カンファレンスの開幕では、ソニー・ピクチャーズが1月より配給する映画「グリーン・ホーネット」の主役であるセス・ローゲン氏(左)とジェイ・チョウ氏(中央)とともに、劇中に出てくる車に乗って登場したストリンガー氏 |
例年通りSonyは、CES開幕前日となる現地時間の5日に会場の同社ブース内でプレスカンファレンスを開催。最高経営責任者(CEO)のハワード・ストリンガー氏をはじめとした同社幹部が2011年に向けた中核製品/サービスを紹介した。
同社/グループが掲げる2011年の至上命題の1つは「3D立体視をパーソナルなものにする」ということ。同社に限らず、2010年は3D元年とも言える年で、3D対応TVやPCなどのハード、そしてBlu-ray Discや映画、ゲームなどのコンテンツが立ち上がった。しかし、その数はまだ少数で、価格も割高だ。
そんな中、自ら「(3D対応製品について)業務用レンズから民生品まで取りそろえる唯一のメーカー」を標榜するSonyは、3Dのハードルを押し下げ、より一般の人が、より簡単/身近に楽しめるよう、ラッシュとも言うべき3D製品攻勢をかける。
その最たる例が3D撮影に対応する「ハンディカム」と「Bloggie」の投入。前者はレンズ、1,920×1,080ドットのイメージセンサー、そして画像処理エンジンを2基ずつ搭載したカムコーダー。後者も2つのレンズを搭載した、モバイルスナップカメラ。民生の3Dカメラでは他社を後追いする立場の同社だが、Bloggieは250ドル程度という低価格で、誰にでも手の届く価格帯に一気に3Dカメラ製品を拡大する。また、両製品とも、モニターは裸眼立体視に対応するのもおもしろい。
レンズ、イメージセンサー、画像エンジンを全て2基備えた3Dハンディカム | 気軽に持ち運んで3Dを撮影できるBloggie 3D | モニターは裸眼立体視対応 |
3Dを見るという点で、家庭において基本的な主役となるのはTVだが、今回Sonyは、個人が場所を選ばずに視聴できる製品群を披露した。
1つは、3D対応のVAIO F。同社は9月にドイツで行なわれた展示会IFAにて、3D対応VAIOの参考展示を行ない、同じマシンは10月に日本で行なわれたCEATECにも展示された。当時製品のシリーズ名は明かされてなかったが、今回VAIO Fとなることが発表された。また、展示機の外観もこれまでのものとは変更されていた。
CEATECに展示されていた3D VAIO | メガネはこのように固定されていた |
VAIO Fの3Dの特徴は、同社のBraviaシリーズで培われた240Hzの4倍速駆動に対応し、より高品位な映像が楽しめる点。2D映像の3D変換機能/ボタンも搭載する。
CEATECの展示機は、メガネが本体から1mほど離れた定位置に固定されていたのに対し、今回の展示機はメガネが解放されていたので、デモの映像を近寄ってじっくり鑑賞してみたが、現在3D Vision用として販売されている120Hzの液晶ディスプレイで見られるクロストークは皆無に近かった。もちろん、正確な比較をするには、同じ映像を見る必要があるし、同じパネルでも映像のコントラストなどにより、クロストークの見え方は異なるが、かなり高品位であると感じた。
もう1つ発見だったのは、ゲームが3Dで動いていた点。VAIO Fのデモ機は5~6台あったが、見た限り、ゲームを動かしていたのは1台のみで、ロストプラネット2が動作していた。VAIO FはGPUにGeForce GT 540Mを搭載するが、前述の通り3Dには3D Visionを使っていない。そのため、どのようにしてゲームの3D化を実現しているのかは不明だ。
ブース担当者は、ミドルレンジのGPU+240HzフルHDパネルでハイレベルな3Dゲームは難しいと説明するが、ここで重要なのは動作するかどうかという点。また、大きな工数をかけてまでGPUドライバに手を入れていることも考えにくいので、ある程度汎用的に多くのポリゴンゲームが3Dで動作するのではないかと思われる。
3D対応となったVAIO F | 2D/3D変換ボタンを装備 | 3Dは240Hzのアクティブシャッターで、独自のメガネを利用 |
1台だけロストプラネット2が3Dで動作していた | 本体左側面。USB 3.0端子が見える | 右側面に光学ドライブ |
なお、3Dには対応しないが、これ以外にも、2011年に投入する新型の「VAIO Design Concept PC」がブースに展示されていた。2機種あり、1つは幾何学的模様が筐体全体にエンボス加工されたものと、マットなブラックでまとめた、大人向けデザインの13型ノート製品。もう1つは、光沢のある蛍光色が印象的な14型ノートだ。いずれもCPUはSandy Bridge。また、先だってUnveiledの会場でAMDが展示してたFusion APU搭載機はVAIO Yとして展示されていた。
もう1つのパーソナル3Dビューワ製品であり、かつ今回の展示品のなかでもひときわ注目を集めたのが、ヘッドマウントディスプレイだ。まだ、製品化の目処の立っていない、コンセプトモデルに近い技術展示だが、複数のデモ機が用意され、来場者が自由に試せるようになっていた。
ゴーグル状の本体の中には、1,280×720ドットという高解像度表示が可能な有機LEDを2基内蔵している。装着すると、右目には右目用の、左目には左目用の映像が映る。原理的にはアクティブシャッターに近いが、これも裸眼と言えば裸眼なのかもしれない。また、現行の液晶のアクティブシャッターでは、クロストークが見えるが、ヘッドマウントディスプレイでは、逆の目の映像は全く届かないため、原理的にクロストークが発生しない。加えて、映像素子が有機LEDなので、3D映像の画質は格段に高くなる。
真っ白な筐体に、目の部分と耳の部分にあしらわれた青いLEDが光る姿は、映画のトロンを彷彿とさせるサイバーな雰囲気で、会場での評判も上々だった。
ただし、重みがあるため、手で持っていないとずれ落ちてしまう。また、映像ソースとは太いケーブルでつながっているなど、製品化に当たって解決しなければならない点も散見される。重量バランスの解決はそれほど困難ではないだろう。しかし、製品版で無線化を図るとなると、帯域やバッテリの問題が出てくる。製品化に当たってはそのあたりの見極めが、行く末を占う要素となりそうだ。
技術展示された3Dヘッドマウントディスプレイ | 実際に装着したところ |
目の部分と耳の部分が青く光る | 内部はこんな感じ。ヘッドフォンは仮想5.1ch対応 |
このほか、注目度の高かった製品としては、Sony EricsonのスマートフォンXperia arcが展示された。製品名が示すとおり、横からみるとアーチを描いたようなデザインとなっており、最薄部は8.7mmとなっている。
OSはAndroid 2.3で、マルチタッチに対応。Sonyと共同開発した動画エンジンMobile Bravia Engineを搭載し、YouTubeなどストリーミング動画で発生しがちなブロックノイズの除去のほか、色やコントラストなどの自動補正により高画質化を図る。
CPUは1GHzのSnapdragon。液晶は4.2型で解像度はフルWVGA。800万画素のカメラを搭載し、720pの動画撮影も可能。本体サイズは125×63×8.7mm(幅×奥行き×高さ)。2011年第1四半期に投入予定とされている。
Xperia arc | 側面は微妙にアーチを描いた形状で、薄さが目立つ |
背面 | シルバーモデルもある |
(2011年 1月 7日)
[Reported by 若杉 紀彦]