井上繁樹の最新通信機器事情

CloudEngines「Pogoplug Mobile」
~小型化したどこからでもアクセスできるNAS



発売中
価格:7,980円



 およそ1年前日本国内で発売されたPogoplugの後継モデルとして「Pogoplug Mobile」が発売となった。デザインを一新、小型化と軽量化を実現、バージョンアップによる速度向上、クラウドストレージの追加を引っさげて登場した本機について詳しく見てみたい。

●小さくシンプルになった本体、こなれてきた機能

 「Pogoplug」は接続したストレージをLAN内だけでなくインターネット経由でどこからでもアクセスできるようにしてくれるハードウェアだ。LAN内ではNASのように使うことができるし、出先でもLAN内と同じ感覚でファイルにアクセスできる。また、ファイルの共有・受け渡し機能があるので、メールに添付できないサイズのファイルのやり取りをする場合などにも使える。同様の製品はいくつかあるが、比較的安価なこと、セットアップが簡単なこと、Windows、Mac、LinuxなどPCに加えiPhoneやAndroidなどのスマートフォンやiPadに対応したアプリが提供されていることなどが特長だ。

同梱物一覧。Pogoplug Mobile本体、LANケーブル、取扱説明書、ACアダプタ前面。青くなったロゴの下に濃い目の緑で点灯するランプがある背面。左からejectボタン、USB 2.0ポート、1Gbps対応有線LANポート、ACアダプタ端子が並ぶ
正面から見て左の側面。SD/SDHCカードスロットがある正面から見て右の側面底面。型番やMACアドレス、IDがプリントされたシールが貼られている。シールを囲む様に配置された4本の溝は排気口
天面。ロゴの上の溝は排気口2013年3月末までにアクティベートしたユーザーはPogoplug Cloudの20GBコースを1年間無料で利用できるsshでのログイン例。名前がPogoplug Mobileになったほか、プロンプトで現在のディレクトリを表示するようになった

 「Pogoplug Mobile」は、日本国内で正式に発売されたPogoplugシリーズ製品の第2弾となる。USB 2.0ポートを4ポート搭載した先代モデルから仕様が大きく変わり、利用実態に合わせてUSB 2.0ポートは1つになり、新たにSD/SDHCカードスロットを1つ搭載した。本体容積は半分以下になり、内蔵していた電源は外付けのACアダプタになった。なお、有線LANポートについては先代モデルと同じ1Gbps対応となっている。

 大きさは109×98×37mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は180g。消費電力は最大11W。USB 2.0対応のセルフパワードの外付けHDDを接続した状態でワットモニター(サンワサプライ)にて計測したところ、アイドル状態では3.7W前後、LAN内で音楽のストリーミング再生した場合でも同じく3.7W前後だった。メインメモリは128MBでシステム用のフラッシュメモリが128MB、CPUはシングルコアのものになった。

 機能面での大きな変化は「Pogoplug Cloud」と呼ばれるクラウドストレージが利用できるようになったこと。Pogoplug自体がパーソナル「クラウド」ではあるが、容量が足りなくなった時のための追加領域として、あるいはバックアップ領域として、あって損は無いものだ。日本で発売されるタイミングで、旧モデルのユーザーでも5GBの無料プランが自動的に利用できるようになったが、2013年3月31日までに「Pogoplug Mobile」をアクティベートしたユーザーは20GBプランを1年間無料で利用できる。

●必要なものとセットアップについて

 Pogoplug Mobileに接続するUSBストレージはあらかじめフォーマットをしておく必要がある。対応しているファイルシステムは、NTFS、FAT、HFS+、EXT2/3で、Windows、Mac、Linuxを網羅している。ファイルを大量にコピーする時など、PCにUSBで直接つないで使う機会はあるはずなので、普段使っているPCが使えるファイルシステムでフォーマットしておくとよいだろう。

「activate」ページでは同時にセットアップ手順も解説。画像がPogoplug Mobileが入ったものになった取得済みのアカウントがある場合は、同じアカウントにハードウェアを紐づけできる

 USBストレージ以外ではインターネットに繋がったLANが必要。また、セットアップの際は同じLANに繋がったPCが必要だ。LAN内だけで使う場合でもインターネット接続が必要になる。セットアップ手順はマニュアルにもあるが、「アクティベート」ページでも解説している。ケーブルのつなぎ方がわかるのであれば、マニュアルを見ずともセットアップはできてしまうだろう。

 なお、既に同じLAN内にPogoplugがある場合でも、2台目、3台目のPogoplugを使うことができる。ソフト版のPogoplugがインストールされたPCがあっても大丈夫だ。ただし、セットアップの際は混同することが無いように1台ずつ作業する必要がある。追加のPogoplugは取得済みのアカウントにひもづけることも、別のアカウントに紐づけることも可能だ。

●レスポンスが良くなり完成度が上がってきたWeb UI

 先代モデルが発売されてから特に大きく変わったのがWeb UIだ。レスポンスが向上し、ローカルでエクスプローラーを操作している感覚で操作できるようになったほか、メニューが洗練され使いやすくなった。レスポンスの向上はシステムのバージョンアップによるものなので、Pogoplug Mobile以外のハードウェアでも同様に良くなっている。

「my.pogoplug.com」の「ファイル」タブ。ログイン直後はこの画面が開く。右ペインのドライブリストの一番上にある白いヒゲを生やしたのが新たに追加されたPogoplug Cloud。他のドライブと同じ感覚で使えるSDカードを追加でスロットにセットすると、新たなドライブとして表示される。デジカメ画像の取り出しにも利用できる1Gbps有線LAN環境でのCrystalDiskMarkの結果。アップロードが123.8Mbps、ダウンロードが97.1Mbpsだった
「音楽」タブ。アカウントにひもづけられた全ての音楽ファイルを表示する。「アルバム」表示が特に軽快でおすすめだ音楽プレイヤーにはテンポラリなプレイリスト機能がある。再生キューへの追加は曲の再生中でもできる左ペインのアルバムジャケットをクリックすると再生キューが表示される。曲名クリックでその曲を再生、「×」ボタンでキューから削除
「写真」タブ。アカウントに紐づけられたすべての画像のサムネイルを表示する。どこかのフォルダに紛れ込んでしまった写真を探す時に便利サムネイルをクリックして写真を表示したところ。ここでは下段のサムネイルリストに同じ月に撮影された写真のものが並ぶフルスクリーン表示中はオリジナルサイズのファイルを表示できる。通常は画質をやや落とし気味のプレビューが表示されている
スライドショー機能では、画像を順番に表示しつつ、同時に曲を流すこともできる。フルスクリーン表示にも対応「動画」タブ。アカウントにひもづけられたすべての動画のサムネイルを表示。タイムライン表示と一欄表示ができる動画の再生中画面。再生できる動画は環境により異なる。時間はかかるし、画質も落ちるがトランスコードをしておけば環境を選ばず再生できる

 転送速度は1Gbpsの有線LAN環境ではアップロードが182.2Mbps、ダウンロードが90.3Mbpsだった(測定はエクスプローラーにて1GBのファイルを使用、ストップウォッチ計測)。出先での転送速度はWirelessgateで試したところ、アップロードが0.7Mbps、ダウンロードが9.0Mbpsだった(測定はWeb UIにて25MBのファイルを使用、ストップウォッチ計測)。出先での速度はLAN内と比較すると心許ないが、キャッシュを使うようになったこともあってか、フォルダの表示や写真、動画のサムネイルの表示のレスポンスはローカル並だった。

 機能面で特に便利になったのが音楽プレイヤーで、タブを閉じてもログアウトしてもボリュームの位置を覚えてくれるようになったほか、テンポラリなプレイリストを作成できるようになった。使い方にもよるがPCにインストールするアプリケーションと遜色ないレベルになりつつある。

 写真の表示と動画の再生については機能面での変化は無いが、レスポンスの向上とメニューの改善のおかげで、以前より使いやすくなった。ちょっと便利になったのがスライドショー機能で、再生中にかける音楽をメニューから選べるようになった。音楽の再生とスライドショーの同時再生は以前からできていたことなので、新機能というほどでもないが使いやすくなったことは確かだ。

●フォルダ単位での共有とファイル単位での共有

 ファイルの共有・受け渡し機能は先代モデルの登場当時と比べると機能が整理されて使いやすくなった。単にファイルを共有する場合はユーザー認証の無いリンクを渡すスタイルになり、フォルダを共有する場合のみユーザー認証が使われるようになった。リンクは流行(?)の短縮リンクでメールやそのメッセージング系ツールとの親和性も高い。

「コラボレーション」はpogoplugのアカウントを持つユーザーとフォルダを共有する機能。ユーザー認証がある分安心感があるコラボレートに招待されたユーザーは共有フォルダへのリンクが入ったメールを受け取る。複数のユーザーとの共有も可能
リンクをクリックするとアカウントが無い場合はログイン画面が開く。その場でパスワードを入力すれば登録とログインを同時にできる共有されているフォルダは「コラボレートフォルダ」で確認できる。共有されているファイルは削除できないので、提供する側も安心だ

 フォルダを共有する場合に、招待したユーザーに割り当てられる権限は「ユーザー」と「エディタ」の2種類。前者は閲覧とダウンロードのみ、後者はさらにファイルの変更と削除も許可する。なお、フォルダを共有する際、必ず相手のメールアドレスが必要になる。

フォルダの共有の停止は「共有」タブの「その他の操作」メニューでできるファイルを共有する場合は「印刷」ボタンの右のFacebookやTwitterのアイコンが並んだボタンをクリックして短縮URLを作成する。ユーザー認証が無いので拡散したくない場合は扱いは慎重にメールで共有する場合はPogoplugから短縮URLの入ったメールが送信される
リンクをクリックするとファイルが表示される。画像であれば画面の様にプレビューも表示される共有ファイルのリンクは「共有タブ」の「有効なリンク」に表示。使わなくなったら共有を停止しておくとよいだろう

 ファイル単位での共有は特に簡単になった。目当てのファイルを表示してFacebookやtwitterなどのアイコンが並んだボタンを押して短縮リンクを取得するだけでよい。短縮リンクはSNSやメールを通じてPogoplug経由で渡すこともできるし、コピーして他のソフトやサービスに持っていくこともできる。

●同期機能が付いたローカルアプリとモバイルアプリほか

 Pogoplug Mobileの発売より少し前のバージョンアップで追加されたのがWindows、Mac用のアプリ「Pogoplug Uploader」だ。大雑把に言うとWeb UIをドラッグ&ドロップ対応にして、あらかじめ登録したフォルダのファイルをPogoplug側に自動的にアップロードする「同期」機能を追加したもので、サムネイル表示も大きくなっている。従来から提供されてきた、Pogoplugのドライブをローカルのドライブとしてマウントする「Pogoplug Drive」の機能もこのアプリに統合されている。

Pogoplugにつないだドライブをローカルドライブにマウントするための設定は「Pogoplu Uploader」の環境設定画面にあるPogoplugのドライブをローカルのドライブとしてマウントした状態。コラボレート(共有)フォルダやPogoplug Cloudもフォルダとして見えるPogoplug Uploader。PC側からPogoplug側へ自動でファイルをアップロードする「同期」機能がこのアプリならではの機能。同期機能はエクスプローラーの右クリックメニューの「送る」にも組み込まれる
「ジュークボックス」はWeb版の「音楽」タブ相当の機能だが、サムネイルが大きく圧縮率の低いものになっているWeb版の「写真」タブに相当する「ギャラリー」。Web版でも充分早いが、さらにレスポンスが良い
「ギャラリー」で写真を表示した状態。画質はWeb版と変わらない。スライドショー機能も使える「同期」機能。PC側からPogoplug側へファイルを自動アップロード(バックアップ)するフォルダをここで登録する

 同期機能はスマートフォン向けアプリにも搭載されるようになった。ただし、こちらの同期機能はカメラロールに保存される写真や動画が対象だ。アップロード先は選択したドライブの「Photos」と「Videos」フォルダ(どちらも頭文字のみ大文字。自動的に作成)で、各ファイルは年及び月ごとに作成されるフォルダに保存される。ちなみに、現時点のAndroid版はお気に入り機能が無い。その代わりと言ってはなんだがデザインは一足早く新しいものになった。メディアサーバー機能はアイコンも含めて変更点は無い。

Androidアプリのトップ画面。つい先日のバージョンアップで青を基調としたデザインになったAndroidアプリの「自動アップロード」設定。写真や動画をPogoplug側に自動でアップロード(バックアップ)してくれるiOS版アプリのトップページ。
AndroidやiOS用のアプリは再生する動画の画質を選択できるPlaystation3でPogoplugのメディアサーバーのアイコンを表示しているところ。今後アイコンの色は変わるのだろうか?

●まとめと感想

 Pogoplug MobileはCPUのコア数やメモリ容量などスペックダウンしている部分もあるのだが実際使ってみると、先代モデルのPOGO-P25と比較して性能が落ちたようには感じられなかった。使い方によって印象は変わってくると思うが、モバイル用途を想定して使われていない機能をうまく省いたという印象だ。メニューが洗練され、レスポンスの高速化を実現するなど、ソフト面での進化もあり、歴代モデルの中でも最も使いやすい状態で発売されたモデルと言えそうだ。

 ちなみに、米国では昨年(2011年)12月に「Pogoplug Mobile series4」と呼ばれる後継モデルが既に発売を開始している。本体の形状はPogoplug Mobileそのままで、背面のUSBポートが2つに増えてUSB3.0対応になり、天面にSATA接続の2.5インチ型ベアドライブを直に挿せるコネクタとUSB 2.0ポートを搭載した機能強化版だ。よりパワフルなモデルが欲しいならこちらを狙うのもありだろう。

 それから時事ネタにからめたちょっとしたTIPSを1つ。リンクを販売拠点にできる決済代行サービス「gumroad」が現在話題だが、デジタルコンテンツのホスト先としてPogoplugのファイル共有機能が利用可能だ(販売と購入ができることを確認した)。本格的に使うとなると転送量制限などの問題もあるのでまだ試せる程度の話でしかないが参考までに。

【お詫びと訂正】わかりにくかった表現を修正しました。

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(2012年 2月 20日)

[Text by 井上 繁樹]