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アップル「27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル」

〜色域を広げた新5Kディスプレイ搭載のオールインワンPC

アップル「27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル」

 アップルは10月13日に、同社の一体型PC「iMac」のラインナップを一新。27型iMacにはsRGBからDCI-P3ベースへと色域を25%広げた「Retina 5Kディスプレイ」(5,120×2,880ドット)を全モデルに搭載し、21.5型iMacには同じくDCI-P3ベースの色域の「Retina 4Kディスプレイ」(4,096×2,304ドット)を搭載したモデルを用意した。

 21.5型iMacにはフルHD(1,920×1,080ドット)ディスプレイ搭載機種もエントリーモデル(126,800円〜)として残しているが、今回のiMac刷新により「MacBook Air」を除いた全ての液晶付きMacでRetinaディスプレイを選択可能になったことになる。

【21.5型iMacラインナップ一覧】
シリーズ名 21.5型iMac 21.5型iMac Retina 4Kディスプレイモデル
モデル名 1.6GHzプロセッサ 1TBストレージ 2.8GHzプロセッサ 1TBストレージ 3.1GHzプロセッサ 1TBストレージ
CPU 第5世代Core i5(1.6〜2.7GHz) 第5世代Core i5(2.8〜3.3GHz) 第5世代Core i5(3.1〜3.6GHz)
メモリ 8GBオンボード
(オプションで最大16GBに変更可能)
ストレージ 1TB HDD
GPU Intel HD Graphics 6000 Intel Iris Pro Graphics 6200
ディスプレイ 1,920×1,080ドットのsRGBディスプレイ 4,096×2,304ドットのRetina 4K P3ディスプレイ
価格 126,800円 148,800円 172,800円
【27型iMacラインナップ一覧】
シリーズ名 27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル
モデル名 3.2GHzプロセッサ 1TBストレージ 3.2GHzプロセッサ 1TBストレージ 3.3GHzプロセッサ 2TBストレージ
CPU 第6世代Core i5(3.2〜3.6GHz) 第6世代Core i5(3.2〜3.6GHz) 第6世代Core i5(3.3〜3.9GHz)
メモリ 8GB(4GB×2)メモリ
(オプションで最大32GBに変更可能)
ストレージ 1TB HDD 1TB Fusion Drive(24GB SSD、1TB HDD) 2TB Fusion Drive(128GB SSD、2TB HDD)
GPU AMD Radeon R9 M380(2GBビデオメモリ搭載) AMD Radeon R9 M390(2GBビデオメモリ搭載) AMD Radeon R9 M395(2GBビデオメモリ搭載)
ディスプレイ 5,120×2,880ドットのRetina 5K P3ディスプレイ
価格 208,800円 238,800円 258,800円

 アップルが新型iMacに5K/4Kディスプレイを本格投入したのは、「iPhone 6s」、「iPhone 6s Plus」に4K動画撮影機能を搭載したため、両機種で撮影した4K動画を鑑賞/編集するニーズに応えるというのが大きな理由の1つだろう。そこで今回は、新型iMacの標準構成モデルの最上位に位置する「27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル」の「3.3GHzプロセッサ 2TBストレージ」版を試用し、4K動画の鑑賞/編集をどの程度快適にこなせるのかという点を中心に製品レビューをお届けしたい。

27型iMacのCPUはSkylake世代、CTOでCore i7も選択可能

 21.5型iMacは第5世代(Broadwell世代)のデュアルコア1.6〜2.7GHz/クアッドコア2.8〜3.3GHz/クアッドコア3.1〜3.6GHzの「Core i5」、27型iMacは第6世代(Skylake世代)のクアッドコア3.2〜3.6GHz/クアッドコア3.3〜3.9GHzの「Core i5」が標準構成モデルに搭載されている。

 Apple Store購入時にカスタマイズすれば、21.5型iMacの最上位モデルはクアッドコア3.3〜3.8GHzの「Core i7」に、27型iMacの上位2モデルはクアッドコア4〜4.2GHzの「Core i7」にアップグレード可能だ。ほかにもメモリは16GB/32GB、ストレージは1TB HDD/1TB Fusion Drive/2TB Fusion Drive/3TB Fusion Drive/256GB SSD/512GB SSD/1TB SSD、そしてマウス、キーボード、トラックパッドが選択可能となっている(一部選択できない組み合わせもある)。また、27型iMacの最上位モデルのみGPUを「AMD Radeon R9 M395(2GBビデオメモリ搭載)」から「AMD Radeon R9 M395X(4GBビデオメモリ搭載)」にアップグレードできる。

 もし新型iMacの購入を検討しているのであれば、最初に決めるべきはFusion Driveの容量。Fusion DriveはHDDとSSDを1つのドライブとして構成することで、大容量と高速な読み書き速度を両立させるための仕組みだが、2TBと3TBのFusion Driveには128GBのSSDが内蔵されているが、1TBのFusion Driveには24GBのSSDが使われているからだ。

 1TBのFusion Driveは2TB版と24,000円、3TB版と36,000円価格差が開いているが、より高い性能を必要とするのであれば2TB版/3TB版のFusion Driveを選んだ方がいい。実際、新型iMacのニュースリリースにも「Fusion Driveは、より作業負荷が高い用途にも対応できるように、128GBの高速フラッシュと組み合わせる2TBまたは3TBの構成でもお求めいただけます」と記載されている。

今回アップルから借用したのは、新型iMac標準構成モデルの最上位機種。標準構成モデルの中で唯一、128GBのSSDを組み合わせたFusion Driveを搭載している
「このMacについて→システムレポート→ハードウェア→ストレージ」を見ると、2TBのFusion Driveが128GBのSSDと2TBのSSDで構成されていることが確認できる。ちなみにSSD「SM0128G」はサムスン製、HDD「ST20000DM001」はシーゲイト製だ

本体外観に変更なし、マウスとキーボードは新型を同梱

 27型クラスの一体型PCとしては、新型iMacのパッケージは想像以上にスマートに感じるはずだ。未開封のパッケージ総重量は実測約12.74kg。歩く距離と電車の混み具合にもよるだろうが、購入してそのまま家まで持ち帰れないこともない重さだ。

 パッケージの中身は簡素で、iMac本体、電源ケーブル、キーボード大の小箱が入っているのみ。小箱の中には、キーボード「Magic Keyboard」、マウス「Magic Mouse 2」、USBケーブル「Lightning - USBケーブル」、書類(クイックスタートガイド、iMac情報、PCリサイクルについて、アップルロゴシール、クリーニングクロス)が入っているだけ。所詮全ての利用者に合わせたマニュアルは作れないのだから、個人的にはアップルの割り切りには同意できる。

パッケージのサイズは、実測約762×148〜248×630mm(幅×奥行き×高さ)。横から見ると上が狭い台形となっている
パッケージを開けると最初に出てくるのは、iMac本体、電源ケーブル、小箱の3点。iMac本体はフィルムとメッシュ状の包装紙で二重に梱包されている
小箱の中に入っているのは、キーボード、マウス、USBケーブル、そして書類。USBケーブルはキーボードとマウスを充電するために使用するが、キーボードとマウスともにフル充電された状態で出荷されているようだ
書類入れには、クイックスタートガイド、iMac情報、PCリサイクルについて、アップルロゴシール、クリーニングクロスが入っている。クリーニングクロスは非常に生地が細かいので、メガネ拭きやレンズ拭きにも使えそうだ

 筐体には従来iMacシリーズと特に変更はなく、新型iMacであることを示すロゴなども存在しない。外観で新型iMacであることを示すのはDCI-P3ベースの広い色域のみだが、特徴的な画像を表示した上で、新旧横に並べて見ない限りは区別が付かないだろう。

 本体サイズは650×203×516mm(同)、重量は9.54kg。この奥行き203mmはスタンドによるもので、本体自体の奥行きは実測約60mmとカタログ値の約3分の1以下の薄さだ。

 前面にはFaceTime HDカメラ、上面と背面上部にはデュアルマイクロフォン、背面下部にはヘッドフォン、SDXCカードスロット、USB 3.0×4、Thunderbolt 2×2、Gigabit Ethernet端子を配置。ステレオスピーカーは本体底面左右に配されている。ワイヤレスのインターフェイスとしては、IEEE 802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0を備えている。

 27型iMacはAC電源ポート上のメモリコンパートメントドアを開けることで、メモリスロットにアクセスして、増設することが可能だ(21.5型iMacは不可)。このメモリコンパートメントドアを開けるボタンを押すためには、電源ケーブルを抜く必要があるのは合理的な仕組みと言えよう。なお、メモリの仕様がDDR3-1600(PC3-12800)からDDR3-1866(PC3-14900)へ変更されている。メモリを増設する際にはその仕様に注意して欲しい。

本体前面
本体背面
本体右側面
本体左側面
本体前面上部に位置するFaceTime HDカメラ。カメラ左には照度センサー、右にはカメラが動作していることを示すランプが配置されている
マイクは本体上面と背面に2つ搭載するデュアルマイクロフォン仕様。背後周囲の雑音を除去し、音声通話などの際に聞き取りやすい声を相手に届ける
電源ボタンは背面下部に配置されている。スリープ状態からはマウス、キーボード操作で起動するので、普段は触る必要はない
本体背面のスタンド支持部。上から排気口、メモリコンパートメントドア、AC電源ポートが配置。スタンドは実測約84.3(前側)〜66.4(後ろ側)度に調節可能
AC電源ポートの小さなグレイのボタンを押すと、メモリコンパートメントドアが開き、メモリソケットが現われる
「27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル」の「3.3GHzプロセッサ 2TBストレージ」版には、4GBのメモリが2つ装着されていた
アップルの技術仕様には「オプション:16GBまたは32GBに変更可能」としか記載されていないが、Other World Computingは64GB(16GB×4)のメモリアップグレードキットを「27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル」向けに用意している
電源ケーブルを始めとしたケーブル類は、スタンドの穴を通すことで、自然にケーブルを取りまとめられる
本体背面下部。左からヘッドフォン、SDXCカードスロット、USB 3.0×4、Thunderbolt 2×2、Gigabit Ethernet端子。なお今回から、21.5型iMacにも、データ転送速度が最大20GbpsのThunderbolt 2端子が搭載されている
本体底面。左右のスリットのみステレオスピーカーで、残りのスリットは吸気口となっている

キーボード/マウスはバッテリ内蔵型に変更、剛性感向上

 新型iMacに標準で同梱されるキーボードは「Apple Wireless Keyboard」から「Magic Keyboard」に、マウスは「Magic Mouse」から「Magic Mouse 2」に、オプションで選択できるトラックパッドは「Magic Trackpad」から「Magic Trackpad 2」に変更された。

 共通する進化点は電池式からバッテリ内蔵型に変更されたこと。全て「Lightning - USBケーブル」でiMac本体などと接続して、充電を行なう。充電に要するのは約2時間で、フル充電で約1カ月間利用可能だ。Magic Mouse 2は底面にLightning端子が設けられているため充電しながら使えないが、約2分の充電で約9時間利用できるように設計されている。数時間利用する分を充電したらすぐに使い始めて、使い終わりに忘れずにiMacなどと接続してフル充電すれば実用上困ることはないだろう。

 使用感としては、Magic KeyboardとMagic Trackpad 2の剛性感が向上していることは明らかな差として体感できた。Apple Wireless KeyboardとMagic Trackpadは電池ケースによって角度を付けていたが、Magic KeyboardとMagic Trackpad 2は四隅にゴム足があるものの底面は完全にフラット化されており、ほとんどたわみを感じない。特にMagic Trackpad 2は、感圧センサーと、フィードバックを与えるアクチュエーター(モーター)でクリック感を再現しているだけで、可動部品は存在しないので、電源を入れていなければ1枚の板そのものの感触だ。その上Magic Trackpadより表面積が29%広くなっているため、さまざまなジェスチャ操作をより快適に行なえるようになった。

 新型入力デバイスは着実に進化しているが、Magic Keyboardが11,800円、Magic Mouse 2が9,500円、Magic Trackpad 2が14,800円とかなり高価だ。しかも、それぞれ5,800円で販売されているケーブル付きの「Apple Mouse」、「Apple Keyboard」をカスタマイズで選択してもiMacの購入金額は下がらない。

 もし新型iMac購入時に少しでもお得感を得たいのであれば、Magic Trackpad 2を選んだ上で、サードパーティーの安価なマウスを購入するとよいだろう。価格が5,300円上がるが、Magic Trackpad 2でジェスチャ操作を行なうのであれば、ジェスチャ非対応のシンプルなマウスで十分なはずだ。

Magic Keyboard表面。これはJIS仕様で、ほかにUS、英語-英国、スペイン語、フランス語、デンマーク語、アラビア語、韓国語版などを選べる
Magic Keyboard裏面
Magic Keyboard奥側面。左側に電源スイッチ、中央にLightning端子を配置
Magic Keyboard右側面。角度は実測約3.5度
Magic Mouse 2表面。特に境目はないが、右クリック、スクロール、左右スワイプ、タップしてズーム、ダブルタップで全ウィンドウを一覧表示……などさまざまなジェスチャ操作が行なえる
Magic Mouse 2裏面。上部に電源スイッチ、下部にLightning端子が配されている
Magic Mouse 2右側面。側面から見ると前と後ろが対称に見える
Magic Trackpad 2表面。表面は全面ガラス素材だ
Magic Trackpad 2裏面。裏面は艶ありのホワイトで指紋の跡が目立つ
Magic Trackpad 2奥側面。左部は電源スイッチ、中央はLightning端子という構成はMagic Keyboardと同じ
Magic Trackpad 2右側面。角度はMagic Keyboardと同じく実測約3.5度
Magic Keyboardはキーボードとしては標準的なサイズ。たわみがなく、キーストロークも浅めなので、強くキー入力すると底打ちした反力が指にそのまま伝わり、比較的疲れやすい。しかし適度な力加減を指が覚えたら、節度あるキータッチと感じられるようになった
Magic Mouse 2もバッテリ内蔵型になったことで可動部分がなくなっており、剛性感が上がっているという印象を受けた。便利なジェスチャもいくつか搭載されているが、いかんせん表面積が狭いので、本格的にジェスチャ操作を駆使したいならMagic Trackpad 2が欲しいところだ
約29%表面積が広くなったMagic Trackpad 2はよりジェスチャ操作が快適になった。リンク先のプレビューを開く「強めのクリック」などの感圧タッチ操作は目新しいが、対応しているアプリがまだまだ少ない。多くのサードパーティーアプリが対応することに期待したい
iMacに同梱されているMagic Keyboard、Magic Mouse 2はペアリングした状態で出荷されている。買い増ししたMagic Trackpad 2などもUSBケーブルでiMacと接続するだけでペアリングが完了する。特に設定の必要はない

AV機能自体には大いに満足、しかしより大画面で見たいと欲が出る

 27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルの売りは、5,120×2,880ドットの超高解像度と、sRGBからDCI-P3ベースへと25%広げた色域だ。そこでYouTube上の4Kコンテンツや、iPhone 6s Plusで筆者が撮影した4K動画を鑑賞してみたが、まず画質という点では全く不満を感じなかった。アップルはディスプレイ部の輝度、応答速度、コントラスト比、視野角などを公表していないが、いずれの評価ポイントにおいてもコンシューマ向けディスプレイ機の標準レベルを軽くクリアしていると言えるだろう。

 むしろ現状においては、4Kコンテンツの多くが30fpsであること、「iPhone 6s Plus」で撮影できる4K動画の上限が30fpsであることなど、ソース側に不満を感じた。フルHD/60fpsのムービーを見慣れている目には、4Kの解像感に感動を覚えつつも、30fpsの動画には滑らかさに物足りなさを覚えずにはいられなかった。

 次に広くなった色域の効果を確認してみた。前述の通り、DCI-P3ベースの5Kディスプレイは、sRGBのディスプレイよりも25%広い色域を持っており、特に赤と緑の領域を広くカバーしている。そこで今回はDCI-P3の色域をほぼカバーしているAdobe RGBの写真と、sRGBの写真の2つを新型iMacのディスプレイに並べて表示することで、擬似的にDCI-P3とsRGBの色再現性を比較してみた。

 結果はDCI-P3とsRGBの色再現域の差がそのまま表われた。具体的には、赤と緑がそれぞれより微妙なグラデーションで表現され、それでいてクッキリと強く発色されていることが確認できた。特に今回の比較用写真で言えば、花の花弁本来の朱色がAdobe RGBの写真では鮮やかに発色されている一方、それに比べるとsRGBの写真はかなり色が薄く感じる。色彩にこれだけの差が生じるのであれば、今後はAdobe RGBのカラーパレットで写真撮影を行ないたいと思わせるほどだ。

 音質については、最大ボリュームでも音割れなどすることもなく、高音から低音まで素直に出力されているという印象だ。低音にもう少し腹に響くような迫力が欲しい気もするが、そこまで要求するなら素直に外付けスピーカーを用意するべきだろう。また、スピーカーが本体下部に実装されているため、音の位置にどうしても違和感を感じるが、iMacの極限まで薄いハードウェアパッケージングを考慮すれば許容範囲だ。

 さて映画を複数本観ていて感じたことだが、27型iMac Retina 5KディスプレイモデルのAV機能に不満はほとんどなかったものの、「これだけの高解像度ならもっと大画面で観たい」という欲が出てきた。正確に言えば、本製品で4Kコンテンツの魅力に気付かされたと言うべきだろうか。日頃のPCワークで5Kディスプレイを使い始めたら、リビングのTVも高確率で4KTVに買い換えたくなるという弊害はあるかもしれない。

5,120×2,880ドットの解像度では、ブラウザを2枚開いていても、まだほかにウィンドウを表示するだけのスペースが空いている。これだけ広大なスペースがあれば、ディスプレイ2台で作業する必要はなさそうだ。
これはiMovieで4K動画を編集している画面。5Kディスプレイなら、4K動画もドットバイドットでプレビューしながら編集作業が可能だ
Dockに並ぶアイコンを接写してみた。接写した画像をフル画面で表示すればさすがにドットを視認できるが、実際の画面に目を凝らしてみてもドットは確認できない
これはNASAのジョンソン宇宙センターがYouTubeで公開している4K動画。NetflixやAmazonプライムビデオなど4Kコンテンツを視聴できるサービスも増えているが、まだまだ作品数は少ない
左がAdobe RGBのカラープロファイルを持つ画像。右がsRGBのカラープロファイルを持つ画像。この写真では非常に分かりづらいだろうが、DCI-P3をカバーする27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルで直接見ると、花の花弁の朱色の鮮やかさが明らかに異なる

Mac Proのローエンドを上回るも、Premiereの4K書き出しが奮わず

 アップルから借用した27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルは、CPUがCore i5-6600(3.3〜3.9GHz)、メモリがDDR3-1867 SDRAM 8GB、ストレージが2TB Fusion Drive(128GB SSD+2TB HDD)、GPUがAMD Radeon R9 M395(ビデオメモリ2GB搭載)という構成だ。

 今回ベンチマークを実施するにあたって「Mac Pro」の標準構成モデルのローエンドにあたる「クアッドコア、デュアルGPU」をアップルから借用した。多くの方が27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルと比較すると予想したからだ。このMac Proのシステム構成は、CPUがXeon E5-1620(3.7GHz)、メモリがDDR3 ECC-1866 16GB、ストレージが256GB SSD、GPUがデュアルAMD FirePro D300(ビデオメモリ2GB搭載)となる。

 ベンチマークに使用したのは、CPUやメモリの性能を計測する「Geekbench 3.3.4」、CPUとGPUの性能を計測する「CINEBENCH R15」、3Dグラフィックの性能を計測する「GFXBench GL」、ストレージの読み書き速度を計測する「Blackmagic Disk Speed Test」。それに加えて実際の使用環境での性能を比較するため、Finder上でのファイルコピー、「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像、「iMovie」で実時間6分34秒の4K動画を書き出し、「Adobe Premiere Pro CC」で実時間6分34秒の4K動画を書き出しに要する時間を計測した。結果は以下の通りだ。

【検証環境】
27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル Mac Pro
CPU Core i5-6600(3.3〜3.9GHz) Xeon E5-1620(3.7GHz)
GPU AMD Radeon R9 M395 デュアルAMD FirePro D300
メモリ DDR3-1867 SDRAM 8GB DDR3 ECC-1866 16GB
ストレージ 2TB Fusion Drive(128GB SSD、2TB HDD) 256GB SSD
OS OS X El Capitan バージョン10.11.1 OS X Yosemite バージョン10.10.5
【ベンチマーク結果】
27型iMac Retina 5Kディスプレイモデル Mac Pro
Geekbench 3.3.4 Intel(64-bit)
Single-Core Score 4203 3625
Single-Core Score Integer 4416 3605
Single-Core Score Floating Point 4301 3810
Single-Core Score Memory 3581 3295
Multi-Core Score 13069 14648
Multi-Core Score Integer 14868 16588
Multi-Core Score Floating Point 15948 17362
Multi-Core Score Memory 3715 5343
CINEBENCH R15
OpenGL 94.58 fps 75.61 fps
CPU 595 cb 649 cb
GFXBench GL
マンハッタン(オンスクリーン) 1868.2 Frames 3688.2 Frames
マンハッタン(オフスクリーン) 9052.5 Frames 9460.2 Frames
ティラノサウルスレックス(オンスクリーン) 3352.7 Frames 3352.7 Frames
ティラノサウルスレックス(オフスクリーン) 18831 Frames 20617 Frames
算術論理装置2(オンスクリーン) 1798.3 Frames 1798.9 Frames
算術論理装置2(オフスクリーン) 26041 Frames 21918 Frames
ドライバーオーバーヘッド2(オンスクリーン) 1797.4 Frames 900.16 Frames
ドライバーオーバーヘッド2(オフスクリーン) 5107.6 Frames 2766.4 Frames
Texturing(オンスクリーン) 57085 Mtexel/s 45374 Mtexel/s
Texturing(オフスクリーン) 43879 Mtexel/s 45278 Mtexel/s
品質のレンダリング 4381.4 mB PSNR 4408.3 mB PSNR
品質のレンダリング(高精度) 4381.4 mB PSNR 4408.3 mB PSNR
Blackmagic Disk Speed Test
WRITE 1回目 639.1 750.3
WRITE 2回目 633.1 751.5
WRITE 3回目 634 762.7
WRITE 4回目 632.7 750.5
WRITE 5回目 630 750.8
WRITE 平均 633.78 753.16
READ 1回目 1320 938
READ 2回目 1837.1 931
READ 3回目 1703.9 929.2
READ 4回目 1808.5 927.9
READ 5回目 1778.3 925.4
READ 平均 1689.56 930.3
386枚(10.03GB)の画像をファイルコピー
SSD→SSD 22秒87 28秒69
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像
4,912×3,264ドット、自動階調 58秒68 1分4秒27
「iMovie」で実時間6分34秒の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、30fps 4分54秒31 38分40秒33
「Adobe Premiere Pro CC」で実時間6分34秒の4K動画を書き出し(MOV→MP4)
3,840×2,160ドット、30fps 22分44秒82 23分22秒55

 まずはベンチマークアプリの結果から。CPU性能については、Geekbench 3とCINEBENCH R15でMac Proが27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルを上回っている。GPU性能については、GFXBench GLにおいて1080pでベンチマークを実施する「オフスクリーン」ではほぼ並ぶ結果となった。今回Mac ProにはフルHDのディスプレイを接続しているので「オンスクリーン」の結果は参考値として捉えて欲しい。

 ストレージの読み書き速度を計測するBlackmagic Disk Speed Testでは、書き込みはMac Proがわずかに上回るものの、読み込みは27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルが約1.82倍の平均速度を記録した。386枚(10.03GB)の画像をファイルコピーする所要時間においても、27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルが約20%速い結果となった。もちろん128GBのSSDからあふれるような大容量データを処理するような局面では結果は逆転するだろうが、一般的な作業において2TBのFusion Driveが十分な性能を発揮すると言えるだろう。

 さて実際のアプリケーションでの処理速度比較だが、全ての項目において27型iMac Retina 5KディスプレイモデルがMac Proを上回るという意外な結果となった。27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルが258,800円、Mac Proの「クアッドコア、デュアルGPU」モデルが348,800円であり、後者はさらにディスプレイ、キーボード、マウスを購入しなければならないことを考えると、少なくとも今回の2機種という前提であれば前者を選ばない理由はない。

 なおMacProでiMovieを使ったテストで、27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルどころか筆者が常用している2012年モデルの「15型MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」よりも遅い「38分40秒33」という結果が出ている。複数回計測を実施したが同様の結果となったので、何らかの環境固有の不具合が起きている可能性が高い。あくまでも参考値として捉えていただきたい。

価格対性能比は高い! 4K動画編集はiMovieを使おう

 筆者の個人的な事情で恐縮だが、ちょうどメインのMacをリプレイスすることを検討しており、iMacとMac Proのいずれかを購入するか悩んでいた。その筆者が一般消費者目線で考えれば、DCI-P3の広い色域をカバーした5Kディスプレイを搭載し、ローエンドモデルのMac Proを実アプリケーションでの作業時間で勝る27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルの価格対性能比は非常に魅力的だ。

 ただ現時点では、4K動画を快適に編集できる環境として活躍してくれるかは判断が付かない。iMovieでは実時間以下で4K動画を書き出しできたが、Adobe Premiere Pro CCでは実時間の3倍以上の時間がかかった。一般的に動画投稿サイトにアップされる動画の尺は3〜10分ぐらいと言われているが、Adobe Premiere Pro CCでは気軽に投稿することはできないだろう。筆者は日常的にAdobe Premiere Pro CCを使っていたが、今後はプライベードな4K動画ではiMovieを利用したいと思う。

 さて、27型iMac Retina 5Kディスプレイモデルの価格対性能比が高いとは言っても、それはMacに限った話で、WindowsのデスクトップPCであれば本体のみで11〜13万円ぐらいの価格レンジで第6世代(Skylake世代)のCore i5を搭載し、外付けGPUを内蔵した製品が入手できる。それを踏まえるとDCI-P3に対応した5Kディスプレイと、そしてMacであることに、どのくらいの価値を見い出せるかによって、皆さんにとっての本製品の価値が決まってくると言えるだろう。

(ジャイアン鈴木)