~ワイヤレスTVデジタル対応のモバイルノートPC |
NECから登場した「LaVie M LM370/CS」は、13.3型ワイド液晶搭載のモバイルノートPCだ。LaVie Mの秋冬モデルは、CPUの違いやTV機能の有無などによって全3モデルが用意されているが、今回紹介するLaVie M LM370/CS(以下、LM370/CS)は、3モデル中で唯一、ワイヤレスTVデジタルに対応した製品だ。
NECのTV機能は、視聴ソフトとしてWindows Media Centerを利用したものと、NEC独自の「SmartVision」を利用するものに大別できるが、後者のほうが高機能である。LM370/CSは、SmartVisionを利用しており、モバイルノートPCながらTV機能が充実していることが特徴だ。また、秋冬モデルでは、SmartVisionがさらに改良され、Webサイト検索や光ディスクへの書き出し、「外でもVIDEO」といった機能が強化されている。
ただし、今回試用したのは試作機のため、細部やパフォーマンスなどは製品版と異なる可能性があることをご了承いただきたい。
●CPUとして超低電圧版Celeron SU2300を搭載LM370/CSは、基本的にはマイナーチェンジであり、ボディなどは夏モデルと同じである。ボディデザインはオーソドックスかつシンプルなもので、万人受けしそうだ。ボディカラーは、今回試用したグロスブラックの他に、グロスレッドとグロスホワイトが用意されている。本体のサイズは、330×220×27~30.5mm(幅×奥行き×高さ)であり、重量は約1.8kgである。天板も底面もフラットなので、カバンなどからの出し入れもスムーズにできる。
CPUとして、夏モデルと同じく、超低電圧版Celeron SU2300(1.2GHz)を搭載。Celeron SU2300は、Core iシリーズよりも前世代のCore 2ベースのデュアルコアCPUであり、Hyper-ThreadingテクノロジーやTurboBoostテクノロジーは搭載していないが、Windows 7の通常利用には十分なパフォーマンスを実現している。チップセットとしては、グラフィックス統合型のIntel GS45 Expressを採用。メモリは、標準で2GB実装されているが、SO-DIMMスロットは2基用意されており、最大8GBまで増設が可能だ。HDD容量は320GBで、光学ドライブは搭載していない。このあたりの基本スペックは、夏モデルのTVチューナ付属モデルであるLM370/BSと同じだ。
LaVie M LM370/CSの上面。ボディカラーは光沢のあるグロスブラック | 「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。奥行きはDOS/V POWER REPORTとほぼ同じだ |
LaVie M LM370/CSの底面 | SO-DIMMスロットは2基用意されている。標準では2GB DDR3 SO-DIMMが1枚装着されており、1スロット空いている。最大8GBまでの増設が可能だ | ネジを5本外すと、底面カバーを外すことができ、HDDなどにアクセスできる |
●WiMAXを標準搭載
液晶ディスプレイは、13.3型ワイドで、解像度は1,366×768ドットである。スーパーシャインビューLED液晶と呼ばれている光沢タイプの液晶で、表示は鮮やかでコントラストも高い。ただし、外光の映り込みが気になることがある。
キーボードは全87キーで、キーピッチは19mm、キーストローク3mmと、このクラスのキーボードとしてはゆったりしており、特にストロークは深めだ。キー配列も標準的なので快適にタイピングできる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドタイプの「NXパッド」を採用。パッドの操作性は良好だが、左右クリックボタンが独立しておらず、1つのボタンになっているのがやや気になった。
インターフェイスもこのクラスの製品としては充実しており、USB 2.0×3とminiUSB、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、Gigabit Ethernetなどを備えている。USB 2.0ポートのうち、左側面のコネクタは、本体の電源がオフでも給電が可能なパワーオフUSB充電機能に対応している。また、miniUSBポートは、USB Duetと呼ばれる独自機能専用のポートだ。USB Duetとは、本体のHDDの一部を外付けHDDやUSBメモリ代わりに使う機能であり、USBケーブルで他のPCと接続することで、LaVie MのHDDのうちあらかじめ指定した領域がリムーバブルディスクとして他のPCから認識される。メモリカードスロットとしては、SDメモリーカード(SDXC)スロットを搭載する。
秋冬モデルでは無線機能が強化されており、LaVie M全モデルが、WiMAXに標準対応するようになった(夏モデルでは最上位モデルのみ対応)。もちろん、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN機能も搭載している。
●本体にアンテナを接続せずにTV視聴が楽しめる
LM370/CSの最大のウリが、TVチューナを内蔵しているのではなく、外付けのワイヤレスTVデジタルと呼ばれる外付けチューナユニットを利用して、TVの視聴や録画などを行なうことだ。ワイヤレスTVデジタルは、BS/110度CS/地上デジタルの3波対応で、ノートPC本体との間は無線LAN(IEEE 802.11n)で接続されるため、ノートPC本体に邪魔なアンテナケーブルを接続せずに、TVの視聴を楽しめることが魅力だ。ワイヤレスTVデジタルを採用した製品は他にもあるが、いわゆるフルサイズノートPCよりも、LM370/CSのようなモバイルノートPCのほうが、アンテナから離れて自由に持ち運べるというメリットを享受しやすい。例えば、リビングのソファに寝転がってTVを見たり、寝室に持って行って録画番組を再生するなど、ワンセグ対応ケータイのような感覚で、気軽に高画質な映像を楽しめる。
もちろん、ワイヤレスTVデジタルからの無線LANの電波強度が十分でないと、高画質で安定した視聴は難しいが、木造2階建ての筆者の自宅でテストした限りでは、1階のリビングにワイヤレスTVデジタルを設置すれば、2階のどの部屋からでも安定した視聴が可能であった。ちなみに、ワイヤレスTVデジタルとPC本体との通信速度が100Mbps以上なら画質を落とさない通常モード、40~100Mbpsなら、データ量制限モードとなる。また、電波式のリモコンが付属していることも高く評価したい。赤外線方式と違って、指向性や障害物を気にせずに、離れた場所から自由にTV機能などを操作できる。
ワイヤレスTVデジタルの初期設定は、専用の設定ツールが用意されているので、それに従えば初心者でも簡単だ。視聴・録画ソフトの「SmartVision」も高機能かつ使いやすいが、秋冬モデルではさらに機能が強化されており、ドラマなどの主題歌検索が可能になった。また、自分の好きな放送局のみを選んで番組表に表示できる「マイ番組表」機能も便利だ。そのほか、音声のキーはそのままで、再生速度を0.5倍~2倍に変更できる「きこえる変速再生」機能や録画と同時に解析を行ない、無音部分で自動的にチャプターを登録する「オートチャプター」機能、SD画質またはワンセグ画質で録画した番組をSDメモリーカードに持ち出せる「外でもVIDEO」機能など、TV放送をフルに楽しむための機能が満載されている。このあたりは、Windows Media Center標準機能では真似のできないところだ。
●標準で大容量バッテリパックが付属
LaVie Mシリーズには、サイズが同じで容量が異なる、バッテリパック(M)と(L)の2種類のバッテリが用意されている。夏モデルでは、最上位モデルのみ標準でバッテリパック(L)が付属し、他のモデルにはバッテリパック(M)が付属していたが、秋冬モデルでは全モデルに大容量のバッテリパック(L)が付属するようになった。モバイル派には嬉しい変更といえる。バッテリパック(L)装着時の公称駆動時間は約10.3時間と長い。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、6時間16分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。無線LANを常時オンにした状態でこれだけ持てば、ACケーブルを繋がずに、ワイヤレスTVデジタルを利用しても、十分実用的に使えるだろう。
標準で大容量のバッテリパック(L)が付属。14.4V/5800mAhの8セル仕様だ | CDケース(左)とバッテリパック(L)のサイズ比較 |
本体用のACアダプタ。モバイルノートPCとしては標準的なサイズと重量だ | CDケース(左)と本体用のACアダプタのサイズ比較 | ワイヤレスTVデジタル用のACアダプタ。本体用とサイズは同じだが、出力電圧やコネクタ形状が異なる |
●必要にして十分なパフォーマンス
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にNEC「VersaPro UltraLite タイプVC」、レノボ「ThinkPad T410s」、ソニー「VAIO P」(オーナーメードモデル)、ソニー「VAIO P」(店頭モデル)の値も掲載した。
PCMark05のCPU Scoreを見ればわかるように、最新のCore i7やCore i5を搭載した製品には及ばないものの、Atom搭載機に比べれば2倍程度のパフォーマンスを実現しており、プリインストールされているWindows 7 Home Premium(64bit版)も快適に動作する。単体GPUを搭載していないため、最新ゲームをプレイするには向かないが、Webブラウズやメールチェック、文書作成といった、一般的な用途なら不満のないパフォーマンスだ。
LaVie M LM370/CS | VersaPro UltraLite タイプVC | ThinkPad T410s | VAIO P(オーナーメードモデル) | VAIO P(店頭モデル) | |
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CPU | Celeron SU2300 (1.2GHz) | Core i7-620UM (1.06GHz) | Core i5-430M (2.26GHz) | Atom Z560 (2.13GHz) | Atom Z530 (1.6GHz) |
ビデオチップ | Intel GS45内蔵コア | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | US15X内蔵コア | US15W内蔵コア |
PCMark05 | |||||
PCMarks | N/A | 5092 | 5677 | 1468 | 1054 |
CPU Score | 2796 | 3596 | 7375 | 1808 | 1369 |
Memory Score | 2617 | 3965 | 6184 | 2571 | 2215 |
Graphics Score | 1189 | 1684 | 2610 | 263 | 224 |
HDD Score | 4693 | 16265 | 4291 | 11585 | 3311 |
3DMark03 | |||||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 1806 | 2714 | 4101 | 457 | 355 |
CPU Score | 443 | 771 | 1068 | 232 | 202 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||
HIGH | 1247 | 1631 | 2458 | 463 | 404 |
LOW | 1826 | 2410 | 3808 | 809 | 672 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||
DP | 69.3 | 100 | 96.63 | 31.87 | 30.53 |
HP | 100 | 100 | 99.97 | 68.07 | 73.37 |
SP/LP | 100 | 100 | 100 | 97.7 | 99.97 |
LLP | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.77 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 65 | 27 | 21 | 87 | 84 |
HP(CPU負荷) | 42 | 13 | 12 | 97 | 85 |
SP/LP(CPU負荷) | 29 | 8 | 7 | 94 | 55 |
LLP(CPU負荷) | 20 | 8 | 6 | 92 | 56 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||
シーケンシャルリード | 71.46MB/s | 164.2MB/s | 36.20MB/s | 82.46MB/s | 61.05MB/s |
シーケンシャルライト | 69.21MB/s | 39.58MB/s | 40.05MB/s | 51.33MB/s | 39.21MB/s |
512Kランダムリード | 20.30MB/s | 142.6MB/s | 23.30MB/s | 76.98MB/s | 58.53MB/s |
512Kランダムライト | 30.87MB/s | 34.53MB/s | 24.25MB/s | 44.80MB/s | 1.606MB/s |
4Kランダムリード | 0.334MB/s | 7.629MB/s | 0.425MB/s | 7.702MB/s | 4.485MB/s |
4Kランダムライト | 0.860MB/s | 13.66MB/s | 0.961MB/s | 17.18MB/s | 1.731MB/s |
BBench | |||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 未計測 | 4時間23分 | 4時間15分 | 4時間48分 | 4時間17分 |
Lバッテリ | 6時間16分 | 未計測 | なし | 未計測 | 未計測 |
Xバッテリ | なし | なし | なし | なし | なし |
●好きな場所でTV放送を気軽に楽しむには最適な製品
LM370/CSは、3波対応チューナユニットが付属しながら、実売予想価格は125,000円前後とされており、コストパフォーマンスはなかなか優秀だ。たくさん番組を録画するには、HDD容量がやや心許ないが、USB経由で接続した外部HDDにも番組を録画できるので、その弱点もカバーできる。アンテナケーブルを繋がずに、高画質でデジタルTVを楽しめるのは非常に便利であり、他のチューナ内蔵ノートPCでは真似のできない、LM370/CSならではのメリットだ。ノートPCで、カジュアルにTV番組を楽しみたいという人にはお勧めの製品だ。
(2010年 9月 15日)
[Text by 石井 英男]