山口真弘の電子辞書最前線

カシオ「XD-A6500」
カシオ初の単3電池駆動カラー液晶モデル



XD-A6500。本体色は今回掲載しているシャンパンゴールドのほかに、ホワイト、ブラック、レッドが用意されている

発売中
価格:オープンプライス



 カシオの電子辞書「XD-A6500」は、カラー液晶を搭載した電子辞書だ。カテゴリーとしては生活総合モデルに分類され、100コンテンツに加えて日本文学300作品、さらに世界文学100作品を搭載している。

 本製品をはじめとする電子辞書「XD-Aシリーズ」は、同社にとって初めてのカラー液晶モデルとなる。カラー電子辞書では後発となるだけに、先行するシャープ製品との違いが1つのポイントになることは間違いない。ほぼ同時期に発売されたシャープのカラー電子辞書「PW-AC910」との比較を中心に見て行くことにしよう。

 なお、カラー液晶モデルの投入にともなってラインナップが再編されたため、今回試用するXD-A6500は、従来のXD-SF6300系の発展形にあたる製品ということになる。よく似た型番としてXD-GF6500という120コンテンツ搭載モデルがあったが、こちらは液晶画面のサイズに違いがあるほか、搭載コンテンツの性格もやや異なる。

●カラー液晶採用も本体サイズの変化はほとんどなし。駆動時間も必要十分

 まずはXD-A6500の仕様をみていこう。

 筐体デザインは、カラー液晶の採用に伴って一新された。従来の同社製品らしいラインは若干残ってはいるものの、まったく別物と言ってよい。派手さこそないものの、万人が使える無難なデザインだ。本体色は今回試用するシャンパンゴールドのほかに、ホワイト、ブラック、レッドの計4色がラインナップされている。

 本体サイズは約148.5×106.5×16.3mm(幅×奥行き×高さ)と、従来のXD-SF6300(約146.0×102.0×15.5mm)に比べてわずかながら大きくなっているが、実際に持った限りではほとんど違いを感じない。重量は約300gで、シャープのカラー液晶モデルPW-AT910の約324gを下回っており、手に持って比べると明らかに軽量であることがわかるほどだ。

 ボタン形状、サイズ、キーピッチなどは従来製品とほぼ同等だが、カラー液晶化に伴い、盤面右上にあったバックライトON/OFFのボタンがなくなり、そのぶんファンクションキーが1つ増えた。また、キーボード右下にある訳/決定キーは、丸型から四角に近い形状になり、ややタッチが変化している。これまで使っていたユーザは多少の違和感を感じるかもしれない。

【お詫びと訂正】初出時に、液晶のバックライトが廃止されたという記述がありましたが、誤りです。お詫びして訂正させていただきます。

 電池は従来の単4電池×2から、単3電池×2本に変更されており、その結果として、カラー液晶搭載にも関わらず約150時間の長時間駆動を実現している。さらに特筆すべきなのは、電池のサイズが大きくなったにもかかわらず、本体ヒンジ部に収納スペースを設けることにより、本体の厚みにほとんど影響を与えていないことだ。従来モデルと比較しても、外見の変化をほとんど感じさせない点は秀逸だ。なお、電池はアルカリ乾電池のほか、エネループと充電式EVOLTAにも対応している。

 また本製品は、USB給電が行なえるのも特徴だ。充電には対応せずリアルタイムでの給電に限られるが、乾電池がない状態で動作させるには便利だ。万一の際の補助電源として活用できるだろう。

上蓋を閉じたところ。シンプルですっきりとしたデザイン。厚みは従来モデルとほとんど変わらない 左側面。PHONE/SPEAKER切替スイッチ、イヤフォン端子、USBコネクタを備える。ちなみにいずれも従来モデルでは右側面にあったもの 右側面。microSDスロットとタッチペン収納口を備える
本体重量は約300gと、従来モデルよりわずかに重くなったが、シャープのカラー液晶モデルPW-AC910の約324gに比べると軽量 キーボード盤面。手前には大型の手書きパネルを備える キーボード上部のファンクションキー。2度押しで異なるコンテンツを呼び出せる。バックライトのON/OFFキーがなくなったことでキーの数がひとつ増えた
キーボード左手前にはスピーカーを備える 中央に訳/決定キーが配置された上下左右キー 訳/決定キーと上下左右キーの形状を、従来モデルXD-SF6200(右)と比較したもの。上下左右キーの面積が広くなっていることが分かる
右側面後方にタッチペンを収納可能 USB接続時は給電アイコンが表示される。充電機能はなく給電のみ ヒンジ部に単3電池×2本を収納する
単3電池2本で駆動。エネループおよびエボルタ充電池の利用にも対応 イヤフォンとスピーカーは手動で切り替える。ボリュームはキーボード側で調整する microSDスロット。SDHCにも対応する

●画面左側にショートカット「ソフトアイコン」を搭載しタッチ操作が便利に

 本製品の大きな特徴として、「カラー液晶」の採用のほか、「ソフトアイコン」の実装、「ミニ辞書」の搭載が挙げられる。順に見ていこう。

 カラー液晶は、同社独自のカラーTFT液晶「Blanview(ブランビュー)」が用いられている。視野角も広く、細かい文字もかなりくっきり見える。従来のモノクロ液晶のように文字の下に影ができることもないため、視認性は非常に高い。一度このカラー液晶を見てしまうと従来のモノクロ液晶には戻れなくなってしまうレベルだ。

 画面サイズは5.3型、解像度は528×320ドットだが、これは後述するクイックパレットが画面左右に装備されているためで、実質的な表示サイズは5.0型、480×320ドットとなる。余談だが、今回のカラー液晶モデルでは従来の5.4型(クイックパレットを含めると5.7型)の大型液晶モデルは廃止され、5.0型(クイックパレットを含めると5.3型)に一本化されている。

XD-SF6200(右)との比較。カラー液晶を搭載したものの、本体サイズの変化はほとんど見られない
カラー液晶画面を、シャープのカラー液晶モデルPW-AC900(右)と比較したもの。いずれも標準的な明るさ(5段階中の3)に設定している。カシオ製品は黄色が、シャープ製品はやや青色が強い傾向 カラー化されたメニュー画面。横向きタブ方式のレイアウトは従来と変わらない

 液晶画面の左右には、クイックパレットと呼ばれる操作系のショートカットアイコンが実装されている。これらを用いることにより、キーボードを使わなくとも「戻る」「決定」といった操作が行なえるため、ほとんどの操作をタッチペンだけで完結させられる。競合となるシャープ製品では、タッチペンでの操作中にキーボードを押さなくてはいけないことが度々あり、ストレスが溜まりがちなだけに、本製品の大きなアドバンテージだと言えるだろう。

 このクイックパレット、従来は画面右側にだけ実装されていたが、今回のモデルでは左側にもアイコンが追加され、さらに多彩なタッチ操作が行なえるようになった。この左側のアイコン群は「ソフトアイコン」と呼ばれ、表示される内容に合わせてアイコンが差し替わるほか、文学作品など特定のコンテンツではアイコンが非表示となり、領域を広く使えるように工夫されている。

 ソフトアイコンに表示されるのは、ソフトキーボードを表示する「50音キー」や、大きなマスに漢字を手書き入力できる「手書き大」などさまざまだが、注目は何と言っても「ミニ辞書」だろう。このミニ辞書というのは、画面上に表示されている語句について、日本語であれば明鏡国語辞典、英語ではジーニアス英和辞典ですばやく検索できるという機能だ。

左右にクイックパレットと呼ばれるショートカットアイコンを装備。左側はソフトアイコン、右側はハードアイコンという名称がつけられており、ソフトアイコンは画面の表示内容によって差し替わる。キーボードに頼らずともタッチパネルだけで操作を完結させようというコンセプトは高く評価できる ソフトアイコンの「50音キー」をタッチするとカナ入力対応のソフトキーボードが表示される ソフトアイコンの「手書き大」をタッチすると漢字をタッチペンで入力するための画面が表示される。漢語林以外のコンテンツでも利用できるようになった
文字サイズは3段階で可変する

 類似の機能としては「ジャンプ検索」があるが、ジャンプ検索では完全に画面が切り替わってしまっていたのに対し、このミニ辞書ではポップアップで表示される。語句の意味を確認したらすぐに元の画面に戻れるので、これまでのジャンプ検索よりも手軽に利用できる。ジャンプ検索では、ほんのちょっと調べたいだけなのに詳細すぎる説明が表示され困ってしまうことがあったが、このミニ辞書はそうした点もなく、簡潔に意味が調べられるのもよい。これで十分用が足りるという人もかなりいそうだ。

 なお、特定のコンテンツ、例えば文学作品や外部読み込みのテキストでは、画面左端にソフトアイコンが表示されない場合がある。この場合、キーボード手前の手書きパネルにソフトアイコンが表示されるので、そこから同様にミニ辞書などの機能が利用できる。ただ手書きパネルはメイン画面と距離が離れていて操作しにくいため、できればメイン画面側でソフトアイコンの表示のON/OFFが切り替えられるようになってほしいと感じた。

 このほか、液晶がカラーであることを活かし、カラー付箋機能、マーカー機能、カラーノートといった機能も実装されている。さらにはフォトビューワー機能も用意されるなど、カラー液晶の採用をきっかけに、さまざまな機能が一斉に追加された格好だ。

ミニ辞書を使うには、右側ハードアイコンの「ジャンプ」にタッチしたのち、本文の任意の語句を反転させ、さらに左側ソフトアイコンの「ミニ辞書」をタッチする 反転させた語句の意味が画面下部にポップアップする形で表示された。日本語コンテンツは明鏡国語辞典、英語コンテンツはジーニアス英和辞典から抜粋した意味が表示される コンテンツによってはメイン画面左側にソフトアイコンが表示されない場合がある。この場合は手書きパネルに表示されるアイコンを用いて同様の操作が可能
カラー液晶を生かし、マーカー機能などが利用できる マーカーを引いた項目は、マーカー単語帳に登録して呼び出すことが可能 フォトビューワー機能も装備。最大で4,000×3,000ドットのJPGE写真を表示でき、拡大縮小のほかドラッグも行なえる。階層化されたフォルダ内の写真も表示可能

●カラー図版を豊富に追加。文学作品がさらにボリュームアップ

 続いてコンテンツについて見ていこう。

 コンテンツ数は100。本製品は生活総合モデルということで、広辞苑第六版やブリタニカ国際大百科事典のほか、海外旅行向けの「ひとり歩きの会話集」、「Dr.PASSPORT」などのコンテンツが搭載されている。個人的には、日本語コロケーション辞典や類語例解辞典など、これまで上位モデルにしか搭載されていなかった日本語関連のコンテンツが充実している点に注目したい。

 また、カラー液晶を生かしたコンテンツとして「ナショナルジオグラフィックビジュアル大世界史」や「今日の夕ごはん365日」、「週末カンタンきれい食ダイエット」といったレシピ系のコンテンツが追加されている。とくに後者のレシピ集は、電子辞書としては新しい試みだ。インターネットのレシピサイトが多くのPVを集めている現在、こうしたコンテンツの搭載は生活総合モデルとしては正しい進化だろう。ちなみにレシピは422点収録されており、カラー写真のほか、具材やカロリーからの検索も行なえる。

 このほか、液晶のカラー化に伴って、前述の広辞苑第六版やブリタニカ国際大百科事典、ジーニアス英和辞典、全訳古語辞典など従来のコンテンツについてもカラー図版が追加されており、以前と同じコンテンツであっても、まったく別物になった印象だ。

 さらに、同社製品の売りの1つである日本文学100作品が、本製品では300作品にボリュームアップ。さらに今回は「戦争と平和」、「ハムレット」、「マクベス」といった世界文学100作品も追加されており、英語学習にも役立つようになっている。前述のミニ辞書機能を利用することで、意味を調べながら効率的に読み進めることが可能だ。

 全体的に、コンテンツ数が多いことはもちろんだが、従来製品のように量重視というわけではなく、質の高さを兼ね備えたコンテンツが多いことを評価したい。英英辞典など英語学習系のコンテンツがやや少ないのと、他モデルに搭載されているTOEIC関連コンテンツが省略されているのが目立つ程度だ。

文章表現を調べるのに便利な日本語コロケーション辞典を搭載。これは「頭」に関連する慣用句を表示したところ カラー図版を豊富に搭載する。これは「ビジュアル大世界史」の一画面
カラー液晶を生かしたレシピ系のコンテンツを搭載する。写真のほか材料やカロリーからの検索も可能
従来から搭載されていたコンテンツについてもカラー図版が追加されている。これは広辞苑第六版 日本文学が100作品から300作品にボリュームアップしたほか、新たに世界文学100作品も搭載された 日本文学300作品。縦書きおよび本体を90度回転させてのブックスタイル表示にも対応
世界文学100作品。ミニ辞書機能を用いて、単語の意味を調べながら読み進めることができる

●非常に高い次元で仕様がまとまった製品。動作が軽快である点も高評価

 今回のXD-A6500は、カラー液晶を搭載しながら従来モデルと同等の本体サイズと重量を実現しているほか、入手が容易な単3電池で駆動し、しかも駆動時間は約150時間と、非常に高い次元で仕様がまとまっていることが特徴だ。新しい技術や機能を盛り込んで製品を設計する際、仕様のどこかが破綻するのは珍しくないが、本製品はおよそ考えうるすべての点において妥協のない仕様を実現しており、欠点を探すほうが難しい。製品の世代が完全に切り替わった印象だ。

 個人的には、画面切り替えや検索など、動作が全体的に軽快であることを高く評価したい。消灯時からの復帰が従来のモノクロモデルに比べるとワンテンポ遅い程度で、それ以外の動作は競合となるシャープ製品と比べてもきびきびとしており、使っていてストレスが溜まらない。個人的にはこれだけでも本製品をチョイスする価値があると感じる。

 難があるとすれば、ミニ辞書の搭載によって、範囲選択という概念がないことが目立つようになったことだろう。カシオの電子辞書はジャンプ検索を行なう際に、対象語句の始点と終点を指定するのではなく、冒頭の1文字だけを指定する仕組みになっている。そのため、例えば文中に「電子辞書」という単語があった場合、冒頭の「電」をタッチしてジャンプ検索を行なうわけだが、その際に「電子辞書」というひとまとまりの単語で認識されるか、それとも「電子」や「電」といった一部の語句だけで検索されるかは、ユーザ側ではコントロールできない。この点に関しては範囲選択がしっかり行なえるシャープ製品のほうが使いやすい。マーカー機能では始点と終点を設定できるだけに、範囲選択についても同じ仕組みを導入してほしいと感じる。

同社電子辞書のジャンプ検索およびミニ辞書では範囲選択という概念がないため、この例のように「きびしさ」という語句を検索しようとした際に「きび」だけで検索されてしまうといったことが度々ある 「ミニ辞書」には右上に×ボタンがある一方で、この「50音キー」ウィンドウには×ボタンがなく、閉じるためには「戻る」アイコンを押さなくてはいけないといった具合に、同じポップアップ表示のウィンドウでありながら、操作性が異なる場合がある
語句を検索した際、画面左側に見出し語の一覧が、画面右側に本文がプレビューされるが、この画面で本文の関連項目(赤字部分)にタッチしても、関連項目に直接ジャンプすることができない。関連項目にジャンプするには、いったん本文を全画面表示させる必要がある 右利きを前提とした場合、右手に持ったタッチペンで画面左端のソフトアイコンをタッチするため、画面が手やペンで覆われてしまう格好になる。利用頻度が高くなってくるとやや気になる問題だ

 これ以外では、ミニ辞書が画面右上に閉じるボタンを搭載しているのに対し、従来の画面では閉じるボタンがないといった整合性のなさも一部に見られるほか、ソフトアイコンの搭載によってキーボード手前の手書きパネルの影がかなり薄くなるなど、インターフェイス面ではいずれ統廃合を考えなくてはいけない問題もあるように思える。現状でも高い完成度を持つ本製品だが、後継モデルではこうした点の解決が図られていくのではないかと感じた。

 ともあれ、カラー電子辞書では先行していたシャープの製品を、今回の新シリーズで一気に抜き去ってしまったという印象が強い。万人にお勧めできる製品と言っていいだろう。

【表】主な仕様
製品名 XD-A6500
メーカー希望小売価格 オープン価格
ディスプレイ 5.3型カラー(クイックパレット部含む)
ドット数 528×320ドット(クイックパレット部含む)
電源 単3電池×2、USB給電
使用時間 約150時間
拡張機能 microSD、USB
本体サイズ(突起部含む) 148.5×106.5×18.9mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約300g(電池含む)
収録コンテンツ数 100(コンテンツ一覧はこちら)