井上繁樹の最新通信機器事情
バッファロー「WXR-2533DHP」
~5GHz帯は1,733Mbps、2.4GHz帯は800Mbpsに対応、USB 3.0対応の高速NAS機能搭載
(2015/9/15 06:00)
バッファローのWXR-2533DHPは5GHz帯は1,733Mbps(11ac時)、2.4GHz帯は800Mbps(11n時)に対応した速度重視の無線LANルーターだ。USB 3.0ポートを搭載しており、USBストレージを接続することで、1Gbpsの有線LANに対応した高速なNASとしても機能する。
概要
バッファローのWXR-2533DHPは4本の大型アンテナを搭載したIEEE802.11ac対応の無線LANルーターだ。無線LAN部分の最大転送速度は2.4GHz帯が800Mbps(11n)、5GHz帯が1,733Mbps(11ac)で、有線LAN部分は1Gbpsだ(全て規格値)。また、USB 3.0ポートを2つ搭載しており、USBストレージを接続することでNASとしても機能する。
SSIDは2.4GHz帯、5GHz帯の各帯域ごとに2つずつ利用できる。また、それとは別に利用時間を制限できる来訪者向けのゲストSSIDを各帯域ごとに1つずつ設定できる。それから、接続している機器の位置に合わせて通信品質を最適化するビームフォーミングや、複数台の機器との同時通信を可能にするMU-MIMOなどの、高速化機能に対応している。
本体はカマボコ型の屋根の建物のような形状をしており、横置き、壁掛けができるほか、スタンドを装着することで縦置きもできる。本体色は黒だ。ステータスランプが銀の帯状塗装の中にあり、通常時は白く点灯するため眩しく感じることがない。本体の大きさは315.7×56.5×160.9(幅×奥行き×高さ、縦置き時)mm、重量は900g。
管理画面はWebブラウザで開けるWeb UI。PCのような大きな画面だけでなく、スマートフォンなど小さな画面でも見やすいデザインになっている。また、AndroidやiOS搭載機向けに、QRコードで無線LANの接続設定ができる「QRsetup」や、無線LAN親機を探して管理画面を開いてくれる「StationRader」など、便利な無料アプリが提供されている。
機能の詳細
WXR-2533DHPは、無線LANの接続設定と管理画面へのアクセスをサポートするアプリが提供されている。だから初心者ならずとも(特にタップ操作では)手間取りがちな暗号化キーの入力は必要ないし、管理画面のIPアドレスを「ipconfig」などのツールを使って調べる必要も無い。また、無線LANの接続設定にはAOSSやWPSも使える。
WXR-2533DHPの動作モードはルーター(ROUTER)、アクセスポイント(AP)、中継機(Wireless Bridge、WB)の3種類ある。動作モードは縦置き時左側面のスイッチで変更できる。スイッチは3モードを切り替えるもの以外に、「AUTO」か「MANUAL」か切り替えるものがあるが、こちらは中継機を無線LAN親機に接続する際や、Bフレッツなどで固定IPサービスを使う際、ルーター機能をオフにしてアクセスポイントとして使う際などにMANUAL側にして使う。
セキュリティ系の機能としては、ファイアウォール、MACアドレスによる接続制限、管理画面へのアクセス制限(回線種類別。有線LAN、無線LAN、インターネット側の3種)、Noroton ConnectSafeによるセキュリティ的に問題のあるサイトや有害サイトのフィルタリングがある。
USB 3.0ポートについてだが、接続できるのはUSB HDD、USBカードリーダ(4ドライブ以下)、セルフパワードのUSBハブのみとなっている。USB HDDは1台までで、認識できるパーティションは4つまでだ。対応しているファイルシステムはFAT12/16/32/EXT4で、WXR-2533DHPでフォーマットも可能だ。
接続したUSBストレージはデフォルトでは特に設定変更しなくてもアクセス制限の無い共有フォルダとしてLAN内からアクセスできるようになる。ユーザー単位でのアクセス制限も可能で、最大16名までのユーザーアカウントを作成して、読み書きや閲覧の制限ができる。
ベンチマーク
2台のWindows PC間を、11ac-1.3Gbps、1Gbps有線LAN、そして11ac-1.733Gbpsで繋いで速度測定を行なった。11ac-1.3Gbpsと1Gbps有線LANで繋ぐ場合は2台目のPCを1Gbps有線LANで繋ぎ、11ac-1.733Gbpsで繋ぐ場合は2台目のPCを中継(Wireless Bridge)モードにしたWXR-2533DHPに繋いだ。
測定に使ったソフトはCrystalDiskMark 5.0.2(以下「CDM」)とiperf 3.0.11(以降「iperf」)の2種類。CDMを使った測定の際は、2台目のPCに作成したRAMDISKの共有フォルダを、1台目のPCのネットワークドライブとしてマウントして使った。iperfを使った測定の際は1台目のPCではクライアントモードで使い、2台目のPCはサーバモードで使った。
なお、PCについてだが、1台目のPC(クライアント側)はOSがWindows 8.1 Pro 64bit、CPUがCore i3 3.3GHz、無線LANアダプタがASUSの「PCE-AC68」で、2台目のPC(サーバー側)はOSがWindows 10 Pro、CPUがCore i5の3GHzだった。
【表1】CDM速度測定結果(Mbps) | |||
---|---|---|---|
11ac-1.3Gbps | 1000BASE-T | 11ac-1.7Gbps | |
リード | 748.0 | 894.4 | 835.7 |
ライト | 158.1 | 893.0 | 153.9 |
CDMの結果は表1の通りで、11ac-1.3Gbpsで約748Mbps、1Gbps有線LANで約894Mbps、11ac-1.733Gbpsで約836Mbpsをマークした。11ac-1.733Gbps接続時の結果が11ac-1.3Gbps接続時よりも良かったのが印象的だ。
【表2】iperf速度測定結果(Mbps) | |||
---|---|---|---|
11ac-1.3Gbps | 1000BASE-T | 11ac-1.7Gbps | |
平均 | 265 | 907 | 248 |
11ac-1.3Gbps接続時のiperfログ
$ iperf3 -c 192.168.11.2Connecting to host 192.168.11.2, port 5201
[ 4] local 192.168.11.8 port 49611 connected to 192.168.11.2 port 5201
[ ID] Interval Transfer Bandwidth
[ 4] 0.00-1.00 sec 31.9 MBytes 267 Mbits/sec
[ 4] 1.00-2.00 sec 33.0 MBytes 277 Mbits/sec
[ 4] 2.00-3.00 sec 31.6 MBytes 265 Mbits/sec
[ 4] 3.00-4.00 sec 30.8 MBytes 258 Mbits/sec
[ 4] 4.00-5.00 sec 31.5 MBytes 264 Mbits/sec
[ 4] 5.00-6.00 sec 31.0 MBytes 260 Mbits/sec
[ 4] 6.00-7.00 sec 32.8 MBytes 275 Mbits/sec
[ 4] 7.00-8.00 sec 31.2 MBytes 262 Mbits/sec
[ 4] 8.00-9.00 sec 31.1 MBytes 261 Mbits/sec
[ 4] 9.00-10.00 sec 30.8 MBytes 258 Mbits/sec
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
[ ID] Interval Transfer Bandwidth
[ 4] 0.00-10.00 sec 316 MBytes 265 Mbits/sec sender
[ 4] 0.00-10.00 sec 316 MBytes 265 Mbits/sec receiver
iperf Done.
iperfの結果は表2の通りで、11ac-1.3Gbpsで平均約265Mbps、1Gbps有線LANで平均約907Mbps、11ac-1.733Gbpsで平均約248Mbpsをマークした。
【表3】NAS機能の速度測定結果(Mbps) | ||
---|---|---|
11ac-1.3Gbps | 1000BASE-T | |
リード | 606.5 | 988.8 |
ライト | 70.6 | 128.2 |
また、ファイル共有(NAS)機能のベンチマークもCDMを使って行なった。WXR-2533DHPにUSB 3.0メモリを接続し、それをWindows PC(上記1台目)のネットワークドライブとしてマウントして使った。結果は表3の通りで、11ac-1.3Gbpsで約607Mbps、1Gbps有線LANで約989Mbpsをマークした。
まとめと感想
無線LAN子機はPC向けのものでも866(7)Mbps対応のものが中心で、スマートフォンやタブレット端末搭載のものは速いもので433Mbps対応だ。そういった意味で1,733Mbps対応の本機は、多くの環境においてオーバースペックだと言えるだろう。
それからもう1つ印象的なのが4本の外部アンテナだ。バッファローはここ最近は内部アンテナモデルが中心だったが、規格上の転送速度が1Gbpsの有線LANを越える1.3Gbps対応のモデルから外付け外部アンテナを採用したモデルを出すようになっている。内部アンテナの方が引っ掛かる部分が無い分扱いやすい面もあるが、本体を棚に収納してアンテナだけ外に出す使い方もまた便利だと思うのだがどうだろうか。
さらにもう1つ、バッファローのフラグシップモデルながら、VPNサーバーやメディアサーバー、オンライン(クラウド)ストレージ機能が省略されているのは気になった。もっとも、ソフトやサービスのクラウド対応、安価なストリーミングサービスの登場、クラウドストレージ機能のOS組み込みなど状況は変わってきているわけで、これも当然の進化と言えるのかもしれない。