~フルモデルチェンジで魅力が大きく向上 |
パナソニックは、モバイルノート「Let'snote」シリーズのうち、12.1型液晶を搭載するB5モバイルモデルのラインナップを一新。光学式ドライブ内蔵の2スピンドルモデル「Let'snote S8」と、光学式ドライブを省いた軽量1スピンドルモデル「Let'snote N8」の2モデルを新たに追加した。
双方とも、軽さや堅牢性など定評のある特徴を受け継ぎつつ、Let'snoteシリーズの12.1型液晶搭載モデルとして初となるワイド液晶を搭載。スペック面の強化やバッテリ駆動時間の大幅な延長を実現、性能が大きく向上している。その中から今回は、光学式ドライブを内蔵するLet'snote S8シリーズの、Web直販サイト「マイレッツ倶楽部」限定モデルを取り上げる。
ちなみに、今回試用した機材は量産試作機のため、仕様面やベンチマーク結果など、製品版と異なる可能性がある点をご了承願いたい。
●12.1型モデル初のワイド液晶を搭載他社のモバイルノートがワイド液晶をほぼ標準搭載している中、Let'snoteシリーズは一貫してアスペクト比4:3の液晶を搭載してきた。これは、Let'snoteシリーズがビジネス用途で広く利用されていることと、長年Let'snoteを利用してきたユーザーの多くが4:3液晶の搭載を支持していたからだ。ただ、近年ではワイド液晶の搭載を望む声もかなり増えていたはずで、Let'snoteの開発陣もワイド液晶搭載の検討はかなり前からしていたと思う。
2008年の秋冬モデルで、シリーズ初のワイド液晶搭載モデル「Let'snote F」を投入した。市場の反応を見るために14.1型大型液晶搭載モデルからの採用になったと思われるが、今回、満を持してメインモデルである12.1型液晶搭載モデルのワイド液晶化が実現された。このことからも、やはりワイド液晶化を熱望するユーザーがかなり多かったと考えて良さそうだ。
液晶の表示解像度は、1,280×800ドット。サイズこそ従来のLet'snote W/Tシリーズに搭載される液晶と同じ12.1型だが、表示解像度は従来の1,024×768ドットから約1.3倍に増えた。特に、32ドットではあるが、縦の解像度が増えている点は嬉しい。
ただし、表示解像度が増えているにもかかわらず液晶サイズが同じということは、当然ドットピッチは狭くなっている。1,024×768ドット液晶のドットピッチは0.24mmだが、1,280×800ドット液晶のドットピッチは0.204mm。これは、Let'snote Rシリーズの搭載される10.4型液晶のドットピッチとほぼ同等。おそらく、Let'snote T/Wシリーズから乗り換えると、文字がかなり小さくなった印象を受けるはずだ。とはいえ、非常に見づらいと感じるほどではなく、表示解像度増による快適さの向上を考えると、十分納得できる。
表示品質は、従来モデルに搭載される液晶とかなり近い。やや青みが強いという印象とともに、上下の視野角がやや狭く感じる。映像やデジカメ画像などを表示させるグラフィック用途としてはやや厳しいものの、液晶表面が非光沢処理となっていることと合わせ、文字入力などが中心のビジネス用途では特に不満を感じることはないだろう。
そのバックライトは、12.1型液晶搭載モデルとして初となるLEDバックライトを採用する。これは、消費電力を低減してバッテリ駆動時間を延長するためという意味が強いが、実はLEDバックライト採用によって、天板部分が最大10mmも薄型化されている。今回は、従来モデルと直接比較できなかったため、天板部分の薄型化は実感できなかったものの、確かに液晶を開いた状態ではかなりすっきりとした印象を受けた。ちなみに、後ほど紹介するように、本体もやや薄くなっているが、当然これには天板部分の薄型化も大きく貢献している。
1,280×800ドット表示対応の、12.1型ワイド液晶を搭載。表示品質は従来とほぼ同じだが、表示領域が広くなり、アプリケーション利用時の快適度が向上 | LEDバックライトを採用し、天板部分の厚さが従来よりも最大10mm薄くなった | 液晶パネル部は、約45度まで開くことが可能だ |
●標準電圧版Core 2 Duo搭載で処理能力が大きく向上
Let'snote S8の2つ目の特徴となるのが、CPUとして標準電圧版Core 2 Duoを搭載している点だ。従来モデルでは、超低電圧版Core 2 Duoが搭載されており、利用するアプリケーションによっては、処理がやや重く感じることもあった。それに対し、Let'snote S8では、市販モデルで2.53GHz動作のCore 2 Duo P8700、今回試用したマイレッツ倶楽部限定モデルでは2.66GHz動作のCore 2 Duo P8800が搭載されており、大画面液晶搭載の大型ノートに匹敵する処理能力を実現。後述するベンチマークテストの結果でも優れた結果が得られており、体感では、従来モデルと比較して2倍近く処理速度が向上したと思えるほどの違いがあると考えていい。このクラスのモバイルノートとしては、トップクラスの処理能力を実現していると言っていいだろう。
モバイルノートに標準電圧版Core 2 Duoを搭載するということは、熱処理がかなり問題になりそうだが、Let'snote S8では従来モデルと比べて2倍の厚さがある空冷ファン(直径は29mm)を搭載することで放熱性能を高めるとともに、インテルと共同開発したDPPM(Dynamic Power Performance Management)により、CPUなどの細かなパワーマネージメントを行なうことによって克服している。実際、ベンチマークテストを実行するなど高負荷がかかる状態でも、パームレスト左側や底面が若干温かく感じられる程度で、熱いと感じることはなく、効率良く放熱できていることがうかがえる。
また、この空冷ファンは高負荷時でも非常に静かで、ファンの騒音が気になることもほとんどない。図書館などの静かな環境でも安心して利用できるはずだ。
●公称約16時間の超ロングバッテリライフを実現Let'snote S8の3つ目の特徴が、公称で約16時間という、圧倒的に長時間のバッテリ駆動時間を実現している点だ。従来モデルのLet'snote W8Gでも約11時間という長時間駆動を実現していたが、標準電圧版Core 2 Duoを搭載しながら5時間もの駆動時間延長を実現しているのだから驚きだ。
実はLet'snote S8では、標準で12.4Ahという、大容量8セルリチウムイオンバッテリを搭載している。加えて、CPUや周辺パーツを含めた細かなパワーマネージメント、液晶ディスプレイのLEDバックライト採用なども含めた省電力化によって、約16時間というバッテリ駆動時間を実現しているわけだ。
そこで、実際にバッテリ駆動時間を計測してみた。まず初めに、省電力機能を切るとともに、液晶バックライト輝度を最大にし、内蔵無線機能も全てONにした状態で、内蔵DVDドライブを利用してDVDビデオを連続再生してみたところ、約5時間38分という結果だった。公称の約1/3だが、過酷な条件でのテストであることを考えると、十分すぎる結果と言える。
次に、省電力機能を有効にした状態でのテストだ。こちらは、Let'snoteシリーズに搭載されている省電力機能「パナソニックの電源管理」で「省電力」に設定するとともに、無線機能のうち無線LANのみをONにした状態、WiMAXのみをONにした状態、ワイヤレスWANのみをONにした状態の3パターンについて、海人氏製作のバッテリベンチマークソフト「BBench V1.01」を利用し、Web巡回とキー入力をONにして検証した。
「パナソニックの電源管理:省電力」の省電力設定内容 | |
ワイヤレス省電力 | (高) |
バックライト輝度 | 20% |
プロセッサ | 最大100%、最小5% |
Windows Aero | 無効 |
画面の省電力 | 有効 |
ビデオドライバ省電力 | 5 高 |
サウンドドライバの省電力 | 有効 |
ファン制御モード | 低速 |
光学ドライブ電源 | オフ |
フルパワー(高パフォーマンス)、DVDビデオ連続再生時 | 5時間38分 |
パナソニックの電源管理:省電力、無線LAN ON、Bluetooth OFF、WWAN OFF | 11時間27分 |
パナソニックの電源管理:省電力、WiMAX ON、Bluetooth OFF、WWAN OFF | 9時間34分 |
パナソニックの電源管理:省電力、WWAN ON、無線LAN OFF、Bluetooth OFF | 9時間40分 |
結果は、無線LANのみをONにした場合で11時間27分、WiMAXのみをONにした状態で9時間34分、ワイヤレスWANのみをONにした場合で9時間40分と、フルパワー時の2倍近くであった。無線機能を利用してWeb巡回を行なったり、バックライト輝度も最低ではない(輝度20%)こともあり、公称の2/3ほどにとどまってはいるが、それでも圧倒的な駆動時間だ。無線機能を利用しなければ、当然さらに駆動時間が延びることになるし、無線機能を利用するとしてもバッテリ残量を全く気にすることなく1日フルに利用できると考えていい。常にモバイルPCを持ち歩いて利用している人にとって、非常に心強い魅力だ。
●本体デザインは従来モデルを踏襲
Let'snote S8の本体デザインは、ワイド液晶を搭載していることもあり、従来モデルであるLet'snote W8シリーズから若干変更されているが、基本的にはLet'snoteシリーズおなじみのデザインが踏襲されている。
天板部分は、おなじみのボンネット構造を採用。2本の溝を無くすとともに、天板全体を曲面構造にするなど、デザインが若干変更され、従来よりもすっきりとした印象を受ける。もちろん、100kgfの圧力にも耐える優れた堅牢性はそのまま受け継がれている。
本体サイズは、282.8×209.6×23.4~41.1mm(幅×奥行き×高さ、後部は38.7mm)。本体前方が薄く、後方ほど厚くなるデザインは従来通りだが、幅が従来モデルから10mmほど増え、奥行きは5mmほど短く、また高さは最大4mmほど薄くなっている。天板部分の厚さが最大10mm薄くなっていることを考えると、もう少し薄くなっても良かったように思う。標準電圧版Core 2 Duoを搭載のため、放熱能力を高める必要があり、その分本体側の厚さを増やす必要があったのだろうが、昨今の薄型ノートPCの台頭を考えると、Let'snoteシリーズもさらなる薄型化にチャレンジしてもらいたいところだ。
本体重量は、実測値で1,368gと、従来モデルから120gほど重量が増えている。とはいえ、標準添付の8セルバッテリの重量が実測値で405.5gもあることを考えると、これだけの重量増で抑えられている点は特筆すべきだろう。本体を持っても、特に重いと感じることはなく、携帯性は従来モデルとほとんど同じと考えていい。ちなみに、バッテリ駆動時間よりも本体の軽さを重視するなら、オプションで用意される軽量バッテリを利用すればいいだろう。
●無線LAN、WiMAX、WWAN、Bluetoothの4種の無線機能を搭載可能
基本スペックは、CPU以外は従来モデルから大きく変わっていない。チップセットはIntel GS45 Express、メインメモリはPC2-6400 DDR2 SDRAMを標準で2GB搭載(最大4GB)。HDD容量は、店頭販売モデルが250GB、マイレッツ倶楽部限定モデルが500GBとなる。光学式ドライブは、DVDスーパーマルチドライブで、パームレスト右側を開いてディスクを出し入れするシェルドライブ構造となる。
無線機能としては、標準でIEEE 802.11a/b/g/nおよびWiMAX対応の「Intel WiMAX/WiFi Link 5150」を搭載。また、マイレッツ倶楽部限定モデルでは、NTTドコモのFOMAハイスピード(HSUPA)対応のWWANモジュールと、Bluetooth 2.1+EDRもオプションで搭載可能となる。つまりマイレッツ倶楽部限定モデルでは、無線LAN、WiMAX、WWAN、Bluetoothの4種類の無線機能を同時に搭載できるわけだ。利用する場所に応じて無線機能を使い分けられ、国内であればほぼ場所を問わずネットワークに接続できるという点は、かなり大きな魅力だ。
本体側面のインターフェイスも強化されている。まず、ミニD-Sub15ピンに加えて、HDMI出力を標準で装備。大画面液晶TVなどにも簡単に接続できるようになり、プレゼン用途はもちろん、映像再生時などにも有効に活用できる。また、これまで右側面に3個用意されていたUSB 2.0ポートが、左側面に2ポート、右側面に1ポートと、左右側面に用意されるようになった。ちょっとした変更ではあるが、USBポートの使い勝手は向上している。ちなみに、PCカードスロットやSDカードスロットは、本体右側面へと移動している。
キーボードは、Let'snote W8シリーズに搭載されていたものと同じ配列の新型を採用。主要キーのキーピッチは横が約19mm、縦が約16mmの長方形。個人的には、[Esc]キーと[F1]キーの間に[半角/全角]キーが配置されている点が少々気になったが、使い勝手は従来モデルと全く同じと考えていい。もちろん、キーボード自体の防水構造や、キーボード面にこぼした水などを本体底面の穴から排出することで本体内部への水の浸入を防ぐウォータースルー構造も受け継いでいる。
ポインティングデバイスは、円形のホイールパッドを採用。従来モデルよりもパッド面と周囲との高低差が少なくなっているようだが、使い勝手はほぼ同等。スクロール操作なども健在で、見た目以上に扱いやすい。クリックボタンは音の小さなものに変更されている。
OSは、Windows 7 Professionalを採用。また、マイレッツ倶楽部限定モデルでは、Windows 7 Professional 64bit版となる。双方とも、Windows XPへのダウングレード権が含まれており、Windows XPダウングレードDVDが付属する。
●ビジネスモバイルとしての完成度が大きく向上
では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage x64 Build 1.0.0 0906a」と「PCMark05 Build 1.2.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 0906a」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類。また、比較用として、超低電圧版Core 2 Duoを搭載する、ASUSTeKの「UX50V」の結果も掲載している。
Let'snote CF-S8 | ASUS UX50V | |
CPU | Core 2 Duo P8800(2.66GHz) | Core 2 Duo SU9400(1.40GHz) |
チップセット | Intel GS45 Express | Intel GS45 Express |
メモリ | Intel GMA 4500MHD | GeForce G105M |
ビデオチップ | PC2-6400 DDR2 SDRAM 2GB | PC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB |
OS | Windows 7 Professional 64bit | Windows Vista Home Premium SP2 |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.0 0906a(Vista SP2互換モードで実行) | ||
PCMark Suite | 3,148 | 2,554 |
Memories Suite | 2,212 | 1,663 |
TV and Movies Suite | 2,658 | 2,079 |
Gaming Suite | 1,273 | 2,250 |
Music Suite | 4,204 | 2,605 |
Communications Suite | 3,375 | 2,330 |
Productivity Suite | 1,751 | 2,187 |
HDD Test Suite | 3,340 | 3,400 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||
PCMark Score | N/A | 4,004 |
CPU Score | 6,639 | 3,690 |
Memory Score | 4,921 | 3,689 |
Graphics Score | 1,515 | 2,895 |
HDD Score | N/A | 4,854 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | ||
3DMark Score | 770 | 1,880 |
SM2.0 Score | 239 | 736 |
HDR/SM3.0 Score | 295 | 665 |
CPU Score | 2,238 | 1,288 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||
Low | 3,643 | 6,103 |
High | 2,216 | 4,165 |
Windows 7 エクスペリエンスインデックス | ||
プロセッサ | 6.3 | N/A |
メモリ | 5.5 | N/A |
グラフィックス | 3.2 | N/A |
ゲーム用グラフィックス | 3.4 | N/A |
プライマリハードディスク | 5.9 | N/A |
結果を見ると、CPUまわりの処理能力に優れることがよくわかる。PCMark05や3DMark06のCPU Scoreを見ると、Core 2 Duo SU9400に対し2倍近い結果が得られており、高クロックな通常電圧版Core 2 Duoを搭載している優位性がはっきりと表われている。実際にいくつかのアプリケーションを利用してみたが、どれもきびきびと動作し、かなり快適であった。
ただし、描画機能は、チップセット内蔵のIntel GMA4500MHDが利用されていることもあり、3D描画能力は弱い。とはいえ、Let'snoteシリーズはビジネス用途を基本としており、3D描画能力の弱さは大きな問題とはならないはずだ。
●ビジネスモバイルの最高峰
Let'snote S8は、軽さや優れた堅牢性など、従来までの特徴をそのまま受け継ぎつつ、1,280×800ドット表示対応の12.1型ワイド液晶を搭載するとともに、通常電圧版Core 2 Duoを搭載することによる処理能力の高さ、公称16時間、テストでも11時間を超える長時間のバッテリ駆動時間など、B5モバイルの域を超える快適さが実現されている。加えて、無線LAN、WiMAX、WWAN、Bluetoothと4種類の無線機能を同時に内蔵でき、ビジネスモバイルノートとしての完成度が大きく向上。現時点では、このクラスのモバイルノートに敵無しと言ってもいいかもしれない。それほどまでに魅力が高まっている。
本体デザインに大きな変化が見られず、あまり新鮮みが感じられないのも事実だが、それは逆にLet'snoteシリーズとしての安心感でもある。ホビー用途での利用には少々厳しい点もあるが、ビジネスシーンで利用するモバイルノートとしては、現時点で最高の選択肢と言ってよく、広くおすすめしたい。
(2009年 9月 30日)
[Text by 平澤 寿康]