BRULE「Viliv N5」
~重さ388gの超小型Windows PC



Viliv N5

発売中
価格:77,800円



 BRULEから登場した「Viliv N5」は、韓国Viliv製のクラムシェル型超小型Windows PCである。Viliv N5のサイズは、172×86.5×25.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約388gしかない。キーボードを備えたフルスペックのWindows PCでありながら、ジャケットやジーンズのポケットにラクラク入るサイズが魅力だ。この種の製品としては、工人舎から2009年10月に発売された「PM」やオンキヨーから2009年12月に発売された「BX」などがあるが、OSがWindows XPのみで、ストレージ容量が少ないといった不満もあった。Viliv N5では、そうした不満が解決されており、超小型PCとしての完成度はさらに向上している。

●ボディの質感は良好

 Viliv N5は、BRULE以外にもハンファ・ジャパンからも発売されているが、扱っているモデルの仕様が多少異なる。BRULEでは、Windows 7 StarterモデルとWindows 7 Home Premiumモデルを販売しており、両モデルともストレージは64GB SSDで、GPSを搭載している。それに対し、ハンファ・ジャパンではWindows XP Home EditionモデルとWindows 7 Starterモデルを販売しており、ストレージは前者が16GB SSD、後者が32GB SSDとなる。また、ハンファ・ジャパンで販売しているWindows XP Home EditionモデルにはGPSが搭載されていない(Windows 7 StarterモデルはGPS搭載)。それ以外のCPUやメモリなどの仕様は全モデル共通だ。

 ここでは、BRULEとハンファ・ジャパンがともに扱っているWindows 7 Starterモデルを試用する機会を得たので、レビューしていきたい(ストレージは32GB SSD)。

 Viliv N5のボディカラーはブラックで、表面はゴムのような柔らかい感触の塗装がされており、質感も良好だ。ヒンジは可変トルクタイプで、ある程度まで閉じるとパタンと最後までしっかり閉じるようになっている。液晶を180度開くことはできないが、150度以上は開けるので、実用上は十分であろう。

Viliv N5の上面。ボディカラーはブラックで、つや消しのゴムっぽい手触りの塗装が施されている「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。Viliv N5の小ささがよくわかる最も一般的な封筒である「長形4号」とのサイズ比較。長形4号のサイズは90×205mmである
Viliv N5の底面。底面のほとんどをバッテリが占めており、すっきりしたデザインになっている。なお、製品版では4隅に半球状透明ラバーが貼られるので、机の上に置いた場合でも、より安定したタイピングが可能になるバッテリを外したところ。中央上部にSIMスロットが見えるが、日本で販売されているモデルでは、WWAN(3G)には対応していない試用機の重量は、実測で385gであった

●HT対応のAtom Z520と1GBメモリを搭載
Viliv N5のデバイスマネージャーを開いたところ。HT対応のAtom Z520を搭載しているので、2個のプロセッサとして認識されている

 Viliv N5のPCとしての基本スペックは、ネットブックに近い。CPUとして、Atom Z520(1.33GHz)を、チップセットとしてIntel US15Wを搭載する。Atom Z520は、Hyper-Threadingテクノロジー(以下HT)をサポートしており、2スレッドの同時実行が可能だ。メモリは1GB固定で、増設はできない。

 工人舎のPMはHTテクノロジー非対応のAtom Z510(1.10GHz)を、オンキヨーのBXは、HT対応のAtom Z515(1.20GHz)を搭載し、メモリは両製品とも512MB固定であった。Viliv N5では、PMやBXに比べて、CPUやメモリが強化されており、パフォーマンスも向上している。

●タッチパネル液晶とオプティカルジョイスティックを搭載

 Viliv N5の液晶ディスプレイは4.8型ワイドで、解像度は1,024×600ドットである。パネルサイズは小さいが、解像度は一般的なネットブックと同等であり、各種アプリケーションを問題なく利用できる。液晶のサイズや解像度については、工人舎のPMやオンキヨーのBXと同じだが、ドットピッチが狭く、文字はかなり小さくなる。液晶はタッチパネル搭載で、スタイラスペンなどでの操作が可能だ。今回試用したモデルには添付されていなかったが、製品版にはタッチペンとして使えるストラップが付属するそうだ。タッチパネルを搭載し、表面が光沢仕上げになっているため、外光の映り込みが気になることがあるが、室内などでの視認性は優秀だ。

 さらに、オプティカルジョイスティックと呼ばれるポインティングデバイスを搭載していることも魅力だ。オプティカルジョイスティックは、光学式マウスを裏返したようなデバイスで、センサーに指を載せて、指を滑らせることでポインティング操作をおこなえる。オプティカルジョイスティックは、キーボード右上に配置されており、キーボードの左上隅に左右のクリックボタンが用意されている。オプティカルジョイスティックとほぼ同じ仕組みのデバイスは、オンキヨーのBXやシャープのNetWalkerにも採用されており、操作性は優秀だ。立ったままでも本体を両手で持ってポインティング操作ができるので便利だ。

1,024×600ドット表示の4.8型ワイド液晶を搭載。表面にタッチパネルがあり、光沢仕上げになっているので、外光の映り込みが気になりやすいキーボード右上に、オプティカルジョイスティックが搭載されており、指を上で滑らせることでポインティング操作を行なえるキーボードの左上隅に、左右のクリックボタンが用意されている

●キーボードの配列は特殊だが、キータッチは良好
キーボードは5列配列で、配置はかなり変則的だ。ただし、中央部のキーピッチは約14mmと比較的広い

 筐体サイズが小さいため、キーボードの配列はやや特殊なものとなっている。一般的なノートPCのキーボードは6列配列になっているが、Viliv N5のキーボードは、1列少ない5列キーボードを採用している。キーの数は全部で61個と少ないため、1つのキーに割り当てられている役割が多い。

 特に、右下に集中している記号キーには1つで4つの文字が割り当てられている。例えば、「_」(アンダーバー)を入力するには、FnキーとShiftキーと「-」キーの3つを同時に押す必要があるので、記号入力にはやや慣れが必要であろう。「/」キーや「;」キー、「:」キーが最下段に配置されているなど、キーの配置も一般的なものとは異なる。また、キートップにかなの刻印がないので、かな入力は厳しいだろう。

 主要キーのキーピッチは約14mmと、筐体サイズの割には広いが、右側の「K」キーや「L」キーなどのキーピッチは約10.5mmと狭くなっている。キータッチは比較的軽めだが、ストローク感は十分あり、キートップもぐらぐらしないため、キー配列に慣れればかなり快適にタイピングが可能だ。

 ただし、すべての指を使ってタッチタイピングをおこなうにはやや窮屈なので(特に手の大きな男性には)、本体を両手で持ち、両親指でタイピングするほうが楽だろう。

●USB 2.0やmicroSDHCカードスロットを搭載

 筐体が小さいため、インターフェイスは必要最小限のものしか搭載していない。本体左側面に、USB 2.0とmicroSDHCカードスロットが用意されているほか、前面にヘッドフォン出力が用意されている。工人舎のPMは、USBポートがminiUSB規格であり、一般的なUSBデバイスを使う場合は付属の変換ケーブル経由で接続する必要があったが、通常サイズのUSBポートを備えているViliv N5なら、直接USBデバイスを接続できるので便利だ(オンキヨーのBXは通常サイズのUSBを装備していた)。

 なお、USBポートの左には、外部ディスプレイ出力端子用と思われるスペースがあるのだが、実際には外部ディスプレイ出力は用意されていないのが残念だ(PMにも外部ディスプレイ出力は用意されていないが、BXには外部ディスプレイ出力が用意されていた)。

 また、液晶の右上に、130万画素Webカメラが搭載しており、前面中央に内蔵されているマイクとあわせて、ビデオチャットなどに利用できる。前面左には、ストラップを取り付けるためのストラップホールが用意されているのも嬉しい。

 ワイヤレス機能として、IEEE 802.11b/g対応無線LANとBluetooth 2.0+EDRを搭載。さらに、GPSも搭載しており、GPS対応ソフトを利用することで、現在地の測位やナビゲーションなどが可能になる。

左側面には、USB 2.0とmicroSDHCカードスロットが用意されている右側面には、バッテリ取り外しボタンが用意されている前面には、ヘッドフォン端子とマイク、ストラップホールが用意されている
前面中央に搭載されているマイクのアップ前面左に用意されているストラップホール
液晶右上に、130万画素Webカメラが搭載されているUSBにUSB通信アダプタを装着したところ。標準サイズなので、変換ケーブルを使わずに直接接続できるのは便利

●公称約6時間のバッテリ駆動時間を実現

 筐体が小さく軽いので、バッテリ駆動時間が気になるところだ。Viliv N5では、バッテリに薄型のリチウムポリマー電池を採用しており、公称約6時間の連続駆動が可能だ。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、4時間44分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」に設定し、バックライト輝度は中)。 バッテリ駆動時間もなかなか優秀であり、十分合格といえる。ACアダプタは、Vilivの他の超小型PCと同じもので、ACプラグと本体が一体になったタイプだ。サイズが小さく重量も軽いが、ACプラグが折りたためるようになっていないのが残念だ。

バッテリには薄型のリチウムポリマー電池を採用。試用機のため、仕様を示すシールは貼られていなかったが、3.7V/4,250mAhとのことだバッテリを側面から見たところ。非常に薄いCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタは、Vilivの他の超小型PCに使われているものと同じであるACアダプタは小型で軽いが、ACプラグを折りたためないのが残念CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●ポケットサイズの超小型PCとしては十分なパフォーマンス

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用に工人舎「PM」、ソニー「VAIO P(オーナーメードモデル)」「VAIO P(店頭モデル)」「VAIO type P」の値も掲載した。

 結果は下の表にまとめたとおりで、同じカテゴリの製品であるPMと比べて、PCMark05のCPU Scoreは、5割近くも向上している。また、搭載SSDが異なるため、ディスクパフォーマンスも大きくアップしており、HDD Scoreは約2.9倍に向上している。総合スコアは、VAIO Pの店頭モデルとほぼ同じであり、操作感もほぼ同等であった。もちろん、多少待たされることもあるが、このクラスのマシンとしては必要十分なパフォーマンスといえるだろう。

 Windowsエクスペリエンスインデックスを計測したところ、プロセッサが1.9、メモリが4.2、グラフィックスが2.9、ゲーム用グラフィックスが2.3、プライマリハードディスクが5.9という結果になった。プロセッサが足を引っ張っており、Aeroは有効にならないが、実際の操作感は予想よりも快適であった。

【表】Viliv N5ベンチマーク結果

Viliv N5PMVAIO P(オーナーメードモデル)VAIO P(店頭モデル)VAIO type P
CPUAtom Z520(1.33GHz)Atom Z510(1.1GHz)Atom Z560(2.13GHz)Atom Z530(1.6GHz)Atom Z540(1.83GHz)
ビデオチップUS15W内蔵コアUS15W内蔵コアUS15X内蔵コアUS15W内蔵コアUS15W内蔵コア
PCMark05
PCMarks1083N/A146810541476
CPU Score1178787180813691659
Memory Score19691411257122152438
Graphics Score242N/A263224262
HDD Score6080211311585331111271
3DMark03
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)351計測不可457355427
CPU Score184計測不可232202156
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH428計測不可463404363
LOW737計測不可809672718
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP24.8317.831.8730.53未計測
HP7332,7768.0773.37未計測
SP/LP99.2367.597.799.97未計測
LLP9498.999.7799.97未計測
DP(CPU負荷)99998784未計測
HP(CPU負荷)74989785未計測
SP/LP(CPU負荷)54909455未計測
LLP(CPU負荷)49579256未計測
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード71.87MB/s54.00MB/s82.46MB/s61.05MB/s未計測
シーケンシャルライト17.23MB/s23.51MB/s51.33MB/s39.21MB/s未計測
512Kランダムリード70.28MB/s53.58MB/s76.98MB/s58.53MB/s未計測
512Kランダムライト14.24MB/s4.863MB/s44.80MB/s1.606MB/s未計測
4Kランダムリード7.709MB/s12.21MB/s7.702MB/s4.485MB/s未計測
4Kランダムライト1.594MB/s0.040MB/s17.18MB/s1.731MB/s未計測
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)4時間44分4時間35分4時間48分4時間17分未計測
Lバッテリなしなし未計測未計測未計測
Xバッテリなしなしなしなし未計測

プロセッサが1.9と足を引っ張っているが、メモリやプライマリハードディスクのスコアは高い

●キーボード付き超小型PCが欲しい人にお勧め

 Viliv N5は、キーボードを備えた超小型PCであり、約388gという軽くてコンパクトなボディを実現しているため、どこにでも気軽に持ち歩ける。先行したPMやBXに比べて、CPUやメモリなどの基本スペックが向上しており、製品としての魅力はさらにアップしている。

 長文を頻繁に入力するのなら、VAIO Pなど、より大きなキーボードを搭載したマシンをお勧めするが、ちょっとしたメモやメールの返信程度なら、Viliv N5のキーボードでも十分実用的である。キーボードがないタブレットタイプの超小型PCもあるが、小さくてもハードウェアキーボードが欲しいという人には、有力な選択肢となるだろう。

 BRULEが扱っているViliv N5の販売価格は、Windows 7 Starterモデルが77,800円、Windows 7 Home Premiumモデルが84,800円であるが(両者ともにハードウェアスペックは変わらない)、現在、標準バッテリが無料でもう1つ付いてくる発売記念キャンペーンがおこなわれているので、購入するなら今が絶好のチャンスだ。

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(2010年 6月 28日)

[Text by 石井 英男]