Hothotレビュー

ASUS「ASUS Pad TF701T」

~2,560×1,600ドット10.1型IGZO搭載着脱式タブレット

ASUS「ASUS Pad TF701T」
10月中旬 発売

価格:オープンプライス

 ASUSが10月中旬の発売を予定する「ASUS Pad TF701T」は、着脱型キーボードがセットになったAndroidタブレット「TF」シリーズの最新モデル。通常は10.1型タブレットとして利用でき、キーボードを装着することでクラムシェルノートPCのように扱うことができる。また、キーボードはバッテリを内蔵しているため、装着時にはタブレットの駆動時間を伸ばすことも可能だ。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は69,800円前後。

WQXGAのIGZO液晶採用で高解像度と長時間駆動を実現

 同じく着脱型キーボードに対応した前モデル「ASUS Pad TF700T」と比べて最大の特徴は液晶パネル。前モデルも1,920×1,200ドット(WUXGA)とフルHD超の高解像度ディスプレイを搭載していたが、TF701Tは2,560×1,600ドット(WQXGA)というさらに解像度の高い液晶を搭載。WQXGAディスプレイはAndroid端末では、Googleの「Nexus 10」、東芝の「REGZA Tablet AT703」など一部の製品で採用されている程度で、10.1型タブレットとしてはトップクラスの解像度になる。

 解像度だけでなく駆動方式もSuper IPS+から、低消費電力を謳うシャープ製のIGZOを新たに採用。ASUSによればIGZOの採用によってバッテリ駆動時間が伸びており、タブレット単体で約13時間、バッテリ内蔵のキーボード装着時で17時間という長時間駆動を実現したという。さらにMicro HDMIから映像を出力することで、最大で4K(3,840×2,160ドット)表示も可能など、ディスプレイ周りのスペックが非常に充実したモデルだ。

 CPUは最大1.9GHz駆動でクアッドコアのNVIDIA Tegra 4、メモリは2GB、ストレージ32GBで、OSはAndroid 4.2.2を搭載。ワイヤレス周りではGPS、Bluetooth 3.0、IEEE 802.11a/b/g/n無線LANをサポートする。Androidが最新の4.3ではなく、Bluetoothも低消費電力の4.0(BLE)に非対応、無線LANは超高速のIEEE 802.11acに対応しないなど、全てにおいて最高クラスのスペックではないものの、実際のスペックでは十分に性能の高いバランスの取れたスペックだろう。

前モデルからわずかながら薄型軽量化。カメラはスペックダウン

 本体サイズと重量は、タブレットが263×180.8×8.9mm(幅×奥行き×高さ)/約585g、キーボード装着時が263×180.8×15.9mm(同)/約1.1kg。前モデルのTF700Tのサイズと比較すると、横幅と縦幅は同じながら4mmの薄型化が図られた。また、着脱型キーボード時は前モデルから3.5mmの薄型化を実現。本体重量は前モデルの約598gから4gとわずかながら軽量化されたが、キーボード装着時は前モデル同等の約1.1kgとなる。

本体前面
本体背面
本体上部に電源ボタン

 本体デザインも若干の変更が加えられており、電源ボタンは前モデル同様本体上部に搭載されているが、音量ボタンが本体左側面へと移動した。多くのタブレットは電源ボタンと音量ボタンが同じ位置にあるため最初は戸惑うが、慣れてしまえば問題は無いだろう。

 その他のインターフェイスは前モデルと共通で、本体左側面にmicroSDカードスロット、Micro HDMIポート、イヤフォンジャック、本体右側面に内蔵マイク、本体底面にケーブル接続端子を備える。

右側面に内蔵マイク
左側面にmicroSDカードスロット、Micro HDMIポート
本体底面
Nexus 7(2013)と薄さ比較

 本体背面には500万画素カメラ、前面には120万画素カメラを搭載。背面カメラの画素数は前モデルの800万画素から下がっているだけでなく、F値も2.2から2.4へとスペックダウンしている。

 充電端子は専用インターフェイスのため、汎用のUSBケーブルでは接続できない点もシリーズ共通だが、電源アダプタがTransformer初代モデルであるTF101からTF700Tまで用いられていたものから変更になった。外観は似ているがアダプタ部分が小型化されたほか、本体装着部分のコネクタもサイズが変更となっており、今までのシリーズで使っていたアダプタは利用できない。また、アダプタのコンセント装着部分が折りたたみではなくなっている。

付属の電源アダプタ。USBケーブルは着脱式
奥の従来モデル用電源アダプタと比べて小型化されたがコンセント装着部分が折りたたみはなくなった
接続端子も小型化(手前がTF701T用端子)

 価格はオープンプライスで、店頭予想価格は69,800円前後。TF700Tのキーボード付属モデルは発売当初74,800円だったため比較すると5,000円安いが、TF700Tのキーボード付属モデルはストレージ容量が64GBだったのに対してTF701Tは32GBと半分の容量になっているほか、前述の通りカメラスペックも前モデルからスペックダウンしている。

ホーム画面はASUS独自のカスタマイズで利便性を向上

 本体ホーム画面は5画面構成で、画面下部のドックにはアプリケーション一覧を中心に左右4つ、合計8つのアプリを設定できる。画面上部の通知パネルはASUS独自のカスタマイズが行なわれており、通知パネル一番上は時間に加えてAndroid 4.2で搭載されたユーザー機能のログイン状態を表示。その下に無線LANやBluetooth、GPSのオン/オフなどを切り替えられるASUSクイック設定、画面輝度の設定、無線LANとオーディオ設定、ワイヤレスディスプレイ設定に続き、アプリの各種通知が表示されるようになっている。

ホーム画面
独自にカスタマイズされた通知パネル

 ASUSクイック設定は全部で10の設定が用意されており、横にスクロールすることで全ての設定を表示できる。これらは設定アプリの「ASUSカスタマイズ設定」から表示/非表示の切り替えが可能だ。このほかASUSカスタマイズ設定ではマルチタスクボタン長押しでスクリーンショットをキャプチャする機能、キーボードのバッテリ節約モードなどを設定できる。

 ホーム長押しにも独自の機能が割り当てられており、Google Nowやアプリケーション一覧、音声検索、システムバーロックに加えて5つまでのアプリショートカットを設定できる。ショートットは右側の歯車アイコンから任意のアプリに変更が可能だ。

ASUSカスタマイズ設定
ホーム長押しでショートカットを起動。アプリは自由に変更できる

 ASUS製のAndroidタブレットに搭載されている独自の浮動アプリにも対応。画面右下の三角ボタンを選ぶと浮動アプリの一覧が表示され、ホーム画面や他のアプリの上に別のアプリを表示できる。浮動アプリは初期設定で電卓や辞書、ビデオプレーヤーなどのウィジェットが登録されており、対応ウィジェットであれば好きなウィジェットを浮動アプリとして追加することも可能だ。

浮動アプリは他のアプリに重ねて表示できる

 ロック画面はタッチ操作で解除するシンプルなもので、カメラアプリを直接起動するといった機能は備えていない。ロック画面は設定の「ロックスクリーン」から変更でき、標準で設定されているスライド以外に顔認証を使ったフェイスアンロック、パターン、PIN、パスワードから選択できる。

 10.1型WQXGAディスプレイの画素密度は299ppiで、iPad Retinaディスプレイモデルの264ppiよりも高い画素密度となる。ホーム画面のアイコンなどはサイズが変わらないため一見すると違いはわからないが、フォントや画像などは非常に高精細に表示される。なお、IGZOの特色なのか、色味に関しては手持ちのNexus 7(2013)と比べて若干黄色がかった表示だった。比べると分かる程度なので、実用上はあまり問題はないだろう。

ベンチマークはトップクラス。バッテリもカタログスペック通り

 ベンチマークの測定は「Quadrant Professional Edition」、「AnTuTu Benchmark」、「MOBILE GPUMARK」の3アプリで実施。1.9GHz駆動のTegra 4というハイスペックCPUを搭載していることもあり、ベンチマーク結果は非常に高い成績となった。実際の操作もホーム画面はもちろんブラウザアプリなど各種アプリもきびきびと動作し非常に快適だ。

【表】ベンチマーク結果
TF701TNexus 7(2013)
Quadrant Professional 2.1.1
133134632
AnTuTu 4.0.3
Overall2710519979
Multitask81873303
Dalvik27851434
CPU integer38772230
CPU float-point27851959
RAM Operation17741105
RAM Speed18661490
2D graphics14701611
3d graphics67205068
StorageI/O19791164
Databese I/O670615
MOBILE GPUMARK Version 2
6435268480
操作動画

 TF701の特徴でもあるロングバッテリも計測。無線LANに接続した状態でGPSとBluetoothもオンにし、Twitterの更新を5分に1回行ないながら、輝度が最低の状態でフルHD動画を連続再生したところ、タブレット本体のみの場合は11時間40分、キーボード装着時は16時間でバッテリが空になった。

 公称の約13時間、約17時間と比べると若干下回る結果だが、無線LAN以外にGPSとBluetoothもオンにした状態で動画再生と5分ごとのTwitter新着チェックを行なっていることを考えると、実際の利用ではほぼカタログスペック通りの値と言えるだろう。前モデルの9.5時間、14時間という公称値と比べると高い解像度ながらも3~4時間のバッテリ向上を実現しており、早朝に家を出て深夜に帰宅したとしても十分にバッテリが持つほか、後述するスマートフォンのモバイルバッテリとして使うにも十分な数値だ。

入力しやすいキーボード。スマホの充電や画像取り込みなど連携機能も

 液晶やCPUスペックが向上したタブレット本体に比べ、バッテリ内蔵のキーボード部は、USBポートが2.0から3.0に変更となり、本体装着時の数値で3.5mm薄型化したほかは前モデルから大きな変化はない。キー配列やインターフェイスの配置も共通で、右側面にUSBポートとSDカードスロット、左側に電源コネクタを備える。

キーボードの配列。写真は英字キーボード
キーボード接続部はマークで示されており装着しやすい
キーボード装着時の前面
キーボード左側面にUSB 3.0ポートとSDカードスロット
左側面に電源接続端子

 キー配列は6列だが、最上部は無線LANやBluetoothのオン/オフ、輝度調整など各機能のショートカットが割り当てられており、最下列左にはホームボタンや検索ボタンも用意されている。ディスプレイをタッチすることなくホーム画面に戻ったり、各種設定をカスタマイズできるのは非常に便利。スリープのオン/オフもキーボード左上の鍵アイコンボタンから可能だ。

 なお、今回のレビューではキーボードが英語版になっているが、製品版では日本語キーボードが同梱される。そのため配列も異なり、製品版では英語キーボードにはない「半角/全角」ボタンが用意されるほか、記号のキーボード割り当ても異なっている。実際のキーボード配列については前モデル「TF700T」の画像を参考にして欲しい。

 入力感は前モデルと同様非常に快適。プリインストールされているFSKARENの場合、文字を1文字入力するごとに予測変換が表示されるが、変換速度が非常に速いためタイピングの速度が早くても取りこぼしなく入力できる。なお、今回は英字キーボードのため日本語入力は画面タッチで行なったが、製品版では「半角/全角」から日本語/英数字の入力切り替えが可能なほか、Spaceで予測変換の選択、「変換」で入力した文章の変換を行なえる。

プリインストールされているFSKAREN。キーボード入力のほか10キーやQWERTYソフトキーボード、手書き入力に対応
タッチパッドは右手前が「戻る」ボタン

 キーボード接続時は画面にカーソルが表示され、キーボードのタッチパッドからPC感覚で操作が可能。なお、キーボード左手前のクリックやタッチパッドをタップした際はクリック動作になるが、右手前のクリックは「戻る」が割り当てられているため、誤操作しないよう注意が必要だ。

 キーピッチも広く取られており文字入力は快適で、一見するとPCのように使えるものの、実際にはAndroid OSのためPCと全く同じ操作ができるわけではない。ファイルのドラッグ&ドロップ操作などが使えないなど、PC感覚で使おうとすると違和感もある。あくまでAndroidをベースとして文字入力やショートカットを便利に使えるキーボードという位置付けだ。

 キーボードのUSBポートを使った機能拡張も可能で、USBメモリを接続してデータを読み込んだり、USB経由でスマートフォンを充電することも可能。USB接続したメモリやスマートフォンの画像をTF701Tのギャラリーアプリに取り込むという連携も可能だ。なお、電力出力はさほど高くないようで、iPadはUSBポート経由では充電できなかった。

USBポートから充電やデータ取り込みが可能
USB接続したメモリやスマートフォンの画像を取り込める

カメラ画質は低めながらGIFアニメ作成など機能は充実

 背面のカメラはオートフォーカス対応の800万画素CMOSイメージセンサーを搭載。操作画面は独自インターフェイスで、左側にメニュー、右側に動画と静止画の切り替えやデジタルズームを搭載。静止画は連写モードに加え、右下のアイコンからさまざまな撮影効果をつけることができる。HDRや美人効果、パノラマ、夜景といった一般的な効果に加え、GIFアニメーションの作成機能も搭載。連続撮影した写真から自動的にGIFアニメーションを生成できる。

初回起動時に操作ガイドを表示
カメラの操作インターフェイス
GIFアニメも作成可能な撮影モード
ホワイトバランスや露出も細かく設定可能
Androidデフォルトのエフェクト機能
連写モード

 画素数が500万画素ということもあり画質はスナップ程度といったところ。屋外でもややくぐもった絵になるほか、夜景ではオートフォーカスが合わずピンぼけした写真になった。800万画素だった前モデルと比べても画質は落ちている印象だが、その分GIFアニメーション作成など面白い機能も搭載しており、簡易的なカメラ機能としては十分なレベルと感じた。

【カメラの作例】※クリックすると2,592×1,456ドットの写真が表示されます

独自アプリを含む多彩なプリインストールアプリ

 独自のプリインストールアプリが充実しているのもASUS製Androidの特徴。ファイラーアプリやインカメラを使ったミラーアプリ、音声レコーダといったアプリに加え、DLNAとASUSのクラウドサービスを組み合わせた複数デバイスのデータ管理アプリ「AOLink」、アプリケーションロックが可能な「App Locker」、用途に合わせて音質を切り替えられる「Audio Wizard」、手書き入力が可能なノートアプリ「SuperNote」など多数の独自アプリが利用できる。

プリインストールアプリ一覧
アプリ一覧から長押しで簡単にアンインストールできる
ファイラーアプリ
DLNAに加えてASUSのクラウドサービスへアクセスできるデータ管理アプリ「AOLink」
アプリケーションを個別にロックできる「App Locker」
手書き入力が可能な「SuperNote」
電子書籍管理アプリ「My Library Lite」

 Androidのバージョンが4.2のため、4.3でサポートされた制限付きプロフィールは利用できないものの、代わりにペアレンタルロックアプリを標準搭載。PINコードとGoogleアカウントまたはASUSアカウントの組み合わせでアプリの利用を制限できる。

 サードパーティーアプリもFacebook、Flipboardやi-フィルター、Officeファイルを閲覧できる「Polaris Office」、電子書籍ストア「BookLive!Reader for ASUS」、Tegra対応のゲームをプレイできる「Tegra Zone ゲーム」などがプリインストールされている。

長時間利用の多いキーボード派にはお勧めのタブレット

 前モデルと比べてカメラ周りやストレージ容量などスペックが下がった部分もあるものの、ディスプレイ解像度やバッテリ駆動時間、CPUなど基本的なスペックは大幅に向上。ストレージに関してはアプリインストールレベルであれば32GBは十分な容量であり、microSDで容量拡張もできる。カメラもタブレットであれば十分な画質で、エフェクトや編集機能が増えた分使いやすい面もある。

 Androidタブレットでキーボードを使いたい場合はBluetoothキーボードを使うのが主流だが、接続することでバッテリを消費してしまうBluetoothキーボードに対し、TF701Tはキーボードで駆動時間を伸ばすことができ、さまざまな機能のショートカットもキーボードから行なえる。キーボード装着時は1kgを超えてしまうが、外出中はタブレットのみ持ち歩いて閲覧中心に使い、オフィスではキーボードを装着して文字を入力する、という使い分けも可能。長時間利用することが多いキーボード派にお勧めのタブレットだ

(甲斐 祐樹)