井上繁樹の最新通信機器事情
ASUS「RT-AC87U」
~11acで最大1,734Mbps、クラウドストレージ連携可能な無線LANルーター
(2014/10/23 06:00)
ASUSの「RT-AC87U」は国内初となる最大接続速度1,734MbpsのIEEE 802.11ac対応無線LANルーターだ。速度以外でも、セキュリティ系機能を強化され、リモートアクセス系の機能の完成度が従来モデルに比べて向上している。実売価格は25,000円前後。1台お借りすることができたので、試用レポートを届けする。
概要
RT-AC87Uは4本の外付けアンテナを搭載した11ac対応の無線LANルーターだ。2.4GHz帯と5GHz帯の無線LANが利用可能で、最大接続速度は2.4GHz帯が600Mbps、5GHz帯が1,734Mbpsとしている。対応する規格は、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n/ac、有線LANは1Gbps。
大きさは289.5×167.6×47.5mm(幅×奥行き×高さ)で、アンテナを垂直に立てた時の高さは約190mm。本体重量は747g。設置方法は横置き(平置き)のみ。接続端子はアンテナ端子×4、1Gbps対応のWANポート×1、同じく1Gbps対応のLANポート×4、USB 2.0ポート×1、USB 3.0ポート×1。USB 2.0ポートは背面側、USB 3.0ポートは前面側にある。
USBポートにはUSBメモリやUSB接続のHDDなどストレージ類を接続できるほか、USB接続のプリンタを繋いでLAN内で共有できる。接続したストレージは、LAN内でのファイル共有や、DLNAサーバーやiTunesファイルサーバーで利用可能だ。また、FTPサーバーなどリモートアクセス系の機能を使うことで、インターネット経由で出先からアクセスできる。
QoS機能が分かりやすくなり、セキュリティ機能が強化
以前紹介した3本アンテナの「RT-AC68U」を紹介したが、その頃と比較すると、接続速度ばかりでなく、管理画面トップでCPU使用率やメモリの使用率が表示できるなど、システム的にも変化が見られる。
システム面での特に大きな変化はQoS系の機能とセキュリティ系の機能の強化だ。QoS系の機能では、ネットワークの利用状況がクライアント単位で確認できる「Bandwidth Monitor」が搭載されるなど、より直感的に分かりやすくなった。セキュリティ系の機能ではトレンドマイクロ提供のものが追加され、ルーターの設定の脆弱性チェックと保護、悪意のあるサイトとの接続の遮断、感染したと思われるクライアントの隔離ができるようになった。
そのほか、以前の製品から引き継がれている機能として、3G/4Gモデム接続機能やVPNサーバー機能、無線LANの中継接続機能(WDS)がある。VPNサーバーは「PPTP」と「OpenVPN」に対応している。またVPNクライアント(PPTP、L2TP、OpenVPN)を搭載しており、VPN間の接続も可能だ。
ベンチマーク
速度の測定はルーターモードで行なった。測定には2台Windows 8.1(64bit版)を使用した。2台ともメモリ8GBでSSD搭載な点は共通で、CPUは1台がCore i5-4590S、もう1台がCore i3-2120。前者を1Gbps有線LANで、後者を無線LAN子機「PCE-AC68」経由で11ac(最大接続速度1,300Mbps)にてRT-AC87Uに繋いだ。RT-AC87Uの最大接続度は1,734Mbpsだが、現在同等以上の接続速度が出せる無線LAN子機がないため、測定結果はあくまで参考値として捉えて欲しい。
測定は2種類行なった。1つがCrystalDiskMark3.03(以下CDM)を使ったもの。前述の前者側のPCの共有フォルダを、後者側のPCでネットワークドライブとして割り当てて、その速度を測定した。もう1つがiperf(jperf 2.0.2使用)を使ったもの。同じく前述の前者側のPCでサーバーを、後者側のPCでクライアントを稼働させて、その速度を測定した。
測定環境は、2.4GHz帯のSSIDは10件以上、5GHz帯のSSIDは5件前後の鉄骨マンションの一室。使用した暗号化方式はWPA2-PSK AES、ビームフォーミングは使用していない。
SSD | RAMDISK | |
---|---|---|
リード | 567.1 | 590.7 |
ライト | 385.0 | 484.0 |
CDMの速度測定結果は表の通り、SSD使用時で最大約567Mbps、RAMDISK使用時で最大約591Mbpsだった。また、iperfによる速度測定結果は、388~451Mbps、平均420Mbpsだった。フルスペックの性能測定ではないにも関わらず、非常に良好な結果と言えるだろう。
USBストレージとリモートアクセス系機能
RT-AC87Uは接続したUSBストレージを、「共有フォルダ」や「メディアサーバー」、「FTPサーバー」、「オンラインストレージ」、「ダウンローダー」で利用できる。LAN内はもちろん、インターネット経由で出先から(LANの外から)もアクセス可能だ。リモートアクセスの際はダイナミックDNSを利用するのが便利。ASUSが無料で提供しているほか、有料のサービスについても一部無料で試して使えるものがある。
USBストレージに保存した内容をASUS WebStrageやDropboxと同期する機能「Smart Sync」もあるので、バックアップや出先でのファイル利用も簡単だ。なお、ダウンローダーについてだが、こちらはプログラム本体をUSBストレージに保存するので利用する際は必ず1つUSBストレージを固定で接続しておく必要がある。
リモートアクセスについてだが、従来同様PC以外にもAndroidやiOS端末のアプリから利用可能だ。また、「Smart Access」機能を「ON」にしておけば、RT-AC87UのUSBストレージだけでなく、LAN内の共有フォルダに出先からアクセスできる。VPNでも同様のことができるが、VPNよりももっと簡単に、ダイナミックDNSの設定とスイッチをオンするだけで利用できるのがポイントだ。
まとめと感想
以前紹介したRT-AC68Uでは、セキュリティ系機能の「AiProtection」の項目や、現在は「Adaptive QoS」となっている「トラフィックマネージャ」の項目がほかの項目と比べると物足りない印象を受けたが、RT-AC87Uでは両項目が充実したものとなった。
目玉である最大接続速度1,734Mbpsの11acは、まだ対応する無線LAN子機が登場していないこともあって、試せなかったのが残念だ。とはいえ、最大接続速度1.3GbpsのRT-AC68Uと比べると速度は向上していることは確認できた。
速度面で現在最速の部類であり、管理画面はスマートフォンやタブレット端末に似た今風で簡単なものとして完成状態にあり、面倒な事が多かったリモートアクセス系の機能も簡単になり、セキュリティ系の機能も充実した。価格は25,000円前後とRT-AC68から約6,000円増となるが、将来性を考えると納得の価格差だ。高性能と安心を求めるユーザーにお勧めできる、現時点でトップクラスの性能と完成度を持つ11ac対応無線LANルーター製品と言ってよいだろう。