石井英男のデジタル探検隊

「プチコン」を開発したスマイルブーム小林貴樹社長インタビュー
〜今だから話せる開発秘話と次回作「プチコン+」について



 今回は、プチコンの開発元として一躍有名になった株式会社スマイルブームの小林貴樹社長にインタビューをすることができたので、その内容を紹介したい。

 プチコンについては、以前、筆者がレビューしたので、そちらをご覧いただきたいが、ニンテンドーDSi/DSi LL/3DSをBASICが動くコンピューターにしてしまうという、ユニークなソフトだ。

 価格が800ニンテンドーDSiポイント(800円相当)と手頃なこともあって、BASICで育ったアラフォー世代を中心に人気を集めた。Twitterや2chなどに活発なユーザーコミュニティができ、プチコンの機能を活かした自作プログラムの実行の様子をYouTubeやニコニコ動画などにアップする人が続々登場。その中には、BASICで作成されたプログラムとは思えない見事なゲームソフトもあり、さらなる盛り上がりを見せている。

 2011年3月9日にニンテンドーDSiウェアとして配信が開始され、6月16日に不具合修正と一部の命令実行速度の改善が行なわれたアップデートバージョンがリリースされている。

 スマイルブームは、東京ゲームショウ2011に出展し、小林社長も2日目と3日目にブースで説明を行なっていた。このインタビューも、東京ゲームショウ2011の会期2日目(9月16日)に行なわれたものだ。

スマイルブームの小林貴樹社長。インタビューでもわかるように、とても楽しい人柄であった 東京ゲームショウ2011のスマイルブームの出展の様子。プチコンをアピールしていた

●名刺代わりの販促グッズとして「プチコン」開発を決定

 プチコンを開発したスマイルブームは、札幌を本拠地とするソフトハウスで、ゲームやツール、コンテンツの企画や開発を得意とする。同社Webサイトの会社概要ページには事業内容が「愉快なゲームやツールの企画、開発、コンサルティング、愉快なインターネットコンテンツの企画、開発、コンサルティング」などと説明されており、なかなかユニークな会社だ。表に名前が出ない受託業務も多いとのことだが、2009年に発売された「アクションゲームツクール」を開発したのも、スマイルブームである。その他、Xbox 360マーケットプレースで販売されている3Dシューティングゲーム「3D∞」などもリリースしている。プチコンの開発を決定した経緯を小林社長に尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。

プチコン開発の経緯を教えて下さい。

【小林】うちの会社は静かに裏方をやっていることが多いんですが、マーケットプレースなどで、少しずつオリジナルソフトを出しているのは、販促グッズとしての意味合いが強いんです。うちの会社は、こんなものを作って、配信して売るというところまでできますよというのを見てもらうためですね。それを見た大きな会社さんからいろいろ仕事が来て、基本的にはそういった受託業務をメインにしています。その受託業務の隙間を縫っては怪しげなものを販促グッズとして作っているんですが、プチコンももともと今年の販促グッズとして開発を始めました。それがたまたま妙な方向にどんぴしゃであたってしまって(笑)。

いつ頃、プチコンの開発を始めたんですか?

【小林】開発自体は去年(2010年)の9月頃です。9月に企画を始めて、実際にプログラムを作り始めたのは11月ですね。もともとずっと前からBASICを作りたいと思っていて、ずっと言っていたんですが、なんとなくできそうな気配が出てきたので、じゃあ、企画書と絵を書いてみましょうと。で、どうせなら札幌の会社で作ろうということで、プチコンは3社で共同開発しています。プログラム的な部分はロケットスタジオさんです。ロケットスタジオ社長の竹部さんという方は、もともとファミリーベーシック(ファミリーコンピューター用BASIC)を作った方なので、いろいろ知っています。竹部さんとは仲が良くて、JOEDOWNさんっていう音楽制作会社も昔から知っていまして、うちとロケットスタジオさん、JOEDOWNさんの3社で開発しました。

プチコンは、ニンテンドーDSiウェアとして販売しているわけですが、こうしたアプリは、ほかにあまり例がないと思います。ゲームとは違いますし、任天堂の審査はすぐに通ったのでしょうか。

【小林】意外とスムーズに通りましたね。最初の企画段階で1回審査がありますが、そこで、「公序良俗系やセキュリティなどの問題は絶対に無いようにします。アドレスを直接叩けるようにはしませんし、すべてが中で閉じてる話なので、もし仮に暴走したとしても、何かが入り込める要素はないです」っていうことを技術的に説明した上で、「できる限りのことはやりたいです」と。その後は、特に何か言われたわけではなく、「じゃあ、どうぞ」という感じです。ジャンルは、「教育/データベース」という扱いで出してもらっています。ゲームじゃないよねということで。

●出してみたら予想以上の売れ行き

 プチコンは、発売前からBASICで育った30代後半から40代の世代の話題になっていたが、小林社長は当初、そこまで売れるとは思っていなかったという。プチコンがリリースされてから半年が経過したが、今でも売れ行きは好調だという。

プチコンの売れ行きについてはいかがですか? 具体的に何本売れたというのは言えないんでしょうけど。

【小林】そうですね。リリース時にがっと売れましたね。DSiウェアのランキングを掲載しているサイトがあって、そこでは有料でトップになりました。そのあとは落ち着いて、ニンテンドー3DSでもダウンロードできるようになったときにまた上がりましたが、そこからペースが落ちて、そのあとは誰かがYouTubeなどにすごい動画を出すと、またぴょこっぴょこっと上がりました。それで、今はなぜかよくわからないんですが、また売れてます。日経ソフトウェアさんに紹介されたり、活用本が出たタイミングや記事に出たタイミングで、また増えていますので、売れ行きは好調です。

普通のゲームソフトの売れ方とは全く違いますよね。普通のゲームは最初の週にぱーっと売れて、あとは落ちていきますよね。プチコンは、脳トレとかに近い感じの売れ方ですね。

【小林】そうですね。はい。

●本当はもっと安い価格で出したかった

 プチコンがヒットした理由の1つに、800ニンテンドーDSiポイント(800円相当)という、絶妙な価格付けが挙げられる。200ニンテンドーDSiポイントで販売されているアプリも多いニンテンドーDSiウェアの中では比較的高価な部類だが、その内容を考えると、魅力的な価格に思える。しかし、小林社長はもっと安くしたかったという。

プチコンは価格も絶妙というか、内容を考えると安いと思うんですが。

【小林】本当は200円にしたかったんですよ。先ほどお話ししたように、これで儲けようという商売っ気って全く無かったんです。我々も、結局BASICで育ったので、そういう子供が増えないかなあとも思って。一応、オッサン向けとは謳っていたものの、200円で出したら子供にも受けるよねえと思ったんです。

売れ行きは予想以上ということですか?

【小林】だらだらだらだら売れて、いつか開発費がペイすればいいやくらいに考えていました。今までも何本かオリジナルソフトを出しましたが、全然ペイしていないなんですよ。でも、プチコンは僕が趣味でやりたいってことで、強引に役員決裁をもらったので(笑)。

結果としては、かなり売れましたよね。

【小林】そうですね。まあいい感じで売れたので、次もやってみようかという気持ちになれました。

●札幌には昔からモノを作って自分で売るという文化があった

 プチコンの反響は予想以上だったが、小林社長が何より嬉しかったのは、プチコンのユーザーが自分のプログラムを動画共有サイトで発表したり、投稿コーナーに自作プログラムを投稿してくれたことだ。札幌はもともと開発力が高かった土地であり、そうした文化の中で育った小林社長は、自分で作ったモノを自分で売って、文化を発信できるような会社を作りたいと思っていたという。

ユーザーさんからも、こんなの作ってみましたという報告が寄せられてますよね。

【小林】はい、いろんなところでお会いして、実際にプログラムを見て下さいとか。本来、こっちがやらなくちゃいけないことをユーザーがやってくれました。

ボーカロイドがユーザーの作品で盛り上がったのと似てますよね。

【小林】クリプトンの伊藤さんとも、すごく仲良くさせていただいていますが、あそこも独自のコンテンツでオリジナルを出してましたよね。ああいう風に文化を発信できる会社になりたいと、伊藤さんともお話をしていました。そうじゃないと、やはりただ受託業務をする人しかいないと土地だと思われちゃうと寂しいなあと。昔は、札幌も開発力があるところだったんですよ。

ハドソンとかそうですよね。

【小林】中本さんともおつきあいがあります。中本さんは濃いよね(笑)。

それこそ、昔は、札幌の人が開発したサッポロシティスタンダード(筆者注:カセットテープにデータを記録する規格。当時一般的に使われていたカンザスシティスタンダードよりも高速に記録ができた)とかありましたよね。

【小林】はい、そういう文化があって、自分はそこで生きてきてたので、そういう風にモノを作って売るというのが当たり前だと思ってきました。まあ、規模の大きさはあると思いますけど、やっぱり自分で作ったモノは自分で売る方がいいに決まっている、楽しいに決まっている。これからもそうしていきたいなと。来年は何を作ろうっていうのは、目処がついてます。

●時間の都合で削られた機能を復活させるべくプチコン+の開発を開始

 プチコンの売れ行きが好調で、ユーザーコミュニティも盛り上がったことを見て、小林社長は、初代プチコンの不満点を改善すべく、「プチコン+」(プチコンプラス)の開発を決意した。その理由を小林社長に訊ねてみた。

今のプチコンは、一回、不具合修正でバージョンアップしてますよね。

【小林】はい、一回バージョンアップしています。さらにもう1回する予定です。

バージョンアップでは、不具合修正だけでなく、一部の命令が高速化されてるようですね。

【小林】はい、命令を速くするというのは、全然問題ないんですけど、バージョンアップで機能を増やすことはできないんですよ。

なるほど。機能を増やすと別ソフトとしてリリースしないといけないわけですね。

【小林】はい。ですから、そこがすごくこういうソフトの場合は難しくて。こちらとしてはギリギリ開発の時間的に間に合わなかった、本当は引数が多いとか、この機能が付くと面白いというようなものがあったんですが、時間の都合で外したものがあります。例えば、当たり判定の関数とかですね。パソコンのソフトだったら、ダウンロードでアップデートが当たり前という世界なんですが、そことは違う環境ですから。

確かに、コンシューマゲームのメディアがROMカートリッジの時代とか、出荷後にバグが見つかっても修正できませんでしたよね。

【小林】だから、任天堂さんは、そこらへんのクオリティを心配されていると思うんですよ。それはそうだなと思います。でも、うちの会社でこれにかかわっているメンバーは、ファミコン時代からゲームを作っている人達なので、ちゃんと作らなくちゃダメに決まってるじゃんって。

ただ、バグってなかなかゼロにはできないですよね。

【小林】そうなんですよね。プチコンの場合は、本当に使い込んでくれる人達があらわれたら、こういう命令があったらいいっていうのが絶対に出てくるだろうというのがある程度わかってました。だから、開発の時間的な問題で、削られた命令を復活させたいなと思ったんですけども、やっぱりだめなんですよね。

そのあたりがプチコン+の原動力になったわけですね。

【小林】そうですね。

●プチコン+は半年以内に登場予定!?

 プチコン+は、プチコンの後継ソフトとして登場予定だが、まだ詳細は明らかになっていない。発売時期や価格、機能強化点について、小林社長に訊いたところ、プチコンの場合と同じく、また価格付けに悩んでいるそうだ。

プチコン+は新ソフトとして出るわけですよね。

【小林】そこが今悩みどころで、新ソフトとして出すんですけど、また値段をどうしようかと。

プチコン+の発売時期はまだ公表されていませんよね。

【小林】えーと、ざっくりいうと……。

あと1年くらいですか。

【小林】いや、そんなにかからないです。年明けくらいに出せればいいなあと。

では、半年以内くらいですか。

【小林】はい。それで、プチコンの売れ行きを超えなければいけないと思っています。今のプチコンは、40代前後の人達が結構遊んでくれているので、この人達だけに売るのであれば800円という選択肢になりますが、その人達の子供が使い始めているという話を聞くと、もうちょっと使ってもらうんだったら、価格を安くしたほうが気軽に買ってもらえるのかなあというのもあって、悩んでいます。もう、Twitterでみんなに訊こうかと思ってるくらいです(笑)。「子供達が買いやすくするためにちょっと機能減らして価格下げたいんだけど、いいですか?」って。

大人だと、また800円でも高くはないと思いますが。そもそも子供だと自分でニンテンドーDSiウェアを買っちゃいけないと言われてる子も多い気がするんですよね。子供が自分で買うならプリペイドカードですよね。大人だとクレジットカードで気軽に買っちゃいますけど。

【小林】そうなんですよ。

逆に、ROMカードのパッケージソフトだと、ニンテンドーDSi用ソフトでも4,000円とか5,000円の世界ですよね。でも、お小遣い貯めたりお年玉などで、「ポケモン」とか買うわけじゃないですか。

【小林】だから結局、ダウンロード販売になった瞬間に、購入対象が大人になっちゃうんですよ。だから、これは難しいところだなあと。うちのかみさんは全然ゲームはしないんですけど、「200円と500円という選択肢があって、そのどちらかを買うとしたら、どっちが高いって感じる? 500円と800円だったら、800円って高いって感じる?」って訊いてみたら、「それ、大人が払うんでしょ? 大人が払うんだったら別に800円でも変わらないよ。必要なら別にどれでもいいんじゃないのって」(笑)。

私もそう思いますけどね。

【小林】プリペイドカードも1,000円からですし。だったら別に800円でも500円でも一緒じゃないのっていう気が。200円は安いと思うけど。そこが難しいところですね。

●ユーザーの意見を取り入れてプチコン+を開発する

 Twitterなどを利用して、ユーザーからの意見を積極的に取り入れていることも、スマイルブームのユニークな点だ。プチコンに関しても、こんな機能/命令が欲しいというユーザーアンケートをとっていたが、特に要望が多い命令は、できるだけプチコン+に実装しようとしている。

そういえば、Twitterでプチコンにこんな機能が欲しいみたいなアンケートをとってましたよね。そしたら、どんどん要望が来て、中にはかなり無茶なものもありましたが(笑)。

【小林】はい、でも、「わかるわかる」っていう要望ばっかりでしたので。プチコンをヘビーに使っていただいているユーザーさんが言ってるので、「うん。そうだよねえ。そうだよねえ」って。

私もそれほどいろいろなBASICに触った経験があるわけじゃないですけど、「そんな命令、これまでのどのBASIC処理系にもないんじゃないの」っていう、夢の命令が欲しいみたいなリクエストもありましたよね。

【小林】次のプチコン+を作るにあたっては、ゲームを作るのならこれはいるよねという命令は、どんどん入れていこうと思ってます。うちの開発の人間も面白がってるので。

では、プチコン+では、そのあたりのゲームを作るのに便利な命令が増えるわけですね。

【小林】そうですね。自分で作っちゃうと重くなるものは、できるだけ命令として組みこんで、一発で呼べるようにしようって。例えば、当たり判定の命令は入れないとダメだろうなと。あと、よくユーザーさんから言われている、スプライトの回転中心を、隅だけでなく、中央にもできるようにするというのも、入れようと思っています。もともとはあったんですよ。それから、1枚のスプライトをもっと大きく拡大表示できるようにしようとか、そういう本来、ニンテンドーDSが持っているハードウェアの性能をもうちょっと出しやすくしようと考えています。本当にゲーム機に向けたBASICとしての改良を行なっています。みんなすごい努力して、プログラムを高速化してますので、もうちょっと速くしてあげるともっとすごいソフトが出てくると思いますね。

確かに、今のプチコンでもすごい人の作品は、「これがBASICでできてるの?」って驚くほどですよね。

【小林】マシン語のリストを持ってきて、逆アセンブルして、それをBASICに移植するという謎の行為が行なわれていて、おかしくないですか、それ(笑)。BASICは遅いからアセンブラで書くはずなのに。ニンテンドーDSもハードウェアの性能的には、昔のPC-8801とかと比べるとCPUクロックが100倍まではいかないですけど、それくらい速いです。だから、本当はもっと速いはずなんですよ。ちゃんと作ると。

●荒れない2chが面白い

 現在、スマイルブームではプチコンの後継であるプチコン+を鋭意開発中であるが、プチコンに惚れ込んだ小林社長は、それで終わりではなく、プチコンの開発をライフワークにしたいとまで考えているようだ。特に、子供達にプチコンを使って、ゲームを作ってもらいたいという強い想いがある。プチコンは、ユーザーが紳士的で2chが荒れないというのも、一般的なゲームソフトではまず見られないユニークな現象だという。

プチコン+もニンテンドーDSi用ですよね。

【小林】そうです。ニンテンドー3DSでももちろん動きますが、3DSに特化した機能はないです。プチコンのために画面の大きなニンテンドーDSi LLを購入されたお客さんがたくさんいらっしゃって、この人達を大事にしたいよねえという話をしてて、プチコンは、この後さらに強化したプチコン+を作るという話になりましたけど、もうライフワーク化していこうかなと(笑)。みなさんがついてきてくれるのであればどんどん。

じゃあ、桃太郎電鉄なみに(笑)。

【小林】そうですね。例えば、もうそろそろニンテンドー3DS専用でいいですっていう人が増えてくれば、3DS専用にするとか。でも、今はこれを購入されたお客様との関係をすごく大事にしたいんです。すごく気に入っていただいてますので。荒れない2chってなかなかないですよね(笑)。バグが出てるのに荒れない2chって、バグを出してしまったことは申し訳ないと反省しつつも、すごく面白くて。他の会社の人からも、「お前さんのところのソフト、2ch荒れないよねえ。バグの話一杯出ているのに、みんな荒らさないよねえ。すごいいいよねえ2ch」と言われてます。みんなすごくいい人達ばかりですよ。やはり紳士ですね。年が年だけに。問い合わせの電話とかも、紳士的な応対で、頑張って下さいって。投稿作品のメールもすごい紳士的で、「一点、間違いがありまして」とか。

 もちろん、それだけというわけじゃないです。やっぱり、根っこにあるのは、自分たちも若い頃BASICを使ってプログラムを覚えてきたので、本当はその先にいる子供達を狙いたいところです。次のプチコン+で、どう考えるかというところが、主にメモリとの兼ね合いだけなんですけれど、悩んでます。子供に一杯いじってもらいたい、「実はゲームってこういうものでできていたんだ」っていうのが分かってくれるといいなあと。

 今、就職活動をされている方に卒業間近で面接をすると、ゲームを作ってみたいという話はよくきくんですが、自分で作ったことはない。専門学校に行ってるのに作ったことがないという話もききます。ゲームを作るってことを難しく考え過ぎなのかなあと。もうちょっと気楽に電車の中とかでゲームを作るというように、どんどん使われていくといいなと思っています。何か分からないことがあったら、素晴らしいおじさまたちが絶対にフォローしてくれるので、そこをうまく使っていけるといいなあと。来年から、技術家庭の教科にプログラムが入ってくるみたいですし。

確かに、小学校や中学校で授業にプチコンを使うっていうのが出てきてもいいですよね。

【小林】はい、面白いかなあと思います。

イベントでプチコンプログラム教室するとかもいいですね。

【小林】そうですね。実は、11月5日に、京都で文化庁主催のイベント「文化庁メディア芸術祭 京都展」が開催されますが、その中で、プチコンのワークショップを行ないます。こういう流れが増えてくると、もしかしたら面白くなるかと思います。今活躍されている人達が、じゃあ僕が教えようという流れが来るんじゃないかと思います。教えて、中の人達みたいな感じで(笑)。

確かに私が小学校の頃は、マイコンは高価でとても買えないから、電気屋で触らせてもらったりしてましたね。

【小林】そうです、そうです。ゲリラプログラミングとか、やってましたね。昔はみんなやってた。だいたい電気屋で、バカバカバカバカってプログラム入れて、逃げる(笑)。

小林さんはおいくつなんですか。

【小林】44歳です。

私が41歳なので、大体同じ世代ですよね。私が小1のときにTK-80が出たので。

【小林】僕は最初全然パソコンに興味なかったんですよ。野生児だったので。たまたま、その当時お金持ちの友達がいて、そこの家に何かが入ったらしいって。そこに行ったら、これでゲームできるんだ、ゲームがって、みんな入り浸りになって(笑)。それで欲しい、欲しいって。当時はコンシューマゲーム機がまだなかったから、それが唯一でした。それで、これ仕事にも使えるからお父さん買いなよみたいな感じで騙して、親に買わせて、ずーっとゲームする。それが当時の少し頭の働く子供の作戦でした。

当時はプログラムをカセットテープに保存してましたよね。今は、カセットテープ自体を知らない世代が増えてきましたよね。

【小林】プチコンで、プログラムをセーブするときに、カセットにプログラムを保存するときのようなピーヒョロヒョロって音が出るようにしてるんですが、若いユーザーさんに、「これは何の音ですか、バグったんですか」って言われて。「これはですねー、おじさんたちにしかちょっと分からないんですけど」って(笑)。

●プチコン+はさらにゲームが作りやすいBASICになる

 プチコンのユーザーは、以前BASICでならした凄腕の人達も多く、すぐには見つけられないだろうと思っていた、隠し機能もあっという間に見つけられてしまったが、そうした小林社長はそうした濃いユーザーとの関係性を大切にしていきたいという。

プチコンは、アクションゲームツクールなどとは違って、やはり本格的なプログラミング言語ですから、そのあたりはそれなりにハードルが高いですよね。

【小林】これは、相当悩みました。最初は、もうちょっとやさしく、導入メニュー的なものを入れようかとか言ってたんですけど、いろいろ考えた結果、ダメだと。当時BASICを使っていた人達に余計なメニューをつけるとかえって分からなくなる。これでいいって、「このあとどうすればいいの?」っていうあの感覚を思い出してもらわなくちゃダメだと。

基本的にプチコンは、ゲーム向きで、数値演算精度はあまり高くはないですよね。まあ数値演算をあまりこれでやる必要は無いとも思いますが。

【小林】そこは結構悩みどころだったんです。今の固定小数点でも、ビット数を倍にすればもうちょっと精度が上がるんですけど、このニンテンドーDSiの解像度でやることを考えたら、やっぱり固定小数点の32bitでちょうどいいんじゃないかなと。「ポケコンにはならないね、これは」、と。

ポケコンはポケコンで便利でしたけど、あれは関数電卓からの発展ですからね。

【小林】ポケコンも結構参考にしていて、本当はプチコンの最初の仕様には、今出てる現行のシャープのG850相当の命令は一式入れていたんですよ。算術系の命令は。でも、開発の段階になって、「これを今入れるべきではないかもしれない。ただ、ゲームに使えそうな、sin、cosとatanとか、その辺はゲームでよく使われるので、そういうのは入れようと。それ以外は徹底的に削除して、1回すっきりさせよう」とやった結果がこれなんです。ただ、ちょっと削りすぎたかなと。LEFT$とかRIGHT$とかは残してもよかったかも。

その辺の文字列関数はあまりないんでしたっけ。

【小林】そうですね。MID$が1つありますけど、まあこれがあれば代わりになるんですが、やっぱり、専用命令があったほうが楽だよね。面倒くさいから。

LENとかはあるんですよね?

【小林】あります。だから、やればLEFT$やRIGHT$の代わりはできるんですけど、いちいちそれを書かないといけないので。PRINT USING的なものもないです。書式指定はないです。

まあ、プチコンでビジネスソフトを作るわけじゃないですからね。でも、私はBASICってN-BASIC系しか知らなかったので、スプライトってこれで初めて触ったんですよ。あるというのは知ってましたが、すごいと感動しました。

【小林】そういった命令は、これは特別かもしれませんね。ファミリーベーシックにもあったんですけど、あれはちょっと変わったベーシックだったので、プチコンでは完全に作り直そうと。

ファミリーベーシックは持ってましたが、あれはメモリの制限がかなり厳しかったし、ちょっと特殊でしたね。

【小林】隠し機能をどこまでユーザーさんに開放しちゃうかというのも悩みどころで、結局全部見つけられちゃったんですよ。相当隠してたんですけど、やっぱり見つかるかあと。「もう見つかっちゃった。フォント変えちゃってるよ、もう」とか。次の日には見つけられちゃったり。

そのあたりはみなさん凄いですよね。

【小林】プログラムを見ても、「何してるんだろう、この人」みたいなのがいっぱいあります。でも、そういうのは中で開発している人が喜ぶんですよ。「やられたー! そのやり方があったか!」とかね。

ある意味、開発者とユーザーの勝負みたいになっているというか。

【小林】そうですね。だから、任天堂さんの開発の基準にひっかからないようなものはある程度入れておいて、マニュアルに載せるかどうか。最初にこれを公開しちゃうと、初心者にはややこしい機能とか、ぐしゃぐしゃになってしまいやすい機能に関しては、極力、機能は残すけれど、命令としては隠すみたいな感じでやってました。そうするとやはり、いじれる人はいじって、「あ、見つかっちゃった!」とか、そうしたほうがいろいろできるのは間違いないので。その辺は残しました。本当は、もっといろいろ残したかったんですが。

そのあたりは、プチコン+で復活する感じでしょうか。

【小林】そうですね。先ほどのスプライトの回転中心もそうですし、今、本当にTwitterで意見が出ているような、みなさんが実際にゲームを作る際にここが困ったっていうところは、極力入れようと。

そうすると、プチコン+ではさらにゲーム作りが楽になりそうですね。

【小林】はい、ゲームを作りやすくはなると思いますし、同じことをするにしても、コードが短くなるんじゃないかと思います。速度的にもたぶん速くなります。

●プチコン+での気になるMML対応は

 プチコンユーザーのアンケートで多かったリクエストの1つが、PC-6001やFM-7などが実装していたMML(Music Macro Languageの略。PLAY命令を利用して音楽を演奏できる)への対応である。ニンテンドーDSiのハードウェア仕様では、MMLをそのままサポートするのはなかなか難しいというのがスマイルブームの見解だったのだが、その点についても少し突っ込んでみた。

プチコン+でのMML対応はまだ秘密な感じですか。

【小林】あはははっ(笑)。

要望はかなりありますよね。PC-6001とかみたいにやりたいという。

【小林】もうほとんど言っちゃってるようなものですが(笑)。みなさんから寄せられている要望の3大要素は入るんでしょうというくらいで、ここは勘弁して下さい(笑)。それプラス、ゲームの速度が上がるような改良は最低限入れようと。コアは一緒なので、劇的に速くなるというほどではないと思いますが、可能な限り、いろんな面白い機能を入れたいです。

初代プチコンのソフトはそのままプチコン+で動くんですよね?

【小林】そのまま動きます。上位互換なので。

ただ、ソフトとしては別なので、前のプチコンを購入している人は、DSiメニューに二つアイコンが並ぶわけですね。

【小林】そうです。それで今、プチコン側で記録されているプログラムをどう読ませるかっていうところのUIを考えています。プチコン+から、プチコン側の保存領域を見ることができます。

なるほど、他のアプリの領域を利用できるんですね。

【小林】そこが、うまくできれば、もしかしたら新しいプチコン+では、容量を減らすことができるかもしれません。

確かに、RPGなどで第1章とか第2章って分かれてるものがありますが、前のセーブデータを引き継げますものね。

【小林】はい、そこら辺をうまく使えれば。ただ、なんかそれも面倒くさいかなあとかとも思って。持ってこれるのは持ってこれるように作ってもいいと思うんですけど、アイコン的には1個あれば、新しいのしかみんな使わないでしょうし。それが悩みどころですが、機能的にはできるだけ、入れられるだけ入れようってことは思います。このコアの最後の拡張みたいな感じで。

それは期待できそうですね。

【小林】今までよりは、広めやすくはなって、表現力も上がるとは思います。ただ、考えているのは我々としてはmkIIなんですけども、機能的には。PC-8001からPC-8001mkIIになったくらいの変化かなあと。mkII SRまでの変化ではないです(笑)。

でも、PC-8001からPC-8001mkIIへの進化って、グラフィックの解像度が4倍細かくなったり、結構いろいろ変わってますよね。色は少なかったですけど。

【小林】そういうじわっとくる範囲でやろうかなあと。この機能がないから買わないという人達もいるようですが、その人達の反応がどうなるかをちょっと見てみたいと思っています。

まだ、プチコン+の新機能についてはほとんど公開されてませんよね。少しずつ公開されていくわけですよね。予告サイトでは、3大新機能みたいな形でしたが(筆者注:インタビューの後の9月20日に、予告サイトの3大新機能の1つとして、内蔵カメラを利用して、QRコードでプログラムを読み込める機能が追加されることが明らかにされた)。

【小林】もうほとんどバレバレなんですよ(笑)。みんなもう分かってるみたいな。感じなんですけど、分かってても、みんなそれを言わないところがいい人達で、「新機能は、何かなあ?」みたいな。それがもう全体でボケ合ってるみたいなところが、面白くて。それができる関係が、すごく楽しくて、世界一幸せな制作環境だと思いますよ。プチコンを利用している人の意見がそのままダイレクトに反映されるっていう。みんなで作ってるソフトみたいな感じで。

それは、Twitterとかもうまく活用されているからでしょうね。

【小林】もうすごい時代になったなあと思ってます。

●一風変わったプログラムコンテストを開催したい

 小林社長は、プチコンのプログラムコンテストもやりたいと考えている。しかし、「愉快」が売りのスマイルブームだけに、単に賞金めあてのコンテストにはしたくないと小林社長は語る。ユーザーコミュニティとの信頼関係が成り立っているからこそ、ユニークなコンテストにみんなが乗ってくれるのであろう。

プチコンのコンテストとかできると楽しそうですね。

【小林】そうですね。プログラムコンテストも今ちょっと考えています。ただ、賞金が100万円とか50万円とかってより、賞品を未来電化製品とかにして、欲しいけど自分で買うのはちょっとためらうかなっていうのをいっぱい並べるというのがいいかなあと。「なんでこれ選ぶかなあ、確かに欲しいけど」っていうギャフン感というか(笑)。シルエットが見えてて、バレバレなんだけど、製品名を伏せておいて、ヒントまで書いてとか。そういうノリですよね。たぶん、みんなそういうのを期待しているはずですね。今回、東京ゲームショウで配布したペーパークラフトも、みんな「いいとこつくなあとか。欲しいなあ」とか。ユーザーとのボケツッコミを楽しむみたいなところがとても面白い。そういうものを選ぶのが楽しくて、例えば「ヘルシオにしよう。きっとみんな腹出てるよなあ」とか(笑)。そういうコンテストをやってみたいなあと今思っています。

東京ゲームショウのスマイルブームブースで配布していてたニンテンドーDSi用ペーパークラフト。型紙を切って組み立てることで、ニンテンドーDSiが昔懐かしい感じになる 「みるみるキミのDSiが無意味に年代物になる!」とか「使いづらさは折り紙つき!」などのコピーが面白い ペーパークラフトを組み立てたところ。確かにこのままでは折りたためなくなる

【小林】海外版も出したいなあと考えてはいます。もしかしたら、アメリカの人達とかヨーロッパの人達とか、もっと濃い人達が、すごいものを生み出してくれるかもしれない。今日、海外の本家Engadgetの人達が見ていったんですが。商品の説明を英語でくれとかいって、「グレイト! グレイト!」って言ってたらしいので。「Wow! Wow!」といって帰っていきました(笑)。

もちろん、プチコン以外の開発もしているわけですよね。

【小林】それはそうです(笑)。僕はみんなに小林さんとかどうやって食ってるのってよく言われて。まあ、プチコンではないことは確かだよって、いろいろやっておりますと。

ただ、プチコンで会社の知名度はかなり上がったんじゃないでしょうか。

【小林】そうですね。変わったものを作ってる会社っていう印象は広まったかなと。だから販促グッズとしては、大正解でしたね。

コミュニティも盛り上がってますしね。

【小林】自分も参加できるので、すごい楽しいですよ。この時代は。

今日はいろいろありがとうございました。