Hothotレビュー
日本HP「HP ElitePad 900」
~拡張性/堅牢性の高いWindows 8搭載10.1型タブレット
(2013/3/29 00:00)
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から登場した「HP ElitePad 900」(以下、ElitePad 900)は、Windows 8を搭載したタブレット端末である。同社からは、コンシューマ向けのWindows 8タブレットとして「HP ENVY x2」が発売されているが、ElitePad 900はビジネス向け製品であり、米軍の調達基準「MIL-STD-810Gテスト」に準拠するなど、高い耐久性を実現していることが特徴だ。
ElitePad 900は、搭載OSやストレージ容量、Office 2010の有無などによって、3種類のモデルが用意されているが、今回は、Windows 8 Pro/ストレージ64GBモデルを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
アルミニウム合金削り出しによる一体成型ボディを採用
ElitePad 900は、10.1型液晶を搭載したピュアタブレットであり、携帯性と堅牢性を両立させていることが魅力だ。本体のサイズは、261×178×9.2mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約630gである。10.1型タブレットとしては標準的な重量であり、気軽に携帯できる。ボディの材質はアルミニウム合金製で、CNCによって削り出して作られた一体成型ボディを採用しており、高い耐久性と質感を実現している。液晶表面は、強化ガラスの「Gorilla Glass 2」で保護されており、高い耐衝撃性を誇る。
400cd/平方mの高輝度液晶を搭載
CPUには、開発コードネームClover TrailことAtom Z2760(1.80GHz)を搭載。Atom Z2760は、超低消費電力がウリのSoCであり、Windows 8タブレットとの相性は抜群である。メモリは2GB(増設は不可)。ストレージは64GBフラッシュメモリである(下位モデルでは32GB)。
液晶は10.1型で、解像度は1,280×800ドットである。Windows 8タブレットでは、アスペクト比が16:9の1,366×768ドット表示の液晶を搭載する製品が多いが、こちらのアスペクト比は16:10となっている。屋外でも見やすいように、輝度は最大400cd/平方mと高い。前述したように、表面はGorilla Glass 2でカバーされているほか、汚れ防止加工が施されており、ラフに使っても安心だ。液晶の表示は明るく鮮やかで、視認性は高い。
本体に装備されているインターフェイスは、マイク入力/ヘッドフォン出力とmicroSDカードスロット、システムコネクタのみだが、システムコネクタに接続するUSBアダプタが標準で付属しているため、USBポートの利用は可能だ。本体前面に1080p対応カメラ、背面に800万画素カメラが搭載されており、ビデオ会議などにも適している。サウンドにもこだわっており、下面にステレオスピーカーが用意されているほか、SRSオーディオも搭載する。
ワイヤレス機能は充実しており、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooth 4.0(デュアルモード対応)を搭載するほか、近距離無線通信技術のNFCもサポートする。また、送信アンテナと受信アンテナを2つずつ内蔵しており、11nのMIMOにも対応する。センサーとしては、加速度センサー、電子コンパス、ジャイロセンサー、周辺光センサーを搭載する。OSは、Windows 8 Pro(32bit)を搭載している(下位モデルはWindows 8 32bit)。
バッテリの交換はできないが、公称約10時間の駆動が可能とされている。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、7時間38分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。無線LAN常時有効で7時間半持てば、十分合格といえるだろう。
ドッキングステーションや拡張ジャケットなど、豊富な周辺機器が魅力
ElitePad 900は、ビジネス向けタブレットとして開発されており、さまざまなビジネスシーンで役立つように、ドッキングステーションや拡張ジャケットなど、周辺機器が充実していることも魅力だ。今回は、オプションの「HP ElitePadドッキングステーション」と「HP ElitePad拡張ジャケット」を併せて試用できたので、そちらも紹介したい。
HP ElitePadドッキングステーション(以下、ドッキングステーション)は、ElitePad 900本体のインターフェイスを拡張するための周辺機器である。ドッキングステーションには、USB 2.0×4とミニD-Sub15ピン、HDMI出力、有線LAN、ライン出力などのインターフェイスポートが用意されており、ElitePad 900を載せることで、これらのインターフェイスが利用できるようになる。ただし、ドッキングステーションを利用するには、ドッキングステーション付属のACアダプタをドッキングステーションに接続し、電源を供給してやる必要がある。なお、ドッキングステーションはスタンド代わりにも使えるが、スタンドの角度を変更することはできない。
HP ElitePad拡張ジャケット(以下、拡張ジャケット)は、ElitePad 900本体の周りにかぶせて使う周辺機器である。10年以上前の製品だが、コンパック(後にHPと合併)から発売されたPocket PC「iPAQ」でも着脱可能なジャケットによって機能を拡張するコンセプトを採用していたが、それと似たような感じだ。
拡張ジャケットには、ジャケット用バッテリの内蔵が可能であり、バッテリを内蔵した拡張ジャケットにElitePad 900を装着することで、公称バッテリ駆動時間は最大約18時間に延びる。また、拡張ジャケットには、USB 2.0×2とHDMI出力、システムコネクタ、SDカード/MMCスロットが用意されており、さまざまな機器を接続できる。ドッキングステーションの場合とは異なり、こちらは利用時にACアダプタなどを接続する必要はない。拡張ジャケットは、上部が外れるようになっており、上部を外してから、本体をジャケットの溝に滑らせて入れ、上部をはめ込むことで装着が完了する。拡張ジャケットは、本体を保護するカバーとしての役割も果たす。
バッテリ内蔵の拡張ジャケット装着時のバッテリ駆動時間を、先ほどと同じ条件で計測したところ、14時間27分という結果になった。拡張ジャケット装着時の重量は実測で1,053gであり、十分携帯できる範囲だ。
なお、今後はキーボードジャケットやハンドル付きプロテクションケース、マルチ・タブレット充電モジュールといった、新たなオプションの発売も予定しているという。
Windows 8のストアアプリは快適に動作
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。 比較用として、レノボ・ジャパン「ThinkPad Tablet 2」、レノボ・ジャパン「IdeaPad Yoga 13」、ソニー「VAIO Duo 11」の値も掲載した。
ElitePad 900 | ThinkPad Tablet 2 | IdeaPad Yoga 13 | VAIO Duo 11 | |
---|---|---|---|---|
CPU | Atom Z2760 (1.80GHz) | Atom Z2760 (1.80GHz) | Core i7-3517U (1.9GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) |
ビデオチップ | PowerVR SGX 545 | PowerVR SGX 545 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 |
PCMark05 | ||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 2146 | 2119 | 8823 | 7885 |
Memory Score | 2084 | 2029 | 7159 | 7825 |
Graphics Score | N/A | 537 | 2464 | 2527 |
HDD Score | 6516 | 6124 | 38063 | 48050 |
PCMark 7 | ||||
PCMark score | 1457 | 1436 | 4644 | 4648 |
Lightweight score | 950 | 946 | 3143 | 2818 |
Productivity score | 594 | 593 | 2299 | 1977 |
Creativity score | 3004 | 2989 | 8598 | 9178 |
Entertainment score | 1060 | 1044 | 3264 | 3232 |
Computation score | 3866 | 3815 | 14847 | 16495 |
System storage score | 2983 | 3000 | 4877 | 5171 |
3DMark03 | ||||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 2180 | 2023 | 9153 | 12635 |
CPU Score | 336 | 354 | 1553 | 1658 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
HIGH | 879 | 860 | 4224 | 4206 |
LOW | 1442 | 1501 | 6372 | 6190 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||
DP | 43.47 | 42.7 | 99.97 | 100 |
HP | 100 | 99.93 | 100 | 100 |
SP/LP | 100 | 100 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 99.97 | 100 | 99.97 | 100 |
DP(CPU負荷) | 31 | 32 | 22 | 14 |
HP(CPU負荷) | 31 | 34 | 9 | 6 |
SP/LP(CPU負荷) | 19 | 21 | 4 | 3 |
LLP(CPU負荷) | 18 | 29 | 5 | 2 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||
シーケンシャルリード | 80.52MB/sec | 80.41MB/sec | 253.1MB/sec | 458.0MB/sec |
シーケンシャルライト | 34.60MB/sec | 34.17MB/sec | 238.4MB/sec | 260.3MB/sec |
512Kランダムリード | 78.11MB/sec | 77.49MB/sec | 196.5MB/sec | 315.3MB/sec |
512Kランダムライト | 29.31MB/sec | 28.49MB/sec | 204.9MB/sec | 240.1MB/sec |
4Kランダムリード | 9.542MB/sec | 8.660MB/sec | 13.68MB/sec | 19.67MB/sec |
4Kランダムライト | 2.498MB/sec | 2.098MB/sec | 30.89MB/sec | 40.69MB/sec |
BBench | ||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 7時間38分 | 12時間22分 | 6時間12分 | 5時間18分 |
Lバッテリ | 14時間27分 | なし | なし | 9時間57分 |
結果は上の表の通りであり、Core i7やCore i5を搭載したIdea PadやVAIO Duo 11には及ばないが、同じAtom Z2760を搭載したThinkPad Tablet 2とは、ほぼ互角のスコアが出ている。単にスコアを比較すると、Core iシリーズ搭載機よりも、パフォーマンスがかなり低いように思われるかもしれないが、Windows 8 UIの動作は快適であり、Windowsストアアプリを中心に使うのなら、パフォーマンスに不満を感じる場面は少ないだろう。もちろん、動画エンコードなどの負荷が高い作業には向かないし、従来のデスクトップアプリを使う場合も、動作が重く感じられる場合もあるが、コンテンツビューアやインターネット端末といったタブレットに適した使い方をするなら十分な性能だ。
ビジネスの現場でWindows 8タブレットを活用したい人にお勧め
ElitePad 900は、コンシューマ向け製品だけでなく、ビジネス向け製品も得意とする日本HP製らしいWindows 8タブレットであり、米軍の調達基準(MILスペックなどと呼ばれる)をクリアする、高い耐久性や堅牢性が魅力だ。さらに、さまざまなビジネスシーンに対応できるように、ドッキングステーションや拡張ジャケットなどの周辺機器が充実していることも、本製品ならではのメリットだ。ビジネスでWindows 8タブレットを活用したい人には、特にお勧めできる。もちろん、個人での購入も可能なので、堅牢なボディや拡張ジャケットなどに魅力を感じた人にもお勧めだ。