井上繁樹の最新通信機器事情
トレンドマイクロ「OKAERI」
~一家のPCからスマートフォンまでを台数制限なしで保護するセキュリティサービス
(2015/3/12 06:00)
トレンドマイクロの「OKAERI」はPC、スマートフォン、タブレットのセキュリティ対策とパスワード管理、さらに最大16GBまで写真と動画のクラウドバックアップができるサービスだ。対応OSはWindows、Mac、Android、iOSで、台数制限はなく、利用料金は月額固定で通常1,058円、プレミアムは1,598円となっている。通常とプレミアムの違いは、電話、メール、チャットで相談できるサポートの有無だ。
サービスの利用にあたっては専用端末のLAN内設置と、PC、スマートフォン、タブレット側に専用アプリ「トレンドマイクロ OKAERI」のインストールが必要だ。LAN内に専用端末がない場合、専用アプリのインストールは完了しない。専用端末がライセンスキーの様な役割を果たしている。また、専用端末はHDMI出力を搭載しており、TVやディスプレイにつなぐことでクラウドにバックアップしている画像や動画の閲覧と、スライドショー表示を楽しむことができる。
セキュリティ対策、パスワード管理、写真バックアップの3つの機能
OKAERIの利用には2種類のアカウントを登録する必要がある。1つがトレンドマイクロアカウントで、OKAERIの利用に必須のものだ。もう1つが家族間で共有しないパスワードと個人の写真を管理するためのユーザーアカウントで、それらの機能を使わない場合は登録する必要はない。ユーザーアカウントは1契約あたり3つまで登録できる。
専用アプリのトレンドマイクロ OKAERIは3つのアプリに分かれている。全てのアプリとアカウントを管理する「OKAERI」と、セキュリティ対策の「ウイルスバスタークラウド」、そして写真と動画のバックアップと閲覧ができる「JewelryBox」だ。さらに、OKAERIからWebサイトのパスワード管理サービス「パスワードマネージャ」を呼び出せる。
アプリのOSごとの違いだが、ウイルスバスタークラウドはAndroid、iOS版は設定項目のないシンプルなバージョンだが、JewelryBoxとパスワードマネージャについてはUIの差はあるがWindows、Android、iOSで機能に差はない。
ウイルスバスタークラウドはいわゆるウイルス対策ソフトで、中心となるウイルス対策や危険なWebサイトへの接続を遮断するほか、SNSの情報公開範囲のチェック、カード番号など個人情報の漏洩防止、ファイルの完全消去、ペアレンタルコントロールなどの機能を搭載している。
さらに、セキュリティ対策機能の一部として、Webブラウザ組み込みのセキュリティ対策プラグイン「Trendツールバー」がインストールされる。Trendツールバーは、検索エンジンの検索結果やSNSサービス上のリンクのうち、安全なものにはチェックマークを付けるほか、SNSサイトでは個人情報の公開範囲の確認を促すバルーンを追加するなど、Webブラウザの表示結果に視覚的に分かりやすい変更を加える。対応ブラウザはInternet Explorer 7以降(Modern UI除く)、Google Chrome 30.0以降、Firefox 5.0以降となっている。
JewelryBoxは、写真のバックアップとバックアップしたファイルの閲覧と共有ができるアプリ。バックアップ対象はユーザー指定のフォルダだ。容量上限が16GBと控えめなので、「ピクチャ」フォルダまるごとのバックアップは難しい。バックアップ用のフォルダを別途作成して、お気に入りの画像のみコピーしておく、というように容量を節約しながら使うことになるだろう。
パスワードマネージャは、Webブラウザで利用するユーザーIDとパスワードを管理するアプリで、Webサービスとして提供される。Webブラウザ組み込みのパスワード管理機能とは別物で、自動でインポートすることはなく、IDやパスワードを入力する際その都度ユーザーに確認してから保存する。パスワードの編集、フォルダ分けによる分類、検索と並べ替え表示が可能で、パスワードの強度を評価する機能とテキストメモを搭載している。
デバイスをまとめてチェックできるWebポータル
OKAERIのアカウントに紐付けられた機器は、OKAERIのポータルサイトで確認できる。リモートで端末側の設定を変更することはできないが、安全な状態かそうでないかは一覧で見られる。パスワードは元々Webサービス上で管理しているが、問題のあるパスワードを使っているユーザーが居る場合、ポータルサイト上でも確認できる。パスワードを直接見ることなく、危険性だけ警告できるので、プライバシーを保つことができる。ポータルサイト上ではほかに、JewelryBoxの使用容量や契約情報を確認できるほか、サポート情報にアクセスできる。
まとめと感想
最近では、PCとスマートフォンという組み合わせで2台のコンピュータを使っている人は少なくない。デスクトップPCとノートPC、スマートフォンにタブレットといった具合に4台持ちになっている人も珍しくはないだろう。1人当たり2台としても、4人家族では8台分のセキュリティ対策が必要なコンピュータがあることになる。それだけの数のセキュリティ対策ソフトのコストは決して安くない。
OKAERIでは台数制限無しで、現状よく利用されるWindows、Mac、Android、iOSに対応したセキュリティ対策ソフトを利用できる。家庭内にコンピュータが増えつつある昨今の状況に優しい価格設定だ。
Webサイトのパスワード管理は、以前からブラウザやOSに組み込まれ、最近では異なるOS間であっても自動的に同期される。実質クラウドバックアップされているようなものなので、あえて別途パスワードをバックアップする必要性があるかというと微妙なところではある。とはいえ、クラウドも絶対ではないことはこれまで何度も見てきた通り。二重化は決して無駄なことではない。
写真のバックアップ機能についてだが、これだけクラウド・ストレージが豊富で無料でも利用できる時代にあえて必要かというと難しいところだ。ただ、家族の中で頑なにPCやスマートフォンを使うことを拒否する人が1人でもいる場合は、TVに繋げるOKAERIの専用端末は「持たない」派の人と写真画像を共有するための数少ない手段として有効なはずだ。
最後に1つ。OKAERIの専用端末のステータスランプはちょうど顔に見える様に配置されている。ステータスランプは通常時は青だが、初期設定時やシステムエラー時には赤く点灯する。顔の様に見えるだけあって、ただ単に色が変わる場合よりも、状態が直感的に分かる。なかなか良い工夫だと思うのだがどうだろうか。