井上繁樹の最新通信機器事情

スマホやタブレットにも対応するNAS、WD「WD Cloud」

〜デジカメ画像はUSB経由でバックアップ、クラウドアクセスも可能な高速NAS

 WDのWD Cloudシリーズは、名前に「Cloud」とある通りインターネット経由でどこからでもアクセス可能なNASだ。搭載HDDの容量は2/3/4/6TBの4種類。ネットワークには1Gbpsの有線LANで接続し、USBストレージやデジカメを接続できるUSB 3.0ポートを1つ搭載している。

 WD Cloudシリーズの主な機能は、LAN内およびインターネット経由でのファイルの共有、接続している端末のファイルのバックアップ、DLNAサーバー、iTunesサーバーなど。また、Joomla(CMS)、phpBB(掲示板)、WordPress(ブログ)などのアプリが管理画面からインストールできる。さらに、SSHアクセスも可能だ。

WD Cloud本体正面。ロゴと動作ランプがある
背面。上から吸排気口、リセットボタン、USB 3.0ポート、1Gbps有線LAN、電源コネクタ、Kensingtonセキュリティスロット。リセットボタンは4秒押しでリセット、40秒押しで設定初期化(ファームウェアは戻らない)
正面から見て右側面
正面から見て左側面
天面。吸排気口がある
底面。吸排気口があるほか、シリアル番号やMACアドレスを印刷したシールが貼られている
同梱物一覧。ACアダプタ、LANケーブル、冊子類。詳細なマニュアルはPDF形式で公式サイトにて公開されている
URL「wdcloud/」で開けるローカルアクセス用のサインイン画面

 対応OSはWindows Vista以降、Mac OS X Lion以降、Android 4.0以降、iOS 7.0以降だ。PCではWebブラウザのほか、同期アプリ「WD Sync」、管理アプリ「WD Access」、バックアップアプリ「WD SmartWare」(Windows専用)が利用可能だ。Mac用のバックアップアプリは提供されていないが、OS搭載のバックアップ機能「Time Machine」の保存先として利用できる。

 本体は白いブックカバーを付けた辞書のような形状で、天面と底面および背面に吸排気口がある。電源はACアダプタだ。本体の大きさは約49×139.3×170.6mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1kg(6TBモデル)だ。ACアダプタは約43×80×47mm(同)で、重量は約135g(重量はいずれも実測)。

マルチユーザー対応、ユーザー単位で割り当て容量設定可能

 WD Cloudは初期設定完了後、エクスプローラーなどでLAN内からアクセスすると、ユーザー名と同じ名前のフォルダと、アクセス制限のない共有フォルダ「Public」が見える。Publicフォルダ内には音楽、画像、ビデオの保存を想定した3つのフォルダがある。

管理者ユーザーがローカルからアクセスした際に開くトップ画面。空き容量表示は円グラフ。その下にCPU、RAM、ネットワークのパフォーマンスを表示
「wdcloud.jp」で「サインイン」ボタンをクリックすると開くサインイン画面
クラウドアクセスした際開くトップ画面。初期状態で作成される「Public」フォルダを開いた状態。ドラッグ&ドロップや右クリックメニューでファイル操作できる
WD Cloudをエクスプローラーで開いたところ。ユーザーフォルダ、Publicフォルダ、TimeMachineBackupなどのフォルダが確認できる
iOS版のWD Cloudアプリでサインインしたところ。タップ操作でファイルの移動やコピーができる
管理者ユーザーでサインインして、他のユーザーの設定を確認しているところ。パスワードやアクセス権限、「割り当て」容量を変更できる
割り当て容量はMB、GB、TB単位で設定できる

 WD Cloudの利用には2種類のアカウントを使う。1つがWD Cloudに専用のフォルダを作り、ローカル(LAN内)からアクセスするためのもので、IDとパスワードの登録が必要だ。もう1つがWD Cloudにクラウド(インターネット)経由で接続して専用フォルダや共有フォルダにアクセスするためのもので、メールアドレスとパスワードの登録が必要だ。

 管理者など初期設定をするユーザーは「クラウド」と「ローカル」の両アカウントを必ず設定することになるが、2人目以降のユーザーは「クラウド」アクセスする必要が無い場合「ローカル」アカウントのみ作成すればよい。プライバシー等も気にならず、専用フォルダも不要であれば「ローカル」アカウントの作成も不要で、Publicフォルダを利用すればよい。PublicフォルダはLAN内のユーザーであればアカウント不要で自由に読み書きできる。

 「ローカル」アカウントはフォルダ単位でアクセス権限の設定が可能なほか、使用できる容量をMB/GB/TBの3種類の単位で制限できる。アクセス権限と使用容量は「グループ」化することで共通の設定を割り当てることができる。

ベンチマーク

 WD Cloudのフォルダをネットワークドライブとして割り当てて、その速度をCrystalDiskMark 5.0.2 64bit(以降「CDM」)で測定した。WD Cloudは1Gbpsの有線LANでブロードバンドルーターに繋ぎ、PC(Core i5-3210M、Windows 8.1 Pro 64bit)を1Gbps有線LANで繋いだ場合と、同じPCを867MbpsのIEEE 802.11ac無線LANでブロードバンドルーターに繋いだ場合の2種類測定した。

【表1】WD CloudのCDM(シーケンシャル)測定結果
1000Base-T 11ac(867Mbps)
READ 907.8Mbps 296.9Mbps
WRITE 967.9Mbps 469.0Mbps
1Gbps有線LAN接続時のCDM測定結果
11ac無線LAN接続時のCDM測定結果

 結果は表1のとおりで、1Gbps有線LANの場合は読み込み約908Mbps、書き込み約968Mbps、11acの場合は読み込み約297Mbps、書き込み約469Mbpsだった。有線の場合も無線の場合も高速で大抵の用途にストレスなく使えるレベルだと言える。

ドラッグ&ドロップ、右クリックメニュー対応のブラウザ版、クラウドストレージ3種と簡単に連携できるアプリ

 WD Cloudに保存したファイルは、PCやMacであればブラウザやファイル操作アプリで、AndroidやiOSであれば専用アプリでアクセスできる。ブラウザ版はドラッグ&ドロップ操作でローカルのファイルをアップロードできるほか、右クリックメニューによる操作やチェックボックスを使った複数ファイルの選択に対応しており、エクスプローラー感覚で使える。AndroidやiOSのアプリではDropboxやGoogle Drive、OneDriveの連携に対応しており、PCやMac同様クラウドストレージ間のファイル転送が簡単にできる。

Web UIでユーザーフォルダにアクセスした状態。右クリックでメニューが開くと同時にファイルが選択状態になる。右クリックメニューは画面下にもバー状に表示される
iPhone版のWD Cloudアプリ。ファイルをタップすると選択状態になり、画面上にメニューが表示される
WD CloudアプリはDropboxやGoogle Drive、OneDriveと連携可能。クラウドストレージ間のファイルのコピーや移動が簡単にできる
Windows版WD AccessとWD Syncはタスクトレイの同じアイコンから機能を呼び出せる。シャットダウンも可能
WD Syncの設定画面。デフォルトではユーザーフォルダに「WD Sync」フォルダが作成され、WD Cloud内の同名フォルダと同期される
WD Quick ViewとWD SamrtWareはタスクトレイの人の頭状のアイコンから機能を呼び出せる。マウスオーバーでWD Cloudが正常に動作しているかポップアップ表示
WD SmartWareのバックアップ設定画面。ストレージを解析してバックアップに必要な空き容量を表示してくれる

 WD Cloudへのファイルのバックアップは、フォルダ単位であればWD Syncを使えば簡単だ。初期設定では「WD Sync」フォルダを同期するよう設定されているが、Dropboxを始めとする他のクラウドストレージのものも含めて必要なフォルダを同期できる。バックアップすべきファイルが分からない、あるいはファイル数が多くて指定しきれないときはWindowsであればSmartWareを使えば自動判断でやってくれる。

 また、WD CloudはUSBケーブルで接続したスマートフォンやタブレットを含むデジタルカメラの写真や動画のバックアップができる。バックアップ先は通常Publicフォルダ内に作成される「USB Import」フォルダだが変更も可能だ。ファイルは端末名とインポート日の2階層のフォルダで管理される。

 WD Cloudに保存したファイルを他のストレージへバックアップする際は、バックアップ先として、USBストレージ、NAS、FTPサイトおよび別のWD Cloudが使える。アプリのインストールなどは不要で、管理画面のバックアップのページで、バックアップ先やバックアップ方式(コピー/同期)を設定して「ジョブの作成」をすればよい。

SSHアクセス、アプリの追加インストール

 ディスクのフォーマットや設定の初期化、ディスクのエラーチェック、メモリや温度が正常値かどうかの確認は管理画面からボタン操作で行なえる。管理画面にアクセスできない場合はリセットボタンの長押しでリセットや初期化を行なう。なお、本体に電源ボタンはないが管理画面やアプリのメニューからシャットダウンや再起動ができる。シャットダウン後はブラウザやアプリからアクセスすれば自動的に起動する。

システムテストや、ディスクチェック、ディスクのフォーマットは管理画面からボタン操作でできる
DLNAサーバーとiTunesサーバーの設定。DLNAサーバーのデータベースは好みのタイミングで更新できる
PS4のメディアプレイヤーでWD CloudのDLNAサーバーを見たところ。Logitech Media Serverもメディアサーバー機能を搭載しているので同様にリストに表示されている

 DLNAサーバーが配信の対象とするのはPublicフォルダ下の画像、動画、音声ファイルで、対応しているファイル形式は画像がBMP、JPG、PNG、TIFFの4種、動画がMPEG4、AVI、3GP、WMVなど31種、音声がMP3、AAC、OGG、WMA、FLAC、WAV、AIFなど17種だ。詳細はマニュアルで確認できる。

 SSHアクセス機能は初期設定ではオフになっている。使う場合はローカルからアクセスできる管理者用の画面で、「設定」の「ネットワーク」にある「SSH」の項目をオンにし、パスワードを設定する。IDは「sshd」(アルファベット小文字)が固定で割り当てられている。設定したパスワードはSSHの項目をオフにすると消えるので、パスワードを忘れたときはSSHの項目をいったんオフにしてから再びオンにして新たにパスワードを登録し直せばよい。

SSHに関する設定は「設定」の「SSH」の項目にある
SSHアクセス機能を使ってWD Cloudにログインしている様子
ローカル管理画面の「アプリ」にある「アプリの追加」でCMSや掲示板、ブログなどのアプリをインストールできる
WordPressインストール後の画面。インストールされたアプリはサイドバーに項目が追加される。「設定」ボタンをクリックで初期設定画面が開く
WordPressの初期設定画面。ブログのタイトルやユーザー名、パスワード、メールアドレスなどを登録する
初期設定が全て終わってダッシュボードを開いた状態。WD Cloudでインストールされるものより新しいバージョンを公開されているということで、「Update Now」ボタンでアップデートしてみた
インストールとアップデート完了後作成してみた記事。日本語も問題無く使えているようだ
Logitech Media Server。再生ボタンを押すと接続中の対応機器でストリーミング再生される

 アプリの追加インストール機能で、サポートされているのはP2Pファイル転送の「aMule」、「Transmission」、ストリーミングサーバーの「Icecast」、CMSの「Joomla」、掲示板の「phpBB」、DB管理の「phpMyAdmin」、ストリーミングサーバー(DLNAサーバー含む)兼リモートコントローラの「Logitech Media Server(インストール時のアプリ名は「SqueezeCenter」)」、ブログの「WordPress」の8種類だ。

 試しにWordPressとLogitech Media Serverをインストールしてみたところ、WordPressについては軽快な動作というわけにはいかなかったが、最新バージョンの4.2.4にアップデート可能で、ローカルに置くメモやテストサーバーとしては十分使えるレベルと言えそうだ。Logitech Media ServerについてはiPhone 5にプレイヤーソフト「Squeezcast」をインストールして使ってみたが、LAN内では不満の無いレベルのレスポンスで動作した。

まとめと感想

 WD Cloudは非常に高速で、自宅のLAN内でも出先からでも簡単に使えるNAS製品だ。ブラウザUIも専用アプリも洗練されている。スマートフォンやPCに保存しているファイルのバックアップはもちろん、普段クラウドストレージに置いて活用しているファイルのローカルバックアップ用途にも適している。

 アプリの追加機能についてだが、WordPressの動作を見る限り余力のある環境ではないが、メディアサーバー用途としては不足は感じなかった。とはいえ、拡張できる余地があるのは悪いことではない。ちなみに、インストール済みの言語はPerl、Python、PHPなど。SSHアクセス機能を使えばちょっとしたプラグラミング遊びはできる。

 価格が2TBモデルで2万円代半ばからということで安いというわけではないが、速度と容量、そして出先からのアクセス機能が必要であれば、選んで損のない製品と言えるだろう。

(井上 繁樹)