Hothotレビュー
Origin PC「EON15-S Pro」
~ゲーミングPCメーカーによるモバイルワークステーション
(2015/4/23 06:00)
Origin PCは、ALIENWAREの元経営陣らが中心となり、ゲーマーのために最高のゲーミングPCを作りたいという情熱から設立されたPCメーカーである。2009年に設立された会社であるが、日本市場では製品が販売されていなかったため、日本での知名度は非常に低かった。しかし、2014年末に同社は日本市場への進出を決定し、直販サイトでの販売を開始した。Origin PCについては、Origin PC Asia PacificのCEOへのインタビュー記事が掲載されているので、そちらを見ていただきたいが、そのOrigin PCのゲーミングノートPC「EON15-S Pro」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
15.6型液晶搭載のモバイルワークステーション
Origin PCは、ゲーミングPCに特化したメーカーであり、その製品種類はゲーミングノートPCとゲーミングデスクトップPCに大別できる。ただし、高性能なCPUとGPUを搭載したゲーミングPCは、CAD/CAMなどのアプリケーションを動かすワークステーションに要求されるスペックを十分に満たすため、同社はゲーミングPCをベースにしたプロフェッショナル向けのワークステーションも発売している。今回試用した「EON15-S Pro」は、15.6型液晶搭載のゲーミングノートPC「EON15-S」をベースとしたモバイルワークステーションであり、筐体などはEON15-Sと同じである。
Origin PCの製品は、非常に柔軟なカスタマイズが可能なことが魅力であり、EON15-SでCPU、メモリ、GPU、ストレージはもとより、筐体色まで多くのカスタマイズメニューが用意されている。試用機の筐体色は「ORIGIN Matte Red」と呼ばれるもので、鮮やかな赤が目を惹く。塗装はつや消しのマットタイプで、ギラギラせず上品な印象だ。指紋なども付きにくく、質感も高い。天板に直線状にへこませたデザイン加工が行なわれていることも、ゲーミングノートPCらしい。
CPUは全てクアッドコア、メモリは32GBまで搭載可能
EON15-S Proは、柔軟なカスタマイズが可能であるが、プロフェッショナル向けのモバイルワークステーションであるため、基本的にハイスペックな構成となる。試用機のCPUはCore i7-4810MQであり、メモリは16GBが実装されていた。Core i7-4180MQは、基本クロックが2.8GHzのクアッドコアCPUだが、自動オーバークロック機能のTurbo Boostテクノロジーにより、最大3.8GHzまでクロックが向上する。また、1つのコアで2つのスレッドを同時実行可能なHyper-Threadingテクノロジーにより、最大8スレッドの同時実行が可能だ。Core i7-4810MQは、モバイル向けCPUの中で上位に位置するCPUだが、EON15-S Proでは、BTOによってさらに上位のCore i7-4910MQやCore i7-4930MX、Core i7-4940MXの搭載も可能だ。また、メモリスロットが4基用意されており、8GB SO-DIMMを4枚装着することで、最大32GBという大容量メモリを搭載できる。
ゲーミングノートPCやモバイルワークステーションでは、GPU性能が重視される。試用機では、GPUとしてRadeon R9 M290X(4GB)が搭載されていたが、BTOによって、GeForce GTX 860M(4GB)やGeForce GTX 970M(6GB)、GeForce GTX 980M(8GB)、Quadro K1100M(2GB)、Quadro K3100M(4GB)の選択も可能だ。モバイルワークステーションらしく、Quadroの選択もできるので、3D CADソフトを使う用途にも好適だ。
試用機のOSは、Windows 8.1であったが、こちらもWindows 7 Professional、Windows 7 Ultimate、Windows 8.1 Professionalに変更することが可能だ(すべて64bit版)。
最大4基のストレージを搭載可能
試用機のストレージは、1TB HDD+120GB SSDという構成になっていた。HDDは2.5インチで、SSDはmSATA仕様である。筐体が比較的大きいため、ストレージ用スペースも潤沢に用意されており、2.5インチのストレージ、mSATA仕様のストレージとも最大2基、合計で4基のストレージを搭載可能だ。2.5インチストレージについては、HDDだけでなく最大1TBのSSDを選択できる。また、単にSSDを選べるというだけでなく、Intel DC S3500やSamsung 850 EVO、OCZ Vectorなど、製品名を指定できることも、性能や信頼性にこだわるOrigin PCらしさが感じられる。さらに、2.5インチのストレージおよび、mSATA仕様のストレージを2基組み合わせたRAID 0/1を同時に利用することも可能であり、最大4TBのSSDを搭載できるなど、ストレージについてもモンスター級だ。
試用機では光学ドライブとして、DVDスーパーマルチドライブを搭載していたが、BD-R/RWドライブやBD-ROMドライブを選択することも可能だ。
EON15-S Proはメンテナンス性も優れている。底面カバーを外すだけで、HDDやSSD、メモリなどにアクセスできる構造になっているので、HDD交換やメモリ増設なども簡単にできる。
非光沢タイプのフルHD液晶パネルを搭載
液晶は15.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDである。解像度は特別高いわけではないが、ドットピッチやGPUとのバランスを考えると、フルHD程度が適当であろう。最近のノートPCでは、表面の仕上げが光沢(グレア)になっているものが多いが、EON15-S Proは、非光沢(ノングレア)タイプの液晶を採用していることが特長だ。非光沢液晶は、表面がつや消し仕上げになっており、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目への負担が少ないことが利点だ。
モバイルワークステーションは、業務で使われることが多いが、非光沢液晶を採用したEON15-S Proは、長時間画面を見続けていても、疲れにくい。ゲーミングノートPCとしても、非光沢液晶の方が見やすいので、好ましいと言える。
液晶上部には、200万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードやタッチパッドのバックライトの点灯色を自由に変更できる
試用機のキーボードは英語配列だが、キーピッチはゆったりしており、配列も標準的なので、快適にタイピングが可能である。テンキーも搭載しているため、数値入力が多いCADソフトや表計算ソフト、会計ソフトなどを使うことが多い人にも適している。
ポイティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。タッチパッドは大き目で、左右のクリックボタンが独立しているため使いやすい。最近は、タッチパッドとクリックボタンが一体化しており、クリック操作はタッチパッドをタップして行なう製品が増えているが、やはり慣れないとドラッグ&ドロップ操作などがしにくい。独立したクリックボタンを備えたEON15-S Proなら、そういった細かい操作のミスも防げる。また、左右のクリックボタンの中央には、スライド式の指紋センサーが搭載されており、指紋認証にも対応する。パームレスト部分はマット仕上げの塗装が施されており、べたつかず、手のひらを乗せた時の感触がよい。
キーボードとタッチパッドには、フルカラーLEDが内蔵されており、利用時に美しく点灯する。タッチパッドのLEDが点灯すると、Origin PCロゴが浮かび上がる。キーボードやタッチパッドのLEDの点灯パターンや発光色は、専用ユーティリティで自由に設定できる。ダンスやウェーブのような動的な点灯パターンが多数用意されているのは、ベースがゲーミングノートPCである本製品ならではだ。
IEEE 1394やeSATAなど多くのインターフェイスをサポート
EON15-S Proは、モバイルワークステーションらしく、インターフェイスも充実している。USB 3.0×2とUSB 3.0兼eSATA、USB 2.0、メディアカードリーダ、DisplayPort、HDMI出力、Mini DisplayPort、Gigabit Ethernetなどに加えて、IEEE 1394も用意されている。IEEE 1394は、最近はあまり利用されなくなったポートであるが、ストレージやビデオカメラなどはIEEE 1394に対応している製品もある。また、ディスプレイ出力が3系統用意されているので、マルチディスプレイでの利用も可能だ。ワイヤレス機能として、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetoothをサポートしているが、無線LANをIEEE 802.11ac対応に変更することもできる。
サウンドにもこだわっており、音質に定評のあるオンキヨー製ステレオスピーカーを搭載するほか、底面に重低音再生用のサブウーファも搭載しており、迫力のあるサウンドを楽しめる。
バッテリは14.8V/5,200mAhと比較的大容量であるが、バッテリ駆動時間は公開されていない。基本的にAC電源を接続して使うためのマシンなので、駆動時間はそれほど重視する必要はないだろう。ACアダプタは200W仕様で、かなり大型だ。
一般的なUltrabookよりも格段に高い性能を実現
EON15-S Proは、高性能CPUとGPU、SSDを搭載したモバイルワークステーションであり、一般的なノートPCよりも高い性能を誇る。そこで、参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 7」、「PCMark 8」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ドラゴンクエストXベンチマーク」、「TOMB RAIDER」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」である。比較用として、レノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Carbon」(第3世代)の値も掲載した。
結果は下の表に示した通りで、PCMark 7の総合スコアは、Core i7-5600Uを搭載したThinkPad X1 Carbonよりも3割近く高い。CPUの性能差はもっと大きいのだが、ThinkPad X1 Carbonは、PCI Express接続の高速SSDを搭載しており、ストレージ性能がEON15-S Proよりも高いため、トータルでの性能差が小さくなっているのだ。しかし、CPUへの負荷が比較的大きいPCMark 8では、スコアの差がより大きくなっている。
3D描画性能を計測する3DMarkでは、CPU統合グラフィックスを利用しているThinkPad X1 Carbonの数倍のスコアを記録しており、FINAL FANTASY XIVベンチマークのスコアも最大で6倍程度の差がある。ベースがゲーミングノートPCだということもあり、TOMB RAIDERのような3Dポリゴンを駆使したゲームも、フルHD解像度で十分遊べる性能を持っているといえる。
EON15-S Pro | ThinkPad X1 Carbon | |
---|---|---|
CPU | Core i7-4810MQ(2.8GHz) | Core i7-5600U(2.6GHz) |
GPU | Radeon R9 M290X | Intel HD Graphics 5500 |
PCMark 7 | ||
PCMark score | 6684 | 5290 |
Lightweight score | 5714 | 3903 |
Productivity score | 5214 | 2898 |
Entertainment score | 5209 | 3544 |
Creativity score | 10087 | 10214 |
Computation score | 20534 | 14466 |
System storage score | 5073 | 5959 |
Raw system storage score | 4817 | 12188 |
PCMark 8 | ||
Home conventional | 4094 | 2446 |
Home accelerated | 4762 | 2949 |
Creative conventional | 4246 | 2575 |
Creative accelerated | 6190 | 3757 |
Work conventional | 3511 | 2842 |
Work accelerated | 4484 | 3851 |
3DMark | ||
Fire Strike Ultra | 1236 | 164 |
Fire Strike Extreme | 2320 | 320 |
Fire Strike | 4639 | 721 |
Sky Diver | 3539 | 2605 |
Cloud Gate | 18235 | 5235 |
Ice Storm Extreme | 110041 | 34609 |
Ice Storm | 115713 | 48912 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | ||
1,280×720ドット 最高品質 | 11577 | 1831 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 12043 | 1895 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 13838 | 2413 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 15735 | 3738 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 15626 | 3709 |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 6973 | 979 |
1,920×1,080ドット 高品質(デスクトップPC) | 7139 | 984 |
1,920×1,080ドット 高品質(ノートPC) | 8853 | 1293 |
1,920×1,080ドット 標準品質(デスクトップPC) | 11994 | 2037 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) | 11956 | 2035 |
ドラゴンクエストXベンチマーク | ||
1,280×720ドット 最高品質 | 6853 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質 | 7344 | 未計測 |
1,280×720ドット 低品質 | 8240 | 未計測 |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 4934 | 未計測 |
1,920×1,080ドット 標準品質 | 5641 | 未計測 |
1,920×1,080ドット 低品質 | 6486 | 未計測 |
TOMB RAIDER(AVERAGE) | ||
1360×768ドット Ultimate | 57.6 | 未計測 |
1360×768ドット Ultra | 98.8 | 未計測 |
1360×768ドット High | 141.3 | 未計測 |
1,920×1,080ドット Ultimate | 39.2 | 未計測 |
1,920×1,080ドット Ultra | 62.9 | 未計測 |
1,920×1,080ドット High | 88.1 | 未計測 |
CrystalDiskMark 3.0.3b | ||
シーケンシャルリード | 462.6MB/s | 1328MB/s |
シーケンシャルライト | 135.2MB/s | 1257MB/s |
512Kランダムリード | 419.4MB/s | 977.1MB/s |
512Kランダムライト | 134.9MB/s | 1235MB/s |
4Kランダムリード | 23.06MB/s | 44.33MB/s |
4Kランダムライト | 71.04MB/s | 105.6MB/s |
4K QD32ランダムリード | 222.0MB/s | 347.9MB/s |
4K QD32ランダムライト | 135.2MB/s | 234.5MB/s |
価格は高価だが、高い性能と拡張性、優れたデザインが魅力
EON15-S Proは、ゲーミングPCに特化したOrigin PCの製品らしく、美しいデザインと高い性能が魅力のモバイルワークステーションであり、インターフェイスの充実度や拡張性の高さは、モバイルワークステーションの中でもトップクラスだ。筐体の質感もよく、キーボードの使い勝手も優れていた。
問題は価格。最小構成時の直販価格は222,317円で、今回の試用機と同じ構成にすると31万円を超える。低価格化が進むPC市場においてはかなり高価ではある。だが、ストレージを4基搭載可能なことなど、価格に見合う価値はある製品であり、3D CADやCAM、シミュレーションといった高い性能が要求される用途には好適であろう。
ベースとなったEON15-Sも、基本的な仕様はほぼ同じである。ノートPCで最新ゲームを快適に遊びたいというのなら、今回試用したEON15-S ProのゲーミングノートPC版であるEON15-Sが有力な選択肢となるだろう。