~指紋認証やワンセグを搭載した防水Androidタブレット |
富士通から登場した「ARROWS Tab Wi-Fi」は、10.1型液晶を搭載したAndroidタブレットである。NTTドコモから発売されている「ARROWS Tab LTE F-01D」(以下F-01D)の姉妹機であり、3G/LTE通信機能は省略されているが、代わりにF-01Dには搭載されていない指紋認証機能を備えている。ARROWS Tab Wi-Fi(F-01Dも同じ)は、IPX5/IPX7準拠の本格的な防水性能を実現していることが魅力だ。IPX5とは、あらゆる方向から噴流を当てても、端末としての機能が失われないことを意味し、IPX7は、常温の水道水で水深1mのところに端末を沈めて30分間放置しても大丈夫ということである。Androidタブレットは各社から登場しているが、ここまで本格的な防水性能を備えた製品はまだ数少ない。
●防水ながら携帯性も十分本体サイズは、262×181×11.3mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は599gである。外観は、ドコモ版のF-01Dと非常によく似ており、中央下部のロゴが「FUJITSU」になっているほか、背面に指紋センサーを搭載している以外は基本的に同じだ。10.1型液晶搭載タブレットとしては標準的なサイズで、重量も比較的軽いため、携帯性は優秀だ。筐体の質感も高く、デザイン的にも満足できる。
ARROWS Tab Wi-Fiの前面。10.1型液晶搭載タブレットとしては標準的なサイズだ | 背面には、背面カメラと指紋センサーが搭載されている | 指紋センサーのアップ |
●ワンセグチューナを搭載するなど、充実した機能を誇る
ARROWS Tab Wi-Fiは、ストレージ容量が異なる2モデルが用意されており、32GBモデルが「FAR75A」、16GBモデルが「FAR70A」となる。それ以外のスペックは両者で共通である。なお、ここでは32GBモデルを試用した。CPUとしては、1GHz動作のOMAP4430を搭載する。OMAP4430はデュアルコアCPUであり、十分なパフォーマンスを実現している。RAMは1GBで、液晶解像度は1,280×800ドットと、10.1型タブレットとしては標準的なスペックだ。液晶は鮮やかで明るく、表示品位は優秀だ。
タッチパネルは静電容量式で、最大10指でのマルチタッチに対応。センサー類も充実しており、GPSや加速度センサー、地磁気センサー、照度センサーに加えて、前述の指紋センサーも搭載する。OSのバージョンは、Android 3.2で、最新の4.0ではないが、その分動作が安定しているともいえる。
さらに、ワンセグチューナを搭載していることもウリの1つだ。ワンセグ放送は解像度が低いため、フル画面表示すると画像の荒さが気になるが、ウィンドウ表示で見る分には十分だ。通信機能としては、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 2.1+EDRをサポート。3G/LTE通信機能を搭載していないことを除けば、全部入りの端末といってよいだろう。カメラは前面が130万画素CMOS、背面が510万画素CMOSという仕様だ。
インターフェイスとしては、外部接続用のmicroUSBを1基とmicroSDカードスロットを備えるのみで、MiniHDMI出力などは備えていない。また、F-01Dでは、microSDカードスロットの横にSIMスロットが用意されているのだが、本製品ではSIMスロットがふさがれており、SIMカードを装着することはできない。
●動画再生時で連続約10時間の駆動が可能
付属品はシンプルで、本体を載せて充電を行なうための卓上ホルダとACアダプタ、PC接続用USBケーブルのみである。ACアダプタも比較的コンパクトで、持ち運びやすい。駆動時間は利用方法によって大きく異なるが、動画再生なら連続約10時間、音楽再生なら連続約83時間とされており、合格点を付けられるだろう。なお、本体に用意されているUSBポートはmicroUSBポートのみだが、USBホスト機能もサポートしており、変換アダプタを使うことで、USBメモリなどのUSBデバイスを利用することが可能だ。
付属の卓上ホルダ。充電以外の機能は持たない | 卓上ホルダに本体を載せたところ | 卓上ホルダに本体を載せると適度な角度がつく |
ACアダプタも比較的小型で持ち運びに便利 | 付属のPC接続用USBケーブル。USBホスト機能もサポートしている |
●多彩な日本語入力方式をサポート
ARROWS Tab Wi-Fiのようなタブレット端末は、いわゆるソフトウェアキーボードまたは手書き入力で入力を行なうが、その入力方式にこだわっていることもARROWS Tab Wi-Fiの魅力だ。日本語変換システムとして変換効率に定評のあるATOKを搭載するほか、「テンキー入力」、「手書き文字入力」、「50音入力」、「QWERTYキー入力」といった、多彩なソフトウェアキーボードをサポートしている。テンキー入力では、キーパッドを左右に同時に表示することも可能で、両手で同時入力をすることもできる。慣れればかなり高速に入力できそうだ。また、手書き文字入力は、入力エリアのマスの数を5から10まで自由に設定できるので、使いやすいマスの大きさを選べる。QWERTYキー入力でも、キーボードを左右に分割表示することが可能だ。
QWERTYキー入力の画面。PCのキーボードに慣れた人にお勧め | 手書き入力の画面。右側にはテンキーが表示されており、使い分けも可能 | 50音入力の画面。PCやケータイに不慣れな人でもわかりやすい |
テンキーを左右に同時表示して、両手打ちを行なうこともできる | QWERTYキーを左右に分割表示することもできる。両手で持って使う場合に便利 | 手書き入力のマスの数は、10から5まで自由に変更できる |
手書き入力のマスの数を最大の10にしたところ | 手書き入力のマスの数を最小の5にしたところ |
●付属アプリケーションも充実
デュアルコアということで、動作もキビキビしており、画面スクロールも高速だ。使っていて速度的に不満を感じることはなかった。スクリーンロックからの復帰も指紋認証で行なえるので、パスワードロックに比べてセキュリティ面でも安心できる。
付属アプリケーションも充実している。29もの辞書が統合された「富士通モバイル統合辞書」やOffice文書の閲覧が可能なDocumnet Viewerなどの実用的なソフトから、「あたまのよくなるゲームランド」や「ホットペッパーグルメ」などのエンタメ系ソフトまでさまざまなアプリがプリインストールされている。ワンセグ視聴ソフトも使いやすく、受信感度も、IS03のワンセグ機能に比べて優れていた。
【動画】Webサイトを開いてスクロールしたり、画面を回転している様子。反応も十分高速だ |
標準のホーム画面 | プリインストールされているアプリケーション(その1) | プリインストールされているアプリケーション(その2) |
29もの辞書が統合された「富士通モバイル統合辞書」 | 角川類語新辞典を使っているところ |
壁紙やウィジェットなどのスタイルを変更するためのアプリもプリインストール | スタイルは標準で6種類用意されており、追加も可能。ステーショナリーを選択したところ | ワンセグ放送視聴中の画面。フル画面表示も可能だ |
●BDレコーダなどに録画した番組を再生できるDLNA連携機能が便利
DLNAおよびDTCP-IPをサポートしており、DLNA対応のBDレコーダなどに録画した地デジ番組などを無線LAN経由でストリーミング再生できるのも非常に便利だ。DLNA対応プレイヤーソフトとして、DiXiM Playerを搭載。実際に試してみたが、ストリーミング画質もハイビジョンに近いクオリティであり、動きも滑らかであった。防水機能を活かして、お風呂に入りながら、録画した番組を見るといった使い方が可能であり、お風呂にゆっくり入る習慣のある人には特にありがたい。
DiXiM Playerを起動すると、同じLAN内にあるDLNAサーバーを自動的に検出する | DLNAサーバーを選べば、そのサーバー内のコンテンツが一覧表示される | コンテンツを選んでタッチするだけで、そのコンテンツの再生が開始される |
●国内メーカーらしい品質の高さと防水機能が魅力
参考のために、ベンチマークソフトの「AnTuTu Benchmark 2.1」を利用して、ベンチマークテストを行なってみた。結果は下の表に示した通りで、Total Scoreは、Android 3.xを搭載したタブレットの中ではやや低い値となっているが、実際の使用感では他の機種と比べても全く遜色はない。
AnTuTu Benchmark 2.1 | ARROWS Tab Wi-Fi Android 3.2 | ThinkPad Tablet Android 3.1 | IdeaPad Tablet A1 Android 2.3 | Sony Tablet P Android 3.2 | Sony Tablet S Android 3.1 | Optimus Pad(L-06C) Android 3.1 | XOOM Wi-Fi TBi11M Android 3.1 | IdeaPad Tablet K1 Android 3.1 |
RAM | 622 | 783 | 325 | 821 | 819 | 818.8 | 828 | 818 |
CPU integer | 1041 | 1146 | 603 | 1173 | 1170 | 1170.2 | 1183 | 1169.4 |
CPU float-point | 748 | 1044 | 151 | 1015 | 1018 | 1017.8 | 1035 | 1016 |
2D Graphics | 283 | 292 | 254 | 223 | 293 | 265.2 | 246 | 291.8 |
3D Graphics | 903 | 859 | 595 | 946 | 811 | 821.8 | 759 | 802.2 |
Database IO | 255 | 315 | 220 | 340 | 325 | 282 | 370 | 175 |
SD Card write | 136 | 106 | 106 | 65 | 95 | 149.8 | 105 | 130.6 |
SD Card read | 192 | 192 | 194 | 97 | 192 | 172.4 | 159 | 130.6 |
Total Score | 4180 | 4737 | 2448 | 4680 | 4723 | 4698 | 4685 | 4533.6 |
最近は、中国メーカー製などの安価なAndroidタブレットも登場しているが、それらの製品はスペックや品質、機能に不満があるものも多い。ARROWS Tab Wi-Fiは、やや値段は高いが、本格的な防水機能を備え、ワンセグチューナも搭載するなど、それだけの価値はある製品だと感じた。国内メーカーならではの品質へのこだわりが魅力であり、台所などの水を扱う場所でも本製品なら安心して使えるので、レシピサイトを見ながら料理を作る場合などにも便利であろう。NTTドコモ版と違って、3G/LTE通信機能はないが、回線契約を行なう必要がないので、気軽に購入できるというメリットもある。
(2012年 2月 1日)
[Text by 石井 英男]