメニューを切り替えて表示できるというプラスアルファの工夫もあり、操作性は良好だ。

 もう1つ、縦向き時にボタンのラベルが正しい向きに切り替わるようになったこともポイントだろう。従来は本体を縦向きに持ってもボタンのラベルは横向きのままという不格好な状態だったのだが、それが改められたことにより、縦向きで使う際の違和感がなくなった。文字が90度回転したというほんのわずかな違いなのだが、これまで縦向き利用は無理があると感じていたのがすっかり払拭された。これも進化の1つと言っていいだろう。

操作メニューはコンテンツの表示内容に合わせて可変する。下の「1」、「2」と書かれた数字は、メニューが2列に渡っており、そこをタップすると切り替わることを表す
縦置きの状態にすると、従来モデル(右)ではパレットのボタンは横向きのままだが、本製品(左)では画面の向きに合わせて書き換わっていることが分かる

 ちなみに画面の解像度は854×480ドットと高く、カシオ製品の528×320ドットと比べると明らかに高精細だ。最大で7段階で可変する文字サイズ(日本語表示の場合)のうち、一番上の段階は実用的なサイズとは言えず、実質6段階と考えておいた方が良さそうだが、小さな文字の表示にも強くフォントも滑らかなのは、本製品の大きな利点だ。

文字サイズは最大で7段階で可変する。ただし一番上の段階は実用的なサイズとは言えず、実質6段階と言っていいだろう

ホーム画面が細分化。目的別・カテゴリ別アイコンで呼び出しやすさが向上

 続いてメニュー画面について見ていこう。

 本モデルで大きく変化したのは、ホーム画面のデザインだ。「HOME」ボタンを押すことで表示されるホーム画面は、本棚的なデザインが採用されるとともに、「お気に入り」、「追加コンテンツ」、「検定対策」といった目的別アイコンが追加され、さらに従来から存在した「英語」、「ビジネス」などのカテゴリ別アイコンはより細分化された。

 このように、起動するといきなりコンテンツもしくは一覧が表示されるのではなく、メニューが表示されるのはシャープだけでなくカシオも同様なのだが、シャープ製品は串刺し検索へのリンクのほか、「お気に入り」、「追加コンテンツ」、「検定対策」といった目的別アイコンや、「英語」、「ビジネス」といったカテゴリ別アイコンを用意し、辞書内にどのようなコンテンツがあるかを把握していなくても、目的に合致したコンテンツを探しやすくなっている。

ホーム画面。本棚的なデザインに刷新され、より細分化された目的別・カテゴリ別のアイコンが並ぶようになった
こちらは従来モデル「PW-SB2」のホーム画面。今となってはかなり大雑把に見える。カスタマイズもできない
「調べる」をタップすると串刺し検索のインターフェイスが開く。どのコンテンツを検索対象に含めるかも指定できる
「お気に入り」には8つのコンテンツを登録できる。ここだけで完結してしまう人も少なくないだろう

 これがカシオだと、ホーム画面=串刺し検索のためのインターフェイスという意味合いが強く、各コンテンツへのアクセスはホームを経由せずメニューから行なう方式なので、同じホーム画面という名前ながら、両社の性格はかなり異なっている。また本モデルではよく使う項目を「お気に入り」に入れて呼び出しやすくしたり、追加コンテンツを探しやすくするなど、カスタマイズも柔軟に行なえるようになっている。デザインそのものもかなり様変わりしているので、まったく別の製品のように感じられる。

 全体的には、デザインが洗練されたほか、カスタマイズ性も高くなり、非常に使いやすくなったと感じる。追加コンテンツ=必要性が高いから追加しているという判断なのか、アイコンが上段の目立つ位置にあるのも、なかなか気が利いていると感じる。

追加コンテンツは、階層が1段階深くなっているものの、同様に呼び出しやすくなっている
「英語」をタップすると、英語関連のコンテンツ一覧が表示される……と思いきや、さらに小分類が表示される
小分類をタップするとここでようやくコンテンツが表示される。階層はやや深く感じられるが、ここは仕方のないところだろう
これまでのように一覧から選ぶこともできる。かつては半角文字を使った野暮ったいメニューという印象もあったが、今や完全といっていいほど払拭されている
「ツール」をタップするとポップアップでメニューが表示される。ちなみにボイスメモは依然として上限60分のままで、もうすこし余裕が欲しいところ
アクセサリもコンパクトにまとめられている
青空文庫は過去モデルではダウンロード対応だったが、本製品では標準搭載。作品名、作者名のほか、読書履歴から呼び出すこともできる
こちらはルビありでの縦書き表示。ルビはなくてもルビありに設定しておくのが、行間を空けて読みやすくするためのポイントだ
縦向きに切り替えることもできる

【お詫びと訂正】初出時に、縦向きでの横書きに対応しないとしておりましたが、実際には対応しております。

文字はキーボードからの入力のほか、手書き、50音およびQWERTYのソフトキーボードなど多彩な入力方法が用意される。これらは画面右の操作メニューから切り替えられる

コンテンツは大幅刷新、英語の原書コンテンツを増量

 最後になるが、コンテンツについてもチェックしておこう。実はここがかなりクセのある部分なので、買い替えを検討している方は注意いただきたい。

 コンテンツ数は100。従来モデルは120コンテンツだったので、一気に20も数が減ったことになる。内訳を見ていくと、「類語新辞典」、「日本語の常識・非常識」、「言葉の作法辞典」といった国語系や「読めそうで読めない漢字」シリーズなど漢字系、「キクタンリーディング」や「究極のビジネス英語リスニング」など英語系、「経営用語辞典」、「株式用語辞典」などビジネスの用語辞典シリーズ、さらに健康・生活関連など、ほぼ全てのジャンルに渡ってまんべんなくコンテンツが減っている。なお、「ビジネス指さし会話帳 中国語/韓国語/タイ語」はPW-SB1で搭載し、PW-SB2で省略されたが、PW-SB3で復活している。

【お詫びと訂正】初出時に「ビジネス指さし会話帳 中国語/韓国語/タイ語」が省略されたとしておりましたが、実際には搭載しております。

 その多くはここ数年で新たに追加されたコンテンツであり、それ以前の機種から乗り換える場合はそれほど気にならないかもしれないが、中にはビジネスの用語辞典シリーズなど長らくお馴染みだったコンテンツがごっそりと省かれたり、また「類語新辞典」のように代替コンテンツが用意されない場合もあり、やや戸惑うというのが実情だ(ちなみに類語系はブレーンライブラリーからの追加もできない)。しばらく前に鳴り物入りで追加された動画によるマナーレッスンコンテンツもなくなるなど、かなり思い切った刷新が図られている。

 これら削減されたコンテンツの数は、合計すると20を軽く超えている。ではその分何が増えたかというと、英語学習系の「Oxford Bookworms」が10点増え、合計で30点になったのが目立つ。これは収録語彙数でStage 1〜6までレベル分けした英語小説コンテンツで、語彙数が少ないうちは低いレベルを、語彙数が増えてくれば徐々に高いレベルにチャレンジすることで、無理なく原書を読めるようになるというものだ。

 これらは語彙数によるレベル分けはされているものの、基本的には英米の文学作品を1タイトル1コンテンツとカウントしており、それが100コンテンツのうち30を占めるのはかなりアンバランスな印象だ。本製品への買い替えを検討する場合、自分にとって必要なコンテンツが手持ちのモデルから省かれていないか、これまで以上に綿密にチェックすることをおすすめする。

「Oxford Bookworms」は「英語原書」として収録されている
さまざまな英語文学が語彙数ごとにレベル分けして収録されている。例えばTOEIC 250〜380点レベルであればStage 1の書籍は辞書なしで読める
内容は一般的な英語文学コンテンツ
意味が分からない単語があれば検索するといった使い方が可能
TTSによる読み上げにも対応する
こちらはTOEIC学習の総合コンテンツ「ATR CALL TOEIC テスト対策」
TOEIC関連はかなり手厚く、専用アプリの数も多い
テスト対策のコンテンツではTOEFL関連も強化されている

ハードは十分だがコンテンツは賛否が分かれそう。乗り換え前には必ずチェックを

 以上ざっと見てきたが、見やすさや使いやすさは従来モデルに比べて大幅に向上している。先代のモデルではあいまいに入力しても言葉を探せる「あいまいチェック」の追加とバッテリ使用時間の延長、今回のモデルではボタン表示の見直しに加えてメニューの刷新と、世代を重ねるごとに着実に進化しており、現行の筐体デザインのままでやれるべきことは、既にやりきっているのではないかと感じる。

 コンテンツのラインナップについては各自で良し悪しを判断してもらうしかないが、今回のモデルで大幅に増えた「Oxford Bookworms」にあまり魅力を感じず、むしろ従来のような国語・生活・旅行系のコンテンツの方が重要度が高いのならば、本製品ではなく生活総合モデルの「PW-SA3」を選ぶ手もある。いずれにせよ従来とはモデルごとのコンテンツの編成がかなり変わっているので、ブレーンライブラリーから個別に必要なコンテンツを入手する方法も含めて、乗り換えは慎重に判断して欲しい。

 ハード面で今後要望があるとするならば、本体の軽量化だろうか。シャープの電子辞書は伝統的に重量があり、今回のモデルも300gを切るに至っていない。260g台のカシオ製品と持ち比べるとその差は歴然なので、ぜひ改善を要望したいところだ。またタブレットスタイルで利用する際にキーボードが背面に露出したままになる問題も、ギミックが増え重量増になりうることは分かるが、フルモデルチェンジの際には検討して欲しいポイントである。細かいところでは、カシオ製品に比べて反射が目立つベゼル部についても、できれば見直しを要望したいところだ。

タブレットスタイルで背面から持つとキーボードに指が当たる。誤動作には繋がらないが、評価の割れるところだろう
【表】主な仕様
製品名 PW-SB3
メーカー希望小売価格 オープンプライス
ディスプレイ 5.5型カラー
ドット数 854×480ドット
電源 単3形電池×2
使用時間 約70時間
拡張機能 ブレーンライブラリー
本体サイズ(突起部含む) 152.4×96.5×18.2mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約300g(電池含む)
収録コンテンツ数 100(コンテンツ一覧はこちら)

(山口 真弘)