井上繁樹の最新通信機器事情

UQコミュニケーションズ「URoad-SS10」
~厚さ約12mm、カードサイズのモバイルWiMAXルーター



URoad-SS10

3月9日 発売

価格:オープンプライス(実売17,800円)



●コンパクトながらバッテリの持ちもいいモバイルWiMAXルーター

 「URoad-SS10」はIEEE 802.16e-2005に対応したモバイルWiMAXルーターだ。UQコミュニケーションズが販売するモバイルルーターとしては最も新しいモデルの1つで、非常にコンパクトで軽量なのが特徴だ。

同梱物一覧。URoad-SS10本体、ACアダプタ、ミニUSB-USB(A端子)ケーブル、マニュアル、保証書、SSIDや暗号化キーを印刷したシール×2URoad-SS10。ロゴのある面はクレジットカードより一回り大きいくらいの大きさ。ランプは奥から電源、無線LAN、WPS(写真では点灯していない)、WiMAX本体裏面。SSIDや暗号化キー、MACアドレス等が印刷されたシールが貼られている
本体正面から見て上側の側面。RESETスイッチがある本体正面から見て右側面。左からMicroUSB端子、WPSボタン、スリープボタン本体正面から見て左側と下側の側面は端子やボタン類は無い

 大きさは90×63×11.8mm(幅×奥行き×高さ)で重量は86g。同梱されているACアダプタも非常にコンパクトでケーブル長は1.85m(端子を除く)。同じく同梱されているミニUSBケーブルは39cm(端子を除く)。ボディはプラスチック製で、表面はなめらかで滑りやすい鏡面仕上げ、反対に裏面は滑りにくいマット加工になっている。

 連続使用時間は電源をオンにして通信し続けた場合で9時間。通信しない「ウェイティング」状態であれば20時間、電源オフ時よりも復帰の速い「休止」機能を使った場合で250時間となっている。実際に使ってみたところ、9時間無事に稼動し続けた(iPod touchで移動中の合間にブラウジング6時間、Google Readerを使ったフィードチェック2時間、YouTubeのプレイリスト動画を流しつつのフィードチェック1時間。その間ネットワークベンチマークを計15回使用し、メール、Windows Updateなど更新チェッカーもオンにしたまま)。ちなみに、電源オフから起動までは約1分、休止からの復帰は約10秒だった(ストップウォッチ計測)。

 無線LAN部分はIEEE 802.11/b/g/nに対応しており、SSIDは2つでそれぞれ5台、合計10台まで無線LAN対応機器を接続できる。接続は、Windows 7であればアクセスポイントリストからURoad-SS10のものを選択して、本体裏面にプリントされた暗号化キーを入力するか、URoad-SS10側面のWPSボタンを押せばよい。WiMAXの設定は契約時に行なわれているので特に何かをする必要は無い。

●「URoad-SS10」のベンチマーク結果

 測定はWindows 7 PCを無線LAN(11n)でURoad-SS10と接続して行なった。リンク速度は最高65Mbpsだった。測定場所は都内マンション。電波強度は屋内が3(やや強い)、屋外が4(強い)で、どちらもランプは緑色に点灯していた。無線LANのセキュリティ機能はいずれもWPA2-PSK(AES)を使用した。

 測定には「価格.comのブロードバンドスピードテスト(http://kakaku.com/bb/speed.asp)」を使用した。試行は5回でベスト値を採用した。測定結果は以下の表の通り。なお、WiMAXの速度は測定場所や利用者の密集度、通信経路やその他外的要因に左右されるベストエフォート型のサービスなので、数字はあくまで参考値として捉えて欲しい。測定結果を見ると屋内と屋外の結果が9Mbps台で肉薄しており、上り速度についてはどちらも1.4Mbpsで差がなかった。

【表1】ブロードバンドスピードテスト(都内)
 下り(Mbps)上り(Mbps)WiMAX電波強度
屋内9.31.43
屋外(ベランダ)9.91.44

 さらに、参考までにJR線駅ホームでも速度を測定してみた。こちらは試行3回。屋外ということで安定して速度が出ていた。面白いのは電波強度と速度があまり関係していないように見えることだ。

【表2】ブロードバンドスピードテスト(JR線駅ホーム)
 下り(Mbps)上り(Mbps)WiMAX電波強度
新宿駅6.11.03
渋谷駅11.10.94
東京駅9.31.32
秋葉原駅5.71.24
池袋駅9.50.94

 続いてLAN内の速度について。測定はWindows 7 PCにてFTPコマンドで100MBのファイルを送受信して行なった。FTPサーバー(vsFTPdを使用)は同じくURoad-SS10につないだUbuntu11.10 PC(リンク速度はWindows 7 PCと同じく最高65Mbps)。試行は3回でベスト値を採用した。

【表3】LAN内速度測定結果
 下り(Mbps)上り(Mbps)
LAN内(FTP)10.112.1

 測定結果は表の通りで、下りが10.1Mbps、上りが12.1Mbpsだった。モバイルルーターということであまり機会は無いと思うが、LANを構築してファイルの大量転送をする時には別の手段を用いた方が良いだろう。

●管理画面は電源コントロールのできるスマートフォン向けページ付き

 URoad-SS10Sのデフォルトの管理画面のアドレスは「192.168.100.254」。機能についてはルーターとしては定番のものを揃えている。もちろんDMZやポートフォワーディングも使えるので、出先でWeb系システムの実験環境も構築可能だ。ただし、LAN内の転送速度があまり速くないので、その点は注意する必要がある。

ルーター情報。ログインすると最初に開く。「ステータス更新」ボタンで最新の状態を確認できる。この画面からスマートフォン向けの画面を開くことも可能スマートフォン等携帯端末に最適化された簡易管理画面。電源オフ、休止(スリープ)がボタン操作でできる無線LAN部分はIEEE 11b/g/nに対応
最大接続数は各SSIDごとに5台まで(計10台)。なお、0台には設定できないあまり利用する機会は無いかもしれないがDMZも利用可能だポートフォワーディング(転送)機能があるので、テンポラリなWebサーバーの公開やリモートデスクトップ(サーバー)も利用可能だ
MAC/IP/ポートフィルタリング。SSIDごとの接続台数制限で事足りることも多いが念のため設定しておいた方がよいだろうシステムファイアウォール。WANからのPingや管理画面へのアクセス、VPNの利用の制限ができるソフトウェアのアップデートは「システム管理」の「バージョン情報」で行なう

 何気に便利なのがスマートフォン向けの管理画面だ。たった1ページだが、URoad-SS10の電源をオフにしたり、休止状態にしたりできるので、URoad-SS10をカバンやポケットにしまったまま取り出さずに済む。ただし、UserAgent情報を見てリダイレクトしてくれるわけではないので、「192.168.100.254」を開いた後「モバイルブラウザ用ページ」ボタンを押して自分で移動する必要がある。ちなみに、モバイルブラウザ用とはなっているがPCで見ることもできる。

 セキュリティ機能についてだが、MACアドレスやIPアドレス、ポート番号の指定によるアクセス制限が可能だ。また、WANからのPing無視したり、管理画面のへのアクセスの制限もできる(デフォルト設定ではどちらも制限している)。

●まとめと感想

 URoad-SS10は非常にコンパクトで軽量なモバイルWiMAXルーターだが、それでいてバッテリ駆動時間も長めだ。邪魔にならず、(再充電の)手間がかからない、使い勝手のよい製品だと言える。

 ただし、ちょっと注意しておきたいのが、LANの速度があまり速くないこと。無線LAN機器をWiMAX経由でインターネットに接続することが目的の製品だと割りきって使うべきだろう。今であればUSB給電で動く安価で小型な無線LANルーターも登場している。

 それからバッテリの持ちがいいと書いたが、あくまで普通に使っての話で、ハードな使い方をすれば当然稼働時間は短くなる。例えば、YouTubeのビデオを連続再生しつつGoogle Readerでフィードを休みなく流し続けるようなハードな使い方をすると、最も減りが早かったタイミング(16分で5%消費した場合)では5時間弱しか持たない計算だ。9時間全力疾走できるわけではないということは忘れないようにしておきたい。

バックナンバー

(2012年 3月 9日)

[Text by 井上 繁樹]