NEC「LaVie M LM370/CS」
~ワイヤレスTVデジタル対応のモバイルノートPC



LaVie M LM370/CS

9月16日 発売

価格:オープンプライス(125,000円前後)



 NECから登場した「LaVie M LM370/CS」は、13.3型ワイド液晶搭載のモバイルノートPCだ。LaVie Mの秋冬モデルは、CPUの違いやTV機能の有無などによって全3モデルが用意されているが、今回紹介するLaVie M LM370/CS(以下、LM370/CS)は、3モデル中で唯一、ワイヤレスTVデジタルに対応した製品だ。

 NECのTV機能は、視聴ソフトとしてWindows Media Centerを利用したものと、NEC独自の「SmartVision」を利用するものに大別できるが、後者のほうが高機能である。LM370/CSは、SmartVisionを利用しており、モバイルノートPCながらTV機能が充実していることが特徴だ。また、秋冬モデルでは、SmartVisionがさらに改良され、Webサイト検索や光ディスクへの書き出し、「外でもVIDEO」といった機能が強化されている。

 ただし、今回試用したのは試作機のため、細部やパフォーマンスなどは製品版と異なる可能性があることをご了承いただきたい。

●CPUとして超低電圧版Celeron SU2300を搭載

 LM370/CSは、基本的にはマイナーチェンジであり、ボディなどは夏モデルと同じである。ボディデザインはオーソドックスかつシンプルなもので、万人受けしそうだ。ボディカラーは、今回試用したグロスブラックの他に、グロスレッドとグロスホワイトが用意されている。本体のサイズは、330×220×27~30.5mm(幅×奥行き×高さ)であり、重量は約1.8kgである。天板も底面もフラットなので、カバンなどからの出し入れもスムーズにできる。

 CPUとして、夏モデルと同じく、超低電圧版Celeron SU2300(1.2GHz)を搭載。Celeron SU2300は、Core iシリーズよりも前世代のCore 2ベースのデュアルコアCPUであり、Hyper-ThreadingテクノロジーやTurboBoostテクノロジーは搭載していないが、Windows 7の通常利用には十分なパフォーマンスを実現している。チップセットとしては、グラフィックス統合型のIntel GS45 Expressを採用。メモリは、標準で2GB実装されているが、SO-DIMMスロットは2基用意されており、最大8GBまで増設が可能だ。HDD容量は320GBで、光学ドライブは搭載していない。このあたりの基本スペックは、夏モデルのTVチューナ付属モデルであるLM370/BSと同じだ。

LaVie M LM370/CSの上面。ボディカラーは光沢のあるグロスブラック「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。奥行きはDOS/V POWER REPORTとほぼ同じだ
LaVie M LM370/CSの底面SO-DIMMスロットは2基用意されている。標準では2GB DDR3 SO-DIMMが1枚装着されており、1スロット空いている。最大8GBまでの増設が可能だネジを5本外すと、底面カバーを外すことができ、HDDなどにアクセスできる

●WiMAXを標準搭載

 液晶ディスプレイは、13.3型ワイドで、解像度は1,366×768ドットである。スーパーシャインビューLED液晶と呼ばれている光沢タイプの液晶で、表示は鮮やかでコントラストも高い。ただし、外光の映り込みが気になることがある。

 キーボードは全87キーで、キーピッチは19mm、キーストローク3mmと、このクラスのキーボードとしてはゆったりしており、特にストロークは深めだ。キー配列も標準的なので快適にタイピングできる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドタイプの「NXパッド」を採用。パッドの操作性は良好だが、左右クリックボタンが独立しておらず、1つのボタンになっているのがやや気になった。

 インターフェイスもこのクラスの製品としては充実しており、USB 2.0×3とminiUSB、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、Gigabit Ethernetなどを備えている。USB 2.0ポートのうち、左側面のコネクタは、本体の電源がオフでも給電が可能なパワーオフUSB充電機能に対応している。また、miniUSBポートは、USB Duetと呼ばれる独自機能専用のポートだ。USB Duetとは、本体のHDDの一部を外付けHDDやUSBメモリ代わりに使う機能であり、USBケーブルで他のPCと接続することで、LaVie MのHDDのうちあらかじめ指定した領域がリムーバブルディスクとして他のPCから認識される。メモリカードスロットとしては、SDメモリーカード(SDXC)スロットを搭載する。

 秋冬モデルでは無線機能が強化されており、LaVie M全モデルが、WiMAXに標準対応するようになった(夏モデルでは最上位モデルのみ対応)。もちろん、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN機能も搭載している。

LaVie M LM370/CSは、光沢タイプの13.3型ワイド液晶を採用。解像度は1,366×768ドットだキーボードは全87キーで、キーピッチは19mm、キーストローク3mmと、このクラスのキーボードとしてはゆったりしており、キー配列も標準的なのでタイピングしやすいポインティングデバイスとして、NXパッドを搭載。パッドの操作性は良好だが、左右クリックボタンが独立しておらず、1つの長いボタンとなっている
右側面には、USB 2.0×2、miniUSB 2.0、Gigabit Ethernetが用意されている左側面には、ミニD-Sub15ピンやHDMI出力、USB 2.0が用意されている。こちらのUSB 2.0ポートは、パワーオフUSB充電機能に対応している前面には、ヘッドフォン出力やマイク入力、SDメモリーカードスロットが用意されている

●本体にアンテナを接続せずにTV視聴が楽しめる

 LM370/CSの最大のウリが、TVチューナを内蔵しているのではなく、外付けのワイヤレスTVデジタルと呼ばれる外付けチューナユニットを利用して、TVの視聴や録画などを行なうことだ。ワイヤレスTVデジタルは、BS/110度CS/地上デジタルの3波対応で、ノートPC本体との間は無線LAN(IEEE 802.11n)で接続されるため、ノートPC本体に邪魔なアンテナケーブルを接続せずに、TVの視聴を楽しめることが魅力だ。ワイヤレスTVデジタルを採用した製品は他にもあるが、いわゆるフルサイズノートPCよりも、LM370/CSのようなモバイルノートPCのほうが、アンテナから離れて自由に持ち運べるというメリットを享受しやすい。例えば、リビングのソファに寝転がってTVを見たり、寝室に持って行って録画番組を再生するなど、ワンセグ対応ケータイのような感覚で、気軽に高画質な映像を楽しめる。

 もちろん、ワイヤレスTVデジタルからの無線LANの電波強度が十分でないと、高画質で安定した視聴は難しいが、木造2階建ての筆者の自宅でテストした限りでは、1階のリビングにワイヤレスTVデジタルを設置すれば、2階のどの部屋からでも安定した視聴が可能であった。ちなみに、ワイヤレスTVデジタルとPC本体との通信速度が100Mbps以上なら画質を落とさない通常モード、40~100Mbpsなら、データ量制限モードとなる。また、電波式のリモコンが付属していることも高く評価したい。赤外線方式と違って、指向性や障害物を気にせずに、離れた場所から自由にTV機能などを操作できる。

 ワイヤレスTVデジタルの初期設定は、専用の設定ツールが用意されているので、それに従えば初心者でも簡単だ。視聴・録画ソフトの「SmartVision」も高機能かつ使いやすいが、秋冬モデルではさらに機能が強化されており、ドラマなどの主題歌検索が可能になった。また、自分の好きな放送局のみを選んで番組表に表示できる「マイ番組表」機能も便利だ。そのほか、音声のキーはそのままで、再生速度を0.5倍~2倍に変更できる「きこえる変速再生」機能や録画と同時に解析を行ない、無音部分で自動的にチャプターを登録する「オートチャプター」機能、SD画質またはワンセグ画質で録画した番組をSDメモリーカードに持ち出せる「外でもVIDEO」機能など、TV放送をフルに楽しむための機能が満載されている。このあたりは、Windows Media Center標準機能では真似のできないところだ。

外付けのTVチューナユニット「ワイヤレスTVデジタル」が付属。その名の通り、ノートPC本体とは無線LAN経由で接続されるため、ノートPC本体にアンテナケーブルを接続する必要がない縦置き用スタンドが付属しており、場所を取らずに設置できるワイヤレスTVデジタルの背面。LAN、B-CASカードスロット、BS/110度CSデジタル用アンテナ、地上デジタル用アンテナが用意されている
電波式のリモコンが付属。赤外線方式のリモコンとは違って、指向性や障害物を気にせずに使えるので便利リモコンの受信ユニット。リモコンを利用する場合は、受信ユニットをUSBポートに装着するワイヤレスTVデジタルの初期設定は、専用の設定ツールを使っておこなう。ウィザードの指示に従っていくだけで簡単に設定できる
まず、アクセスポイントを検索し、接続するワイヤレスTVデジタルを選ぶワイヤレスネットワークの速度を調べ、モードを自動設定してくれる。100Mbps以上の速度があれば通常モードとなり、フルHD画像をそのまま転送するSmartVisionでは、録画モードは4種類用意されており、外でもVIDEOの画質もSD画質とワンセグ画質を選べる
秋冬モデルでは、Web検索機能が強化されており、従来の番組検索や人名検索に加えて、主題歌の検索もできるようになった主題歌情報が用意されている番組なら、そのままAmazonで商品を検索できるBS/110度CS/地デジの中から好きな放送局を選んで登録できるマイ番組表機能も便利。マイ番組表は4つまで保存できるので、家族がそれぞれ自分専用の番組表を利用できる
マイ番組表の表示例。こちらはマウス操作用のUIリモコン操作用の10フィートUIも用意されている。13.3型ワイド液晶搭載のLaVie Mの場合、そう離れた場所から見るわけではないが、リモコン操作時は便利だ10フィートUIでのマイ番組表の表示例。一度に何局分表示するかもカスタマイズできる

●標準で大容量バッテリパックが付属

 LaVie Mシリーズには、サイズが同じで容量が異なる、バッテリパック(M)と(L)の2種類のバッテリが用意されている。夏モデルでは、最上位モデルのみ標準でバッテリパック(L)が付属し、他のモデルにはバッテリパック(M)が付属していたが、秋冬モデルでは全モデルに大容量のバッテリパック(L)が付属するようになった。モバイル派には嬉しい変更といえる。バッテリパック(L)装着時の公称駆動時間は約10.3時間と長い。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、6時間16分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。無線LANを常時オンにした状態でこれだけ持てば、ACケーブルを繋がずに、ワイヤレスTVデジタルを利用しても、十分実用的に使えるだろう。

標準で大容量のバッテリパック(L)が付属。14.4V/5800mAhの8セル仕様だCDケース(左)とバッテリパック(L)のサイズ比較
本体用のACアダプタ。モバイルノートPCとしては標準的なサイズと重量だCDケース(左)と本体用のACアダプタのサイズ比較ワイヤレスTVデジタル用のACアダプタ。本体用とサイズは同じだが、出力電圧やコネクタ形状が異なる

●必要にして十分なパフォーマンス

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にNEC「VersaPro UltraLite タイプVC」、レノボ「ThinkPad T410s」、ソニー「VAIO P」(オーナーメードモデル)、ソニー「VAIO P」(店頭モデル)の値も掲載した。

 PCMark05のCPU Scoreを見ればわかるように、最新のCore i7やCore i5を搭載した製品には及ばないものの、Atom搭載機に比べれば2倍程度のパフォーマンスを実現しており、プリインストールされているWindows 7 Home Premium(64bit版)も快適に動作する。単体GPUを搭載していないため、最新ゲームをプレイするには向かないが、Webブラウズやメールチェック、文書作成といった、一般的な用途なら不満のないパフォーマンスだ。

LaVie M LM370/CSVersaPro UltraLite タイプVCThinkPad T410sVAIO P(オーナーメードモデル)VAIO P(店頭モデル)
CPUCeleron SU2300 (1.2GHz)Core i7-620UM (1.06GHz)Core i5-430M (2.26GHz)Atom Z560 (2.13GHz)Atom Z530 (1.6GHz)
ビデオチップIntel GS45内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアUS15X内蔵コアUS15W内蔵コア
PCMark05
PCMarksN/A5092567714681054
CPU Score27963596737518081369
Memory Score26173965618425712215
Graphics Score118916842610263224
HDD Score4693162654291115853311
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)180627144101457355
CPU Score4437711068232202
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH124716312458463404
LOW182624103808809672
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP69.310096.6331.8730.53
HP10010099.9768.0773.37
SP/LP10010010097.799.97
LLP99.9710099.9799.7799.97
DP(CPU負荷)6527218784
HP(CPU負荷)4213129785
SP/LP(CPU負荷)29879455
LLP(CPU負荷)20869256
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード71.46MB/s164.2MB/s36.20MB/s82.46MB/s61.05MB/s
シーケンシャルライト69.21MB/s39.58MB/s40.05MB/s51.33MB/s39.21MB/s
512Kランダムリード20.30MB/s142.6MB/s23.30MB/s76.98MB/s58.53MB/s
512Kランダムライト30.87MB/s34.53MB/s24.25MB/s44.80MB/s1.606MB/s
4Kランダムリード0.334MB/s7.629MB/s0.425MB/s7.702MB/s4.485MB/s
4Kランダムライト0.860MB/s13.66MB/s0.961MB/s17.18MB/s1.731MB/s
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)未計測4時間23分4時間15分4時間48分4時間17分
Lバッテリ6時間16分未計測なし未計測未計測
Xバッテリなしなしなしなしなし

●好きな場所でTV放送を気軽に楽しむには最適な製品

 LM370/CSは、3波対応チューナユニットが付属しながら、実売予想価格は125,000円前後とされており、コストパフォーマンスはなかなか優秀だ。たくさん番組を録画するには、HDD容量がやや心許ないが、USB経由で接続した外部HDDにも番組を録画できるので、その弱点もカバーできる。アンテナケーブルを繋がずに、高画質でデジタルTVを楽しめるのは非常に便利であり、他のチューナ内蔵ノートPCでは真似のできない、LM370/CSならではのメリットだ。ノートPCで、カジュアルにTV番組を楽しみたいという人にはお勧めの製品だ。

バックナンバー

(2010年 9月 15日)

[Text by 石井 英男]