~テンキー付きの13.3型2スピンドルモバイル |
NECが発売している、13.3型液晶搭載の軽量ノート「LaVie M」シリーズの、2011年春モデルが登場。従来モデルは超低電圧版Core i3を搭載するモデルのみがラインナップされていたが、2011年春モデルではフルモデルチェンジし、2スピンドルに生まれ変わったほか、超低電圧版Core i7を搭載する上位モデルが追加され、魅力が高まっている。今回は、Core i7を搭載する最上位モデル「LaVie M LM750/DS6R」を紹介しよう。
●超低電圧版Core i7-660UMを搭載LaVie Mシリーズは、CPUに超低電圧版Core iシリーズを搭載するとともに、薄型・軽量ボディを実現した、いわゆる低価格モバイルのカテゴリーに属するシリーズで、2011年春モデルも、その基本的な位置付けは変わっていない。しかし、最上位モデルとなる「LaVie M LM750/DS6R」(以下、LM750)では、CPUとして超低電圧版Core i7-660UMが採用されており、従来の低価格モバイルとは一線を画す。
Core i7-660UMの動作クロックは、下位モデルが搭載するCore i3-380UMと同じ1.33GHz。また、Core i7ではあるが、コア数は2個で、ハイパースレッディング・テクノロジーにより4スレッド処理に対応しているという点も、Core i3-380UMと同じだ。しかし、Core i7-660UMはL3キャッシュ容量が4MBと多く、さらにターボ・ブースト・テクノロジーをサポートしていることで、最大2.40GHzでのオーバークロック動作が可能。そのため、処理能力はCore i3搭載モデルよりも圧倒的に有利となっている。
そこで今回は、まずはじめにベンチマークテストの結果を紹介しよう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】の4種類。比較用として、Core i3-330UM搭載のASUSTeK Computer「UL20FT-2X330V」と、標準電圧版Core i5-520M搭載のパナソニック「TOUGHBOOK CF-31」の結果も掲載している。ちなみに、UL20FT-2X330Vは、Turbo 33テクノロジーを利用し、CPUおよびメモリのオーバークロック動作時の結果も掲載している。
結果を見ると、Core i3-330Mの標準クロック動作時はもちろん、オーバークロック動作時(1.59GHz)と比較しても優れたパフォーマンスが記録された。Core i5-520Mに対しては、若干劣っている部分があるものの、ほぼ同等レベルのパフォーマンスが発揮されていることがわかる。この結果を見る限り、通常電圧版Core i5搭載ノートに匹敵するパワーを備えていると考えて良さそうだ。超低電圧版Core i3搭載の低価格モバイルでも、ビジネス系アプリケーション利用時であれば、パワーに不満を感じる場面は少ないが、LM750では、より処理の重いアプリケーションも快適に利用できると考えていいだろう。
LaVie M LM750/DS6R | UL20FT-2X330V Turbo33 ON | UL20FT-2X330V Turbo 33 OFF | TOUGHBOOK CF-31 | |
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CPU | Core i7-660UM (1.33/2.40GHz) | Core i3-330UM (1.59GHz) | Core i3-330UM (1.20GHz) | Core i5-520M (2.40/2.93GHz) |
チップセット | Intel HM55 Express | Intel HM55 Express | Intel HM55 Express | Intel QM57 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics |
メモリ | 4GB | 2GB(531MHz) | 2GB | 2GB |
ストレージ | 640GB HDD (WD6400BPVT-26HXZT1) | 320GB HDD (ST9320325AS) | 320GB HDD (ST9320325AS) | 160GB HDD |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Professional |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | ||||
PCMark Suite | 4922 | 3996 | 3556 | 5021 |
Memories Suite | 2614 | 2099 | 2130 | 2560 |
TV and Movies Suite | 2935 | 2824 | 2371 | 3220 |
Gaming Suite | 2604 | 2310 | 2223 | 2523 |
Music Suite | 4852 | 4104 | 3729 | 5151 |
Communications Suite | 5592 | 3398 | 2708 | 6177 |
Productivity Suite | 3565 | 3753 | 3495 | 3773 |
HDD Test Suite | 3464 | 3250 | 4297 | 2791 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A | 5156 |
CPU Score | 5379 | 4306 | 4153 | 5633 |
Memory Score | 4859 | 4346 | 4299 | 6193 |
Graphics Score | 1754 | 1716 | 1741 | 2558 |
HDD Score | 5659 | 5078 | 6659 | 4625 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | ||||
3DMark Score | 1322 | 1215 | 1083 | 1722 |
SM2.0 Score | 409 | 351 | 327 | 503 |
HDR/SM3.0 Score | 529 | 511 | 449 | 721 |
CPU Score | 1867 | 1739 | 1311 | 2355 |
Windows エクスペリエンスインデックス | ||||
プロセッサ | 5.7 | 5.4 | 5.4 | 6.4 |
メモリ | 5.7 | 5.5 | 5.5 | 5.5 |
グラフィックス | 3.7 | 3.8 | 3.8 | 3.9 |
ゲーム用グラフィックス | 4.8 | 5.0 | 5.0 | 5.1 |
プライマリハードディスク | 5.9 | 5.9 | 5.9 | 5.3 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 | ||||
1,280×720ドット | 567 | N/A | N/A | N/A |
1,920×1,080ドット | 319 | N/A | N/A | N/A |
●ボディサイズはほぼそのまま、テンキー付きキーボードを搭載
LaVie Mシリーズの2011年春モデルでは、CPUが強化されているだけでなく、ボディ形状やキーボードにも若干手が加えられている。
ボディサイズは、幅こそ330mmと従来モデルと同じだが、奥行きが223mmと3mm長くなっている。また、従来モデルでは高さが27~30.5mmと、前方がやや薄く、後方ほど厚くなっていたが、LM750では前方から後方まで30.5mmとほぼ均一となった。また、角の丸みが小さくなっている。重量は、実測で1,837gと、従来モデルより若干重くなっているが、携帯性はほぼ従来モデル同様と考えていい。ボディカラーは、今回試用したブレイズレッドに加え、フラッシュホワイト、コスモブラックの計3色を用意。光沢感が強く、少々指紋が目立つ点は気になったが、天板部分はキズが付きにくく、細かなキズなら自己回復によって目立ちにくくなる「スクラッチリペア」仕上げを採用している点は、持ち歩く機会の多いモバイルノートとしては嬉しい配慮だ。
キーボードは、従来モデルのものとは異なる、新仕様のものを採用している。まず、キーとキーとの間が離れた、アイソレーションキーボードを採用したことにより、見た目の印象が大きく異なっている。また、このサイズのモバイルノートとしては珍しく、テンキーが標準搭載されている。このサイズのモバイルノートのキーボードにテンキーが必要かどうかは賛否あると思う。ただ、LaVie Mはヘビーモバイル層ではなく、一般ユーザー層をターゲットとしていることを考えると、テンキーの存在はアピールポイントになるだろう。
ただし、テンキーが追加されたことによって、キーピッチは約18mmと、従来モデルの19mmより狭くなっている。筆者は普段よりノートPCを利用していることもあり、実際に利用しても窮屈さを感じることはなかったが、デスクトップ用のフルサイズキーボードに慣れている人は、少々窮屈さを感じるかもしれない。
ポインティングデバイスは、パッド式のNXパッドを搭載。パッドの操作性は申し分なく、従来モデルでは左右が一体型だったクリックボタンが左右独立となったことで、クリックボタンの操作性も向上している。
テンキー追加に伴い、キーピッチは約18mmと、従来モデルの19mmより狭くなった | ポインティングデバイスのNXパッドは、クリックボタンが左右独立となり操作性が向上している |
●1,366×768ドット表示対応の13.3型ワイド液晶を搭載
液晶パネルは、従来モデル同様、1,366×768ドット表示対応の13.3型ワイドスーパーシャインビューLED液晶を搭載。表面は光沢処理が施されているため、非常に鮮やかな発色が実現されており、表示品質は十分に満足できる。ただ、外光の映り込みは少々激しく、気になる場合もあるだろう。
CPU以外の基本スペックも確認しておこう。チップセットはIntel HM55 Expressだ。第2世代Core iシリーズではなく、チップセットもIntel 6シリーズではないため、SATAポートの不具合は全く関係ない。メインメモリは標準で4GB搭載し、最大8GBまで拡張が可能。ただし、標準でメモリスロットの空きスロットはないため、増設時には標準搭載のメモリモジュールを外して取り付ける必要がある。HDDは、標準で640GBと大容量のドライブを搭載する。
本体右側面にはDVDスーパーマルチドライブを内蔵。従来機種はHDDのみの1スピンドルだったが、重量増を最小限に抑えつつ、2スピンドルに強化されている。
ネットワーク機能は、Gigabit Ethernetと、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANを標準搭載。ただ、従来モデルで標準搭載となっていたWiMAXが非搭載となった点は少々残念だ。
側面ポート類は、左側面にアナログRGB出力とHDMI出力、USB 2.0×1ポートが、右側面にはUSB 2.0×2ポートとGigabit Ethernetが、前面にはヘッドフォン・マイク端子とSDカードスロットがそれぞれ用意されている。3個用意されているUSB 2.0ポートのうち左側面の1ポートは、本体の電源が落ちている状態でも給電が可能なパワーオフUSB充電機能に対応している。
メインメモリは、標準で4GB搭載。本体裏面のフタを開けるとメモリスロットにアクセスでき、最大8GBまで増設可能だ | 640GBのHDDを標準搭載。HDDも本体底面から簡単に交換可能だ |
光学式ドライブは、トレータイプのDVDスーパーマルチドライブを採用 | 左側面のパワーオフUSB充電機能対応USBポートは、付属ソフトで機能設定を行なう |
●処理能力に優れる低価格モバイルを探している人におすすめ
LM750は、従来モデル同様、標準で容量5,800mAhと、容量の大きなバッテリが付属しており、カタログ値では約10時間の長時間バッテリ駆動を実現しているとされている。そこで、省電力設定を、NECオリジナルの省電力設定「ECOモード」に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約5時間27分だった。カタログ値の約10時間よりかなり短くなっている点は少々気になる。ただ、ヘビーなモバイル用途で活用するというのでなければ、約5時間半の駆動時間があれば十分に満足できるはずだ。また、省電力設定を「高パフォーマンス」、バックライト輝度を100%に設定し、無線LANをONにした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート約8Mbps、1,280×720ドット)を連続再生させた場合には、約3時間30分であった。
バッテリ駆動時間 | |
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省電力設定ECOモード、BBench利用、無線LANのみオン | 5時間27分 |
高パフォーマンス、動画再生時 | 約3時間30分 |
カタログ値から考えると、実際のバッテリ駆動時間は今一歩といったところだが、ACアダプタは小型かつ軽量なものが付属しており、本体と同時に持ち歩いてもそれほど苦にならない。LM750はモバイルノートなので、バッテリ駆動時間は長ければ長いほどいいが、小型・軽量のACアダプタで十分に補えると考えていいだろう。
標準で、5,800mAhと大容量のバッテリが付属している | 小型のACアダプタが付属する |
電源ケーブル込みで実測216gと軽量で、本体と同時に持ち歩く場合でも苦にならない | 付属ソフト「ECO見えグラフ」で、消費電力量を日、週、月、年単位でチェックできる |
LM750は、CPUにCore i7-660UMを採用することによる優れた処理能力を実現するとともに、DVDスーパーマルチドライブ、キーボードにテンキーが追加されたことで、利便性も高まっている。また、本体形状が若干変更され、重量がわずかに増えているものの、ほぼ従来モデル同様の携帯性が実現されており、鞄に入れて持ち歩く場合でも、それほど苦にはならないだろう。確かに、本格モバイルノートと比較すると、本体がやや大きく重く、機動性は落ちる。ただ、実売で13万円台で購入できる安さを考えると、コストパフォーマンスはかなり優れる。
Intelのチップセット不具合問題で第2世代Core iシリーズを搭載する製品の発売が遅れている中、旧世代Core iシリーズ搭載製品にも、第2世代Core iシリーズ搭載製品と肩を並べる魅力のある製品がまだまだ存在していることを再認識させられる製品といえる。4月からの新生活に向け、携帯できるノートPCを新調しようと考えている人に特にオススメしたい。
(2011年 2月 28日)
[Text by 平澤 寿康]