Hothotレビュー

iriver「ITQ701」

~Tegra 3/Andorid 4.1搭載の「Nexus 7」対抗タブレット

ITQ701
近日発売予定

価格:オープンプライス

 株式会社アユートは、iriverブランドのAndroid 4.1搭載タブレット「ITQ701」を近日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は19,800円前後だ。今回は発売に先立って試作機を試用する機会を得たので、レポートしたい。

Tegra 3搭載の高性能タブレット

 2012年10月にGoogleが日本向けに19,800円のAndroidタブレット「Nexus 7」を投入して以来、入手しやすい低価格や持ち運びやすさなどの面でユーザーに評価され、7型のタブレット市場は活気づいている。本製品も実売19,800円前後と、価格ではNexus 7に対抗する。

 2万円を切る低価格なAndroidタブレットは、CPUがデュアルコアだったり、Playストア非対応だったり、液晶がTNだったり、果ては無線の技適マークを取得していなかったりするものも多いが、ITQ701はNexus 7に対抗しうるだけのスペックを備えたのが最大の特徴だ。

 CPUはNVIDIAのTegra 3を採用。ソフトウェア上から確認する限り、最大クロックは1.3GHz(パッケージ上では1.2GHzとされている)で駆動する。低価格タブレットは中国メーカーのデュアルコアが多い中、“Googleリファレンス機”とも言えるNexus 7で採用されている実績があるTegra 3を搭載している点は大いに評価できる。

明るいIPS液晶ディスプレイを採用しており、視認性は高い

 もう1つ評価できる点は、1,280×800ドット表示対応のIPS液晶ディスプレイを搭載していること。このあたりもNexus 7対抗を強く意識していると言えるだろう。実際に視野角が広く、色味も比較的落ち着いていて見やすい。同じくIPS液晶を採用しているMobile in Styleの「edenTAB」と比較すると、本製品のほうが色温度が低めで疲れにくい印象を受けた。

 またITQ701搭載の液晶は輝度が比較的高く、直射日光下でもある程度の視認性を確保しているのが印象的だ。表面処理は滑らかで、少し汗がついた指でもツルツル滑るのが良い。edenTABでは「Fruit Ninja」のようなゲームを長時間プレイしていると指の滑りが悪くなり、イライラし始めるが、本製品ではそのようなこともない。

それぞれの角度から見たところ。色の変化が少なく、IPSらしい広視野角

 メモリは1GBのDDR3L、ストレージは16GB、OSはAndroid 4.1.1。このあたりは一般的なスペックに落ち着いている。無線LANはIEEE 802.11b/g/n対応で、5GHz帯のaは非対応。Bluetoothは4.0に対応している。このほか、200万画素の前面カメラ、GPS、ジャイロセンサー、電子コンパスを備える。

 同価格帯のNexus 7と比較すると、microSDカードスロットの装備が特徴的だ。外部機器と頻繁にコンテンツを共有する場合や、内蔵フラッシュの容量不足に困っていたユーザーにとっての福音となるだろう。その一方で、1つ上の価格帯にあるedenTABと比較すると、照度センサー、バイブレータ、背面カメラ、Micro HDMIが非搭載な点は気になった。

 つまり、同価格でほぼ同スペックのNexus 7から見た場合、microSDカードスロットの装備が「ミソ」になりそうだが、価格的にワンランク上のedenTABとの比較では、やはり機能面で価格相応なところもあると言える。1万円台を切るタブレットと比較した場合、やはりクアッドコアのTegra 3の搭載が何よりの強みと言える。

横向き使いが前提か……?

 パッケージはiPadと同様の上下ハメコミ式で、そこそこ高級感はある。背面にはマルチランゲージの説明があり、多国向けの製品であることが分かる(もちろん日本語もある)。付属品は本体のほか、USBケーブルとACアダプタ(今回は試作機のためCEE 7/16 仕様)、説明書、保証書のみと至ってシンプルである。

本体パッケージ
本体はソフトなケースに入っており、高級感がある
付属品など

 本体背面は金属とプラスチックのハイブリッドに見える。おそらく片方は質感と放熱、もう片方は電波の通りを良くするためだろう。デザイン的に、ロゴが長辺方向(横方向)に入れられているし、パッケージでも画面を横にしているので、おそらく横画面での使用を前提にしていると思われる。本体サイズは194×122×10.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は338g。このあたりは7型としては平均的な数値だろう。

 しかし本製品のステレオスピーカーは、横画面時に縦方向に2つ並ぶレイアウトで、横画面での動画再生時などは、左側だけから音が出る。それでも外国の同社サイトで本製品は「マルチメディアプレーヤー」として位置づけているのである。このあたりは音楽プレーヤーを手がけるiriverらしからぬ設計だ。

 横置きにし、正面から見た場合、ステレオミニジャック、Micro USB、microSDカードスロットは右手側、電源ボタンとボリューム調節は本体上部、スピーカーは本体左側となる。

 フォルムとして、背面にかけてなだらかにしぼんでおり、薄く見せるような工夫が凝らしてある。横向きで使う場合、電源ボタンやボリューム調節は右手の人差指で操作することになるだろうが、この傾斜がなだらかなために、正面から見た時にボタンの位置が完全に見えなくなってしまう。特に暗闇で手探り操作する時、「ボリューム調整をしようと思ったら電源を切っていた」ということがよく発生した。電源ボタンとボリューム調節を区別する仕組みが欲しかったところだ。

本体背面
横向きで左側にスピーカーを装備する
右側にステレオミニジャック、Micro USB、microSDカードスロットを装備
上部に電源ボタンとボリューム調節ボタンがある
Webカメラは右上についている

 Webカメラはディスプレイの真上ではなく、横持ち方向で言えば右上に付いている。このためWebカメラを使うネットコミュニケーションにおいては、相手を見るつもりで本機の画面を画面を凝視していても、相手側から「まったく違うところを見ている」と捉えられかねない。あくまでもオマケで、人がそこにいることがわかる程度のものだと認識したほうがいい。

 本製品で気になったのは、画面の回転を固定していても、ロック画面だけジャイロセンサーで回転してしまうこと。そのため寝っ転がって縦持ちして閲覧を開始しようとも、ロック画面が一旦回転してしまう。ロックを解除すれば元通りに戻るので実害はないのだが、ファームのアップデートなどで改善を望みたい。

 さらに一部縦表示専用のソフトウェアでは、回転固定をかけておかないと上下逆に表示されることもある(「SD Tools」や「ぺしぺしIkina」など)。このため端末をグルグル回しながら使うことになる可能性もある点が気になった。

 この画面ロックの問題も含めて、先述の通り、横向きではスピーカーが縦に付いている、電源/ボリューム調節ボタンはどちらかと言えば縦持ちが前提で付いているなど、縦で使うべきなのか、横で使うべきなのか、コンセプトが統一されていない感じを受ける。次機では改善を望みたいところだ。なお、個人的には本機は持ちやすさなどの観点から、縦で使うべきだと思う。

OSの操作感は上々だが、やはりiriverらしからぬ部分が

 実際のOSでの操作感だが、Tegra 3を搭載しているだけあって、ストレスに感じることは一切ない。ベンチマークなどでも後述するが、Nexus 7と同じスペックを備えるだけあって、基本性能は高い。

 デフォルトで入っているソフトウェアは最小限で、素のAndroid+Googleアプリそのものである。当然Playストアも搭載している。日本語フォントも入っているため、Playストアから日本語入力システムを導入するだけでほぼ実用的なAndroidシステムになる。

 なお、「戻る」、「ホーム」、「アプリケーション切り替え」といったボタンはソフトウェアで実現されており、画面上に表示される。そのため3DMarkなどのソフトウェアに報告される解像度は、この部分を除いた800×1,216ドットまたは1,280×738ドットである。

 今回付属のUSBのACアダプタが利用できなかったが、手持ちのいずれのPCのUSBポート、または500mA程度の出力を持つUSB ACアダプタで充電できることが分かった。一部Android端末では500mA程度の電流だとスロー充電、または充電されないといった現象があるが、本機でそのような心配をする必要はなさそうである。なお、充電中はWebカメラの近くに赤いLEDが付き、終了すると消灯する。これは嬉しい配慮である。

 本機を約1週間ほど使って気になったのは、先ほどのインターフェイス周りのほか、1つは無線LANの感度、もう1つはヘッドフォンジャックの出力だ。

 無線LANの感度については、Android用アプリ「Wifi Analyzer」を試用した計測では、特に1chの拾いが悪い印象だ。一部金属の筐体を採用しているのが災いしてか、無線LANチップの問題か、アンテナの問題か、はたまた試作機だけの現象なのかわからないが、利用者が多いと思われるチャンネルだけに少し気になった。

 もう1つはヘッドフォン出力で、音楽プレーヤーを手がけてきたiriverらしくないボリュームとなっている。音は全体的にあっさりした印象で、低インピーダンスのイヤフォン(筆者はER-6i)を使用しても、音量を70%ぐらいまで上げてようやく満足がいくボリュームが得られるぐらいだ。せっかくiriverブランドを冠しているので、音質にも力を入れてもらいたかったところだ。

概ねNexus 7と同等の性能を発揮。バッテリも長時間

 最後に「AnTuTu Benchmark」と「3DMark」によるベンチマーク結果を掲載する。比較用としてNexus 7のほかedenTABと「Optimus LTE(L-01D)」の結果も載せてある。

 AnTuTuのスコアはNexus 7とほぼ並んだ。同じCPUを採用しているので当たり前ではあるが、デュアルコアのedenTABやOptimus LTEと比較するとクアッドコアの明らかな高性能ぶりが見て取れる。このスコアは先述する実際の操作の快適性にも繋がっており、edenTABやOptimus LTEと比較するとやはり使っていて気持ちいい。

【表1】Antutu Benchmark
ITQ701Nexus 7 16GBedenTABOptimus LTE
Total123211186767297790
RAM1956182010301557
CPU interger3135312310652033
CPU float26802639895920
2D Graphics739787650699
3D Graphics2944260424921856
DatabeseIO550550330500
SD card write12215014038
SD card read195194127187

 3DMarkはSnapdragon搭載のOptimus LTEが優位に立ったが、実際のゲームプレイにおいてはほぼ違いを感じることができなかった。個人的にプレイする「Need for Speed Most Wanted」ではむしろ本機のほうが滑らかだった。Tegra 3は最適化ゲームタイトルも多いため、ゲームプレイを念頭に置いているのであれば本機の方が快適に動くだろう。

【表2】3DMark
ITQ701Nexus 7edenTABOptimus LTE
NormalExtremeNormalExtremeNormalExtremeNormalExtreme
Storm score36101906353318981608118337422095
Graphics score32151588314915881427101237311880
Physics score63276386616059952886289637823496
Graphics test 112.4 FPS7 FPS12.2 FPS7.5 FPS4.6 FPS3.6 FPS16.7 FPS10.1 FPS
Graphics test 216 FPS6.8 FPS15.6 FPS6.4 FPS9.5 FPS5.7 FPS15.8 FPS6.9 FPS
Physics test20.1 FPS20.3 FPS19.6 FPS19.0 FPS9.2 FPS9.2 FPS12.0 FPS11.1 FPS

 microSDカードスロットの速度について、Silicon PowerのClass 10対応microSDカード(8GB)にてSD Toolsで計測したところ、ライトは9.7MB/sec、リードは21.6MB/secとなった。実用で問題ないレベルだろう。なおマウント先は“/storage/sdcard1”である。

 バッテリについて今回は計測しなかったが、相当持ちそうな印象である。輝度を約50%に設定し、無線LANに接続しながらWebブラウズ、3Dゲーム、マップなど複数のアプリを使ってみたが、おおよそ3時間で残り68%。帰宅後約1時間のWebブラウズ、そして2日間無線LANをONにしたまま放置して残り40%となった。

 ややわかりにくいが、使用時はおよそ11%/時間、無線LAN接続放置時は0.33%/時間といったところだろうか。もっとわかりやすく言えば、使用時間は約9時間、待機時間は約300時間といったところだ。これはiPadとほぼ遜色ないレベルで、優秀な部類だと言える。

microSDカードスロットに価値を見いだせるか

 以上、簡単に試用した結果をお届けした。Nexus 7と張り合える性能と価格で、見やすいIPS液晶ディスプレイ、そして何よりもNexus 7にはないmicroSDHCスロットに価値を見いだせるユーザー向けの製品だと言えるだろう。

 無線LANや画面の回転周りなど、不安要素はあるものの、試作機のみの現象かもしれないし、ファームウェアで改善できそうな点でもある。何よりも高性能で廉価なタブレットの選択肢がまた1つ増えたということが、ユーザーにとって嬉しいのではないだろうか。

(劉 尭)