井上繁樹の最新通信機器事情

アイ・オー・データ機器「WN-TR2」

〜USBスティックメモリサイズの無線LANルーター

WN-TR2
発売中

価格:3,570円

 アイ・オー・データ機器の「WN-TR2」は、USBスティックメモリサイズの無線LANルーターだ。以前同カテゴリの製品としてプラネックスコミュニケーションズの「MZK-RP150N」を紹介したが、WN-TR2の体積はその3分の2以下でさらに小さい。この小さな無線LANルーターに何ができるのか詳しくみてみたい。

概要

 WN-TR2はIEEE 802.11b/g/nに対応した無線LANルーターだ。対応している周波数帯は2.4GHzで、接続速度は最大150Mbps(倍速モード時)だ。有線LAN部分は100BASE-TX対応で、接続速度は最大100Mbpsだ。モードを切り替えることで無線LANアクセスポイントとしても使える。電源はUSB給電のみなので、使用する際にはUSBポートを搭載したPCや、USB給電対応のACアダプタ、モバイルバッテリ等を別途用意する必要がある。

WN-TR2をWANポート側から見たところ。WANポートのある面には半透明パーツが使われているが、こちらにはランプはない
WANポート反対側。小さな丸い突起がWPSボタンで、同じ面のケーブルを挟んで奥側裏にランプがあり、半透明パーツ越しに点灯する。本体ロゴがプリントされている面には出荷時のIPアドレスもプリントされている
USBコネクタ収納面。MACアドレスやSSID、暗号キーをプリントしたシールが貼られてい
USBコネクタを本体から外したところ。ケーブルの長は15mm
USB接続の無線LAN子機との比較。高速接続モデルなど大きめの無線LAN子機と同じくらいの大きさだ
プラネックス「MZK-RP150N」との比較。並べてみるとWN-TR2の小ささがよく分かる

 用途としては、有線LAN環境のみの部屋の無線LAN化や、無線LAN機能の無いブロードバンドルーターの無線LAN化などが考えられる。非常にコンパクトなのでホテルなど出先の有線LAN環境を無線LAN化する際に活躍する。1台あればPC、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などまとめてインターネットにつなげる。また、会議等でファイルをやり取りするための移動可能なLANにもなる。

 大きさは22×65×15mm(幅×奥行き×高さ)で重量は17g。消費電流は最大300mA(5V動作)。ワットチェッカーで計測してみたところ1.3〜1.5W(=100V/13〜15mA)だった。無線LANの電波の到達距離は約10mで、推奨同時接続台数は4台までとなっていることから、どちらかというと家族用というよりお1人様用の製品だと言えるかもしれない。

 同カテゴリの製品としてプラネックスコミュニケーションズのMZK-RP150Nがあり、またアイ・オー・データ機器もWN-G150TRという製品を出していた。WN-TR2はMZK-RP150Nと比較するとLANポートを搭載していなかったり、無線LANコンバーター機能がないなど、WN-G150TRの仕様を受け継いだものとなっている。WN-TR2がWN-G150TRと大きく異なる点は、体積と重量が共に半分以下になり、最大消費電流が420mAから300mAに下がって、MicroUSB「コネクタ」ではなくUSB「ケーブル」を本体に収納するデザインになったことだ。

詳細解説

 WN-TR2の使い方はいたって簡単だ。LANケーブルでインターネットや上位のLANに接続して、USB給電コネクタをノートPCやUSB対応のACアダプタに挿したら、WPSボタンを使うなり暗号キーを入力するなりして無線LANの接続設定を行なえばいい。接続設定を済ませているなら、ケーブル類を接続してあとはWN-TR2が完全に起動するのを待つだけだ。

管理画面トップ。IDやパスワードは不要で、ステータス画面が直接開く
ルーターモードとアクセスポイントモードの切り替えは管理画面で行なう
SSIDの設定画面。SSIDは2つ利用可能でデフォルト設定では2つとも有効になっている
先の画面で「SSID」ボタンを押すと2つ目のSSIDの設定画面が開く。名称から察するにゲーム機等で使用することを想定しているようだ
11nの倍速モードを使うには「無線設定」の「詳細」で設定を変更する
使用する帯域を20MHzに設定すると接続速度の上限は72Mbps
使用する帯域を「Auto 20/40MHz」に設定すると接続速度の上限は150Mbpsになる(無線LAN子機が倍速モードに対応している必要がある)
システムログ画面。ログからBusyBoxが使われているのがわかる
セキュリティログ画面。Firewallを自動設定した後NTPサーバーに接続して時刻を自動調整しているようだ

 WN-TR2にあるボタン類はWPSボタン1つだけだ。少々固めだが、押しこむとクリック感があり、確かに押していることを指先で確認できる。また、この手の小型の無線LAN機器に慣れている人は想像できたかもしれないが、WPSボタンは設定を出荷時状態に戻すリセットボタンも兼ねている。2秒押しでWPSボタンとして機能し、10秒押しでリセットボタンとして機能する。

 管理画面はIDとパスワードを設定することでログイン画面を表示させることができる。出荷時設定では「ID」と「パスワード」は空欄になっており、ログイン画面は表示されない。管理画面のアドレスは出荷時設定ではルーターモード時が192.168.0.1、アクセスポイントモード時が192.168.0.201。モードの切り替えは管理画面でできる。

 アクセスポイントモード時は割り当てられるアドレスによっては直接管理画面を開けないので、アクセスポイントモードに切り替える前に、あらかじめ必要な設定の変更を済ませておくと後で面倒が無い。また、アクセスポイントモードに切り替えた後設定を変更する際もリセットして(ルーターモードになってしまうが)設定をやり直す方が簡単だ。

 SSIDは2つまで利用可能で、出荷時設定では「AirPort」で始まるSSIDと「Game」で始まるSSIDの2つが有効になっている。「Game」側はセキュリティ設定が甘め(WEP)に設定されているので、可能であれば設定を変更するか、使わないのであればいっそ無効化しておくとよいだろう。

 接続速度は、11n対応の無線LAN機器であれば通常時72Mbps、倍速モード時は150Mbpsだ(150/300Mbpsではなくその半分の速度)。出荷時設定では倍速モードが使えないので、倍速モードを使う場合は管理画面で設定を変更する必要がある。

 制限事項は、サブネットマスクが255.255.255.0固定であることと、IPv6には対応しておらずIPv4のみの対応であること。サブネットマスクについてはむしろうっかりいじってトラブルになることの方が多いし、IPv6についてもまだまだ対応している環境の方が少ないので不便を感じることはまず無いだろう。

 パッケージには、簡略化されたセットアップマニュアルと注意事項書きが添付されているが、そのPDF版が製品情報ページからダウンロードできる(「サポート情報」からリンクをたどる)。詳細なマニュアルは「画面で見るマニュアル」としてWebで公開されている。なお、MACアドレスや暗号キーは本体に貼られたシールに印刷されており、出荷時設定(ルーターモード時)の管理画面のアドレスは本体ロゴと同じ面に印刷されている。

ベンチマーク

 WN-TR2は無線LANルーターとして、または(ルーター機能がない)無線LANアクセスポイントとして使えるので、両モードで速度の測定を行なった。またWN-TR2はLANポートがないので、同一LAN内での接続は無線LAN機器同士によるものが大半と想定されるが、アクセスポイントモードで上位に設置したLANハブ経由で有線LAN機器と無線LAN機器が接続するケースもありうるので、併せて速度の測定を行なった。

 測定方法は、ネットワークドライブとしてマウントした同一LAN内の別のPCの共有フォルダを、CrystalDiskMark 3.0.2cで測定するもの。測定元(ベンチマークソフトを走らせてる側)のPCとしてWindows 7 Home Premium(Pentium G630T、HDD)を、測定先(共有フォルダのある側)のPCとしてWindows 7 Professional(Core i3、SSD)を使用した。

 測定結果は以下の表の通り。通常の2倍の帯域を使ういわゆる倍速モードに対応していない環境の場合は「11n」の列を、倍速モードに対応している環境の場合は「11n×2」の列を参照して欲しい。なお、倍速モードを使用するには、WN-TR2の設定変更はもちろん、無線LAN子機側が倍速モードに対応している必要がある。

【表1】ルーターモード時 無線-無線接続(Mbps)
接続規格 リード ライト
11n 24.2 21.9
11n×2 35.0 30.8
WN-TR2につないだ無線LAN機器間の速度。ルーターモードで11n倍速モードを使わない場合
【表2】アクセスポイントモード時 無線-無線接続(Mbps)
接続規格 リード ライト
11n 24.8 22.4
11n×2 42.2 30.2
同じくWN-TR2につないだ無線LAN機器間の速度。こちらはアクセスポイントモードで倍速モードを使わなかった場合
【表3】アクセスポイントモード時 無線-有線接続(Mbps)
接続規格 リード ライト
11n 49.1 52.7
11n×2 89.0 91.5
WN-TR2と同じLAN内にある有線LAN機器と無線LAN機器間の速度。アクセスポイントモードで倍速モードを使用した場合

 表から分かる通り、倍速モードが使えない環境では読み込みが24Mbps前後で書き込みが22Mbps前後、倍速モードが使える環境では読み込み35Mbps前後で書き込みが30Mbps前後だった。片方のPCを有線LANで接続している場合は、倍速モードが使えない環境では読み書き共に50Mbps前後、倍速モードが使える環境では読み書き共に90Mbps前後だった。

まとめと感想

 WN-TR2はUSBメモリスティックサイズの携帯性に優れた無線LANルーター/アクセスポイントだ。ライバル機種(MZK-RP150N)と比べると、LANケーブルが同梱されなかったり、無線LANコンバーター機能が無いなど、やや足りない点もあるが、LANケーブルは入手性が高く、借りられる可能性も高いのでクリティカルな問題にはなりにくいし、外れやすい給電用のUSBケーブルは本体に直結されているので落としたりなくしたりする心配がないなどメリットもある。本文には書いてなかったが、USB端子が隣合う端子と干渉しにくいコンパクトなものであるのも見逃せないポイントだ。

 速度については、倍速モードを使えば90Mbps前後出るのだが、倍速モードを使わない場合は50Mbps前後と決して速い部類ではない。本気を出せば速いけど普段は控えめといったところ。Webブラウジングや動画視聴など一般的なインターネット利用で不満の出る数字ではないと思うが、容量大きめのファイルをアップロードしたりダウンロードする際には遅いと感じる場面もあるかもしれない。

 (あまり推奨はできないが)箱から取り出した後、特に設定をいじらなくてもケーブルをつないで「AirPort」や「Game」で始まるSSIDを探して接続設定をすればすぐに使い始められる簡単さも魅力だ。パッケージに同梱されている簡易マニュアルはPDF形式で配布されているので、なくしてしまってもなんとかなるのもありがたい。最悪本体だけ残っていれば困ることはない(保証書くらいは残しておくべきだと思うが)。

 ちょっと残念なのは、USBケーブルが短すぎてつなぐ場所によってはランプが見えにくいこと。もっとも常時ランプが明滅するのが見えるとそれはそれで邪魔になるわけで、一長一短と言える。

(井上 繁樹)