~11.6型ワイド液晶搭載のシンプルモバイル |
ソニーの秋冬モデル第2弾として登場した「VAIO Yシリーズ(YAシリーズ)」は、現行のVAIO Yシリーズの追加モデルである。従来のVAIO Yシリーズは、13.3型ワイド液晶を搭載していたが、VAIO Yシリーズ(YAシリーズ)は、一回り小さな11.6型ワイド液晶を搭載し、より携帯性が向上していることが特徴だ。
ソニーは、モバイルノートのラインナップが充実しており、液晶サイズの小さい順にVAIO P、VAIO M、VAIO W、VAIO X、VAIO G、VAIO Z、VAIO Y、VAIO Sの各シリーズが販売されているが、VAIO Yはスリムボディと長時間駆動が特徴のシンプルな構成のマシンだ。VAIOシリーズのモバイルノートとしては、低価格なことも魅力であり、ビジネスモバイルやネットブックからステップアップしたい学生を主なターゲットとする。
今回は、新しく登場したVAIO Yシリーズ(YAシリーズ)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機のため、細部やパフォーマンスなどが製品版とは異なる可能性がある。
●気軽に持ち歩けるサイズと重量を実現11.6型液晶を搭載した「VAIO Yシリーズ(YAシリーズ)」(以下、VAIO Y(YA))は、ラインナップも非常にシンプルであり、店頭モデル1モデルのみで、BTOによるカスタマイズが可能なVAIOオーナメードモデルは用意されていない。ボディデザインは、VAIO Yシリーズのものを踏襲している。オーソドックスでシンプルなデザインであり、オフィスでも家庭でも違和感なく使えるだろう。
本体のサイズは、290×202.8×25~31.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.46kgである。13.3型液晶搭載のVAIO Yのサイズは326×226.5×23.7~32mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.78kgだったので、携帯性はかなり向上している。13.3型モデルの場合、カバンなどに入れて常に持ち歩くにはやや重いが、11.6型モデルのVAIO Y(YA)なら、気軽に持ち歩ける。
CPUとしては、Core i3-380UM(1.33GHz)を搭載する。超低電圧版CPUであり、消費電力と発熱が少ないことが利点だが、動作クロックは通常電圧版CPUに比べると低い。Core i3はデュアルコアCPUだが、Hyper-Threadingテクノロジーをサポートしており、同時に4つのスレッドを実行可能だ。メモリは標準では2GBだが、SO-DIMMスロットが1基空いているので、6GBまでは標準で実装されているメモリを無駄にせずに、メモリを増設できる(最大8GBまで増設可能)。グラフィックスは、CPU内蔵のグラフィックス機能を利用している。HDDは2.5インチ320GBで、ビジネス向けのモバイルノートとしては十分な容量だ。モバイルノートとしての基本性能は、十分高いといえるだろう。OSとしては、Windows 7 Home Premium 64bit版がプリインストールされている。
VAIO Y(YA)の上面。ボディカラーは落ち着いたブラックだ | 「DOS/V POWER REPORT」誌とVAIO Y(YA)のサイズ比較。奥行きはVAIO Y(YA)のほうがやや短いが、横幅はVAIO Y(YA)のほうが13mmほど大きい |
VAIO Y(YA)の底面。3本のネジを外すことで、メモリスロットなどにアクセスできる | メモリスロットとして、SO-DIMMスロットが2基用意されており、標準で2GB SO-DIMMが1枚装着されている。メモリは最大8GBまで増設可能だ。メモリスロットの左にはHDDが実装されており、こちらも交換は容易だ(ユーザーによるHDD交換は保証外) | 電源を入れると、右側の液晶ヒンジ内のLEDが美しく点灯する |
●VAIOシリーズで初めて11.6型液晶を採用
液晶は、11.6型ワイド液晶を搭載。解像度は1,366×768ドットで、13.3型モデルと同じだ。光沢タイプの液晶なので発色は比較的鮮やかで、コントラストも十分だが、外光の映り込みが多少気になることがある。バックライトにはLEDを採用し、消費電力を削減している。なお、11.6型ワイド液晶は、他社からは多数搭載製品が登場しているが、ソニーのVAIOシリーズでは初採用となる。液晶上部に、有効画素数約31万画素のWebカメラ「MOTION EYE」を搭載しており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードは全87キーで、アイソレーションタイプである。主要キーのキーピッチは約18.5mmだが、右側の「ろ」キーや「¥」キーなどのキーピッチはやや狭くなっている。配列は標準的で、ストロークも十分あるので、キー入力は快適だ。ポインティングデバイスとして、タッチパッドを採用。パームレストとタッチパッドにドット状のテクスチャが設けられているため、指との摩擦が適切で、操作性も良好だ。
●ASSISTボタンで初心者にも安心
ボディサイズが小さくなったため、VAIO Yの13.3型モデルに比べるとインターフェイスは多少省略されているが、USB 2.0×3、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力端子、有線LANなどのインターフェイスを備えており、実用上は十分だ(省略されたインターフェイスは、IEEE 1394とExpressCard/34スロット)。また、メモリカードスロットとしては、SDメモリーカードスロットとメモリースティックデュオスロットを搭載する。ワイヤレス機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 2.1+EDRをサポート。残念ながら、WiMAXはサポートされていない。正面右側には、ワイヤレススイッチが用意されており、素早くワイヤレス機能のON/OFFを行なえるので便利だ。
キーボード右上に、ASSISTボタンが搭載されていることも特筆できる。Windows起動中にASSISTボタンを押すと、オリジナルアプリの「VAIO Care」が起動し、システムの診断やトラブルの解決を行なってくれる。また、電源OFFの状態からASSISTボタンを押すと、リカバリやメンテナンスが可能な「VAIO Care レスキュー」が起動するので、Windowsのシステムがおかしくなり、起動途中でエラーが出るようになっても、簡単に出荷時の状態などに戻せる。特に、初心者にはありがたい機能だ。
左側面には、アナログRGB出力、HDMI出力、USB 2.0が用意されている | 右側面には、ヘッドフォン出力、マイク入力、USB 2.0×2、有線LANが用意されている |
●標準バッテリで約6時間、大容量バッテリでは約11.5時間の長時間駆動を実現
VAIO Y(YA)のような、持ち歩いて使うことが多いモバイルノートでは、バッテリの持ち時間は非常に重要だ。VAIO Y(YA)では、付属の標準バッテリで公称約6時間、オプションのバッテリーパック(L)を利用すれば、最大約11.5時間の長時間駆動が可能になる。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、5時間14分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。無線LANをオンにした状態で、公称の9割近くバッテリが持つのはなかなか優秀だ。
なお、VAIO Y(YA)のバッテリと、13.3型モデルのVAIO Yのバッテリは共通で使えるのだが、VAIO Y(YA)の標準バッテリは、VAIO Yのバッテリーパック(S)(VGP-BPS21A)とサイズは一緒だが、容量が少なくなっている(VGP-BPS21Aの容量は5,000mAhに対して、VAIO Y(YA)のVGP-BPS21Bは3,500mAh)。そのため、別売りのVGP-BPS21Aを購入すれば、本体の外形を変えずにバッテリ駆動時間を延ばせる(重量はやや増える。VGP-BPS21A装着時の公称バッテリ駆動時間は約7.5時間)。また、ACアダプタがコンパクトで軽いことも評価できる。ACアダプタの携帯性は高く、本体と一緒に気軽に持ち歩ける。
VAIO Y(YA)に標準で付属するバッテリ | 標準バッテリの仕様は、10.8V/3,500mAhの6セル仕様だ | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
ACアダプタはコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●モバイル機として十分な性能
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage 64bit版」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にパナソニック「Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVC」、「LaVie M」の値も掲載した。
PCMark05のCPU Scoreの値は、Core i7-620UMを搭載したVersaPro Ultra Lite タイプVCとほぼ同等であり、通常電圧版のCore i5を搭載するLet'snote J9ハイパフォーマンスモデルやThinkPad T410sと比べると半分程度だが、Celeron SU2300搭載のLeVie Mに比べると2割程度高い。その他のベンチマークの結果も、ほぼスペックから想定される通りのスコアとなっている。
標準ではメモリが2GBしか実装されていないため、Windowsの起動やアプリの立ち上げなどはやや重く感じることもあるが、メモリを4GBに増設すれば、より快適に動作する。もちろん、Atom搭載のネットブックやCULVノートに比べると、遙かに快適であり、モバイル機としては十分な性能を備えているといえる。
VAIO Y(YA) | Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル | VersaPro UltraLite タイプVC | LaVie M | ThinkPad T410s | |
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CPU | Core i3-380UM (1.33GHz) | Core i5-460M (2.53GHz) | Core i7-620UM (1.06GHz) | Celeron SU2300 (1.2GHz) | Core i5-430M (2.26GHz) |
ビデオチップ | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | Intel GS45内蔵コア | CPU内蔵コア |
PCMark05 | |||||
PCMarks | N/A | 7746 | 5092 | 2826 | 5677 |
CPU Score | 3586 | 7149 | 3596 | 2966 | 7375 |
Memory Score | 3465 | 5629 | 3965 | 3066 | 6184 |
Graphics Score | 1572 | 2239 | 1684 | 1397 | 2610 |
HDD Score | 5251 | 28319 | 16265 | 4948 | 4291 |
PCMark Vantage 64bit | |||||
PCMark Score | 3219 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Memories Score | 2045 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
TV and Movie Score | 2331 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Gaming Score | 2093 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Music Score | 3529 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Communications Score | 2829 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Productivity Score | 2907 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
HDD Score | 3063 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
3DMark03 | |||||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 2802 | 3345 | 2714 | 2048 | 4101 |
CPU Score | 613 | 1144 | 771 | 495 | 1068 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||
HIGH | 1317 | 2445 | 1631 | 1367 | 2458 |
LOW | 1910 | 3893 | 2410 | 1995 | 3808 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||
DP | 77.7 | 98.27 | 100 | 76.43 | 96.63 |
HP | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 |
SP/LP | 100 | 99.97 | 100 | 99.97 | 100 |
LLP | 100 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 37 | 29 | 27 | 68 | 21 |
HP(CPU負荷) | 21 | 13 | 13 | 42 | 12 |
SP/LP(CPU負荷) | 20 | 8 | 8 | 28 | 7 |
LLP(CPU負荷) | 14 | 6 | 8 | 22 | 6 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||
シーケンシャルリード | 88.75MB/s | 189.4MB/s | 164.2MB/s | 60.31MB/s | 36.20MB/s |
シーケンシャルライト | 87.92MB/s | 154.6MB/s | 39.58MB/s | 66.25MB/s | 40.05MB/s |
512Kランダムリード | 35.09MB/s | 172.5MB/s | 142.6MB/s | 27.50MB/s | 23.30MB/s |
512Kランダムライト | 43.82MB/s | 106.2MB/s | 34.53MB/s | 31.19MB/s | 24.25MB/s |
4Kランダムリード | 0.443MB/s | 12.8MB/s | 7.629MB/s | 0.369MB/s | 0.425MB/s |
4Kランダムライト | 1.500MB/s | 20.91MB/s | 13.66MB/s | 0.984MB/s | 0.961MB/s |
BBench | |||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 5時間14分 | 未計測 | 4時間23分 | 3時間39分 | 4時間15分 |
Lバッテリ | 未計測 | 10時間15分 | 未計測 | 7時間26分 | なし |
Xバッテリ | なし | なし | なし | なし | なし |
●Officeもプリインストールされており、コストパフォーマンスは高い
VAIO Y(YA)は、シンプルな構成のマシンだが、重さ1.5kgを切るボディと必要にして十分な性能、長時間のバッテリ駆動を実現しており、モバイルノートとしての完成度は高い。価格が手頃なことも大きな魅力だ。予想実売価格は11万円前後とされているが、安いところでは10万円を切る可能性も高い。さらに、最新のOffice Home and Business 2010がプリインストールされていることも評価できる。Officeプリインストールといっても低価格なマシンでは、WordとExcel、OutlookのみのOffce Personal 2010であることが多いが、VAIO Y(YA)にプリインストールされているOffice Home and Business 2010には、Word、Excel、Outlookに加えて、PowerPointとOneNoteも含まれている。
気軽に持ち運べて、快適に仕事が行なえるモバイルノートが欲しいが、あまりお金をかけたくないという人はもちろん、PowerPointとOneNoteが使えるので、プレゼンテーション資料を作る機会の多い人やアイデアメモや取材ノートなどをPCで整理したいという人にもお勧めできる製品だ。
(2010年 11月 10日)
[Text by 石井 英男]