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ビジネスモバイルの頂点を目指して誕生した新生VAIO Z

「VAIO Z」

 VAIO株式会社は2016年1月27日、VAIOシリーズの新製品「VAIO S13」、「VAIO S15」、「VAIO Z」の3モデルを発表した。古くからのVAIOファンにとって、やはり気になるのは、VAIOシリーズの中でもハイエンドモデルとして位置付けられる「VAIO Z」であろう。そのVAIO Zを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、試用した製品は試作機であり、量産品とは細部や性能が異なる可能性がある。

新たにクラムシェルモデルが追加

 VAIO Zといえば、ソニー時代から、VAIOシリーズの頂点として君臨してきたモデルだ。「Z」はアルファベットの最後の文字であり、究極のVAIOを意味する。旧VAIO Zは、2015年2月16日にVAIO株式会社から発表されたが、薄型ノートPCで初めてTDP 28Wの第5世代Coreプロセッサを搭載するなど、随所にこだわった製品であった。旧VAIO Zは、VAIO Fitと似たラバーヒンジによる液晶回転機構(フリップ機構)を備え、デジタイザペンに対応したいわゆる2in1 PCであったが、今回発表された新VAIO Zでは、従来と同様のフリップモデルに加え、新たに液晶が回転しない、シンプルなクラムシェルモデルが追加されたことが特徴だ。

 VAIO Zのフリップ機構は、便利な人には非常に便利だが、純粋なノートPCとして使うことが多い人には不要である。フリップモデルとクラムシェルモデルの2モデルを用意することで、2in1としてデジタイザペンも使いたいユーザーとストイックにノートPCとして使えればいいユーザーの両方のニーズに応えることができる。基本設計は両モデル共通だが、クラムシェルモデルの方がより軽く、Windows 7搭載やフルHD液晶を選べるなど、スペックの選択肢が広い。そこでここでは、新たに追加されたクラムシェルモデルを中心に紹介する。

 VAIO Zクラムシェルモデルの本体サイズは、約324.2×215.3×15~16.8mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.17kgであり、VAIO Zフリップモデルの本体サイズは、約324.2×215.3×15~16.8mm(同)で、重量は約1.35kgとなっており、重さは約170g、クラムシェルモデルの方が軽いが、サイズ自体は同じだ。重量の差は15%ほどだが、持ち比べてみると、やはりクラムシェルモデルの方が軽く感じる。

左がクラムシェルモデル。右がフリップモデル。フットプリントは変わらない
VAIO Zクラムシェルモデルの上面
VAIO Zクラムシェルモデルの底面。
VAIO Zクラムシェルモデルの試用機の重量は実測で1,157gであった
VAIO Zフリップモデルの試用機の重量は実測で1,344gであった
VAIO Zフリップモデルの変形の様子。Windows 10も自動的にモードが切り替わる

TDP 28Wの第6世代CoreプロセッサとNVMe対応超高速SSDを搭載

 新VAIO Zは、PCとしての基本性能もより進化した。開発コードネームSkylakeで知られる最新の第6世代Coreプロセッサを搭載。薄型ノートPCでは、TDP 15WのCPUを採用しているのが一般的だが、VAIO Zでは性能におだわってTDP 28Wの高性能CPUを搭載。店頭モデル、カスタマイズモデルともに、Core i5-6267UまたはCore i7-6567Uから選択できる。

 メモリ容量は、店頭モデルが4GBまたは8GBとなっているが、CPUとの組み合わせが決まっており、Core i5を選ぶとメモリは4GB固定、Core i7を選ぶとメモリは8GB固定となる。ただし、カスタマイズモデルでは、CPUに関わらず、16GB/8GB/4GBを選択できる(4GBはクラムシェルモデルのみ)。今回の試用機では、CPUとしてCore i7-6567U(3.3GHz)が、メモリは最大の16GBが実装されていた(クラムシェルモデル、フリップモデルとも)。

 Core i7-6567Uは、デュアルコアCPUだが、Hyper-Threadingテクノロジにより、最大4スレッドの同時実行が可能で、TurboBoostテクノロジにより、動作周波数は最大3.6GHzまで向上する。また、内蔵グラフィックス機能も、Intel Iris Graphics 550と呼ばれる上位版となっており、高い描画性能を誇る。

 ストレージにもこだわっており、NVMe対応の超高速SSDを搭載する。インターフェイスはPCI Express 3.0であり、旧VAIOのPCI Express 2.0対応SSDよりもさらに高い性能を誇る。また、NVMeに対応したことで、特にランダムアクセス性能が大きく向上しており、ベンチマークスコアが2倍以上になったという。容量は、店頭モデルのCore i5搭載機が128GB、Core i7搭載機が256GBで、カスタマイズモデルでは、CPUを問わず128GB/256GB/512GBとなる。なお、今後1TBの選択も可能になるようだ。

 また、カスタマイズモデルのクラムシェルでは、OSとしてWindows 7の搭載も可能になる予定だが(2016年4月予定)、Windows 7選択時は、NVMeは非対応となるので注意が必要だ。今回の試用機では、512GBのSSDが搭載されていた。

2,560×1,440ドットの低反射コート液晶を搭載

 液晶は13.3型で、解像度は2,560×1,440ドットのWQHDとなる。クラムシェルモデルの液晶表面には低反射コートが施されており、外光の映り込みが抑えられているため見やすい。なお、店頭モデルのクラムシェルのCore i5搭載機は解像度が1,920×1,080ドットのフルHDとなり、カスタマイズモデルでもクラムシェルでは、フルHD液晶を選択できる。液晶は発色、コントラストとも優秀で、表示色域も広い。

 また、液晶上部には約92万画素のWebカメラが搭載されているほか、フリップモデルでは約799万画素の背面カメラも搭載されている。なお、フリップモデルでは、タッチパネルが搭載されているが、クラムシェルモデルではタッチパネルは非搭載になる。さらに、フリップモデルの液晶は表面が光沢タイプになっており、やや映り込みが気になることがある。

VAIO Zの液晶は13.3型WQHD(2,560×1,440ドット)で、低反射コーティングが施されているため、外光の映り込みが抑えられており見やすい
液晶上部には、約92万画素のWebカメラが搭載されている

キートップが新塗装になり耐摩耗性が向上、タッチパッドもより進化

 旧VAIO Zは、打鍵感や静音性にこだわったキーボードの評価が高かったが、新VAIO Zでも、基本的に同じキーボードが採用されている。キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.2mmであり、ぐらつきが非常に少なく快適だ。キー配列も標準的であり、戸惑うことがない。また、キートップの塗装に、新開発のフッ素含有UV硬化塗装が採用されており、耐摩耗性が向上。キートップのテカリを防ぐことができる。キーボードバックライトも搭載されているので、飛行機の機内など暗い場所でもミスタイプを防げる。

 ポインティングデバイスとしては、新開発の高精度タッチパッドが採用されている。このタッチパッドは、優れたクリック感を生むとして従来から好評であったマイカ採用はそのままに、よりスムーズなチェスチャー操作を実現したもので、さらに、手の平による誤動作を防ぐパームリジェクション機能が大幅に強化されており、誤操作が格段に減少した。

 なお、フリップモデルでは、変形ロックを解除するためのリリースラッチが用意されているほか、Windowsキーも液晶下部に用意されているが、クラムシェルモデルではリリースラッチやWindowsキーは用意されていない。

キーボードの配列は標準的であり、キーピッチは約195mm、キーストロークは約1.2mmと十分である
ポインティングデバイスとしては高精度タッチパッドが採用されている。手の平による誤動作を防ぐパームリジェクション機能が強化されており、快適に操作できる
フリップモデルでは、変形ロックを解除するためのリリースラッチが用意されているほか、Windowsキーも液晶下部に用意されている
クラムシェルモデルでは、リリースラッチはなく、液晶下側のWindowsキーも省略されている

インターフェイスはやや保守的なのが残念

 インターフェイスは、旧VAIO Zと変わらず、USB 3.0×2とHDMI出力、マイク/ヘッドフォンとなっている。先日発表されたVAIO S11がUSB Type-C/Thundebolt 3兼用ポートを備えているのに比べると、やや保守的ともいえる。薄型化を重視したためか、有線LANポートも搭載していない。カードスロットとしてはSDメモリーカードスロットを搭載する。

 無線機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.1をサポートしている。

VAIO Zの右側面。USB 3.0×2が用意されている
右側面のポート部分のアップ
VAIO Zの左側面。HDMI出力とマイク/ヘッドフォン、SDカードスロットが用意されている
左側面のポート部分のアップ
上がVAIO Zフリップモデルの後面、下がVAIO Zクラムシェルモデルの後面。フリップモデルにはボリュームボタンが用意されている
上がVAIO Zフリップモデルの右側面、下がVAIO Zクラムシェルモデルの右側面。ポートの配置も同じだ
上がVAIO Zフリップモデルの左側面、下がVAIO Zクラムシェルモデルの左側面。ポートの配置も同じだ

バッテリ駆動時間もさらに長く

 VAIO Zは、究極のビジネスモバイルを目指した製品であり、バッテリ駆動時間も当然こだわっている。旧VAIO Zでも、VAIOシリーズで最長となる公称約15.5時間駆動を実現していたが、新VAIO Zでは、C10ステート対応を初めとする省電力技術の進化により、クラムシェルモデルでは最大約20.9~27時間、フリップモデルでも最大約19.4~19.7時間に向上している。

 実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、クラムシェルモデルでは11時間28分、フリップタイプでは10時間55分という結果になった。同条件で計測したVAIO S11の結果が9時間16分なので、VAIO Zのバッテリ駆動時間がいかに長いかがよく分かるだろう。無線LAN常時オンでこれだけ持てば、朝から晩まで飛び回る忙しい営業の方でも、ACアダプタを持ち歩く必要はない。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は良好だ。また、USB給電用のUSBポートを備えていることも嬉しい。

 フリップモデルにはデジタイザペンも付属する。ペン自体は旧VAIO Zと変わらないが、Windows 10モデルで追加されたペングリップも付属する。ペングリップをデジタイザペンに装着することで、ペンが太くなり、より持ちやすくなる。

VAIO ZのACアダプタ
VAIO ZのACアダプタの底面
ACアダプタにはUSB給電用のUSBポートも用意されている
ACアダプタの重量は実測で212gであった
フリップモデルに付属するデジタイザペン
デジタイザペンにはボタンが2つ用意されている
デジタイザペンに装着するペングリップも付属する
ペングリップをデジタイザペンに装着したところ

NVMe対応超高速SSDの性能は驚異的

 参考のためにVAIO ZクラムシェルモデルとVAIO Zフリップモデルのベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「3DMark」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」である。比較用として、VAIO「VAIO S11」、パナソニック「レッツノートSZ5」、VAIO「VAIO Pro 13 | mk2」、レノボ・ジャパンの「第3世代ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。

 結果は下の表に示した通りで、すべてのベンチマークで、ほかの4機種を上回るスコアを実現している。特に、グラフィックス周りの性能とCrystalDiskMarkの結果は非常に素晴らしい。ドラゴンクエストXベンチマークは、1,920×1,080ドットでも快適にプレイできるスコアであり、3DMarkのスコアも第6世代Coreプロセッサを搭載したレッツノートSZ5やVAIO S11のスコアを大きく上回っている。

 また、CrystalDiskMarkのシーケンシャルリードは1,658MB/secという今までノートPCでは見たことがないような値を記録している。VAIO S11もPCI Express接続の高速SSDを搭載しているが、NVMeには非対応である。そのため、NVMeの効果が大きく発揮される4K QD32ランダムリードの結果は、646.6MB/secとVAIO S11の約2倍の速度を記録している。このクラスの薄型モバイルノートPCとしては、他に並ぶモノがない性能といえる。

【表1】VAIO Zの比較ベンチマーク結果その1
VAIO Z(クラムシェルモデル)VAIO Z(フリップモデル)VAIO S11
CPUCore i7-6567U(3.3GHz)Core i7-6567U(3.3GHz)Core i7-6500U(2.5GHz)
GPUIntel Iris Graphics 550Intel Iris Graphics 550Intel HD Graphics 520
PCMark 8
Home conventional300230012779
Home accelerated360236023284
Creative conventional301530662725
Creative accelerated448345673655
Work conventional300230063046
Work accelerated424642684270
3DMark
Fire Strike Ultra336332227
Fire Strike Extreme682653416
Fire Strike15231503905
Sky Diver626861743847
Cloud Gate854783196419
Ice Storm Extreme622585800343883
Ice Storm818738076457220
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1,280×720ドット 最高品質10233104417083
1,280×720ドット 標準品質10875107638000
1,280×720ドット 低品質11693118439309
1,920×1,080ドット 最高品質750573783967
1,920×1,080ドット 標準品質874787025094
1,920×1,080ドット 低品質10188100866129
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード1658MB/sec1618MB/sec1515MB/sec
シーケンシャルライト1587MB/sec1571MB/sec1237MB/sec
512Kランダムリード1188MB/sec1142MB/sec1107MB/sec
512Kランダムライト1521MB/sec1522MB/sec1206MB/sec
4Kランダムリード52.35MB/sec52.25MB/sec43.57MB/sec
4Kランダムライト147.7MB/sec149.1MB/sec108.6MB/sec
4K QD32ランダムリード646.6MB/sec653.4MB/sec320.0MB/sec
4K QD32ランダムライト391.5MB/sec421.0MB/sec301.2MB/sec
【表2】VAIO Zの比較ベンチマーク結果その2
レッツノートSZ5VAIO Pro 13 | mk2第3世代ThinkPad X1 Carbon
CPUCore i5-6200U(2.3GHz)Core i7-5500U(2.4GHz)Core i7-5600U(2.6GHz)
GPUIntel HD Graphics 520Intel HD Graphics 5500Intel HD Graphics 5500
PCMark 8
Home conventional236026742446
Home accelerated277532172949
Creative conventional240825902575
Creative accelerated347338523757
Work conventional278330762842
Work accelerated393542773851
3DMark
Fire Strike Ultra計測不可169164
Fire Strike Extreme312318320
Fire Strike649701721
Sky Diver306126792605
Cloud Gate490351175235
Ice Storm Extreme300853675034609
Ice Storm409435151148912
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1,280×720ドット 最高品質4045未計測未計測
1,280×720ドット 標準品質4895未計測未計測
1,280×720ドット 低品質5514未計測未計測
1,920×1,080ドット 最高品質2180未計測未計測
1,920×1,080ドット 標準品質2842未計測未計測
1,920×1,080ドット 低品質3212未計測未計測
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード475.0MB/sec522.1MB/sec1328MB/sec
シーケンシャルライト157.8MB/sec122.3MB/sec1257MB/sec
512Kランダムリード396.2MB/sec445.4MB/sec977.1MB/sec
512Kランダムライト157.8MB/sec122.1MB/sec1235MB/sec
4Kランダムリード30.50MB/sec34.53MB/sec44.33MB/sec
4Kランダムライト88.76MB/sec93.25MB/sec105.6MB/sec
4K QD32ランダムリード389.0MB/sec358.9MB/sec347.9MB/sec
4K QD32ランダムライト155.9MB/sec122.0MB/sec234.5MB/sec

2in1よりクラムシェルが欲しかった人には特にお勧め

 新VAIO Zは、これまでのVAIO Zユーザーの声に真摯に耳を傾けることで誕生した製品である。コンシューマ向け製品では、2in1のニーズが根強いが、ビジネスモバイルとして考えると、2in1を必要とする層と、必要としない層がはっきりと分かれる。新VAIO Zは、クラムシェルモデルとフリップモデルの両方をラインナップすることで、そのどちらの層も満足させられる製品へと進化している。ハイエンドモデルだけあり、価格はさすがに高めなのだが、その製品に込められた技術の高さは、ユーザー全てが納得できるものであろう。歴代のVAIO Zを使ってきたが、タッチパネルやペンは不要だという人には、まさに待望の製品であろう。

 なお、店頭モデルやカスタマイズモデルの基本的な筐体色はブラックとシルバーだが、カスタマイズモデルでCore i7と16GBメモリを選択した場合のみ、特別オプションとしてダブルアルマイト仕様を選択できる。こちらは、天板にダイヤモンドカット処理されたVAIOロゴが、VAIOのコーポレートカラーである勝色(青紫に近い色)に輝くというものだ。さらに、限定モデルとして、キートップから一切の刻印を取り除いた無刻印キーボードモデルも用意される。また、初回購入特典として、VAIO Zで実際に使われた回路パターンの一部をドッグタグ仕様のアクセサリーチャームにしたものがプレゼントされる。VAIO Zオーナーならではの特典であり、つい見せびらかせたくなるアイテムだ。

(石井 英男)