井上繁樹の最新通信機器事情
アイ・オー・データ機器「LAN DISK HDL2-H4/TM3」
~主要オンラインストレージと連携可能なビジネスNAS
(2014/9/24 06:00)
アイ・オー・データ機器の「LAN DISK HDL2-H/TM」シリーズは、ビジネス向けのNAS製品だ。3.5インチまたは2.5インチのストレージを最大2台搭載できる。対応しているフォーマットはRAID 0/1及び独自の「拡張ボリューム」で、暗号化にも対応。拡張ボリュームは冗長性を持ちながら、初期化にかかる時間をRAID 1より大幅に短縮したフォーマットとなる。
ストレージが装着済みの状態で出荷される製品で「LAN DISK HDL2-H4/TM3」の場合はWestern Digital製WD Redシリーズの2TBモデルが2台使用されている。
本製品は、Webベースの管理画面に加え、管理クラウド「NarSuS」を利用することで、インターネット経由でNASの管理が可能だ。複数台利用の際は、統合管理ツール「LAN DISK admin」や設定データの復元ツール「LAN DISK Restore」を使えば一元管理して管理負荷を軽減できる。
本体の大きさは183×222×202mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは5.5kg。筐体は金属中心で色は黒。前面下側に液晶画面があり状態表示を行なう。入出力端子類は、Gigabit Ethernet×2、USB 3.0ポート×2、USB 2.0×2、UPS用のシリアルポート×1。プリントサーバー機能を搭載しており、USBポートには外部ストレージ以外にプリンタも接続できる。
組み込み可能な機能(パッケージ)は、「Dropbox」、「Amazon S3」、「Microsoft Azure」、「Cloud n」の4種に対応したクラウドストレージ同期、「FTP」、LAN DISKシリーズ製品同士で共有フォルダの同期を行なう「レプリケーション」、「AppleShare」の4つで、必要に応じてインストールして利用できる。
「Trend Micro NAS Security」が3年分のライセンスとともに組み込まれており、悪意のあるコード類の検出と隔離ができる。ライセンスは最長5年まで1年単位で延長できる。延長ライセンス名は「HDL-H-ETM1」で価格は6,300円。
Windows、Mac用の同梱ソフトとして、LAN内のLAN DISKシリーズ製品を検出する「Magical Finder」、PCのストレージ内容をドライブ単位でバックアップする「ActiveImage Protector Desktop Edition」(Windowsのみ)、暗号化した際に使用する暗号キーを管理する「LAN DISK Key Server」などがある。
管理画面と同梱ソフト
管理画面はWebブラウザベースで、同梱ソフトの「Magical Finder」を使うか、IPアドレスを直接指定することで開ける。管理画面でできることは、システム情報やログの確認、パッケージ(機能)の追加と削除、ネットワーク設定やディスクの初期化、検査、修復、週間スケジュール指定できるバックアップとコピーなど。
追加できるパッケージは、クラウドストレージ同期、FTP、レプリケーション、AppleShareの4種類だ。このうち特に興味深いのがクラウドストレージ同期で、複数のサービスの同時利用はできないものの、「Dropbox」、「Amazon S3」、「Microsoft Azure」、「Cloud n」と4種類ものサービスの中から選べる。同期対象は、Amazon S3とCloud nは指定したバケット、Microsoft Azureは指定したコンテナ、Dropboxは指定したアカウントのルート以下全内容だ。
Windows、Mac用の同梱ソフトとして、先に紹介した「Magical Finder」以外に、指定したファイルやフォルダの更新をポップアップ通知する「Sight On」、同じく指定したファイルやフォルダをローカルストレージにバックアップする「EasySaver LE」(Windowsのみ)、2つのフォルダを同期する「Sync with」がある。
ほかには、管理画面の機能を使って作成したバックアップファイルの中身が確認できる「LAN DISK Backup Reader」、バックアップ内容を復元する「LAN DISK Restore」、ドライブを暗号化した時に使用する暗号キーを管理する「LAN DISK Key Server」がある。
また、Windowsのみの対応になるが、ネットジャパンの「ActiveImage Protector Desktop Edition」を3ライセンス分同梱している。こちらは機能の制限は無いが、サポートはインストールに関してのみになる。ドライブ単位でシステムごとバックアップできるソフトで、OSが起動しなくなるようなケースでも、再インストールの手間をかけることなく、比較的短時間に復旧できる。作成したバックアップを自動的に別フォルダに複製保存可能で、NASの共有フォルダに保存するように設定しておけば、ドライブがハードウェア的に動かなくなるようなトラブルにも対処できる。
NASの動作状況は管理クラウド「NarSuS」を使うことで、インターネット経由で外出先からも確認できるようになる。ルーターの設定変更など、特別なことをすることなく、ユーザー登録をするだけで利用できる。なお、NarSuSを使わなくても、障害発生時のメール通知はできる。
ベンチマーク
共有フォルダをネットワークドライブとしてマウントして、CrystalDiskMark3.03(以下「CDM」)で速度を測定した結果は次の表とスクリーンショットのようになった。測定はGigabit EthernetでPCとLAN DISKを繋いで行なった。LAN DISKで使用したしているストレージは、前述の通りWesternDigitalのWD20EFRX。
【表1】シーケンシャルアクセス時のCDM速度測定結果(Mbps) | |||
---|---|---|---|
フォーマット | 拡張ボリューム | RAID 0 | RAID 1 |
読み込み | 523.0 | 402.7 | 567.1 |
書き込み | 803.7 | 852.4 | 875.3 |
【表2】暗号化した場合のシーケンシャルアクセス時CDM速度測定結果(Mbps) | |||
---|---|---|---|
フォーマット | 拡張ボリューム | RAID 0 | RAID 1 |
読み込み | 229.8 | 254.4 | 209.5 |
書き込み | 288.0 | 474.7 | 423.0 |
暗号化無しの場合、最も速かったフォーマットはRAID 1で、読み込み約567Mbps、書き込み約875Mbpsだった。次点は読み込みは約523Mbpsの拡張ボリュームで、書き込みは約852MbpsのRAID 0だった。暗号化した場合は、最も速かったフォーマットはRAID 0で、読み込み約254Mbps、書き込み約475Mbpsだった。次点は読み込みは約230Mbpsの拡張ボリュームで、書き込みは約423MbpsのRAID 1だった。
まとめと感想
速度については暗号化しない場合で読み込み400~500Mbps台、書き込み800Mbps台ということで、文書ファイルや写真ファイル程度であれば不満なく使えるレベルだ。ただし、本文では触れなかったが、管理画面で操作する際、画面を切り替えたり、操作する度に数秒待たされる点については少々不満を感じた。とは言え、NASの本分はファイル共有で、管理画面を日常的に長時間使うことは無いので許容範囲だと言える。
それからもう1つ、動作音は大きめだ。生活音に紛れるような音でも無い。ビジネス用NASということで、家庭に導入することはあまり無いと思うが、静かな場所に導入する場合は、別室に置くなど設置場所を工夫する必要がある。
総評として、LAN DISK HDL2-H4/TM3は、ビジネス向けNASらしく派手な機能は無いが、ウイルス対策、クラウド連携(バックアップ)、リモート監視など、今どきの製品であれば欲しい機能をおさえているNAS製品だ。搭載できるストレージは2台だが、縦長筐体ではなく、立方体に近い安定感のある筐体デザインで頼もしい。なお、同社ではこのほかに、法人向けNASとして4ドライブや6ドライブのモデルもラインナップしている。